転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!? 作:レイ1020
今年もよろしくお願いします!
視点 エリス
「ありがとうございます、ミザリーさん」
リムル達と別れ、
「いえ。ですが、本当にこの場でよろしかったのですか?
「いや、大丈夫です。ここに来たのはちょっとした目的があったので・・・・・・」
「そうですか、失礼いたしました。・・・・・・ギィ様より伝言を預かっております。『今度、オレの宮殿で茶を共にしよう』・・・・・・との事です。どうかご検討を」
「あ、あはは・・・・・・考えておきますね?」
「よろしくお願いします。では、失礼致します」
ミザリーさんはそれだけ言い残して、帰っていった。・・・・・・あのギィさんからの招待って・・・・・・断りたいけど、断ったら断ったらで後が怖そうだからなぁ・・・・・・。うん、一旦保留にしておこう。今は、やる事をやっておかないと・・・・・・。
「さて・・・・・・(リーテさん、”保護して僕の体内に取り込んだクレイマンの魂を僕の分身体に組み込んでくれ”)」
《了。分身体の作成と、魂の融合を実行します・・・・・・》
僕の言った通りに、リーテさんは強化分身で僕の分身体を作り上げると、その分身体に僕の体内から取り出した”あの時”保護をしたクレイマンの魂を融合させた。
あの時と言うのは、リムルがクレイマンを消し去ろうとした寸前の時のことだ。リムルがクレイマンを喰らう刹那、僕は『
体と魂の融合が済むと、僕の分身体はクレイマンの意思のもとに、容姿を変え出した。・・・・・・普通であれば、元のクレイマンの容姿に戻る所なのだろうが、今回は違ったようだ。彼の容姿をざっくり説明すると、薄茶色の髪、茶色の双眼、痩せ型のすらっとしたフォルム。・・・・・・こんな感じだろう。見かけは最早クレイマンとは思えなくなっていて、従来の釣り上がったきつい目は、僕の分身体なこともあってか、垂れ目となって、物腰が柔らかそうな雰囲気へと変貌を遂げていた。背は、前よりも少し縮んだ様にも思えた。僕よりは背が高いけど・・・・・・。
「・・・・・・?あ、わ、私は・・・・・・?」
「気づきましたか?」
融合が終わり、意識を取り戻したクレイマンは、自分の身に何が起こったのか、理解が追いついていない様子だった。
「っ!貴様は・・・・・・あの時、スライムの隣にいた・・・・・・」
「自己紹介がまだでしたね。初めまして、僕はエリス=テンペスト。今回、僕はあなたの事を助けました」
「・・・・・・何っ?どう言う事ですか?」
説明を求めてきた為、僕はあの時のことを全てクレイマンに打ち明けた。そして、僕の手によって助かった事実を知った時、クレイマンはかなり驚いた様子で僕を凝視してきた。
「エリス・・・・・・と言いましたね?自分が何をやったかわかっているのですか?貴様は・・・・・・敵であるこの私を助けたのですよ?あなたの国である
「・・・・・・人間達に襲撃させた事を認めるんですね?先の場ではでっち上げの嘘をついていたとリムルが言っていましたが・・・・・・」
「何を今更なことを・・・・・・。今何を言ったところで、私の言葉などもう誰にも響かない事は知っていますし」
「まぁ・・・・・・それは事実でしょうね」
クレイマンのその言葉に、小さく同調する僕。クレイマンの領土であるジスターヴは既にシュナたちが落としたって聞いたし、クレイマン軍との戦争もこちらの大勝で幕を閉じたと先程ベニマルから連絡が入ったし・・・・・・当のクレイマンもリムルにコテンパンにやられちゃった訳だし、もうクレイマンの魔王としての脅威は皆無に等しいだろうからね。
「質問の答えがまだですよ?何故、敵である私を?」
「理由は・・・・・・そうですね。あなたが今回やったことに対してしっかりと反省をしていて・・・・・・あなたの仲間の人たちを想う気持ちに小さく心を揺さぶられたから・・・・・・ですかね?」
「何故、そう言い切れるのですか?人や魔物、魔人は反省をしたとしても、再び同じ事を遂行する事だってあるのですよ?私だって、またあなたの国を滅ぼしに向かうかも知れないのですよ?・・・・・・それを危惧したからこそ、あのスライム・・・・・・リムル=テンペストは私を殺そうと考えたのだと思っていますがね?」
「じゃあ、聞きますが、今のあなたにその勇気はありますか?いずれ、
「・・・・・・」
僕のその質問に、苦い顔を浮かべるクレイマン。僕はそれを気にすることもなく続ける。
「魔王に覚醒したあなたでさえ、リムルには到底敵わなかった。そんな魔王が統べているその国を、あなたは襲撃する気なんですか?・・・・・・言ってしまうと、多分すぐに消されて終わりだと思いますよ?」
「くっ・・・・・・容赦無くズバズバと・・・・・・正直言えば、その気は無いです」
