俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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ゾウに集う者

 

 

 

ジャックから話し合いか敵対か選べと、選択肢を投げかけられた赤鞘の返した答えは“敵対”であった。

 

だがそんな中、錦えもんだけは話し合いを選んだ。

 

リーダーのような存在である彼の選択に周りの赤鞘は何故だと不満を露にするが、彼は折れない。

数分間、ジャックの前で赤鞘達は口論を続けていた。

 

しかし、いつまでもまとまらぬ赤鞘に痺れを切らしたジャックはおでんの息子であるモモの助へ問い掛けた。

 

 

『お前はどうする。

ワノ国に戻るのか、ウチと敵対するのか……答えろ。』

 

突然、恐ろしい顔の巨漢から選択を迫られモモの助はぶるぶると震えた。

 

怖い、恐ろしい。

恐怖は口の中の水分を奪い去って行く。

 

 

『『モモの助様…!!』』

 

傳ジローと河松の声が響いた。

 

モモの助は全身に感じる赤鞘達の目線に背中を押されるように、言われ続けて来た言葉(・・・・・・・・・・)が口から溢れる。

 

 

『せ、せっしゃは……いつかワノ国を!しょ、しょって立つ男でござるっ!!』

 

『……それがお前の答えでいいんだな?』

 

ギロリと恐ろしい2つの目が見下ろしてくる。

モモの助は思わず側にいた錦えもんの着物の裾を掴んだ。

 

 

『ひっ……き、錦えもんっ…!』

 

震えて瞳に涙をためるモモの助に二人の侍が正反対の声色で言葉を投げかけた。

 

 

『よくぞ、仰いましたモモの助様!!!』

 

『そんなっ…モモの助様、どうか今の発言を取り消してください!!』

 

立派だと褒める家臣の声と、前言の撤回を悲願する家臣の声。

 

侍達の互いの想いが衝突している中で、ジャックは動く。

 

 

『ワノ国はカイドウさんとレオヴァさんの国だ。』

 

淡々と言い放つとジャックは剣を抜き、腕を振り抜いた。

 

狂死郎の悲痛な静止の声は、災害の前に意味などなかった。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

ルフィ達とは別に食料集めをしていたサンジ、ウソップ、ブルックは突然目の前に現れた二人を見て驚きに目を見開いていた。

 

 

「久しぶりねぃ~!麦ちゃんは元気なのぅ!?」

 

派手なメイクをして変わった服装に身を包んでいる漢がフレンドリーに声をかけると、ウソップは思わず声を漏らした。

 

 

「ア、アラバスタのオカマ!?」

 

「お前、なんでここに!?」

 

「え?ウソップさんとサンジさんの…お知り合いですか?」

 

各々がキャラの濃すぎる彼女(・・)に反応を返すと、本人は楽しげにくるりと回転して見せる。

 

 

「なんでって、お仕事よぅ~!お・し・ご・とっ!!

 

「仕事…?」

 

訝しげな顔になるサンジに彼女…ボン・クレーは説明しようと口を開く。

しかし、それを隣にいる渋い見た目のミンク族の男が止めた。

 

 

「知り合いなのは分かったが、こっからはおれの仕事だ!ガオ!!」

 

サングラスをくいっと指で直しながら一歩前に出たミンク族の彼の名はペコムズ。

彼は堂々とした足取りでサンジの前に立つと、手紙を差し出した。

 

何の前触れもなく突き出された手紙をサンジは何だと、めんどくさそうな顔で受け取る。

 

 

「なんなんだ、突然…」

 

「いいから、読め!

おれはお前を迎えに来たんだ。」

 

「迎えだ?

……何を意味の分からないことを…っ…!?」

 

呆れながら手紙を開いたサンジの顔色が変わる。

 

その事に気付いたウソップとブルックは心配そうな顔でサンジの方へと歩みよった。

 

 

「サンジさん、どうかしましたか?」

 

「な、何が書いてあったんだよ…?」

 

「……いや…」

 

大丈夫か、と声をかけてくる二人にサンジは何とか言葉を絞りだそうとしたが何も出てこない。

 

ただ、読んだ手紙をぐしゃりと握り潰しペコムズを睨んでいた。

 

 

「分かったら来てもらうぜ、“ヴィンスモーク”の倅!」

 

「っ…ふざけんな!!

今さらこんな……あれはもう捨てた過去だ!!」

 

普段見ないサンジの鬼気迫る顔にウソップは動揺し、ブルックは半歩前へ出ながら手はそっと刀へ伸ばす。

 

 

「“血筋”ってのは捨てられるもんじゃねェ!!ガオ!」

 

「誰がなんと言おうと、おれの父親はジジイ一人だ。」

 

「お前がどう主張しようが、ママの決定は覆らねェ!

