俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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広がる戦場

 

「ジハハハ!!

腐っても元大将、粘りやがる…!」

 

「くそ~!

あの氷邪魔で前に進めねェ!

やっぱり強ェな、アイツ。」

 

「師団ってなんだよ!?

知らねェぞ、おれァそんな幹部の地位は!!!」

 

シキ、ルフィ、キッドの三人はそれぞれ声を上げている。

そんな光景を前に、クザンは駄目になってしまったジャケットを脱ぎ捨てた。

 

 

「フゥー…これ全員相手にするのは無理ってモンじゃない?」

 

読めない表情でそう溢したクザンをキッドが睨み付ける。

 

 

「ナメた態度取りやがって!!

お遊びは終いだ、くたばりやがれ!!!」

 

氷が溶けた鉄の残骸達で作った巨大な塊がクザンへ振り下ろされた。

 

鉄が地面に叩き付けられたことで凄まじい音が周囲に響き渡る。

 

下敷きになっていれば確実に圧死しているだろう程の物量に速度エネルギーも加わり、それは手が付けられぬ一撃となっていた。

 

なかなかやるな、とシキは目を細めたが詰めが甘いと手を宙に翳す。

すると、どこから持って来たのか巨大な岩が上空に現れた。

 

 

「こういうのは確実にやるモンだろォ!?」

 

キッドの一撃の上に、更に大きな岩が猛スピードで覆い被さる。

 

さながら隕石のように落ちて来た巨大な岩に巻き込まれては不味いと、ルフィとキッドは後方へ飛び退いた。

 

 

「…っぶねェだろうが!!」

 

「これに巻き込まれて潰されるなら、そこまでの実力って事だぜガキ。」

 

「…ア"ァ"!?やんのかァ!?」

 

鼻で笑うシキにキッドが噛みついている中、ルフィが飛び出して行く。

 

 

「ハァ!?おい、麦わらァ!!

てめぇ、抜け駆けして何処行くつもりだァ!?」

 

「薬探してくる!!」

 

「好き勝手すンじゃねェ!!!

まずは地図だろうが、バカザル!!」

 

「あ、そっか!そうだよな。

それじゃあ、地図も見つけてくる!!」

 

「それじゃあ…じゃねェわ!!!

本命はそっち、薬はついでだって分かってんのかァ!?」

 

ビキビキと眉間に血管を浮き上がらせるキッドの声など聞こえていないのか、すっかり遠くなった背中にまた叫ぶ。

 

 

「クソッ!!あのバカザル話聞いてねェし!!!」

 

「落ち着け、キッド。

地図はおれが手に入れてくる。」

 

「…おう、任せるぜ。相棒。」

 

「あぁ!」

 

瓦礫の山をものともせずに駆けて行くキラーの背中を見送ると、キッドの眼前にある大岩にヒビが入る。

 

そして、そのまま大岩が崩れると両手に人を掴んだままのクザンが現れた。

 

 

「本当勘弁してくれよ…

ドンキホーテファミリーの幹部を死なせたとあっちゃ、レオヴァに合わせる顔がないじゃない。」

 

危ねェな~、と気の抜けるような声を出すクザンの手に掴まれていたのはドンキホーテファミリーのマッハバイスとデリンジャーだ。

 

この2人は既にキッドとシキにより戦闘不能の状態に追いやられており、どうやらクザンはこの2人を助ける為に時間を取られていたようであった。

 

 

「お~~い!あの~…セニョールだっけ?ちょっといいか!?

……ハァ、麦わらのルフィは逃がしちまうし……不味いな、こりゃあ。」

 

突然声を上げたクザンを訝しむような目でシキが見ると、地面が不自然に波打つ。

まるで水のように揺蕩う地面から、スーツ姿の男が顔を出した。

 

 

「あ、やっぱり居るよな。

ちょっとこの二人ダウンしちゃったみたいだから頼めるか?」

 

クザンが二人を地面に下ろすとセニョールが慌てて受け止める。

 

 

「バイス!?デリンジャー!?

凄い音がしたから様子を見に来てみれば…悪いな、青キジ。

ファミリーを庇ってくれて感謝する。」

 

「ん?あ~、止してくれよそういうのは。

おれもレオヴァに口煩く言われてるだけだから感謝されても困るっつーか…

それより、その二人を避難させてといてくれると助かるんだけど。」

 

「…分かった!

