転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!?   作:レイ1020

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ちょっとだけ重い話になります。本当はあんまりこう言った話は書きたくないんですけどね。


エリスの想い

オークとの戦いが終わって、3ヶ月が経とうとしていた。あれからと言うもの、僕たちの町は飛躍的な発展を遂げ、最初の頃は更地であった土地だとは到底思えない程の建物で溢れていた。最近では、井戸を設立した為その水を利用して日本風のトイレを作ろうと言うことになって、カイジン達に作ってもらうことにした。もちろん、カイジン達は日本のトイレなど見たこともない為、作るのは困難に思えたんだけど、以前『思念伝達』が進化したスキルである『思念操作』を獲得したこともあって、それは杞憂に終わった。このスキルは、『思念伝達』の機能はそのままに、なんと”自分が思い描いた想像(イメージ)をそのまま相手に伝える事ができる”と言う優れたスキルだったんだ。僕とリムルが描いた通りの想像(イメージ)を受け取ったカイジンやミルドはやはりさすがはドワーフと言うべきか、すぐに僕たちの望み通りのトイレを作ってしまったんだ。ほんと、ドワーフのみんなには頭が上がらないよ。

 

 

その他には、温泉とかも作った。これはリムルの意見だ。リムルもやはり、元が日本人なだけあって、お風呂が恋しかったらしい。僕もぶっちゃけて言うなら、久しぶりにちゃんとした温泉に入ってみたいって思ってたから、この提案には真っ先に頷いた。この温泉も、ドワーフの手に掛かれば、作るのは雑作もない事であったようで、10日ほどで作り上げてしまった。で、問題のお湯なんだけど、これは僕の水を使うことになった。僕の水には前にも話した通り、肌荒れや細菌を取り除く効果があるため、温泉の湯として使うに申し分ない効能がある為、それに以前から、僕が操る”水の温度を変えられるようになった”為、温泉に順応した温度にすることも可能になった。僕の水は減ってもすぐに戻るため、特に問題なかったから、快く了承した。・・・・・・とは言っても、ずっとやるのは流石に疲れるから、いつかは温泉を掘ろうとしてはいる。

 

 

 

それから、温泉は町の住民達から、特に女性を筆頭にひどく人気が出たようだ。

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

 

 

 

「リムル?前より身長伸びたんじゃない?」

 

 

 

オーク達との戦い以降、平和が続いていたある日、僕はリムルの家へお邪魔していた。

 

 

 

「まあな。豚頭魔王(オークディザスター)のゲルドを捕食者(クラウモノ)で喰らった事もあって、なぜか伸びたみたいだな。これで俺もやっとお前の身長に追いつける・・・・・・って思ってたんだがな」

 

 

 

「あはは・・・・・・僕も身長伸びたからね。ほんの少しだけだけど。でも、これで僕たちも子供とは思われなくなるんじゃない?実際、前ほど子供子供って言われなくなったし。リムルの方もいい加減うんざりしてたでしょ?」

 

 

 

「だな。マジでウザかったしな・・・・・・」

 

 

 

最近の悩みが解決されたことに、僕たちはほっと息をつく。魔素の保有量が原因なのか、魔力の保有量が原因なのかは分からないけど、僕たちはあの戦い以来、人型の姿での身長が前よりも伸びていたんだ。多分リムルがさっき言ったように、豚頭魔王(オークディザスター)のゲルドをリムルが喰らったことが原因で、喰らった時に得た魔素やスキルなどが体の成長に変化をもたらしたのかもしれないと僕は考えている。僕も応援者(コブスルモノ)のおかげでリムルが得たもの全てを共有できた為、同じように僕の身長も、魔素の量も前より増えていた。まぁ・・・・・・身長に至っては、伸びたと言っても微々たるものでしかないけどね・・・・・・。簡単に言うと、今まで幼少の子供に見えた子が、ちょっと大きくなって少年、少女くらいの大きさになったって言う感じかな?身長で言うと、僕が160cmくらいで、リムルが155cmくらいの大きさになってる。

 

 

 

それもあって、前々からの僕たちの悩みであった、”子供扱いされる問題”が著しく解決したと言うわけだ。まぁ、今でもたまに子供扱いはされるんだけどね?

