俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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↓今回でてくる愉快な“何か”達のイメージ図です!

【挿絵表示】

ちょっと気持ち悪い見た目なので、苦手な方はスルーして頂けると助かります!
イメージ補完用の絵なので…


上陸、パンクハザード

 

 

時は少し遡り、ワノ国。鬼ヶ島にて。

 

謹慎が解けた狂死郎に赤鞘を迎えに行かせる為の準備を進めていたレオヴァ達のいる部屋に、慌てた様子で部下が転がり込んで来た。

 

 

「レ、レオヴァ様!!」

 

ノックも無しに部屋へ入った部下をレオヴァの隣に座っていたジャックがギロりと睨み、低い声を出す。

 

 

「部屋に入る前の声掛けも出来ねェのか!?

会議中の札も出てた筈だぞ!」

 

「も、申し訳ありませんっ…ジャック様!」

 

「馬鹿野郎!!

おれに頭を下げるより先に、レオヴァさんへの謝罪だろうが!!」

 

「っ…!?

レオヴァ様…大変申し訳ありません……」

 

顔を真っ青にしながら必死に頭を下げる部下にジャックは鼻を鳴らすとレオヴァへ目線を戻す。

 

 

「すまねェ…レオヴァさん、おれの教育不足だ。」

 

「構わねェよ、ジャック。寧ろ十分すぎるくらいだ。

…お前も顔を上げて良いぞ。

確かにあまり褒められる行動ではなかったが、急ぎの報告があったんだろう?

次から気を付けられるようになれば良いさ。」

 

「レオヴァさんが良いってんだ、報告があるなら始めろ。」

 

「は、はい!ありがとうございます!

では……」

 

レオヴァから許しを得た部下は先ほど入った情報を伝えるべく口を開いた。

 

 

「先ほど魚人島に滞在している真打ちから

キッド海賊団と麦わらの一味の同盟が結成されたとの報告が…!!」

 

「なんだと…!?」

 

「成る程、3つ目の同盟相手は麦わらの一味か。」

 

驚きと怒りで目をかっぴらくジャックとは対照的にレオヴァはふむ、と冷静なまま返事を返した。

 

 

「もうキッドの野郎は放置出来ねェ!!

あの野郎、レオヴァさんから受けた恩(・・・・・・・・・・・・)を仇で返すつもりじゃねぇか!!!」

 

「落ち着け、ジャック。

(いきどお)ってくれんのは嬉しいが、お前には狂死郎と赤鞘の件を任せてェ。

キッドとキラーの事は一度、会議に上げてから決める。」

 

「…………分かった。

レオヴァさんがそう言うなら、おれァそれで。」

 

少し不満げな雰囲気ながらも頷いたジャックにレオヴァは微笑みを返す。

 

 

「悪ィな、ジャック。

お前には苦労かける。」

 

「そんな事ねェ!

もっと任せて欲しいくらいだ。」

 

幾分、柔らかくなったジャックの気配に部下は胸を撫で下ろし、立ち上がったレオヴァを見上げる。

 

 

「では、おれは一度父さんの所に行ってくる。

ジャックは手筈通り、狂死郎を連れて任務へ向かってくれ。」

 

「了解だ、レオヴァさん。」

 

ジャックの返事に軽く笑みを返すとレオヴァは部屋を後にした。

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

カイドウに呼ばれて鬼ヶ島の会議室へ来ていたキングとクイーンの二人は、揃って不快そうに眉をしかめた。

 

部屋に着いて早々、カイドウとレオヴァに挨拶をしたまでは良かったのだが。

その後、部下から受けた報告が二人の表情を歪ませたのである。

 

 

“キッド海賊団と麦わらの一味の同盟”

それも百獣海賊団のナワバリである魚人島で堂々と結ばれたとあっては尚更良い気分ではない。

 

クイーンは不満さを隠そうともせずレオヴァに思ったことを、そのまま吐き出した。

 

 

「だ~からァ!

あのクソ生意気なキッドのガキは潰しちまおうぜって言ったじゃねェかよォ!レオヴァ~!!」

 

「今回ばかりはこのマヌケと同意見だ、レオヴァ坊っちゃん。

勝手にウチを抜けた(・・・・・・)挙げ句、同盟を集めて攻めて来ようなんて馬鹿は四肢を捥いで分からせてやるくらいでちょうどいい。」

 

二人の言葉にレオヴァが苦笑いを返していると、カイドウは酒を飲んでいた手を止めて口を挟んだ。

 

 

「キッドの小僧はレオヴァが目をかけてただけあって見所がある。

それに勝手に抜けたワケじゃねェしなァ。」

 

カイドウの言葉にキングは納得いかないと言いたげに目を細めた。

 

確かにカイドウの言うようにキッドは勝手に百獣海賊団を抜けた訳ではない。

もっと言うのであれば、見習いであり正式に入団はしていなかった。

 

その見習いを辞める時もちゃんとレオヴァに宣言してから抜けている為、そこはカイドウもレオヴァ本人もあまり気にしてはいなかったのだ。

 

しかし、キングとクイーンからすれば散々レオヴァに世話になっておいて、啖呵を切って出ていった生意気なガキ共の印象は最悪だった。

 

特にキングには、あの忙しいレオヴァがわざわざ休日や休憩時間を割いて、無理やり時間を作ってまで世話を焼いていたのに、と言う怒りもある。

 

だが、二人の思いとは裏腹にカイドウもレオヴァも“強者”には甘い一面があるのだ。

若いながらにキッドとキラーは覇気を扱えた。

さらにキッドに至っては覇王色の才覚もあったと言う話をレオヴァから聞いている。

 

 

クイーンは生意気な二人のガキを思い出し、青筋を浮かべながらカイドウに言葉を返す。

 

 

「確かに勝手に抜けたワケじゃあねェけど

キッドのガキはレオヴァに啖呵切ってたんスよ!?

