転生して水になったので存分に楽し・・・・・・水っ!?   作:レイ1020

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ストーリーに触れるのは少しになるかもです。


募る違和感

「よう、エリス。回復薬(ポーション)の進捗の方はどうだった?」

 

 

 

研究所内から出てみると、そこにはなぜか知らないがリムルがいた。先ほどのディアブロとの話し合いは終わったのか、どこか疲れた調子でそこに立っていたが、なぜにこの場にいるのかは理解できなかった。

 

 

 

「うん、順調そのものらしいよ。リムルはどうしてここに?」

 

 

 

「いや、セキガとカレンにここにお前がいるって聞いてな?魔王達の宴(ワルプルギス)が終わってから会ってなかったなって思って、こうして来てみた訳だ」

 

 

 

「執務館の中にいた事は分かってたし、この後向かう予定だったんだけどな?」

 

 

 

「良いんだよ。ちょうどディアブロとの話も終わって、気分転換したかったところだし」

 

 

 

「そう?それなら良いんだけど・・・・・・」

 

 

 

いつもの調子で明るく優しく接してくるリムルに対し、どこかほっとした僕は、リムルと共に町へと引き返していった。正直、リムルとまともに会話できるか不安だったけど、意外にもすんなり溶け込めた事もあって、それは杞憂に終わった。

 

 

 

「なぁ、お前の用事ってのはもう済んだのか?」

 

 

 

「え?・・・・・・あぁ、うん。もう終わったよ。終わってからここに戻って来たんだし」

 

 

 

「ふ〜ん?その用事って何なんだ?ちょっと気になるな・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・ごめん、それは言えないかも。大丈夫、変なことしてる訳じゃないし、リムルが心配する様なことじゃないよ」

 

 

 

「そうか?・・・・・・お前がそう言うならこれ以上は詮索しないでおくが、もし何かあればいつでも俺を頼れよ?」

 

 

 

「・・・・・・うん、ありがと」

 

 

 

リムルのその申し出には、僕も苦い顔を浮かべるしか無かった。『リムルが殺そうとしたロキを助けてきた』なんて死んでも言える訳ないし、言ったら最後・・・・・・またリムルがロキを始末しに向かう事は間違いないだろうからね・・・・・・。

 

 

 

「ねぇ、リムル?ディアブロの報告内容を聞かせてくれないかな?ファルムス王国との交渉とか、今後の彼の国の処遇がどうなるのかが知りたいんだ」

 

 

 

「ああ。ディアブロの話だと・・・・・・」

 

 

 

リムルの口から語られるは、ディアブロからの情報だ。ディアブロはヨウムさん達と共に捕虜であるファルムス王国の国王であるエドマリス、そしてラーゼンとレイヒムを抱えながらファルムス王国へと向かった。向かう道中の馬車内にて、3人はディアブロのユニークスキルである『誘惑者(オトスモノ)』の餌食となり、ディアブロの傀儡へと堕ちる羽目となったらしい。ファルムス王国に着いた彼らは直ぐに目的である『魔国連邦(テンペスト)とファルムス王国の和睦協議の執り行いと講和条約の締結』をファルムス王国重鎮らに持ちかけた。渋った重鎮らも数多くいた様だが、リムルの恐ろしさ、そしてリムルの抱く真なる目的である『人間との共栄共存』をディアブロやヨウムさん、傀儡となったラーゼンらの発言により、最後には協議を行うことを承諾した。

 

とどめとなったのが、やはりラーゼンの口から出た戦場での惨劇(つくりばなし)だった。ラーゼンの口からは・・・・・・

 

 

魔国連邦(テンペスト)に攻め寄せた3万人の兵達は、暴風竜(ヴェルドラ)の復活により、行方不明となっていて生死もまた不明。だが、生き残った我らをその暴風竜(ヴェルドラ)から力の限りを尽くして守ってくださったのが、紛れもない魔国連邦(テンペスト)国主であるリムル=テンペストだったのです!』

 

 

・・・・・・こんな感じで、事実とは全く違う嘘を重鎮達の前ででっち上げたらしい。勿論、3万人の兵達は僕とリムルの手によって殲滅されている。・・・・・・だが、それではただの人間の敵の邪悪なる魔物という印象しか湧かない。それを危惧したリムルはこの様な嘘をつく様、ディアブロに伝えていたのだとか。