 

 

 

「話は変わるが、お前も成長したってことは、スキルも会得したってことだよな?良かったな!これでお前もゲルドから貰った飢餓者(ウエルモノ)で捕食すればスキルを獲得することが出来るぞ?」

 

 

 

飢餓者(ウエルモノ)捕食者(クラウモノ)とは違って、必ずしもスキルを獲得できる訳じゃ無いからね?確かにいいスキルだとは思うんだけど、このスキルは常時発動してたら魔素を常に消費しちゃうし、今のところ特に有効な使い道は思い付いていないんだよ。だから今はスキルの発動を指導者(ミチビクモノ)さんに抑えて貰ってるよ」

 

 

 

「そっか。エリスがいいならそれで良いんだろうが・・・・・・常時発動してたって特に問題なさそうだけどな〜?」

 

 

 

キミと一緒にしないでくれ、と言ってやりたかった。飢餓者(ウエルモノ)捕食者(クラウモノ)程の脅威を持っているスキルでは無いが、少なくともユニークスキルに分類されるスキルである為、決して飢餓者(ウエルモノ)が脅威的なスキルでは無いことは無い。そもそもこのスキルには、触れた相手の体を腐食させ、死体の一部を吸収すればその能力の一部を獲得できる「腐食」、一定確率で食った相手の能力を奪う「受肉」、影響下にあるか、もしくは魂の繋がりのある魔物へ対し能力の一部を授与する「供給」という強力な3つの能力がある。これだけを見れば、スキルとしては十分すぎるほどの性能を持っていることが分かるけど、その代わり、発動にはやはりかなりの魔素を消費するらしい。僕も一応、リムル同様にゲルドの魔素を吸収してある程度・・・・・・というか、かなり魔素の量は増えたんだけど、それでもユニークスキルを常時発動していてもずっとへっちゃら・・・・・・と言うわけでも無いため、とりあえずこのスキルについては置いておこうと思ったんだ。

 

 

 

つまり、それを容易くできるリムルはいよいよやばい・・・・・・と言うことだ。それに・・・・・・。

 

 

 

「そういえば、リムルのスキルの捕食者(クラウモノ)、進化したんだっけ?名前は確か・・・・・・」

 

 

 

暴食者(グラトニー)だ」

 

 

 

そう得意げに言うリムルに、内心ため息を吐いた僕。なんでため息を吐いたかと言うと、この進化した暴食者(グラトニー)と言うスキルがまた・・・・・・捕食者(クラウモノ)を超えるチートスキルだったからだ。

 

 

 

このスキルは、捕食者(クラウモノ)飢餓者(ウエルモノ)を捕食したことで進化したスキルだ。性能としては、捕食者(クラウモノ)の元の能力に加え、対象物を腐食させ、死体の一部を吸収すればその能力の一部を獲得できる「腐食」、影響下にある魔物の得た能力を獲得可能とする「受容」、影響下にあるか、もしくは魂の繋がりのある魔物へ対し能力の一部を授与する「供給」の3つの能力が追加された。簡単に言うと、捕食者(クラウモノ)の性能に飢餓者(ウエルモノ)の性能がプラスされたと言うことだ。しかも、飢餓者(ウエルモノ)の3つの能力のうちの一つであった「受肉」が進化を果たし、「受容」へと変わったんだ。その能力は上で説明した通りだ。多分、大賢者(エイチアルモノ)さんは、すでに「捕食」と言う能力が存在しているから、同系統の能力である「受肉」は要らないという判断に至ったんだと思う。だから、この余った能力を最善化して進化させることで残したと考えている。

 

 

 

おまけに、胃袋の容量・・・・・・つまり、捕食できる量も大幅に増えていると来たもんだ。いや〜、もはや爽快とも言えるようなチートっぷりだよ。リムルの旦那は・・・・・・。捕食者(クラウモノ)ですら既に反則的なスキルだったって言うのに、それを進化させてさらに反則的にしてリムルは一体どうしたいわけさ?