それこそ、断れば……東の海のレストラン、バラティエも危ないだろうな。」

 

「っ…!?」

 

見知らぬ相手から出た大切な場所の名前にサンジが目を見開くと、ブルックが2人の間に立ち塞がった。

 

 

「……どこのどなたかは存じませんが…

先ほどから聞いていれば、サンジさんを脅すような言葉ばかり。

もうこれ以上は私、黙っていられませんよ。」

 

鋭くなったブルックの気配にペコムズとボン・クレーも身を固くする。

 

 

「そ、そうだぜ!

サンジを連れてくなんて……仲間は絶対渡さねェ!」

 

ブルックに続き、普段の頼りなさが嘘のようにサンジの隣にウソップは立った。

 

 

数秒の睨み合い。

どちらが先に動くのか、と緊迫した時間が流れた時だった。

 

 

「……おれが行けば問題ないんだな?」

 

ブルックとウソップを避けて前に出たサンジに二人は声を上げる。

 

 

「お、おいサンジ!?」

 

「サンジさん…」

 

「話が通じる奴で助かるぜ。」

 

「……ごめんねぃ、サンちゃん。」

 

ペコムズとボン・クレーの方へ歩きだしたサンジは背中越しに声をかける。

 

 

「悪いな…ウソップ、ブルック。

少し女に会ってくるってルフィ達には伝えといてくれ。」

 

「な、なに言ってんだよ!サンジ!!」

 

ウソップが腕を掴もうとするが、呆気なく避けられる。

少し後ろを振り返ったサンジの顔には笑顔が張り付けてあった。

 

 

「必ず戻る。

だから、よろしく伝えといてくれ。」

 

絞り出したような声を最後に行ってしまったサンジに、尚もウソップが言葉を投げようとするが、ブルックは首を振る。

 

 

「ウソップさん…」

 

「ブルック、早く追いかけてサンジを止めねェと!!」

 

「無駄です……追いかけても彼に、戻る気がない…」

 

絶望したような顔でそれでもサンジの後ろ姿をじっと眺めるブルックの言葉に、ウソップは拳を握りしめた。

 

 

「ちくしょお…!

……そうだ、ルフィ!ルフィを呼べば…!」

 

集めていた食料を持つことも忘れ、ウソップは元いた場所へと走り出す。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

倒れた木々や壊れた家を見て、2人は前へ出る。

 

 

「これ以上ここで暴れるなよ!!」

 

「お前、他の奴らまで巻き込む気か!?」

 

そう言って前に立ち塞がった2人の青年にジャックは不機嫌さを露にした。

 

 

「退け。

うちと敵対すると宣言された以上、あの女を回収して他の赤鞘を拘束しなきゃならねェ。」

 

「知らねぇ!

ここ壊されたらおれがナミに怒られる!!

ナミは怒ると怖ェんだぞ!?」

 

「……言葉が通じねェのか、テメェは。

どちらにせよ、邪魔するなら潰すまでだ!!」

 

ジャックは巨大なマンモスの姿で長い鼻を振るった。

しかし、ルフィとゾロはそれを軽々と避ける。

 

ゾロは咄嗟に脇に抱えたカン十郎と菊の丞を後ろに居た錦えもん達に預けると刀を抜いた。

 

倒れた仲間を抱き止めた錦えもん達は苦々しい表情でルフィとゾロを見る。

 

 

「ルフィ殿…!」

 

「チョッパーの所に行ってモモ達のケガみてもらえ!

お前らの話は良くわかんねぇけど、ここは守る。」

 

「かたじけない!」

 

後退しようと仲間を背負った錦えもんにイヌアラシはまだ戦えると声を上げたが、それをアシュラ童子が遮る。

 

 

「今はモモの助様と日和様の安全が最優先だど!!」

 

「アシュラの言う通り…ここは一時下がろうぞ!

ルフィ殿は強い…!」 

 

 

ドレスローザでのルフィの活躍を知っている錦えもんは彼ならばと、仲間を説得する。

だが、それでも敵に背を向けることを躊躇う数人に捲し立てるように言葉を続けた。

 

 

「モモの助様の出血を見よ!!

