神様お願いです。他には何も要りません。ターボの何でもあげます。ターボ走るの好きだけど、欲しいなら足もあげます。だから今はターボを走らせてください。
そして風を切る肌の感覚と実況の音が聞こえなくなり、ツインターボにはただゴールに向けて走るだけの足と心臓と目だけが残った。
「ツインターボ逃げるツインターボ逃げる!ツインターボまさかの大逃げだぁ!ツインターボ ゴール!その を示し、 の舞台を ました!」
受け身も取れず、その場にどうと倒れこんだ。心臓が痛い。肺も、脚も、どこもかしこも痛い。
すぐに立ち上がろうとした。
何着か知るためだ。勝ったのか。
トウカイテイオーが見ているから、立ってターボの姿を見せてやらなきゃ。走るための力を全て失い、次は想いが体を動かした。
未だ耳は聞こえない。血が余分なところには通っていないのだ。
何着だ。逃げ切れたのか、逃げ切れたなら勝ったのか。
先ずは手を突いて、それから力を込め、次は膝、足、そして体を起こす。無理に立ち上がったせいか視界はブラックアウトして、気づいたらまた芝の上に両手を突いていた。また立ち上がる。ふらふらぐらぐら。
その姿はとてもレースを制した勝者に相応しくない無様なものだったが、一声の嗤い声も無かった。
やっと掲示板を見る。1番上に番号があった。勝った。風、空には青空、雲一つない。
ふと気づけば近くで誰かが笑っているらしかった。本当に楽しそうに笑っている声。ターボ自身の声だった。
ツインターボは、そのまま笑っていたが、やがて、子供が無邪気に寝転ぶように後ろに倒れこんだ。それが余りにもいきなりだったのと豪快だったので、誰も意識が無いことに気づかなかった。
意識を失ってもツインターボの中には炎が燃えていた。
だが、その炎はターボを離れた。離れると、少し遠くにあった燃え殻に近づき、自分が消えるまで温めるように寄り添った。
夢が叶った。1番新しくて、大切な夢が。
トウカイテイオーは、暗い夜が明けていくのが分かった。分かってしまったらもう止まらなかった。
帝王の目は涙で滲んだ。
バラバラになり、燃え殻だった筈の魂からは噴出するが如く炎が燃え上がっていた。
炎は魂を溶かして再び一つにした。
熱い涙が流れ、心を縛る鎖を全て落としていった。
そして最後の鎖がくべられた時、消えない炎が蘇った。
いったいこの場に居合わせて分からない者がいようか。
ターボの勝利はトウカイテイオーの奇跡。
勝てぬ筈の者が勝ったあの瞬間こそトウカイテイオー復活のしるべ。
誰もが望んだ復活の呼び水。
多くの者が望み、静寂にて見守る中、ついに払暁は訪れた。トウカイテイオー、三度目の誕生である。
気が向いたら加筆