 

 

 

「リムル、キミには自重という言葉を知ってもらう必要があるよ?なにどんどんチートの道へと走り出しちゃってるわけさ?」

 

 

 

「いや、別に俺も好きでこうなってるわけじゃ無いぞ?あくまで成り行きでだな?」

 

 

 

「だからって限度ってものがあるでしょっ!?全く・・・・・・でも、こんな強力すぎるスキルを持つリムルに、守られてるみんなは幸せ者だよ。この町に居る限り、この”馬鹿みたいに強くて恐ろしそうなスライムでありながら、ジュラの大森林同名の盟主”でもあると言うリムルがどんなことがあっても守ってくれるんだから」

 

 

 

何処か皮肉じみた言い方になったけど、これでもリムルのことを褒めている。リムルに僕の気持ちが伝わってるかは分からないけどね?

 

 

 

「守ってるって言うならお前もだろ?お前だって、今までいろんなところで俺たちや町のみんなを守ってきたじゃねーか?」

 

 

 

「ううん。僕がしてきたのはほんと些細なことだよ。あくまでもみんなのサポートに徹したに過ぎない。実際、あのオークとの戦いで、僕は味方のサポートや援護以外、何もやってないよ」

 

 

 

「はっ?そんなこと・・・・・・・・・・・・っ」

 

 

 

「無理に答えようとしなくていいよ。事実だしね」

 

 

 

リムルは僕を擁護しようとしたのか、必死に言葉を探していたが、結局なにも見つからなかったようだ。その気持ちだけで僕は嬉しいけどね?

 

 

 

「リムルは凄いよね。どんな凶悪な魔物と出会っても、顔色一つ変えずに立ち向かって行けて、それで大抵はその相手に勝っちゃうんだから。それに戦うたびにどんどん強くなって行って、終いには魔王と称されている豚頭魔王(オークディザスター)まで倒しちゃうんだから、もはや凄いを通り越して呆れちゃったよ。でも、その姿はまさに人の上に立つ人のそれだった」

 

 

 

「・・・・・・(エリスも十分強いと思うけどな?ガビルの奴を助けるためにゲルミュッドを討ち取った時なんか、ほとんどの奴が何が起こったかわかってなかった程だし。・・・・・・こいつ、自覚無いのか?)」

 

 

 

「僕にはそんな風にどんな相手にも立ち向かっていけるだけの気迫は無いし、それを為せるだけの力もリムルには到底及ばない。もちろんみんなを守れるだけの力もない。だからこそ、せめてサポートだけは全力でやろうとこれまでみんなを色々サポートしてたけど・・・・・・リムルに関しては、もう僕のサポートも要らなそうだね。一人でなんでも出来るし、こなせるわけなんだから、”僕の力なんて必要ない”・・・・・・・・・・・・痛っ!?」

 

 

 

僕が言葉を紡いでる最中なのに、何故かリムルが僕の頭を殴ってきた。痛覚無効があるから痛くは無いんだけどね(痛いって言ったのは・・・・・・ノリ?)。

 

 

 

殴ってきたリムルの方を向いてみると、そこには今までに見せたこともないような怖い形相をしたリムルの姿があった。

 

 

 

「もう一度”自分が必要ない”・・・・・・なんて言ったら今度は本気で殴るぞ?」

 

 

 

「リム・・・・・・ル・・・・・・?」

 

 

 

「何が何もしてないだ。何が力がないだ。何がみんなを守れないだ。そんなわけないだろっ?お前はこれまで幾多の場面でみんなを救って来ただろうが!もちろんこの俺のこともだ!」

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

 

リムルにしては珍しい、憤りの気持ちを乗せたその言葉に僕はたじろぐしか無かった。

 

 

 

