転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!? 作:レイ1020
視点 リムル
「さて、あいつはどこに行ったかな?」
オークとの激闘から早くも2ヶ月以上が経とうとしていた。町の建物の建設もオーク達が手伝いに来てくれてるおかげもあって、進捗は良かった。そんな中、俺は今のところは特にやることもなかったため、エリスと一緒にゲルドを倒したときに新たに獲得したスキルなどを見直しておこうと思い、エリスを探していた。
「ま、家に行けば会えるか」
エリスは基本的に、仕事などやることが無ければ家にいることが多いため、今回もおそらく家にいるだろうと悟っていた俺は、一人エリスの家へと向かった。
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「主様は只今出かけております」
結果として、俺の予想は外れた。俺を家で待っていたのは、エリスではなく、いつもの大きさよりもかなり小さくなって(大きさ的には大型犬くらいの大きさ)畳の上で静かに目を閉じていたヒョウガだったからだ。何でこいつがいるんだ?
「何でここにいるんだ?エリスは?」
「話を聞いて無かったのですか?主様は出かけています。ワタシは主様にここの留守を任された為ここにいるのです」
「いや、俺が聞きたかったのはエリスがどこに行ったか何だけどな?」
「あなたに教える義理は無いと思いますが・・・・・・主様でしたらクロベエさんの工房に向かわれました。新しい武器の新調をお願いしたいそうで」
「そっか、わかった」
俺に対して、ぶっきらぼうになりながらも、エリスの居場所を教えてくれたヒョウガは、もう話すこともないと言わんばかりに、再び畳の上に寝そべった。だが俺は、エリスの場所へと向かう事はせずに、そのまま家に上がらせてもらい、ヒョウガの隣に腰を下ろした。エリスなら別に知らないやつでも無い限り、勝手に上がっても怒らないだろうしな(ちなみに、クロベエの工房というのは、以前オーク達に建ててもらったクロベエ専用の工房のことだ。クロベエはどうやら武器や防具の加工に多大なる才を持っていたようで、本人も武器や防具を加工することが好きだったこともあって、カイジンたちが作らせたんだそうだ。それもあって、クロベエには役職として”鍛治師”を与えている)。
「・・・・・・さっさと主様の元に向かわれたらどうですか?ここにいても主様には会えませんよ?」
「ちょっとしたら帰ってくるだろ。それまでここで待たせてもらうわ。いいか?」
「・・・・・・勝手にしてください」
俺がこの場に留まると知り、途端に嫌そうな顔をしたヒョウガ。やれやれ、改めて思うが、俺ってこいつからだいぶ嫌われてるよな〜・・・・・・。
「なぁ、ヒョウガ?エリスが来るまで暇だし、ちょっと俺と話さないか?」
「ワタシはあなたと話すことなどありませんので、遠慮します」
「そう言うなって。そろそろお前とも腹を割って話したかったんだ。お前が俺のことを好いて無いことも知ってるが、今回は俺の頼みも聞いてくれないか?」
「・・・・・・もう、好きにしてください。どうせ言っても聞かないのでしょうから・・・・・・」
ため息を吐きながらそう言うヒョウガ。どうやら俺のしつこい頼みに拒むのも疲れて、呆れられてしまったようだな。ま、諦めが悪いのも俺の取り柄だからな。ともかく、これでこいつと話ができるな。
「サンキューな。それで、話なんだけどな?ヒョウガ、お前は親の仇である俺のことをまだ恨んでるか?」
「・・・・・・」
ヒョウガは目を瞑ったまま、何も声を発さなかった。だが、少しすると少しだけ目を開けて、こっちに視線を向けてきた。
「恨んで無いといえば嘘になります。どんなにあなたが大きな存在になり、魔物の皆から慕われようと、あなたがワタシから父上を奪った張本人であることに変わりはありませんから」
「そりゃそうだな。俺だって今さら許されようとは思ってないさ」
俺だってあの時、何も思わずにこいつとランガの親父を殺したわけでは無かった。ゴブリンの里を襲おうとした一見悪そうなやつだったが、それもこれも自分の子供達や、一族のためにやってることだとあの時何となく察せたからな。あの親父を殺した時、俺は申し訳ないと言う気持ちと共に、残ったこいつの家族の面倒を、せめてもの償いの意味も込めて見ようと決めたんだ。だから、俺は別にこいつに恨まれようと構わなかった。恨まれて当然のことをしたんだからな。
「お前はこの先、俺のことを許さなくてもいい。恨んでくれても構わない。だが、これだけは言わせてくれ。お前達のことは、あの親父に代わって俺たちがしっかりと面倒を見て、守っていくつもりだ。もちろんヒョウガ、お前の事もだ」
