俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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ー前書きー
↓番外編にてカイドウさんの誕生日回を更新しました!
https://syosetu.org/novel/279322/8.html
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新しき伝説

 

 

 

 

 

「あんな化け物共をどうやって止めれば良いんだ!?」

 

絶望に染まった叫びを上げる海兵の目の前には瓦礫と屍の山、そして常人では目で追えぬほど激しい戦闘を繰り広げる化け物達がいた。

 

 

 

大将三人相手に一歩も引けを取らぬバレットと、それを援護するような動きを見せるドレークとシリュウ。

 

大暴れするバレットに巻き込まれることなく獣人の姿で俊敏に動き回るドレークも脅威であったが、海兵達にとっては大将との戦闘の合間に近くにいる者をついでの様に斬り殺していくシリュウの方が恐怖の対象となっていた。

 

しかし、海兵の絶望の理由はそれだけではない。

 

あの仏のセンゴクと英雄ガープが押されはじめていたのだ。

 

 

 

ウオロロロロロ…!

英雄ガープ…!殴り合いでおれに勝てると思ってやがるのかァ!?

面白ェ!おれは二度は負けねェ(・・・・・・・)ぞォ!!

 

「ぐぅ……小僧め…!舐めるでないわい!!フンッ!!!」

 

己の拳1つで凄まじいパワーを発揮するガープの猛攻をカイドウは真っ向から受け止め楽しげに笑う。

 

そのカイドウの姿には強者への歓喜があり、同時にそれを捩じ伏せてやろうと言う海賊の本能が滲み出ていた。

 

 

そして、そのすぐ横ではレオヴァが普段の雰囲気とは違い、勇ましい笑みを浮かべながら()をふるっている。

 

 

「ふははははは…!

流石は元帥か!でたらめな戦い方だなァ!!」

 

「ハァ…でたらめなのは貴様だ…!!

まさか雷で回復をするとは……これでは埒が明かん!」

 

「英雄ガープの支援に行きたいんだろう?

だが、1つ言っておくが余所見をしながら勝てるほどおれは弱くない。

そして……おれにそんな遅い大振りな攻撃は当たらん。」

 

大仏の姿となり衝撃波を放つセンゴクを脅威ではないという表情でレオヴァは素早い攻撃を繰り返し翻弄している。

 

なによりレオヴァの言葉通り、先ほどからセンゴクの衝撃波はほぼ全て避けられてしまっているのだ。

 

数発当たった攻撃も、全てセンゴクがガープを援護しようとカイドウに向けたものをレオヴァが防ぐ為に自ら当たりに行ったというだけであり

センゴクがレオヴァを狙って放った衝撃波は一回たりともレオヴァには直撃していなかった。

 

確実に消耗していっているセンゴクとガープとは裏腹に、カイドウとレオヴァは闘えば闘うほどに調子を上げて行っている。

 

 

「ウオロロロロロ…!!

楽しいじゃねェか!なぁ、レオヴァ!!!」

 

「ふはははははは…!!

あぁ、本当に楽しいなァ父さん!!!」

 

カイドウとレオヴァはまるで互いに呼応するように速さも力も上がっていく。

 

 

「ッ……ガープ!!

もう被害がどうのとは言ってられんぞ!

マリンフォードのことは気にせず全力でやるしかない!!」

 

「分かっとるわい!!

なんならもう、わしは全力じゃ…!!!」

 

センゴクとガープは狂暴な笑みを浮かべながら猛攻を仕掛けてくるカイドウとレオヴァを相手に必死の攻防を続けた。

 

 

 

一方、バレット達を相手にしている大将達も疲労が強く現れている。

 

 

「ゼェ…ハァ……お、おんどれェ……舐めた真似しよって…!」

 

「ちょっとサカズキ~……君下がってた方が良いんじゃないか~い?」

 

「馬鹿を言うな、ボルサリーノォ…!ゲホッ…ハァ……」

 

「いやいや……サカズキ、限界でしょ?