 

 

 

「(国のためとは言え・・・・・・やっぱり僕は納得出来ないな。人間が3万人も死んで、それに悲しむ人だって多く居るはず。それをこんな嘘でうやむやにして良いはずなんて無いし・・・・・・。でも、リムルに否は無い。彼は、死んでしまった僕を生き返らせる為に、止むを得ず・・・・・・その手を汚す事を選んだのだから。・・・・・・今回の一件、責任は僕にあるな・・・・・・。あの時、僕がもっと良い対処を・・・・・・自分が命を落とす事なく、尚且つ自分自身の手で人間を殺さなくても良い選択を取れていたのであれば・・・・・・リムルに人間を殺させる事も無かったし、結果も違っていたかも知れないのだから・・・・・・)」

 

 

 

自分の中で、自分の不甲斐なさと力不足に心を痛める中、リムルの説明は続く。

 

 

 

ラーゼンの口添えもあってか、協議は1週間後に行われる事になり、捕虜として捕らえていたエドマリス王やレイヒムは解放し、ディアブロ達は最後に条約締結の際に要求する条件を言い残した後で、そのまま戻って来たらしい(レイヒムはともかくとして、エドマリス王に至っては、シオンのせいで”首から下が無い状態”の肉塊状態で引き渡された事もあってか、彼の部下の兵達はドン引きしていたのだとか。勿論、ちゃんと返す際に完全回復薬(フルポーション)で元通りにした様だけど、しばらくはトラウマになる事だろう・・・・・・)。

 

 

こちら側が要求した条件は3つ。

 

 

1つ目は王が退位し戦争賠償を行う。

 

 

2つ目は魔国連邦(テンペスト)の軍門に降り、属国となる。

 

 

3つ目は戦争を継続する。

 

 

 

3万と言う大幅な戦力を失ったファルムス王国にとって、3つ目を選ぶことは即ち、彼の国の滅亡を意味する。そんな愚鈍なる選択を彼の国がする筈ないと考えている僕とリムルは、それを選択肢から廃していた。・・・・・・と言うか、僕達的には最初の1つ目の選択肢を選んでほしいと思っている。王が退位しない限り、ヨウムさんを新王とする新たなる国を立ち上げることが極めて困難になってしまうからだ。ディアブロの方でも、その様に誘導する様指示をリムルから受け、実際誘導したらしいのだが、それで彼らが素直にこちらの言い分を聞いてくれるとは限らないのだ。

 

 

・・・・・・まぁ、それに至ってはヨウムさんやディアブロに一任しているみたいだから何とかはしてくれるとは思っているけど・・・・・・。

 

 

 

「その条件が随分とえげつない内容な気がするけど?」

 

 

 

「あいつが決めた条件だからな。・・・・・・そりゃ無理もない気もするが・・・・・・俺は別にそこまでやばい条件だとは思ってないし、むしろ妥当だと思ってるぞ?」

 

 

 

「・・・・・・そうなの?」

 

 

 

てっきり、リムルの方でも『やりすぎ!』みたいなふうに思っていると思っていたのに、それとは裏腹にディアブロの出したその条件に対して納得しているリムルに、僕は訝しげな表情を浮かべた。

 

 

 

「あいつらは、お前を死に追い詰めた奴らだ。・・・・・・人間と友好的に接し、人間との共栄共存を刹那に願っていたお前をな?そんな重罪を犯してくれた訳なんだし、それ相応の報いを受けてもらわなきゃいけねーんだよ」

 

 

 

「リムル・・・・・・?」

 

 

 

先程の落ち着いた様子とは打って変わり、少し顔を硬らせながら怒気の滲む声で話し始めたリムル。その表情は、あの時・・・・・・僕が恐怖したリムルの顔そのものであり、僕はビクッ・・・・・・と肩を震わせた。

 

 

・・・・・・何だろう?リムルとはこの異世界に来てから長いことずっと行動を共にしていた筈なのに、なんでこんなにも彼に恐怖を覚える様になってるんだ?特にそれが顕著になったのは、彼が魔王に覚醒してからだ。魔王になった彼は、一目で見れば覚醒前と何ら変わらない唯の強くて頼もしくて・・・・・・優しい心を持ったリムル=テンペストだ。

