転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!? 作:レイ1020
「リムル、この状況をどう見る?」
「どうって言われてもだな・・・・・・俺にも理解出来ないんだよな・・・・・・」
目の前に飛び交うペガサスの集団を前に、僕とリムルは呆然と立ち尽くしていた。無理もないよね。ペガサスって言う僕たちのいた世界では空想上とされている生物が、こうして何匹も僕たちの目の前を優雅に飛んでいるんだから。しかも、どうやらそのペガサスには人が乗っているようで、用は僕たちにあるようだった。
すると、一匹のペガサスが僕たちの目の前へと降下してきた。そして、ペガサスが地面に足をつけるのと同時にペガサスから降りてきたのは、白銀の鎧を纏い、なんとも迫力のあるオーラを出した一人のドワーフの男の人だった。
「お、お久しぶりでございます。ガゼル王よ・・・・・・」
「うむ、久しいな、カイジンよ。そして・・・・・・スライムよ、俺のことを覚えているか?」
「ああ。(忘れるわけない。こいつがいなかったら、今頃俺たちはあのベスターの野郎のせいで有罪になっていただろうからな。この王の公正な裁決があったから、俺たちは事なきを得たわけなんだがな・・・・・・)」
リムルと、一緒に来ていたカイジンがどうやら知っているようだから、恐らくこの人はリムルがカイジンたちを連れてくるために前行ってきた、ドワルゴン国の王様かなにかなんだろう。カイジンが”王”って言ってたし、多分合ってると思う(ちなみに、僕たちの護衛として、鬼人のみんなや近衛兵の二人もついてきている)。
「して、王よ。今日は何やら用があってここまでおいでになったのでしょうか?」
「うむ。そこのスライムの本性を見極めてやろうと思ってな。このような大軍勢で来たのは申し訳ないと思っているが、別に戦争をしに来たわけではない。警戒する必要はないぞ?」
まぁ、王様ならこのぐらい兵を連れてこないと勝手な行動はできないよね。でも、警戒する必要はないって言っても、後ろにいる兵達はみんな僕たちのことを敵視しているようにも見えるんだけど・・・・・・気のせいかな?・・・・・・一応、最低限の警戒はしておこう。
「本性・・・・・・ね?ちなみに聞くが、どうやって俺の本性を見極めるって言うんだ?」
「そんなもの決まっておるだろう?・・・・・・これだ。これで貴様のことを見極めてくれる」
そう言ってガゼル王が取り出したのは、一筋の剣だった。それだけでこの場にいるみんなは大方の予想がついたと思う。見極め方は剣を交えての交戦。なるほど、つまり決闘しろってことね?何とも武闘派な王様だこと・・・・・・。
「そんなに警戒しなくてもいいんだけどな?」
「それを今から判断すると言っているのだ。それに、この森の盟主と法螺吹く貴様に分というものを叩き込んでおきたかったのでな」
ガゼル王の煽りとも取れるその言葉に、鬼人のみんなが一斉に殺気だったのがわかった。自分の主君を法螺吹き呼ばいされては誰でも腹が立つのはわかるけど、変な気は起こさないでほしいな。話がややこしくなりそうだから。
「今の発言は、我らが森の盟主であるリムル様に対して失礼ではありませんか?ドワーフの王よ」
「・・・・・・む?
「いえ、何やらこの町で妙な騒ぎが起こっていると察知しましたので、慌てて駆けつけてきたのです。来てみれば、ドワーフの王・・・・・・あなたはリムル様に対して随分と傲岸不遜な態度を見せていましたね?この森の盟主たるリムル様に対して、そのような態度はわたくしどもとしても見過ごすわけにはいきません。今すぐ無礼を働くのはやめてください」
緊迫とした空気の中、突如として現れたのは、トレイニーさん達
それはともかくとして、突如森の管理者である
「ほう?