「・・・・・・」
「それで償いになるかは分からないが、少なくとも俺はお前とももっと仲良く付き合って行けたらと思ってる。今はまだ無理っぽいだろうが、いつの日か、そう言う関係になれたら俺は嬉しい。お前は違うか?」
「・・・・・・今はまだ、そうは思えません。ですが・・・・・・あなたがワタシ達に対してそこまで思ってくれているのは非常に嬉しく思います。少し、あなたの事を見直しました」
「お?マジで?」
ヒョウガの態度が先ほどと比べて少し柔らかくなったように感じた俺は、どこかホッとした気持ちのまま、聞き返した。
「ですが、ワタシ達のことを守ると言っていたあなたにしては、随分と軽く、一度ワタシの事を殺そうとしましたよね?そのことについてはどう思っているのですか?」
「うっ・・・・・・そ、それはだなー・・・・・・」
ヒョウガのその怒気をにじませた言葉に俺は口籠るしか無かった。確かに俺はあの時、ランガ達と共に従ってくれなかったヒョウガの事を殺そうとした。エリスがあの場で助けに入らなかったら、間違いなく今この場にヒョウガはいなかっただろうからな。
「意地悪な質問でしたね。そのことについてはもう気にしてませんので気に病まないでも結構です。あの場で拒んだワタシの方がどうかしていたのですし、それに主様のおかげでこうして生きてますので」
「あ、ああ・・・・・・」
よ、よかった・・・・・・。これ以上追求されたら俺にはどうしようもなかったからな。あの時はただ勢いでヒョウガを殺そうとしちまったなんて死んでも言えねーよな?言ったら言ったでこいつとエリスに殺されそうだしな。はぁ・・・・・・マジでよかった。
「あなたの事を認めることはまだ出来ません。ですが、それは今の段階ではのことです。ですので、今後はあなたの事を見極めさせてもらうべく、動かせていただきます。あなたが、父上の代わりにワタシ達を統べるに値する人物かどうかをこの目で見極めるつもりですので、そのつもりでいてください。もし、あなたがそれに足り得ない人物だと判断した暁には、今後一切あなたには従わないことにしますので」
「それでいいさ。あ、そうだ。出来れば今後は俺の指示のことも聞いてくれると嬉しいな。お前にも色々と頼みたいこともあるんだよ」
「主様の命の次にでしたら聞かないでもありませんが・・・・・・」
「いや、一応俺は盟主で、エリスは副盟主だから立場的にはほとんど変わらないが、若干俺の方が立場は上なんだけど?」
「都合の良い時に立場を振りかざさないでください。それに、立場はどうであれ、ワタシが第一に従うのは主様のみです。それだけは曲げるつもりはありません」
・・・・・・はぁ〜、相変わらずこいつはエリス一筋だよな〜?ここまで来ると、もはやヒョウガは”エリスコンプレックス”ならぬ、”エリコン”にでもなっちまってるんじゃないかって思いたくなる。ま、ここまでになる程にエリスに対して深い忠誠を誓ってるって事だから、別にそれでもいいとは思っているが・・・・・・。
「やれやれ、エリスも随分と配下に恵まれたな。こんなに尽してくれる配下なんて探しても中々いないぜ?」
「はぁ・・・・・・あなたも人のことは言えないでしょう?兄上を始めとした鬼人やゴブリン達も皆あなたの配下ではありませんか。一応、主様の配下でもあるようですが、真に忠誠を誓っているのはあなたでしょう?あなたこそ、配下に恵まれているのだと自覚してください」
「へっ?・・・・・・あ、ああ、なんかすまん・・・・・・」
まぁ・・・・・・確かに、ベニマル達はエリスの直属の部下では無いが、エリスに対しては俺と同じくらいの忠誠を誓ってると思うがな?一応あいつだって、副盟主っていう肩書を持っているし、目上の立場としてみんなを引っ張る役目もよく引き受けたりしてるしな。あいつはそう言った役割は少し嫌がっていたようだけどな?
それはともあれ、ヒョウガの呆れたような、怒ったようななんとも分からないお説教を聞かされた俺は、そんな中でもどこか俺に対して何の裏もなく話すヒョウガを見て嬉しく思っていた。今までヒョウガとは、こんなやりとりさえできないほどに距離が出来ていたからな。まだ本人は、俺のことを本気で信じてくれてはいないようだが、今はそれでよかった。今回は、少しでもヒョウガとの距離を縮めるのが主な目的だったんだからな。この距離をさらに縮めるには、今後の俺がもっと頑張らなくちゃいけないことはわかっているため、ヒョウガの説教を聞きながら、そう気を引き締めるのだった・・・・・・。
このペアを今後どのような関係性にして行くかは今もまだ悩み中です。