ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜   作:くろひつじ

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80話「手早くケリを付けてしまおう」

 

 翌朝、日が昇りきらない頃に宿を出ると、みんなで魔導列車に乗り込んだ。

 買っておいた朝飯を客室で広げて食べ終え、今日の予定を話し合う。

 

「ライさん! 今日はとうとうフリドールに行くんですよね!」

「そうだな。王都を経由して今日中に行くつもりだ」

 

 王都より北、魔王国ゲルニカよりさらに先にある、氷の都フリドール。

 一年中雪に閉ざされた街。そこに、追い求めた相手がいる。

 現在は吹雪で魔導列車以外の交通手段が絶たれているらしいし、早い内に済ませてしまいたい。

 

「フリドールも久しぶりですね。フェンリル討伐以来でしょうか」

「ボクは初めてだね! 噂には聞いてるけど、どんなところなのかな!」

「氷の都フリドールは名前の通り氷のような見た目の街だ。白い半透明の壁に覆われていて、一年のほとんどは雪が降ってるな」

「うわ、めっちゃ寒そうじゃん!」

「寒いな。だから冬用のコートを用意したんだろ」

 

 ちゃんと事前に俺以外の四人分のコートを新調してある。

 少し高価だが暖房効果のあるコートだし、フリドールでは有用だろう。

 まぁサウレの不審者度は増したけどな。

 何せ半裸の上にコートだし。

 

「……ライ。知らない街は不安だから抱きしめて欲しい」

 

 そんな彼女はわざとらしい理由をつけながら、いつも通り俺の膝の上に乗ってきた。

 苦笑いしながら迎え入れると俺の胸元に猫のように顔を擦り寄せてくる。

 その頭を撫でてやりながら、気配を察して通路の向こうから歩いてきた本物の黒猫に目を向けた。

 

「朝から騒がしいことだ。少しは自重しろ、色男」

「おはようさん。昨日はありがとうな」

「我の計らいでは無いが、礼は受け取ろう。それより貴様、フリドールへ行くのか?」

「あぁ。何か問題があるのか?」

 

 俺の問いかけにラインハルトが真剣な表情を返す。

 

「あちらでは大規模な盗賊団が出没しているらしい。近々討伐隊が組まれる予定だそうだ」

「盗賊団か……厄介だな」

 

 盗賊といっても元冒険者や傭兵が多いからな。

 純粋な対人戦闘能力なら一流冒険者と同レベルの奴がいたりもするし、侮れない連中だ。

 いくらサウレとジュレが居るとは言え、遭遇しないように気を付けないとな。

 まぁそもそも街から出る予定は無いし、大丈夫だとは思うけど。

 

「ありがとな、気を付けるわ」

「うむ。我は微塵も心配などしてはおらぬが、ヘクターがな」

「あの子が心配してくれたのか?」

「貴様もオウカ殿の身内であるからな。何かあればオウカ殿が悲しむだろう?」

「なるほど、そういう事か」

 

 ラインハルトの言葉に今度はこちらから苦笑いを返した。

 ヘクターは俺たちの心配では無く、オウカの心配をしているようだ。

 まぁ、当然と言えば当然か。

 

「気を付けはするさ。そう簡単に死ぬ気も無いからな」

「ふん。貴様が賊に遅れを取るなど笑い話にもならぬ。その時は墓の前で笑い飛ばしてやろう」

「酒も忘れるなよ? あの世には娯楽が少なそうだからな」

 

 互いにニヤリと笑い、軽口を叩き合う。

 ラインハルトは俺の過去を知る数少ない身内の一人だ。

 だからこそ、一片足りとも心配はしていないのだろう。

 その信頼が心地よく、そしてどこかくすぐったい。

 

「さて、我は仕事に戻る。何かあれば告げに来い」

「分かった。またな」

 

 去っていく黒猫を見送り、ついでに胸元の猫っぽい奴を撫でておいた。

 

 

 

 それから二時間ほど、何事もなく列車は運行していた。

 凄まじい速度で流れていく風景にも飽きてきたので、ジュレとクレアのチェス勝負を観戦している所だ。

 ちなみに最初は俺も参加してたけど、圧勝してしまったので大人しく観客に回っている。

 

「そろそろだな。降りる準備をしておけよ?」

「大丈夫! 荷物は出てないからね!」

「そうか。なら大丈夫だな」

 

 元気よくウサギ耳を動かすクレアに和みながら自分の荷物の確認を行う。

 ジュレも荷物を広げて居なかったようで、特に慌てる様子も無くチェスを続けている。

 今現在はジュレが優勢のようだが、俺の読み通りだとクレアが逆転するな、これ。

 

 サウレもじっと無言で盤上を眺めていて、アルに至っては窓際の席で寝てしまっていた。

 まぁこいつが荷物を出していないのは知っているし、もう少し寝かせておいてやるか。

 ただ寝言で俺の名前を呼ぶのは勘弁してもらいたい。

 なんて言うかこう、むずかゆい気持ちになる。

 その度に皆にニヤニヤされるのも照れくさいし。

 

「ところでライさん、一つ提案があるのですが」

「どうした?」

 

 チェス盤に目を向けたまま言うジュレに返事をすると。

 

「フリドールに着いたら寄りたい所があるので、少しだけ二人きりの時間を頂けませんか?」

「俺は用事が終わった後で良いなら構わないけど……珍しいな?」

「たまにはワガママを言ってみたくなりまして」

 

 人差し指を立ててイタズラな表情で笑うジュレ。普段とは違いからかい混じりなその様子に、つい見とれてしまう。

 元が美人だからなこいつ。こういう仕草でも様になるのはジュレらしいと言うか。

 何となく心の距離が縮まっている気がして、つい笑みが零れた。

 

「よし、じゃあ手早く用を終わらせるとするか」

「そうですね。その後でデートを楽しみましょう」

 

 デートねぇ。まぁ確かに二人きりで出かけるならデートになるのか。

 かなり楽しみにしてくれているようだが、はてさて。

 サウレとクレアが何も言ってこないあたり、既に彼女達の間で話し合いが行われた後なのだろう。

 仲が良いのは嬉しいんだが、結託して何かやらかさないか怖いところではある。

 

 何にせよまずは、サウレを嵌めた奴を捕まえに行かないとな。

 逃げられても面倒だし、吹雪に閉ざされたフリドールにいる今が絶好のチャンスだ。

 手早くケリを付けてしまおう。

 

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