こいつらの事は任せてくれ。」

 

またセニョールが地面に沈むと、マッハバイスとデリンジャーは波打つ地面の上を滑るように移動していく。

そんな光景をクザンは不思議そうに見送った。

 

 

「あれどうやってんのかね…?」

 

超人(パラミシア)系は謎だな、とひとり考えていたクザンに鉄塊が飛んでくる。

しかし、それを軽く避けてまた目の前で殺気立つ二人に向き直った。

 

 

「呑気にお喋りしてんじゃねェよ!!」

 

「あらら……短気だとは聞いてたけどよっぽどだな。

レオヴァに“それ”直すように言われてんじゃないの?」

 

少しからかうような声色と、その内容にキッドの頭に一気に血がのぼっていく。

次の瞬間、物凄い形相で襲い掛かって来たキッドの鉄屑で固めた拳を避けながらクザンはカウンターの機会をひっそりと伺っていた。

 

 

「テメェみてぇな新参者がッ!!おれとアイツの事を知ったように口利いてんじゃ…ねェよ!!!」

 

直情的な感情任せの一撃だった。

しかし、その怒りはクザンの想定を上回るパワーをキッドに発揮させた。

 

吹き飛ばされた先で、口から血を吐いたクザンは煽るのは愚策だったかと苦笑いを溢す。

 

『キッドは怒ると攻撃パターンに捻りがなくなる単純な奴でなァ。

だが、その分破壊力が増す。

父さんはその“力”を良く褒めていた。

懐かしいなァ……それも、もう昔の話だが…』

そんなレオヴァとの会話を今さら思い出したクザンは考える。

 

先ほどまでは厄介なのは経験値も高く能力範囲の広い金獅子のシキと、未知数の実力と謎の強運を持つ麦わらのルフィだと思っていた。

この2人さえ押さえられれば、と。

 

だが、その認識が間違っていたことをクザンは今の一撃から悟る。

 

 

「……ホント、“新時代”を直前にとんでもない同盟が出来たモンだよ…」

 

困ったような声色で溢すと、クザンは瓦礫を背に立ち上がる。

その瞳を、珍しく真面目なものへと変えて。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

ウソップとブルックは目の前の光景に思わず揃って声を上げた。

 

 

「「も、元は人間!?」」

 

目が飛び出そうな程驚く二人に玩具達は頷くと、繰り返すように名乗る。

 

 

「あぁ、おれはサイ。

ジジィと弟を見つけ出し、ドフラミンゴをぶっ飛ばすのが目的やい!」

 

「んで、おれがイデオ!

それでこっちの白いのが…」

 

「僕はキャベンディッシュ。

そして、そこで壊れたみたいにプルプルしてるのがバルトロメオだ。」

 

「オ"オ"オ"ォ"~…ウ、ウソップ先輩にブルック先輩ぃ~~!!!

こ、これは夢だべかッ!?」

 

地面に突っ伏して可笑しな動きをしているバルトロメオというオモチャを周りのオモチャはドン引きだというような態度で見下ろす中、ブルックが恐る恐る口を開く。

 

 

「えぇ、あなた方の事情は分かりましたが…

そちらのプルプルしている方は何故私やウソップさんの名前を?」

 

「た、確かに!おれ達の知り合いなのか?

確かお前らの話だと記憶から消えちまうんだろ!?」

 

まさか…と顔を青くするウソップの問い掛けに慌てて起き上がるとバルトロメオはハキハキと喋りだす。

 

 

「と、と、とんでもねェ!!!

おれは麦わらの一味が大好きなだけで、し、知り合いだなんて恐れ多いだべよ!!」

 

身振り手振りで伝えるバルトロメオだが、何故か二人からはジリジリと離れていく。

 

なぜ遠ざかっていくのかとブルックとウソップが首を傾げていると、バルトロメオは自ら理由を述べていく。

 

 

「おれらバルトクラブ、みんな麦わらの一味さ大好きで…!

こうやってレジェンド本人とお話出来るなんてっ……か、感無量だべ~~!!!」

 

涙は出ていないが明らかに涙声になっているバルトロメオに何とも言えない顔になるウソップだったが、気を取り直すように咳払いをする。

 

 

「あ、あー……っとドフラミンゴの仲間じゃないってのは分かった!