「でしょう?それも見越して、僕はあなたを助けると決めたんです。もし、この場でまだ僕たちに敵対するって言う心があれば、この場で僕が消してたところですが、その気はないようで良かったです」
「っ・・・・・・良いのですか?貴様は、あのスライムの手下なのでしょう?奴が殺すと決めた私をこのように生かしてしまっては、貴様は主君を裏切ることを意味しているのですよ?」
笑顔を浮かべながら話す僕に、何故か肩がビクッと震えた様にも見えたクレイマンだったが、それも無視しておいた。それにしても、僕がリムルの手下って・・・・・・彼はただの友達なんだけどな。
「バレなければ問題ないですよ。それに、リムルの考えは間違ってる・・・・・・。いくら悪さをした人とは言え、自分にとって絶対に許せない人がいたとは言え、何でもかんでも殺して罪を償わせようとするのはおかしい。どんな悪人にだって、守るべき物・・・・・・譲れない物・・・・・・何より、その人にとって大切な人達がその人の帰りを待っているんだ。・・・・・・とはいえ、僕は一度、たくさんの人を殺めたんですけどね?」
「・・・・・・」
クレイマンは何も答えなかった。・・・・・・僕も、あの時の光景を思い出してしまい、言葉に詰まってしまっていた。僕が人間を殺してしまった事は今いっときも忘れたことなんて無い。きっと、僕が殺めてしまったあの兵達にも、きっと帰りを待つ家族の姿もあったはずだ。それを僕がこの手で・・・・・・壊してしまったんだ。だからこそ、僕はこの罪をしっかりと償っていこうと思っている。あの人達の親族から罵詈雑言を浴びせられようが、仇である僕を殺しにかかって来ようとも、僕は甘んじて受けようと思っている。・・・・・・それで、少しでもその人達の気が晴れるのであれば、本望だからね。
「さて、これからのあなたについてですけど・・・・・・」
「・・・・・・?」
「魔王クレイマンは”死んでもらいます”」
「・・・・・・はっ!?何故ですっ!貴様は、私を助けてくれた筈ではっ!?」
激しく動揺した様子のクレイマンは、縋るように僕に寄ってくる。・・・・・・話を最後まで聞いて欲しいんだけど?
「違いますよ。正確に言えば、あなたの今の名である”クレイマン”を捨てて、実質クレイマンは死んだと思わせるよう仕向けるんです。こうしておけば、あなたが今後、誰かに狙われると言うことも無くなりますので」
「・・・・・・そ、そうですか。で、ですが・・・・・・名を持たずとも、私を解析されて仕舞えば、名などすぐにバレるのでは?」
「大丈夫です。僕があなたに新たなる名を与え、”名付けの上書き”をしますので」
「っ!!?」
クレイマンという名を消し、新たなる名をこのクレイマンに与える。こうする事で実質上、クレイマンは死んだ事になる筈だから、彼を逃すのであればこれが一番手っ取り早かった。それにしても、さっきからコロコロと表情を変えながら驚く彼が何処か間抜けそうに見えるんだけど気のせい・・・・・・ではないか。
「こ、この名は、カザリーム様より授かった大切な・・・・・・」
「そのカザリーム(?)さんが誰かは知らないですけど、今死ぬよりマシなのでは?この名を捨てない限り、あなたは再び命を狙われますよ?リムルやミリム、その他の魔王達からも恐らくは・・・・・・」
「くっ・・・・・・私が、あの時にでしゃばって余計な行動に出たせいで・・・・・・あの時の自分を恥じたい・・・・・・というか、そもそも何故、あの時私はあんな行動に?」
「・・・・・・よかった。どうやら本来の冷静さを取り戻せていたようですね」
「?・・・・・・どういう事ですか?」
「あなたの魂を保護した際、あなたの精神が”何者かに支配されている”のが確認出来ましたので、保護の際にそれも解除しておいたんです。僕の憶測ですけど、多分あなたが暴走したのはその人が原因なのでは?」
「なっ!?私が操られてっ!?そんな筈は・・・・・・いや、もしや・・・・・・?」
クレイマンは何か思い当たる節があるのか、しばし何かを考え込むように俯いた。クレイマンに何かしらの方法で精神支配がかけられていたのは本当の事で、一度『
「とりあえず、それは追々考えるとして、一旦名付けをしちゃいましょう。早くしないと、勘づかれる可能性がありますので。良いですね?」
「・・・・・・やむを得ません。ここで死ぬよりはマシですから」
「ありがとうございます。じゃあ・・・・・・そうだな・・・・・・」
やっと折れてくれたクレイマンに対し、どんな何しようか悩む僕。変な名にしちゃうとクレイマンにも、名付けをしてくれたカザリームさんにも申し訳ないから、慎重に決めないとね。
「・・・・・・よし。あなたには『ロキ』の名を与えます」
「・・・・・・『ロキ』・・・・・・ですか?」
「はい。一応、僕なりに考えて決めた名なので、気に入ってもらえると嬉しいですが・・・・・・」
古代の神である、悪戯好きの神『ロキ』の名を貰ったんだけど、ニュアンス的にカッコよかったから彼にもぴったりと思うんだよね?