 

 

・・・・・・だが、僕にはそれがどうにも間違っている様に思えた。確かに、リムルは魔王に覚醒して、以前よりもさらに強くなり、頼もしさも増し、存在も威厳も大きくなったかの様に見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・でも、その代わりに・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前のような、人間(三上悟)の心を持つリムル特有の、()()()()()()()()()()と言うのが・・・・・・覚醒前と比べて、欠落している風に僕には見えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

勿論、今のリムルも十分に優しいことに変わりは無いのだが・・・・・・もし、今の彼が以前のような優しい彼の心を持っていたとすれば、先程の条件に疑問をぶつけるのでは無いだろうか?いくら、魔国連邦(テンペスト)に無断で攻め寄せてきて、許せないような行為に出たファルムス王国とは言え、相手がいずれ共存を望んでいる人間であることは間違いない。それに、元人間だった僕達だ・・・・・・今は魔物とはいえ、多少なりとも同情や親近感も湧くはずだ。

 

 

だと言うのに、リムルにはそれが一切感じられなかった。まるで、身体だけでなく・・・・・・()()()()()()()()()()()()()かの様に・・・・・・。

 

 

 

もしかすれば、それが原因で僕が彼に対して恐怖を覚えてしまっているのかも・・・・・・いや、それもあるが、多分僕が恐れているのはそれだけでは無いのだろう。

 

 

 

 

「(・・・・・・僕は怖いし、悲しいのかも知れない。いずれ、リムルが・・・・・・今までの”僕達の知る優しいリムル”では無くなってしまう可能性がある事に・・・・・・)」

 

 

 

 

 

とは言え、確証はまだ無い。そう・・・・・・あくまでもこれは僕の推測であり、ひょっとすれば気のせいかも知れない可能性も否定は出来ないのだ。

 

 

 

 

「(自分の配下が一生懸命考えた条件を、自分なりに汲んでそう言う反応をしたのかも知れないし、彼が目指す未来も変わっている様子は無い。リムルが考えてる事は全部は分からないけど、少なくとも彼が人間を殺す事は今後無い・・・・・・と思うから、気にする事はないか。・・・・・・ふっ、ちょっと考え過ぎだったかな?)」

 

 

 

「エリス?考え込んでるが、気になることでもあったか?」

 

 

 

「いや、何でもないよ。・・・・・・ねぇ、リムル?」

 

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

 

リムルに対して、変な考えが浮かんでしまった僕はそれを頭の中から払拭すると、その場で歩を止める。リムルもそれに倣い、ゆっくりと足を止め僕に視線を向けてきた。

 

 

 

「キミは、今もこれからも・・・・・・ずっと変わらないよね?ずっと・・・・・・強くて頼もしくて・・・・・・優しいリムル=テンペストで居てくれるよね?」

 

 

 

「いきなりどうした?・・・・・・当たり前だろ?こんなんでも魔国連邦(テンペスト)の国主であり、ジュラ・テンペストの盟主なんだからな。これからもみんなの為に俺は俺として頑張っていくつもりさ」

 

 

 

「ふっ・・・・・・。それでこそキミさ。・・・・・・僕も精一杯キミのことはフォローして行くから、これからもよろしく頼むね?」

 

 

 

「ああ、よろしく頼むぜ?我が副国主さん?」

 

 

 

互いに笑い合いながらそう語り合った僕達は、再び歩を進めることを再開し、町へと戻って行くのだった。

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

 

 

視点 リムル

 

 

 

・・・・・・最近、どうにもエリスの様子がおかしい。いや、側から見れば特段おかしい様な様子はないあいつなんだが・・・・・・。

 

 

 

「(何か、妙に距離を取られている様な気がするんだよなぁ・・・・・・)」

 

 

 

主におかしいのは、俺に対しての時だ。この前、俺がエリスを迎えに研究所に向かったのだって、魔王達の宴(ワルプルギス)から帰還した俺を歯牙にもかけず、一人単独で研究所に向かったのに違和感を覚えていたのもあったからなのだ。いや、別にあいつが出迎える必要なんて無いんだが、今までのあいつであるなら俺が帰還すると誰よりも早く俺のことを出迎えていた為、それがいきなり無くなるとどうにも違和感を覚えてしまうのだ。