死んだら元も子もないじゃない、一旦下がりなよ。」

 

 

カイドウの攻撃で既に満身創痍だったサカズキを心配するボルサリーノとクザンだったが、当の本人に下がるという選択肢はないらしかった。

 

だが、そう言うボルサリーノとクザンにもサカズキ程ではないにしろ外傷が目立ち始めている。

 

 

「う~~ん……カイドウとレオヴァの首さえ取れれば状況は変わるんだけどねぇ~~…」

 

そう言ってボルサリーノは瞬き程度の一瞬の隙にレオヴァへ光線を放つ。

 

だが、その光線は巨大化したバレットの腕に遮られた。

 

 

「おれがいるのに他に目をやる余裕が、貴様らにあるのかァ…!?」

 

その声と共に怪獣といってなんら差し支えない姿のバレットの拳がボルサリーノを襲った。

 

その攻撃をボルサリーノは間一髪で躱したが、それを見計らっていたかの様に背後から剣撃が襲いくる。

 

 

「ッ……と~~…危ないねぇ~!」

 

「腐っても大将と言った所か。

不意の一撃にも対応するとは流石……だが…」

 

ボルサリーノと剣を交えていたドレークが何故か飛び退き、身構えた。

 

何事かとボルサリーノが訝しげな表情をした瞬間、肩に鋭い痛みが走る。

ボルサリーノを切り裂いた斬撃はそのまま直線上にいるドレークへと飛んでゆくが、彼は予め分かっていたのか刀と剣で巧くその斬撃を横へと流してみせた。

 

 

「…っ……やってくれたねェ~…!!」

 

ボルサリーノがギロリと目を後方に向けると、センゴクと向き合っていた筈のレオヴァが笑っていた。

 

 

「さっきお前がやろうとしていたことだ。

おれの場合はバレットが防いでくれたが……どうやら元帥殿は防げなかったようだな。」  

 

その言葉に顔を歪めたのはボルサリーノだけではなかった。

 

会話もなしにこれ程の連携を見せてくるレオヴァとドレークにセンゴクは唇を噛む。

 

 

「レオヴァ!!

大将はおれの獲物だぞ!?横取りする気か!!

 

「悪かったバレット。

やられたらやり返せと言われて育ったもんでな…」

 

「……確かに一理あるが、もう手ェ出すなよ!?」

 

「あぁ、バレット…約束する。」

 

呑気に会話をする余裕を見せる二人に海兵達は愕然としていた。

 

 

海軍の総戦力と言っても過言ではない、これ程の男達を相手にしているというのに百獣海賊団は押されるどころか楽しんでいるようにすら見えるのだ。

 

それに最新兵器であるパシフィスタに関しては眼中にないと言わんばかりに、簡単に破壊して見せた。

 

海賊達を翻弄する能力を持っていた筈のパシフィスタが百獣海賊団が相手ではただの案山子(かかし)扱いだ。

 

 

勝てる未来が見えない。

その事実は戦場に立つ者達にいったいどれ程の絶望を与えるのだろうか。

 

勝ち目の見えない戦いほど苦しいものはないに違いない。

 

ひとり、またひとりと海兵達は力なく崩れ落ちていった。

 

 

 

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大乱戦となっている広場の対岸で言葉を失っていた白ひげ海賊団達の前に、瞬間移動のような動きで男が現れた。

 

前触れもなしに現れた男に周りの海賊達の中には腰を抜かす者もいたが、エースはその男に近づくと声をかけた。

 

 

「お前……ロー!?」

 

驚いた顔をするエースを、ローは愛想のない表情で見やる。

 

 

「火拳、お前をこの場から逃がし……腕を治療するようレオヴァさんから言われて来た。

分かったら、おれと来い。」

 

無愛想に告げたローに付いていこうとするエースの姿を見て、イゾウは咄嗟に腕を掴んでしまう。

 

 

「待て、エース…!

百獣の船に乗る気か!?」

 

「……?

…あぁ、イゾウは知らねェのか!

ローはスゲェ医者で…」

 

「違う…!!そういう意味じゃ…!」

 

何かを圧し殺したような声を上げるイゾウの言葉を遮るようにローは冷静な声を出す。

 

 

「おい、早くしろ。

気絶してる麦わらもそのままじゃ危険だ。

どうやったかは知らねェが、だいぶ体に負担がかけられてる。

さっさと安静にさせて点滴を射たなきゃ最悪死ぬか……死ななくても後遺症が残る可能性もある。

おれにはまだやること(・・・・)があるんだ、揉めるなら後にしろ。」

 

ローのルフィが危ないと言う言葉にエースの目の色が変わる。

 

 

「ッ…分かった!ジンベエ…!ルフィを!」

 

「あぁ、エースさん!