「・・・・・・まだ無礼を働くと言うのであれば・・・・・・」
「やらせてあげなよ、トレイニーさん。言ったところでどうせ話なんて聞かないよ、あの人。それに、別にリムルを本気で相手にする訳じゃないんだろうし、ここはリムルに任せるべきだよ。上手くいけば、ガゼル王とも友好な関係になれるかもしれないし」
「エリスの言う通りだ。ここは任せてくれ。俺が無害で優しくて愛らしいスライムだって証明するにはこれしか無いようだからな」
「リムル様・・・・・・エリス様・・・・・・わかりました」
「愛らしいスライムって・・・・・・どこが・・・・・・」
「何か言ったか、エリス?」
「ううん?なんでも無いよ」
トレイニーさんも、リムルと僕の意見には従ってくれるようで、今回も素直に従ってくれた。そして、そのままトレイニーさんには立会人についてもらい、勝負を見届けさせることにした。リムルはスライムの姿から人型へと姿を変えると(その際、ドワーフの兵達からは盛大に驚かれた)、腰に備えていた一太刀の剣に手を添え、静かに抜いた。この剣は以前クロベエに作ってもらった剣で、強度も切れ味も一級品であるため、かなりの業物とされている。
「人の姿になれるのか?ますます興味深いな、貴様は・・・・・・」
「そりゃどうも。じゃあ、さっさと始めようぜ?」
「その心意気やよし。いつでもかかってくるがいい!」
そして、トレイニーさんの開始の合図とともに、決闘が始まった。本来の実力であれば、リムルがガゼル王に負けることなどまず無い。何せ、スキルの保有量や魔素量の違い、その他全てのことにおいて、リムルはガゼル王を上回っているからだ。だが、これは
「どうした!その程度の剣で、このガゼルを倒せると思っているのか!」
「くっ・・・・・・(こいつ・・・・・・強い!)」
やはり、剣術ではガゼル王に分があるようで、リムルは全く歯が立っていなかった。後でカイジンに聞いたんだけど、ガゼル王はどうやら剣鬼と呼ばれていた剣の達人に教えを乞うていて、それで得た剣技を持って英雄王と称されているほどの実力者だったらしい。そんな凄い人に、よくリムルは立ち向かっていけてるよ、ほんとに・・・・・・。
「っ!消えたっ!?・・・・・・いや、そんなわけない。俺の魔力感知を掻い潜って攻撃をしてくる算段だろ。だったら、相手が攻撃してくる瞬間を見極めて、タイミングよく防御をすれば・・・・・・・・・・・・っ!!(上だっ!!!)」
「・・・・・・ほう?これを受け止めるか。これは流石に予想外であったな」
ガゼル王の本気に見えた、その渾身の一撃をリムルは見事に防いで見せた。ガゼル王の動きが速すぎて、攻撃をするモーションさえ見えなかったのに、リムルは何事もなかったかのように、攻撃を防いだことに、僕はほっと息をつく。でも、もしあのリムルの剣がクロベエの作った剣ではなく、ただの剣であったなら、きっとあの一撃に剣は耐えることが出来ずに、真っ二つに折られていただろう。・・・・・・クロベエの技術には感服しかないね。
「さて、攻撃も受け止めたことだし、続きを・・・・・・」
「もういい。”貴様”が邪悪な魔物ではないことは今の攻防でよく分かった。この辺で終いとしよう」
「そ、そうか?なら良いんだけど・・・・・・」
「決着のようですね。勝者、リムル=テンペスト!」
リムルとガゼル王の決闘が、トレイニーさんのジャッジによって終幕を迎えた。やっぱりガゼル王は、元から本気でリムルのことを相手にしようとは思っていなかったようだ。あくまでリムルが自分たちにあだなす、または弊害となる魔物かを見極めるための決闘だと言うことが本来の目的。それ以上のことは王として、部下に迷惑をかけるわけにはいかないと悟ったのか、踏みとどまったみたいだ。・・・・・・結構武闘派な人かなって思ってたけど、こう言ったところはしっかりと王様で堅実的なんだなって、ちょっとガゼル王のことを見直した僕だった。
「さて、次は・・・・・・貴様だ。そこの青髪の童よ」
「・・・・・・へっ?」
リムルとの決闘が終わって、一安心したのも束の間、ガゼル王は今度は僕のことを見据えてそう言ってきた。・・・・・・次ってことは・・・・・・つまり?もしかして・・・・・・。
「貴様もかなりの傑物と見受ける魔物であるな?先程から目立たぬよう、力を抑えていたようだが俺の目は誤魔化せんぞ?スライムよ、
「ん?ああ、こいつの名はエリス=テンペスト。俺と一緒にこの町を治めてる仲間であって、俺にとって大事な親友だ」
「この方はリムル様からも言われました通り、エリス=テンペスト様にございます。先のオークとの激戦下で数々の場面でその力を遺憾無く発揮し、勝利に貢献したお方です。また、この森での”副盟主”でもあらせられますので、リムル様同様、失礼な態度はご遠慮ください」
ガゼル王の問いかけに、リムルとトレイニーさんが応じた。トレイニーさん・・・・・・僕のことをそこまで持ち上げるのはすっごく困るからやめてください。後リムル・・・・・・親友って言ってくれて、ありがと。僕もキミのことは親友だと思ってるよ。
「副盟主・・・・・・なるほどな。面白い。童よ、貴様も得物を取るがいい。この目で貴様のことを見極めてくれるわ!」
「・・・・・・」
さっき、ガゼル王は意外としっかりしていて、堅実的なんだって言ったけど・・・・・・やっぱり撤回する。やっぱこの人は根っからの武闘派だ!!
結局、この後僕は、ガゼル王とリムル同様、決闘をすることとなった。・・・・・・さて、どうしよう?