「でも僕は、一人じゃ出来ることも限られちゃうし、戦闘もそこまで強くない。唯一優れてるって思ってるのは僕のサポートの能力だけで・・・・・・」

 

 

 

「それが俺たちにとって救いになってるって言ってるんだよ!お前の応援者(コブスルモノ)を始めとしたスキル、お前の戦場での冷静な分析能力、統率力、それら全てが俺たちにとって凄い助けになってる。そして何より、俺たちに対して何かしてやりたい!自分も役に立ちたいって言うその気持ちが、俺たちのことをすっごく鼓舞してくれてるんだ!俺だけがこう思ってるんじゃないからな?ベニマルも、シオンも、ハクロウも、ランガも、ヒョウガも、ゴブタも、それ以外のみんなもみんなお前がいるから頑張れるって言ってるんだぞ?」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

「俺だってそうだ。お前のことが必要ないだなんて今までこれっぽっちも思ったことなんて無い。むしろ、今後もお前の力をもっと必要としたいくらいだ。・・・・・・一つ言っておくぞ、エリス?お前は俺を買い被りすぎだ。俺はなんでも出来る完璧なやつじゃない。ベニマル達ほど、スキルをうまく使いこなせるわけじゃ無いし、シュナみたいに家庭的なことが出来るわけでもない。それに、お前ほど町の為に色々と尽力できるかどうかも微妙だし、サポートにしたって、俺よりもお前の方が上だ。それにお前は同盟の副盟主でもあるんだぞ?今後お前の力が必要にならないわけがないだろーが。はぁ・・・・・・これでわかったか?俺には・・・・・・俺たちにはまだまだお前の力が必要だってことが・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・うん、なんとなくわかったよ」

 

 

 

コクリと、静かに頷く。わかったと言った僕だけど、正直全部わかったかといえばそうでは無かった。確かにみんなが僕のことをそう言う風に思ってくれてたことについてはすっごく嬉しかったけど、やっぱり心の何処かでは自分の力の無さに不甲斐なさを抱いているのは間違い無かったから。その証拠に今でも胸がどこか”モヤモヤ”してる。僕が今後どう言った立場でみんなを守るべきか・・・・・・リムルのように戦闘やカリスマ性でみんなを守る、縁の下の力持ち的な存在でみんなを支えつつ守る、今までのように自分が裏でみんなのサポートをしつつ守る、考えようは色々ある。・・・・・・でも。

 

 

 

「(今はやめておこう。この問題はそう簡単には解決しなさそうだし。まぁ・・・・・・でも、もしかしたら僕にもリムル同様に何かしらの転機みたいのがあって強くなれるかも知れないし、力をつけて強くなればきっと、僕もみんなを守れると胸を張って言えるようになれるだろうから、その時にまたこの事について考えてみよう。早く、僕もリムルみたいに・・・・・・いや、それ以上に強くならないと・・・・・・)」

 

 

 

「エリス?」

 

 

 

「・・・・・・ごめん、今さっき言ったことは忘れて?少し弱気になってたみたいだ。そうだよね、僕だってみんなの役に立ちたくて、ここで平和に暮らしたくてここにいる訳なんだから、今後も頑張らないといけないね!自分を卑下してる場合じゃないよ!」

 

 

 

「その意気だ!分かってくれたか?エリス」

 

 

 

「うん!ありがと、リムル。目が覚めたよ!」

 

 

 

満面の笑顔でリムルにお礼を言った僕。さっき僕も言った通り、今ここで自分のことを卑下にしたりしたところで、何も解決はしない。だからこそ、『今は前を向こう!そして、いつかはこの胸の”モヤモヤ”を消し去ってやる!』と、心の中で熱く意気込んだ時だった・・・・・・ペガサスに乗った騎士達がこの町に来たという知らせを受けたのは・・・・・・。

 

 

 




最後はちょっとリムルに惚れそうになりましたが、意味深な発言も幾つかありましたね。


これが後にどのような影響を及ぼすのか・・・・・・。

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