それじゃあ、協力してくれるってことでいいのか?」

 

「勿論だべ!!!ウソップ先輩!!」

 

他のオモチャ達が返事を返すより早く声を上げたバルトロメオに2人は頷いてみせる。

 

 

「よし、なら。

まずそのシュガー(・・・・)ってヤツを倒せばドレスローザにある武器工場をストップすることができて、お前らも人間に戻れるんだな!」

 

「そうだ、そうしたら僕達が薬を持ってるジョーラという女の場所まで案内する。

その後も手助けは惜しまないと約束しよう!」

 

キリッと決めるオモチャの姿のキャベンディッシュにウソップは目線を返し、気合いを入れ直した。

 

 

「よし、行くぞ……ナミ達は絶対に助ける!!」

 

「えぇ!行きましょう!

ウソップさん、オモチャの皆さん!!」

 

オモチャに先導されるまま走り出したウソップとブルックは城への道を進む。

 

絶望の中に現れたウソップとブルックはオモチャ達の希望となり、その道を照す。

 

人に戻る為に。家族を探す為に。大好きな一味の役に立つ為に。

それぞれの想いを抱き、オモチャ達は冷たい体を全力で動かすのだった。

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

ドレスローザ王国で戦闘が始まってから1時間ほどが経過した、海賊島ハチノスにて。

ここでも大規模な戦闘が起こっていた。

 

金獅子のシキの傘下の海賊団約7000人とファイアタンク海賊団の同盟海賊達。

そして、彼らに乗せられたハチノスに来て居たゴロツキ共3000人。

 

この圧倒的な人数差により、ハチノスの護衛を任されていた百獣海賊団は苦戦を強いられていた。

 

現在、百獣海賊団を取り巻くある事情(・・・・)によりハチノスの警備が手薄になっているという情報を手に入れていたベッジ達海賊同盟の読み勝ちのような状況の中。

なんとかハチノス内の本拠点を奪われずに防衛出来ているのは、ひとえに近衛隊隊長であるバジル・ホーキンスの捨て身の防衛故だろう。

 

しかし、厳しい状況には変わりない。

 

電伝虫が相手の撒いた毒ガスにより使用不可能な今。

この状況を報告することも、助けを呼ぶことも叶わないのである。

 

 

「全くしぶとい野郎だぜ。

そろそろ諦めて降参しろ……おれとお前じゃあ“兵力”が違う!!」

 

「…ハァ……ハァ……おれの任務は、ハチノスを維持すること。

死なぬ限り、この先へは誰も行かせはしない。」

 

「…それじゃあ、くたばれ。

まったく、お前のせいで予定より占拠に時間がかかった。」

 

忌々しげに吐き捨てると、巨大な城のようになっているベッジの体から大砲がホーキンスに放たれた。

 

後方に部下達が構えており、避けるという手段が取れないホーキンスは愛刀を握り直す。

 

 

「(……申し訳ありません、レオヴァさん…カイドウ様)」

 

最悪の事態を予見し、ホーキンスが覚悟を決めた時だった。

 

 

嵐脚 “豹尾(ひょうび)”!!

 

「ぐおぉ!?」

 

巨大な城が驚きの声を上げながら後ろへとバランスを崩す。

結果、ホーキンスへ向けて放たれた砲弾がずれ、誰もいない地面へと着弾する。

 

仲間と拠点を庇い続け、ストックもなく満身創痍となりかけていたホーキンスの前に白いスーツを着た男が空から降って来た。

 

男はかなり高い所から落ちてきたと言うのに、音もなく地面へと足をつけるとホーキンスを見て口を開いた。

 

 

「なるほど。

やはりレオヴァ……いや、総督補佐官の言う通りになっていたか。」

 

「……何故、第壱師団の隊長であるお前がここに…」

 

百獣国際連盟、第壱師団隊長であるロブ・ルッチの登場にホーキンスは驚きに声を溢した。

 

 

「何故もなにも、おれは任務の為に来た。

どうやら総督補佐官はこうなることを予想していたようでな。」

 

ホーキンスには目もくれずに言葉だけ返すと、ルッチは巨大な城へ向き直る。

 

 

「百獣国際連盟の条約と正義の下、貴様らを排除する。」

 

「元世界政府の犬一匹増えたところで……兵力差は変わらねェ!!