事態は一刻を争うのだぞ!?」

 

この錦えもんの言葉で全員の意志がまとまる。

医者であるチョッパーとの合流を目指すべく、手負いの仲間を背負い赤鞘は走り出した。

 

 

そんなやり取りの中。

ジャックはルフィとゾロを相手取っていた。

 

普段の雑魚と殺り合う時ほどの余裕はない。

だが完全に押されるほどでもない。

 

2人の攻撃を受け流しながらも、確実に前進していた。

しかし、赤鞘が一斉に走り出した事でジャックの意識が僅かにそれてしまったのだ。

 

任務の内容は、赤鞘の意思確認。

穏便にすめばとあるナワバリへ誘導して、レオヴァと対面させる事。

敵対の場合は赤鞘全員の捕縛か死体の回収。

そして、小紫こと日和を再び手に入れる事だ。

 

今のジャックにとって麦わら達の排除よりも、赤鞘の方が優先度で言えば上なのである。

 

そんな彼らが逃げ出したとあれば、ジャックの意識がそちらに向くのは当然であった。

 

しかし、それは大きなミスとなる。

 

ルフィとゾロはその瞬間を見逃さなかった。

 

意識が逸れたジャックの懐に瞬時に入り込むと、ルフィは全力の一撃を見舞う。

 

 

ゴムゴムのォ~…獅子(レオ)バズーカ”!!

 

ッ!?!

 

ジャックの巨体が激しい衝撃と共に宙へ弾き飛ばされた。

 

しかし、それだけなら問題はない。

確かに少しダメージは入ったが、ジャックのタフさがあればまだまだ戦える。

 

ここから体勢を持ち直して着地と同時に麦わら帽子のヤツへ突進し、パワーで押し潰す。

 

そうジャックが考えていた時、人影が視界に入り込む。

 

 

三刀流“千八十煩悩鳳(1080ポンドホウ)”!!!

 

「ぐぅッ!?」

 

宙へ押し出されていた体へ斬撃が真っ直ぐに飛来する。

 

空中で受け身を取れなかったジャックだが、武装色はしっかりと纏っていた。

その為体に斬撃が食い込むことはない。

 

だが、それこそがゾロの狙いだった。

 

数度のやり取りで感じたジャックの固さ。

それをゾロは利用したのだ。

 

貫通しなかった斬撃は宙に浮かぶジャックの体を押し出して行く。

 

真上に飛ばされた体が今度は後方へと押される感覚にジャックは焦った。

 

踏ん張りが利かない空中で何とかゾロの大技を反らし、吹き飛ばされている状態を止めるべく体勢を変えようと動き向きを変える。

 

 

「くそっ…!

あの状態でおれの攻撃を弾くのかよ!?」

 

「島の外まで飛ばせなかったか~!!アイツ固ぇなぁ!」

 

 

ルフィとゾロが木の上に着地し、額に汗を流した時だった。

 

 

「邪魔だテメェら!!

ジャックはおれがブッ飛ばす!!!」

 

がなり声と共に後ろから見慣れたツンツン頭が飛び出して来る。

 

 

「あ、ギザ男!」

 

ジャック!!

くたばれやァ!!!磁気“弦”(パンクギブソン)!!!

 

「キッド!てめぇ!!」

 

驚きと怒りでジャックが目を見開くと、マンモス姿の横腹にキッドの一撃が決まる。

 

低い唸り声と共にジャックは更に遠くへと押し出されて行った。

 

すっかり巨大なマンモスが見えなくなった空を見上げて、ルフィはキッドに笑いかける。

 

 

「やるな、ギザ男!」

 

「うるせェ!!

テメェなんでジャックとやりあってンだよ!!!

ここに奴が来たって事は百獣に場所がバレてるって事じゃねェか!!!」

 

怒りのまま叫ぶキッドの後ろからキラーが止めに入る。

 

 

「待て、キッド。

どうやら侍共が面倒事を抱えているらしくてな。

ジャックはその関係で来たようだ。」

 

「ア"ァ"!?あの侍共の面倒事だァ?

……異様にカイドウのジジイとアイツを敵視してると思ったが…」

 

考える素振りを見せるキッドにキラーは事の流れを説明した。

 

赤鞘が百獣海賊団へ敵対宣言とも取れる選択をした事。

ジャックと狂四郎という侍は日和という女を狙っている事。

そして、戦闘になった赤鞘に負傷者が出て流れで麦わら達が庇う形になった事。

 

全てを聞き終えたキッドはぐしゃりと自分の髪を苛立たしげにかきまぜた。

 

 

「チッ……じゃあ、光月(・・)がどうのってのもマジな話かよ。

そこら辺に関わってるとありゃ、アイツは手を緩めねェだろ。

追手が2倍になると面倒だぞ、キラー。」

 

「それはおれも同意見だ、キッド。

だがワノ国の地理に詳しく、戦える人材を捨てるのは惜しいとも思ってる。」

 

話し込み始めた二人に首を傾げているルフィの隣に並んだゾロは、前方に小さく見える人影に気付き口を開いた。

 

 

「あれ、ウソップとブルックか?」

 

「お!本当だ!