ローくん、わしも連れて行ってくれ!」

 

「あぁ、ジンベエなら構わねェ。

レオヴァさんからお前を気にかけるように言われてたしな…

おれの能力で一気に()に行く、動くなよ。」

 

その言葉にエースとジンベエが頷くと三人の姿が一瞬にして消え、その場に小石が三つ転がった。

 

消えた三人がいた場所を白ひげ海賊団の人間は唖然と眺めていたが、また別の声がその場に響いた。

 

 

「お~い!白ひげ海賊団の人~!」

 

大声で呼ばれ、マルコ達が振り向くと真っ白なクマが手を振りながら走って来ている。

 

 

「ここ危ないよ!?

キャプテンが海軍の船いっぱい奪ったからそれで早く逃げよう!」

 

「まさか……おれ達の為に…軍艦を奪ったってのかよい?」

 

驚きに目を見開くマルコ達にベポは当たり前だというような表情で頷いた。

 

 

「うん、だってレオヴァさまがエースくんの仲間の退路を確保するようにって。

今はハイルディン達が奪った船の見張りしてくれてるけど、早くしないとまたパシフィスタがくるかもしれないし急いで!!」

 

そう言って誘導を始めたベポに白ひげ海賊団の船員達が付いて行こうとした時だった。

 

 

「……罠じゃないのか?

なんで、なんで百獣がおれ達を…!」

 

苦しそうな声を出すイゾウに事情を知らぬ仲間達は首をかしげ、知っている者は彼の気持ちを想い同じように苦しげな表情になる。

 

 

「おれは…!百獣に助けられるくらいなら…!!」

 

そんなベポに掴みかかりそうな勢いのイゾウが突然、気を失い倒れた。

 

驚く周りの白ひげ海賊団の船員達は、イゾウを気絶させたマルコを見た。

 

マルコは無言でイゾウを担ぐと、落ち着いた声でベポに話し掛ける。

 

 

「……悪い、世話になるよい。」

 

「気にしないでよ!

レオヴァさまの友だちの仲間を助けるのは当たり前(・・・・)だから!」

 

何かを決めたような顔をするマルコにベポは屈託のない表情で返した。

 

 

「そう…なのかよい……」

 

「うん!

あ、あとエースくんの心配もしなくて大丈夫。

なんたってキャプテンは世界一のお医者さんなんだ!!エースくんの腕も綺麗に治してくれるよ!

じゃあ、みんな走るよ~!付いてきて!」

 

走り出したベポに半信半疑ながらも白ひげ海賊団の船員達は付いて行く。

 

他に逃げる方法もないという事も関係していたが、何よりベポからは何の悪意も感じない。

それが白ひげ海賊団の船員達を無意識に安心させていた。

……が、当の本人であるベポにその自覚はないのであった。

 

 

 

 

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ローとベポが白ひげ海賊団を離脱させることに成功したのを感じ取ったレオヴァがカイドウの方へ目線をやる。

 

同じくカイドウもそれに気付いたようで、レオヴァを見て口を開いた。

 

 

「ローの奴、しっかりやってるみてェじゃねェか!

あとは白ひげのジジイを巻き込まねェような場所に移動させりゃ完璧だ…!!」

 

「父さんならそう言うだろうと思って、既にローには伝えてある。」

 

「ウオロロロロ……気が利きすぎだァ!レオヴァ!!」

 

嬉しげにカイドウが笑っていると、背後にあった白ひげの遺体がローの“ROOM(ルーム)”によって姿を消す。

 

あまりにもドンピシャなタイミングに、またカイドウとレオヴァは笑った。

 

 

「ウオロロロロロ!話をすれば…か!」

 

「はははは!まるで図ったかのようなタイミングだ!」

 

仲良さげに話す2人の親子だが、相も変わらずガープとセンゴクへの猛攻は続いていた。

 

 

「ぜぇ…小僧共、随分と余裕をかましてくれるわい!!…はぁ……」

 

「ッ…はぁ……一対一からニ対ニに持ち込んだが……悪手(あくしゅ)だったか…!!ハァ…

ただでさえ手がつけられんというのに、こうも完璧に連携をとられては…ろくに攻撃も通らん!ゼェ…」

 

「わしらの方が付き合いは長いはずなんじゃがなァ…」

 

「最近はまったくだっただろう…!