「・・・・・・名を貰えるのであれば何でも構いません。この名はしかと頂戴します」
「むぅ・・・・・・名の感想を聞かせて欲しかったんだけどな・・・・・・」
名の感想が聞けずにむっと頬を膨らましている僕を尻目に、クレイマンは・・・・・・いや、ロキは名付けを受け入れた。・・・・・・すると、やはりと言うかわかっていた事だけど、ロキの体に変化が起こり始めた・・・・・・。
「やっぱり進化するんだね・・・・・・」
《告。個体名ロキは、『
腐っても覚醒魔王だから、名付けをしても進化しないかなって思ってたけど、そんな事は無かったようだ。僕としてはどちらでも良かったけど・・・・・・と、そんな事を考えている内に進化が終わったようだ。見たところ、見かけはそこまで変わっている様には見えなかったが、感じ取れる魔素は進化前とは比較にならない程に跳ね上がっていた。・・・・・・あれ?これ、かなりの化け物になっちゃった気が・・・・・・。
「なるほど・・・・・・力が漲るようです・・・・・・」
「あの、先に言っておきますけど、その力を使って僕に襲い掛かるとかしないで下さいよ?」
「助けてくれた恩人にする訳ないでしょう?私は、そんな礼儀知らずではありません」
「なら良いですけど・・・・・・」
ロキのその言葉に、内心でホッとする僕。せっかく名付けをしたのに、その相手といきなり戦いたくなんて無かったし・・・・・・。
「さて・・・・・・。これで晴れてあなたは解放されました。後は好きにしてください。あなたの言うカザリームさんのところに帰るのも良し、このままどこかへ姿を晦ますのもよし。あなたの思うがままに行動してください」
「・・・・・・はい」
「それと、これはお願い・・・・・・というか命令です。あなたがこの先どこで何をしようと自由ですが、僕達と敵対する事だけはやめて下さい。もしも、今度僕たちと敵対することがあれば、今度こそはあなたを本当に滅ぼしますのでそのつもりでいて下さい」
「わかっていますよ。先ほども言ったでしょう?私はそこまで礼儀知らずではないと」
「そうですか、良かったです。・・・・・・じゃあ、そろそろ行ってください。あなたにも会いたい人達がいるでしょう?」
「はい。・・・・・・ですが、最後に一つ・・・・・・言わせてください」
ロキは畏まったようにそう言うと、僕に対し静かに頭を下げた。
「私を助けてくださり、ありがとうございました。この御恩は、いつか必ず・・・・・・」
「はは、ありがとうございます。期待して待っておきますね?」
「ふっ・・・・・・ええ、では・・・・・・」
笑みを浮かべつつ、ロキは『空間転移』でその場を後にして行った。おそらく、カザリームさんの元へと向かったんだろうけど、多分最初は行ったところで自分がクレイマンだとわかってくれないと思うが・・・・・・まぁ、そこは彼に自分で何とかしてもらおう。
「・・・・・・ようやく、一息つけそうかな?はぁ〜・・・・・・疲れたよ、本当に・・・・・・」
ロキがいなくなり、一人になった僕はすっと肩の力を抜き、一つ深呼吸をする。
だから、今は・・・・・・
「帰ろう。僕の国へ・・・・・・」
大切な
次の脅威なる存在が現れる・・・・・・その時まで・・・・・・。
と言うわけで、エリスの手によりクレイマンは死に、ロキと言う新たなるオリキャラが誕生しました。性格こそ従来のクレイマンと似ていますが、見た目も魔素もスキルも何から何まで違っていますので、もう別人と思ってもらって構いません。クレイマンがロキになったと言う事実は、本人とエリスしか知らず、他は全員クレイマンは死んだと思っていますので、実質クレイマンは死んだと思ってください。
強さですが、あまり言ってしまうとネタバレになってしまうので、全ては言えませんが、少なくとも・・・・・・リムルよりは強くないと思って下さい。
話にもある通り、クレイマンが最初から冷静で落ち着いた様子でいたのは、エリスが既にクレイマンに掛けられた精神支配を解除していたからです。解除をした事によって、彼は自分が行った行動を悔やむようになり、エリスの同情を誘いました。とはいえ、近藤の精神支配をも解除してしまうエリスの手腕はやばい・・・・・・と思ってしまいます。
今後のロキの活躍にも期待していて下さい!
※活動報告にも書きましたが、この回をもちまして一旦投稿を休止させて貰うことと致しました。詳しい事は活動報告をご覧ください。この小説を見ていただいている皆さまにはご迷惑をお掛けしますが、必ず戻ってきますのでどうかお待ちください。
では、次回でお会いしましょう!
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