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「準備はいいか?」
「ちょっと待ってください。今、剣を出しますので」
さっき同様、トレイニーさんを立会人として立たせ、僕とガゼル王はそれぞれ数歩ほど離れて立ち合っていた。その間に僕は、いつものように”水剣”を出そうとしたんだけどその際、少し思いとどまった。
「(相手はあのガゼル王。さっきのような一撃を僕の”水剣”で受け切れるのかな?水剣で無理となると、残ってるのは前に一度だけ作ったことのある”水聖剣”だけなんだけど、あれは魔素の消費が激しいからな〜・・・・・・
《解。消費する魔素の抑制は事実上不可能です。ですが、個体名ゲルドの魔素を引き継ぎ、体内保有魔素量を大幅に増やした現在の
「(30%!?ほんとにっ!?それだったら、魔素切れの心配も無いし違うスキルにも魔素を使うことが出来る!・・・・・・はぁ〜、魔素が増えるといいことってあるもんだね・・・・・・って、生成だよね?もちろん、Yesだ!)」
僕がそう念じるとともに、僕の手元に、一筋の太刀が生成される。以前同様に、この太刀の刀身からは銀色の光が滲み出ていて、眩い神々しい雰囲気も醸し出していた。
「・・・・・・かなりの業物のようだな。だが、それも持ち主が盆暗ではただのなまくらに過ぎん!さぁ、どこからでもかかってくるがいい」
「わかりました。行きます!」
トレイニーさんの開始の合図とともに、僕は早速ガゼル王に向かって走り出した。僕もリムル同様、剣術に関してはほとんど素人に近いため、こうした攻め方しかできないんだ。だが、思っていた以上にこの”水聖剣”が軽かったため、さしてスピードも落ちることもなくガゼル王へと接近することに成功した。
「たあぁっ!!」
「スピードはあるな。だが、甘い!」
「うっ・・・・・・(軽い攻撃のはずなのにこの重さ・・・・・・やっぱりこの人は・・・・・・強い)」
接近し、攻撃をすることは出来てもただそれだけで、僕の攻撃は簡単に弾き返されてしまう。やっぱり単調な攻撃ではこの人に攻撃を与えることは不可能だ。
「今度はこちらから行くぞ!これを受け切ってみせよ!!」
「うわっ!・・・・・・ぐっ・・・・・・くっ・・・・・・」
ガゼル王が振り下ろしてきた剣を僕は真っ向から受けに行った。そして、そのまま鍔迫り合いに持ち込んだんだけど、明らかに力ではガゼル王に分があるため、僕は徐々に押され始めていった。だが、”水聖剣”はこれほど剣を押し込められても刀身はびくともしておらず、依然として銀色の光は漏れ出ていた。
「どうした?貴様の力はその程度か?この程度の力では、副盟主として、この森の者どもを
「っ!!」
鍔迫り合いの中、ガゼル王が言い放ったその一言に、僕は目をかっと見開いた。
「っ!?・・・・・・力が、増しただと?」
「そうですね・・・・・・。確かにあなたの言う通り、今の僕ではこの森のみんなを守ることなんて出来ません。自分一人で打開できる力もないのに、こうやってみんなは僕のことを副盟主として慕ってくれてる。でも、それが僕にとってはかなり苦痛なんです。すっごく苦しいんですよ。だから、副盟主を降りたいと思ったことなんて何度もありましたよ」
「ほう?では何故、今もこうして副盟主を名乗っているのだ?」
ガゼル王のその問いかけに、僕は剣を押し込みながら答えた。押し込むと同時に、光が一気に強くなったような気がしたが、今は決闘に集中しているため、気にならなかった。
「そんなの決まってます。それは、自分なりにケジメをつけたからです。もう迷うことはやめにしたんです。僕は弱い、副盟主には相応しくない人なのかもしれない。だけどそうだからって、みんなを守れない訳じゃないってリムルに教えてもらいましたから(まぁ、全部の問題を解決した訳じゃないんだけどね?)。だからこそ、僕はこの森の副盟主として、みんなを導き、支え、そして・・・・・・自分なりにみんなを守る、と言うケジメをつけたんです。これはもう、一生曲げるつもりはありません!」
「ぐっ・・・・・・なるほどな・・・・・・それが貴様の皆を守りたいと言う信念か。・・・・・・貴様もまた、スライム同様、侮れぬ魔物であるようだな」
僕に徐々に押され始めたガゼル王は、どこかふっと笑みを浮かべると、剣に込めていた力を緩めた。
「貴様のその信念、そして今の剣の重み・・・・・・それをもって、俺は貴様をスライム同様、邪悪なる魔物でないと言うことを認めよう。ふっ・・・・・・感謝するぞエリスよ。なかなかに楽しめたわ・・・・・・」
「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。あの時、あなたの言葉が無ければ、僕はあのまま何も出来ずに終わっていたでしょうから。それに、改めて今の自分としっかりと向き合えたような気もしてますので、どこか胸もスッとしてます」
「そうか」
「決まりですね。勝者、エリス=テンペスト!!」
僕とガゼル王の決闘は、壮絶な鍔迫り合いの末、僕の勝ちで幕引きとなった・・・・・・。
エリスの自己嫌悪と過小評価が酷すぎる印象ですが、これがエリスの性格であるので責めないであげてください。でも、今後の話の展開次第では、この性格も少しは変わる余地はあると思うので、それも楽しみにご覧になってください!
それと、今回の話では、ガゼル王が強過ぎて、”水聖剣”の凄さがいまいち伝わっていなかったと思いますが、それについても今後の話で盛り返していこうと思っているので、そちらについてもお待ちください!