ここに来てブランクがこうも顕著に……」

 

猛攻を受けつつも何とか耐えている2人の会話などお構い無しに、カイドウは金棒をレオヴァは()を振るう。

 

 

 

 

 

そうこうしてカイドウ乱入から1時間ほどの時が経った。

 

三人の大将は肩で息をし、バレット達の進撃を押さえきれなくなり始めており

センゴクとガープもカイドウとレオヴァの連携に少しずつ追い付けなくなってきている。

 

この光景に誰もが確信せざるを得なかった。

 

このまま百獣海賊団が海軍に勝利するのだ、と。

 

 

しかし、震える海兵達が残酷な現実に瞼を下ろそうとした時。

バレットの巨体が何者かによって吹き飛ばされ、広場にいる者達の注目がそこへ集まる。

 

三人の大将にそんな力は残っていない、ならば誰が?

そう疑問に思いカイドウとレオヴァが振り返った先には、マントをはためかせ刀を構える男を先頭にずらっと海の強者が立ち並んでいた。

 

 

「……ここまでだ、百獣海賊団に…海軍!

おれ達はこの戦争を終わらせに来た…!!!」

 

バレットを斬り伏せた男が声を上げると、広場にどよめきが起こる。

 

 

「「「あ、赤髪海賊団だァ~!!!」」」

 

「赤髪!!?

ルフィを海賊の道に引きずり込んだ男…!」

 

「何故、“赤髪”のシャンクスが…!?」

 

「待て、奴は百獣海賊団の大看板達と小競り合いを起こしていたんじゃないのか!?」

 

ざわざわと騒がしくなる海兵達とは裏腹にカイドウとレオヴァは静かな瞳でシャンクスを睨んだ。

 

 

「……キング達が応戦していたと聞いていたんだがな。」

 

冷静な声色で言うレオヴァをシャンクスは見上げる。

 

 

「あぁ、本当に手強かった。

おかげで来るのがこんなにも遅くなった…!!」

 

「キングが付いて来ねェと思ったら……赤髪ィ…てめェか!?」

 

ガープからシャンクスに向き直ったカイドウの表情は険しい。

 

 

「……カイドウ、マリンフォードは更地になり……白ひげも死んだ。

これ以上、ここで暴れる理由があるのか?

このまま続けても無念に沈む魂が増えるだけ……

なによりこれ以上戦い続けたところで百獣海賊団に利益などないはずだ…!!

 

カイドウの怒りのオーラを正面から受けていながらも、怯む様子もなくハッキリとシャンクスは言葉を紡ぐ。

 

 

海賊が暴れる理由に、気にいらねェ以上の理由が必要かァ…?

それにおれァ…殴り合いに利益なんざ求めねェ!

闘いってのはなァ、楽しいか楽しくねェか…それだけだァ!!

 

その言葉にシャンクスは眉を顰めると刀を構えなおした。

 

 

「…そうか。

なら悪いが、百獣には力尽くでもこの場から撤退してもらう…!!

本能のまま暴れる怪物に付き合っては、無益に被害が広がるだけだ!!

 

このおれを撤退させるだとォ…?

赤髪…てめェはおれを誰だと思ってやがる!!!

 

シャンクスの言葉にカイドウは目を吊り上げると、隣にいるレオヴァへ言葉を投げ掛けた。  

 

 

「おい、レオヴァ!!おれァ…()だ!?」

 

カイドウの呼び掛けにレオヴァは間を空けず、強い想いを感じる声色で答える。

 

 

「百獣のカイドウ……この世の誰よりも強い男だ…!!」

 

レオヴァの言葉にカイドウは満足そうに猛々しい笑みを浮かべ、前へ出る。

 

「そうだ、レオヴァ…おれァ百獣のカイドウ…!!

このおれを止められるもんなら、止めてみやがれってんだァ!!!」

 

捉えられぬほどの速さで(くう)を切る金棒はシャンクスを目掛けて振り抜かれた。

 

咄嗟に剣を構え体への直撃は免れたが、桁外れの腕力でシャンクスはそのまま数十メートル後方へと弾き飛ばされていく。

 

 

「「「お(かしら)…!!?」」」

 

「なっ…赤髪を…!?」

 

 

唖然と口を開いたままの周りの者達がカイドウを凝視する。

そして、真っ直ぐ前を見るカイドウの目線を皆が追うと土煙が開けたその場所に、シャンクスはしっかりと両足で立っていた。

 

 

「……なるほど、やはりこうなったか。

レオヴァ、お前もカイドウと同じ答え(・・・・)ということで良いんだな…?」

 

シャンクスはカイドウの隣にいるレオヴァへ鋭い目線を向ける。

 

 

「答えるまでもない。

父さんの言葉は、おれ達百獣の意思(・・・・・)だ。」

 

 

「……そうか、話が通じる相手だと思っていたんだが…とんだ勘違いだったようだな。

レオヴァ、お前が一番話が通じそうにない(・・・・・・・・・・・・・・)…!!