 

城となっているベッジの言葉が終わると大量の兵士が飛び出してくる。

 

一目瞭然の人数差を前にしてもルッチは不敵に笑ってみせた。

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

場所は戻り、ドレスローザ王国地下にて。

 

 

「うおぉお!?なんっ…なんだよこれ!?」

 

「斬っても斬っても全然倒せないですよ!?」

 

悲鳴に近い叫び声をあげていたのはウソップとブルックであった。

 

そんな二人の前にはクルミ割り人形と言うにはあまりにも大きく不気味な敵が迫っていた。

 

このオモチャは“頭割り人形”と呼ばれており、その佇まいには嫌悪感を抱かずにはいられない。

 

何か打開策はないのか、とウソップとバルトロメオ達が困り果てていた時。

 

曲がり角から帽子をかぶった青年が現れた。

 

突然現れた青年に驚きつつも、ウソップは目の前にヤバいオモチャがいることを伝えるべく叫ぶ。

 

 

「おい、お前っ!!

誰だかしらねぇけど危ないぞ!そのオモチャから離れろ~!!」

 

「…ん、オモチャ?」

 

青年が後ろを振り向くと既に頭割り人形がわらわらと近寄って来ていた。

 

呑気な青年の動きに、慌ててブルックとウソップが助けようと走り出す。

 

しかし、青年はその見た目からは信じられぬ怪力で巨大なオモチャ達をぶっ飛ばしてみせた。

 

 

「「えぇ~~!?」」

 

目を見開いて全身で驚きを表すウソップとブルックをじっと見ると、青年が口を開いた。

 

 

「お!お前ら麦わらの一味か?

ってことはロビンの仲間か。」

 

突然、大切な仲間の名が知らない人物から出て、また驚く二人にサボは帽子を手に取ると口を開いた。

 

 

「おれはサボ、革命軍だ。」

 

「「革命軍!?」」

 

驚きっぱなしの二人を面白い奴らだとサボは笑う。

 

 

それからサボと暫く話したウソップ達は、目的が同じだという事。

そしてあの2年間の間、ロビンが世話になっていた相手だと言うこともあり手を組む流れとなった。

 

こうして頭割り人形達を押し退け、工場付近へと隠密行動を続けていたのだが。

 

何故かウソップ達は工場の中で大勢のドンキホーテファミリーの部下達に取り囲まれてしまっていた。

 

 

「見つかっちまったか…」

 

「いや、見つかっちまったか…じゃねぇよ!!」

 

「完全にあなたが地面割ったからじゃないですかー!?」

 

困ったな!と笑うサボに力強くウソップとブルックは突っ込む。

 

そんなやり取りに今度は工場の警備をしていた部下達が声をあげた。

 

 

「「「「てめぇら囲まれてんのに呑気かよ!!」」」」

 

「そうだった、やべぇ~~!!どうするブルック!?」

 

終わりだ~!と頭を抱えるウソップを笑いながらサボが前へ出る。

 

 

「どうせ工場は壊すんだ。

ここからは派手に暴れても問題ねェよな!」

 

「見つかってしまったワケですし…こうなったらやるしかないですよ、ウソップさん!」

 

「ほ、本当にこの人数相手に戦うのかよ~!?」

 

戦闘態勢に入った二人と嫌々ながら構えたウソップ達の背中を見て、バルトロメオ達は悪魔の実の能力で動けない体を呪いつつ、彼らの勝ちを祈る。

 

そうして、工場内でも大きな戦闘が開始された。

 

 

工場を守るは、トレーボルとシュガー。

並びにその部下達数百名。

 

それに対するはサボ、ウソップとブルックの3名。

 

工場を破壊し、シュガーを気絶させればサボ達の勝利。

逆に彼ら三人を捕らえる、もしくは処刑すればトレーボル達の勝利である。

 

お互いに負けられぬ、重要な戦いが地下で進み始めていた。

 

 





ー後書きー
次回からはもう少し端的に進めて参ります~!
今回もここまで読んでくださりありがとうございます!

↓番外編「Let's GOLD」
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質問箱でリクエスト頂いていたものが長くなったのでifですが番外編にまとめさせて頂きました。

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