 

 

勿論、おかしいと思ったのはそれだけではない。エリスは・・・・・・今の俺に対し、勘だがどこか”ビビっている印象”がある。そこで、あいつの真意が知りたいと智慧之王(ラファエル)に解析を頼んではみたが、やはりエリスの持つ究極能力(アルティメットスキル)にブロックされてしまってる様で、結局のところ、あいつの心のうちを知る事は叶わなかった。

 

 

俺があいつから恐れられる理由は・・・・・・正直言ってあまり思い浮かばないが、強いて言うのであれば俺があいつの言うことを無視してクレイマンを処刑した時の事を根に持っているのかも知れないと考えている。確かにあの時は、自分を死に追い詰めた張本人であるクレイマンを擁護し始めたエリスに対して、少し憤りも見せた。・・・・・・もしかすれば、その時の俺の憤怒の滲んだ顔・・・・・・その後に使った『暴食之王(ベルゼビュート)』の凶悪性にエリスは恐れを抱いてしまっているのかも知れないのだ。

 

 

 

「(別に、恐れられようが、俺は構わないがな・・・・・・。あいつの為を思ってやった訳なんだし、それぐらいは目を瞑るさ)」

 

 

 

これは俺が思う事だが、エリスのその”異常なる優しさ”は長所でもあれば短所でもある。確かに、あいつは誰隔たりもなくその包容力と優しさでみんなの心を掴んできた。それは別に悪いことではない。だが、それはあくまでも味方だけに限った事であって、敵に対してまでその優しさを見せる必要は無いと俺はみているんだ。クレイマンの時もそうであり、あいつはどうしようも無い悪党であるクレイマンを生かすよう俺に進言までしてきた。敵であるクレイマンに対してもその優しさを見せる様には流石に戸惑いを見せたものの、それは容認できないと俺は問答無用で奴を葬った。

 

 

 

 

『”敵に対して一切の容赦はしない”・・・・・・例えそれが魔物であろうと、魔人であろうと、()()であろうと、平穏を脅かすのであればどんな奴でも許してはおかない。そうでなければ、誰も守ることなど出来はしないんだからな』

 

 

 

 

優しさと言うのは確かに大事だが、使い所を間違えば逆に己の首を絞めかねない事態にも陥る。それを少しでもエリスには分かってもらいたいのだが、簡単に納得してくれそうにも無いことは、これまでの付き合いからもう分かっている為、地道に分からせて行くつもりでいる。

 

 

 

「さて、悩むのもここまでにして、今日もバリバリ働きますかっ!」

 

 

 

散々に悩み抜き、少し頭の中がスッとした俺は、気分良さげに今日の仕事をこなすべく、作業に没頭し始めた。ファルムス王国との重要な協議もまた控えてることだし、色々と準備等で忙しいが俺も頑張らないとなっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この時の俺は認識を誤っていた。本当にエリスが恐れていたのは、俺個人ではなく・・・・・・俺が今抱いている、この自分自身の考え方そのものだったと言うこと。

 

 

 

 

 

そして、エリスはただ俺に恐れを抱いていたのでは無く・・・・・・それと同時に無意識に変わりつつある俺の方針、考え方について、()()()()()()なんて・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時にエリスの真意を察することが出来たのだとすれば、もしかしたら・・・・・・。

 

 

 




互いに自分自身の考えがあることがよくわかります。互いが互いの事を心配するからこそ、方向性が合わなくなってしまうこともあるのでしょうが、やはり彼らは親友。仲間思いがあって微笑ましいです。


ただ、エリスはやはりリムルの考え方には賛同できない様子でいます。勿論、エリスもファルムス王国に対してはそれなりの憤りを見せてはいますが、だからと言って人間達に対する情が抜けた訳ではありませんので、リムルのような『敵が人間であろうと容赦はしない!』と言った考えは受け入れることは出来ないのでしょう。


まぁ、リムルも国やエリスの為を思ってその様な考えに至ってる訳なので、何とも言えませんが仮にも元人間であったリムルが、何の躊躇もなく人間を”敵であるなら排除する”と割り切れるのはある意味すごいですね。


今の段階ではどちらが正しいのかはわかりません。ですが、それも直にわかることなのかも知れません・・・・・・。
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