 

シャンクスの振り抜いた剣は斬撃を生み出し、レオヴァへ襲い掛かった。

 

光のような速さで迫り来た斬撃だったが、レオヴァはそれを武装した腕で簡単に払い退ける。

 

 

「四皇にしては……随分と軽い一撃だ。」

 

「……思った通り、実力を隠してたようだな。

最初は様子見のつもりだったんだが……これはそうも言ってられないな。」

 

常人であればひとたまりもないシャンクスの一撃を軽くいなしたレオヴァと、その一撃を様子見だと言ってのけるシャンクス。

 

あまりにも次元の違うやり取りに、周りの人間達はただただ呆然と立ち尽くす。

 

一触即発の空気に誰もが呼吸を忘れ、身動きが取れずにいた時だった。

 

 

「“無頼男爆弾(ブラキオボムバ)”ァ…!!!」

 

けたたましい音と共に赤髪海賊団のいた場所は桁違いの質量が落下した衝撃に耐えきれず、爆発のような現象が起こる。

 

 

「“火龍皇(かりゅうどん)”…!!」

 

まるで煙幕のように巻き上がった砂埃に広場の者達の視界が一瞬奪われ、続く炎の龍により砂埃諸とも火の海と化していく。

 

 

誰も予想だにしなかった強襲に思わず赤髪海賊団が後退すると、数名の船員を下敷きにしていた巨大な塊がのそりと長い首をもたげ、大きな声で叫んだ。

 

 

「赤髪、てめェ…!!

なに勝ちましたみてェな(ツラ)してんだァ!!?

おれの船ぶっ壊して逃げただけの癖にふざっけんじゃねェ!!!

大看板(おれ達)()れもせずに、カイドウさんとレオヴァに手を出せると思うなよォ!?

 

怒り心頭だとばかりに怒鳴るクイーンの横に着地したキングのマスクから覗く赤い瞳にも怒りが滲んでいる。

 

 

「舐めた真似してくれたじゃねェか…

おかげでこっちはこんなデブを何百キロも運ぶ羽目になった…!!」

 

「おいコラ!?誰がデブだァ!?」

 

てめェ以外いねェだろうが…!

脂肪の塊を運ぶこっちの身になるんだな、さっさと痩せろ。」

 

「脂肪じゃねェわ…!

これ全部筋肉だっつってんだろ~が!!」

 

食ってかかってくるクイーンを無視してキングはカイドウとレオヴァの方へと飛び、声をかける。

 

 

「すまねェ、レオヴァ坊っちゃん……

カイドウさんどころか…赤髪の足止めもしくじった……」

 

「いや…今追い付いて来てくれただけで十分だ、キング。」

 

笑顔で返すレオヴァを見てキングは少し安心したように目を細める。

 

 

「いやいや!キングてめェなに無視してくれてんだよ!?

まぁ、兎に角カイドウさんとレオヴァはそのまま好きに暴れてくれ…!

赤髪のクソ野郎は絶対ェ潰すッ…!!」

 

苛立ちを全面に出しているクイーンにレオヴァが苦笑いしていると、カイドウが口を開いた。

 

 

「なんだって、てめェら赤髪なんぞと睨みあってやがる!?」

 

そんな話は聞いてないと不満そうな顔をするカイドウにクイーンは顔をひきつらせる。

 

 

「いや……そもそも、おれらが始めたワケじゃねェと言うか……なんなら元はと言やぁカイドウさんのせいっつーか……」

 

遠い目をしながら言葉を紡いだクイーンにキングが食って掛かる。

 

 

「おい、うるせェぞ風船野郎…!

カイドウさんのせいだって言いてェのか!?

 

ギロリと凄まじい目付きでキングはクイーンを睨み付けた。

しかし、クイーンは気にせずに言い返す。

 

 

「いやいやいや!今回ばかりは普通にカイドウさんのせいじゃね!?

 

「どう考えても悪いのはカイドウさんに手を出そうとした赤髪だろうが…!!」

 

今にも喧嘩を始めそうな二人をカイドウの声が止める。

 

 

「止さねェか…!!