お~~い、ウソップ~!ブルック~!なんか肉あったか!?」

 

ルフィが二人に手を振ると、走っていたウソップが声を上げた。

 

 

「ルフィ!!

サンジが……四皇に連れてかれちまった!!

すまねぇ!おれ止められなくて…!!」

 

泣きそうなウソップの声に、ルフィの顔にあった笑みが消えた。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

サンジがペコムズと共に船に乗ったのを確認して、ボン・クレーは任務を全うするべく草の生い茂る獣道を歩いていた。

 

 

どうして、ボン・クレーことベンサムがビッグ・マムの部下と共に行動しているのか。

その理由はインペルダウン脱獄後にまで遡る。

 

あの時、ボン・クレーは正義の門を開けた。

マゼランはレオヴァ達の対応に追われ、席を外していた為何とか友を送り出せはしたが、彼女に脱獄の道はなかった。

何故なら、逃げる為の船がない。

 

また牢獄に逆戻りになる。

だが、それでも良かった。

 

友が大切な兄を助けに行く為の手助けが出来たのだ。

ボン・クレーにとっては本望である。

 

そんな諦めの中にいたボン・クレーだったが、なんとロー達に拾われていたのだ。

 

綺麗な船の中に連れられ目が飛び出すほど驚き、更には目下で戦うレオヴァと謎の囚人に顎が外れるほど驚いた。

 

その後は今までの疲れから頂上戦争が終わるまで寝入ってしまっていたが、無事ボン・クレーも脱獄に成功していたわけである。

 

そうして脱獄後、クロコダイルの会社が消えた事もあり職をどうするか?と悩んでいた所、レオヴァから紹介を受けたのだ。

 

それはフリーランスの任務請負人というものだった。

 

最初こそ、フリーランスとは?任務請負人とは?とハテナだらけの彼女だったが、レオヴァから説明を受けて快諾。

 

最初はレオヴァの紹介で色々な相手と仕事をしていたが、今では自ら仕事を受けられるまでに成長していた。

 

そして、その成長の結果。

今回、麦わらの一味の足止めという任務を請け負う事になったのだ。

 

本来であれば、この任務は断っていただろう。

だが、他の誰でもないレオヴァからの紹介(・・)である。

 

更にその相手が四皇とあっては断るに断れない。

ボン・クレーはレオヴァの顔を立てる為にこの任務に臨んだ。

 

人情に厚いボン・クレーだが、仕事に私情は挟まないと決めていた。

 

 

足を進めながら、ボン・クレーは確信していた。

ルフィは必ずサンジを取り戻しに来ると。

 

鳥の羽ばたく音と、誰かが走る音が近付いてくる。

 

 

「…ボンちゃん!!」

 

「……麦ちゃん、久しぶりねい。」

 

友との再会に、笑顔はなかった。

 

困惑した表情の麦わら帽子の青年に、ボン・クレーは得意の構えをとる。

 

そして、大地を蹴り覚悟の一撃を繰り出した。

 

ルフィはまだ、困惑の表情のまま目を見開く。

友の心を推し量れずにいた。

 

 

 

 

 





番外編「鳳皇の懐刀は苦労人」更新しました

https://syosetu.org/novel/279322/17.html


~補足~

ジャック:吹っ飛ばされた。島から落ちた可能性が…?

狂死郎:シープスヘッドに船へ強制連行されて治療中

ボンちゃん:レオヴァからの紹介でビッグ・マムから仕事を受けた。
昔の仲間達とフリーランスの請負人をやっている。

ペコムズ:原作と違い麦わら達に恩義がないので、普通に任務を遂行中。

サンジ:渡された手紙を読んで、ゼフ達の為に一度ホールケーキアイランドへ行くことを決意。

日和:チョッパーやヴェルゴが受けた睡眠弾の改良版を受けてしまっている為、眠っている。
起こすには薬が必要。

・赤鞘と百獣打倒同盟
敵が一致している為、共に動くという話になっていたが今回の一件でどうなるのかは不明。
河松とイヌアラシの話もあり、ウソップ・ナミ・チョッパーは百獣海賊団に懐疑的になっている。
(モモの助が涙ながらに話した事も拍車をかけている)

・ビッグ・マムからの使者
何故かサンジを召集。
この世界ではジャッジはいない筈だが、何故…?

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