この際、誰が原因かなんてどうでもいい…!」

 

「あー……それをカイドウさんが言うんスね~…」

 

諦めたような表情になったクイーンをキングはまた睨む。

そんな二人にレオヴァは苦笑いしながらカイドウの言葉に続けて口を開いた。

 

 

「……まぁ、クイーン。

これが終わったら“小紫”でも呼んで、おしるこパーティーを開こう。

その為にまずは…赤髪海賊団と海軍をどうにかするとしようか。」

 

気持ちを落ち着かせるような声色で言うレオヴァにクイーンはへの字だった口角を上げて頷いた。

 

そして、それを見たカイドウが豪気な笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「ウオロロロロ!よし、てめェら…!!

大乱闘と行こうじゃねェか!!!」

 

その宣言が響き渡ると

レオヴァ、キング、クイーン、バレット、ドレーク、シリュウの6人の猛者が一斉に進撃を再開するのだった。

 

 

 

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あれから、マリンフォードでの大事件は世界を震撼させた。

 

海軍によるポートガス・D・エースの処刑失敗。

“大海賊”エドワード・ニューゲートの死。

ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”が実在するという告白。

強大な存在であったバレットという男の百獣への加入。

世界のほぼ中心に位置する、海軍本部の陥落(かんらく)

 

そして、百獣海賊団VS赤髪海賊団の結果……赤髪海賊団の撤退。

 

 

この受け入れるにはあまりに壮大すぎる情報に、すべての人々は茫然自失となった。

 

 

そうして、この大事件を知った世間の人々は口々に言う。

 

白ひげに代わる海の王は百獣海賊団なのではないか?…と。

 

 

ひとつの時代が終わり

この海に新たな時代が訪れた。

 

そう、全ての人が感じざるを得ない程の事件だったのだ。

 

 

 

 

 

 

ときに場所は変わりマリンフォードから帰還中の空船では、カイドウの楽しげな声が響いていた。

 

 

「つーことで、だ。

バレットとシリュウの歓迎会も終わった。

そろそろ組手でもやるかァ…!?」

 

 

そう言うとカイドウはウキウキした様子で酒瓶を置き、その様子にレオヴァの瞳がキラキラと輝き出す。

 

 

「早速か父さん!

実は組手、楽しみにしてたんだ!!」

 

「ウオロロロロロ!そうだろう!!

レオヴァ、お前があんなに待ち遠しそうな顔をするのも珍しいからなァ…!」

 

「そんなに顔に出てただろうか…?

ふふふ、やっぱり父さんは何でもお見通しだな。」

 

「当たり前だ!

レオヴァのことで、おれに分からねェ事なんざ1つもねェからなァ!!」

 

独特な笑い声を上げるカイドウの隣でレオヴァは嬉しそうに微笑んでいる。

 

そんな聞くだけなら微笑ましい会話にクイーンが思わず口を突っ込む。

 

 

「ちょ…カイドウさん……組手はマジで勘弁して欲しいっつーか……」

 

げっそりした雰囲気のクイーンの体にはグルグルと包帯が巻かれており、他の幹部達の体にも痛々しいほど包帯などの治療の跡が見て取れる。

 

 

「なんだァ…?クイーン。

調子でも悪ィのか?」

 

不思議そうに首を傾げるカイドウにクイーンは自分の体を指差しながら口を開く。

 

 

「あー…見てもらえば分かると思うんスけど……おれら絶対安静って言われてるぐらい重症なんすよ~?」

 

「そりゃ昨日の話だろう。」

 

「そう、昨日!!

まだ1日しか経ってないんだぜ、カイドウさん!?

確かにカイドウさんとレオヴァはピンッピンしてるみてェだけども!

普通は1日じゃ治らねェんだわ!!!…ッウ!」

 

思わず全力で突っ込んだクイーンは体の痛みにその場に丸くなる。

 

痛みに唸るクイーンにレオヴァが心配そうに腕を伸ばそうとするが、それをキングが阻止した。

 

 

「レオヴァ坊っちゃん、そんな馬鹿の心配はいい。

……だが、組手はワノ国につくまで待ってくれ。

正直、今の状態でカイドウさんとレオヴァ坊っちゃんと組手をすると……」

 

遠い目をし出したキングにカイドウがまたもや首を傾げていると、ローがキングの言葉に加勢するように口を開いた。

 

 

「カイドウさん。

レオヴァさんは確かに元気そうに見えるが、バレットとの戦闘で重傷だった治療箇所に赤髪の追撃(・・・・・)を受けてる。

普通なら脚の神経が治らずに動かせなくなるぐらいの怪我だったんだ…

医者としても、おれ個人としてもレオヴァさんには暫く安静にしてて欲しい。」

 

ローから“赤髪”という名が出るとカイドウは不機嫌そうな顔になりつつも、レオヴァを見た。

 

今現在カイドウの目にはレオヴァは至って通常に見えるが、宴の最中に確かに脚を気にする素振りがあったのをしっかりと覚えていた。

 

 

「……レオヴァ、脚の調子はどうだ。」

 

心配を滲ませたカイドウの声にレオヴァは嬉しさと申し訳なさが混じった顔になる。

 

 

「父さん、そんなに心配しないでくれ。

おれは父さんの息子だ、赤髪の一撃程度で駄目になるほど(やわ)じゃない。

……ローは心配性すぎるんだ。」

 

眉を下げるレオヴァに心外だとばかりにローは言い返す。

 

 

大袈裟に言ってる訳じゃねェからな…!

……おれが治療する時どんな気持ちだったかレオヴァさんには分からねェんだ!!」

 

「……それは……ロー、悪かった。

優しいお前のことをちゃんと考えられてなかったな…」

 

「っ…別に……レオヴァさんが全部悪いわけじゃねェ…

けど、無茶すんのは本当にやめてくれ…」

 

珍しく顔を歪めるローの頭をレオヴァは帽子の上からポンッと軽く撫でた。

 

 

そんなレオヴァとローのやり取りを見ていたカイドウはひとり頷くと口を開いた。

 

 

「……よし、組手はレオヴァの脚の許可がローから下りるまで延期だ。 

いいな、レオヴァ。」

 

「分かった、父さん。

いつも治してくれる船医の忠告はちゃんと聞かないとな。」

 

組手を諦めた親子にクイーンは盛大にガッツポーズを決めてしまいまた痛みに襲われ、ドレークやシリュウ達も内心で大きく安堵の溜め息をついた。

 

 

 

一方、その頃。

 

あわや組手地獄という危機を無事乗り越えたクイーン達のいる部屋と反対側にある医務室では、二人の幹部がベッドの上で退屈を持て余していた。

 

 

「あ~…くそッ……せっかくカイドウさんもレオヴァさんもいるってのに、なんで一緒に酒飲めねェんだよ~…」

 

横たわったまま悔しげな声を出すササキに、フーズ・フーは不機嫌そうにマスクの下の眉を潜めた。

 

 

「うるせェんだよ、ササキ…

んなもん、ボコられたてめェのせいだろーが。」

 

そう吐き捨てる同じく横たわったままのフーズ・フーを、ササキはあまり動かせない首を必死に動かして睨み付ける。

 

 

そう言うてめェもボコられてんじゃねェか…!!ッ…痛ェ……

大声出させんなよ、全身痛ぇんだから…」

 

「…お前が勝手に騒いでんだろうがよォ……」

 

その後も二人はベッドに寝た状態のまま言い合っていたが、フーズ・フーが疲れたように溜め息をついた。

 

 

「あー……やめだ、やめだ…

てめェと話してるとドジが移るぜ……」

 

「誰がドジだ…!! ~ッ…!?

やべ……う、腕動かし…ちまった……」

 

骨が砕けている方の腕に力を入れてしまったササキは痛みに悶える。

 

その姿に暫くクツクツと喉を鳴らして笑っていたフーズ・フーだったが、あまりにも静かすぎるササキに眉を潜める。

 

 

「……おい、ササキ?」

 

「…………」

 

「…おい、返事ぐらいしろ。」

 

「……」

 

「ササキ…?」

 

返事がない事にフーズ・フーが顔を青くして、呼び出しボタンを押そうとした時だった。

 

 

「………っは!危ねェ…!

痛いから目ェつぶって堪えてたら……一瞬寝ちまってたぜ…

いや~、けどよォ…本当に早くワノ国戻って“あの薬”使いてェよなァ!

寝たきりじゃ退屈でしょうがねェよ~!」

 

呑気に話し掛けてくるササキに、フーズ・フーの眉間に青筋が浮かぶ。

 

 

「ッ…てめェ、ふざけやがって……」

 

「な、なんだよ急に……なに怒って…」

 

結構本気で怒りを露にしているフーズ・フーにササキはあわあわと慌て出す。

 

 

「うるせェ…!

おれは寝るから、もう話し掛けてくんな。」

 

「は…!?マジかよ!

お前が寝ちまったらおれ暇じゃねェか!」

 

「知るか、ボケ…!勝手に暇してろ。」

 

そう言ってフーズ・フーは完全に瞳を閉じてしまい、残されたササキはひとり眉を下げるのだった。

 

 

 

 

 




ー後書き&補足ー

マリンフォード:百獣の手によって陥落。
現在はバレットが守備しており、もうすぐジャック達が来てマリンフォードの改良が始まる予定。

・赤髪海賊団&海軍
ほぼ共闘という形で約10時間、百獣海賊団との戦闘を続けた。
センゴクとシャンクスの連携により、元々負傷していたレオヴァの脚に大きなダメージを負わせることでカイドウの動揺を誘い、多くの海兵と船員を戦場から避難させることに成功。
しかし、その後すぐに立て直したレオヴァがカイドウを落ち着かせたことで戦況が悪化。
怒り狂う百獣の進軍を止めることが出来ず、已む無くマリンフォードを捨て撤退した。
(シャンクス的には戦争を終わらせることが目的なので、ある意味成功ともいえる。)

センゴク&ガープ:重傷、多くの者を守ろうとして守りに徹しすぎた。
(ガープはエースとルフィのことを気にして最初に全力を出せなかったことも関係している)

三大将:三人とも重傷だが、最終的に気絶した赤犬を黄猿が運んで撤退した。

白ひげ:戦闘中ローによって遺体は船に運ばれており、現在も船の中にある。
カイドウの指示で、とある場所に墓を立てる予定。

白ひげ海賊団:ほぼ全員が百獣のナワバリにて休養中だが、すぐに出ていった者もいる。

マルコ:エースと定期的に電伝虫にて連絡を取っている。

エース&ルフィ:レオヴァ達が乗ってる船とは別の船にて治療中、ジンベエもいる。
エースは比較的安定しているが、ルフィはまだ眠っている。

黒ひげ海賊団:ラフィットが黒ひげを連れて離脱しようとしていたが…?

・七武海
鷹の目:レオヴァ参戦の時点で協定外だといい離脱済み。
ハンコック:ルフィを追いかけて早々に離脱。
ドフラミンゴ:最後まで残っていたが、レオヴァと繋がっているので損失などはなし。
モリア:ドフラミンゴにボコられていたが…?

クロコダイル:ローが船を奪っている横で別の船をダズと共に略奪し、暫く戦いを眺めていたがその後離脱。

バギーと仲間達:ちゃっかりベポに付いて行き離脱。
現在は百獣のナワバリでぬくぬくしている。

・百獣海賊団
カイドウ:あれだけ闘い続けて多くの攻撃を浴びた筈なのだが、1日経った今はケロッとしている。

レオヴァ:脚に致命傷を負ったがローの尽力によりほぼ回復。だいぶ重傷の筈なのだがパッと見は元気。

クイーン&キング:普通に重傷。何故かキングは涼しい顔をしているが絶対安静と言われている。

バレット:重傷だったがレオヴァの手持ち最後の“ある薬”をもらったことで軽傷にまで回復。

シリュウ:シャンクスの攻撃で腕を失ったが、百獣の移植技術にて復活。

ドレーク&ロー:この中では一番軽傷だが結構深い傷を負っている。治療は終えたので安静が必要。 

ベポ:ほぼ無傷。白ひげ海賊団の誘導などの仕事をしていたので戦場にいた時間が短かった。
今はナワバリにて白ひげ海賊団の船員と過ごしながら迎えを待っている。

フーズ&ササキ:先の赤髪海賊団との戦闘にてベックマンとヤソップにやられた。かなりの重傷なのでベットで絶対安静にしろとキツくレオヴァから言われている。

[被害]
・幹部数名が重傷。
・赤髪海賊団との戦闘にて、クイーン専用の空船が撃墜(五億ベリー以上の損失)。
・希少な“ある薬”を3本消費。

[成果]
・バレットとシリュウという人材。
・マリンフォードとそこにあった武器や海楼石など。
・赤髪と海軍に勝ったという実績。
・“???”の捕縛と、マゼランの細胞。
・幹部達への戦闘経験値。


ー追記ー
ご質問等を下記にて募集しております!
https://peing.net/ja/hmln_ss_motio

既にレオヴァの手料理を初めて食べたカイドウさんの反応や、レオヴァがキングの素顔を知った年齢など様々なご質問に答えさせて頂いておりますので暇潰しにでも覗いて頂けたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします~!
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