挙げ句に打倒百獣を掲げて同盟集めてんだ。

こりゃ完全に敵対行動だぜ、カイドウさん!!」

 

尤もな意見にカイドウは少し唸ると、酒で喉を潤しつつ返す言葉を探した。

 

 

「ア~……まぁ、クイーン。テメェの言うことは尤もかァ。

あの啖呵は、何かとレオヴァに構って貰おうとしてたキッドの小僧の癖みてぇなモンだろうが…

仕方がねェ。レオヴァ、そろそろキッドの小僧に迎えを出せ。」

 

「そうだな、父さん。

そろそろキッドの家出も潮時か…」

 

呑気なやり取りをする親子にクイーンは大きく溜め息を吐く。

 

 

「おいおいおい……カイドウさんにレオヴァよォ…

キッドの馬鹿がやってる事はガキの反抗期じゃ済まねぇ状態なんだぜ?

麦わらの一味はまだしも、あの海賊団(・・・・・)と手を組んでるのは見逃せねェって!!」

 

クイーンの言っている海賊団を思い出し、カイドウが渋い表情になる。

 

 

「そりゃあ、分かってる。

ガキの我が儘じゃ済まねェところまで来つつあるが、ウチのナワバリと船にゃあ手を出してねェんだ。

連れ帰ってまたウチに入るって言うまでキングが世話(・・)すりゃあ良い。」

 

「……まぁ、それならいいスけど。」

 

カイドウがそこまで言うならと渋々口を閉じたクイーンを見計らって、キングが言葉を挟む。

 

 

「カイドウさん、おれが面倒みるのは構わねェが。

もし、ウチに戻る気はねェと言い続けたらどうするんだ?」

 

「……その時は、レオヴァに一任する。

キッドの小僧はおれが連れてきたワケじゃねェ。

レオヴァが処分するってんなら、好きにすりゃいい。」

 

その言葉にキングは頷くと、レオヴァへ目線を移す。

 

レオヴァはどこまでも身内に甘い男だ。

昔のようにある程度なら“ヤンチャ”で済ましてしまうのではないか。

そんな少しの懸念を持ってレオヴァを見た。

 

だが、レオヴァはそのキングの心を読んだのかのように笑みを消すと、真剣な顔で目を見つめ返した。

 

 

「大丈夫だ、キング。

おれは何を優先すべきかは弁えてる。」

 

揺るぎない声から感じ取れた覚悟にキングは満足そうに目を細めた。

 

 

「それでこそだ。

おれはもう何も口は出さねェ、世話は任せてくれ。

クソガキ共のあとの事は全てレオヴァ坊っちゃんに任せる。」

 

レオヴァがキングの懸念を完全に拭い去った気配を感じると、クイーンは話題を戻すように報告書片手に話を再開した。

 

 

「……で、最初の話に戻るが!

魚人島からの情報によれば、麦わらの一味とキッドのガキは“ワノ国”に攻めいるって作戦らしいけど……どうするんだよ、レオヴァ。」

 

報告書にある麦わらの一味とキッド海賊団の動きにどう対処するのかと問われたレオヴァの眉を潜め、沈黙する姿にキングが違和感を感じて首を傾げる。

 

普段であれば多少悩む素振りはあれど、素早く対策を語り始めるレオヴァが長く沈黙するのは珍しい。

それに眉に皺を寄せる姿をカイドウの前で見せるのも、あまりない事だ。

 

いつもと違う姿にカイドウとクイーンが不思議そうにレオヴァを見やる中、キングは伺うように言葉を投げた。

 

 

「何か問題か、レオヴァ坊っちゃん?」

 

「…報告ではワノ国に攻めいると言っていたとあるが。

本当にワノ国に来ると思うか?」

 

レオヴァの言葉にキングは少し目を細め、一拍おいた。

そして、考えがまとめ終わったのか口を開く。

 

 

「情報を鵜呑みにするならば来る……と思うが、ウチの内情を少しとは言え知っている奴がワノ国に攻めてくるのは軽率に感じるな。」

 

「いや~、でもキッドのガキは後先考えず突っ走るタイプじゃねェか。

あの野郎なら同盟もある程度揃ったってことで、勢いでそのまま攻めてくるんじゃねェの?」

 

考えすぎだと笑うクイーンをキングは睨み返す。

 

 

「能無しが…!

テメェはレオヴァ坊っちゃんがキッドのガキの教育を担当したのを忘れたのか?

……ウチを抜ける前はある程度、考えて動けるようにはなってた。」

 

百獣海賊団を抜ける直前のキッドを思い出してキングは忌々しげな顔をする。

一方、クイーンはそうだったか?と記憶を辿ってみるが、どうやら目ぼしい記憶は見付けられなかったようで首を傾げていた。

 

そんな二人のやり取りにレオヴァは考える素振りを見せながらも言葉を挟んだ。

 

 

「クイーンの言うように確かにキッドは直情的な面もある。

だが、キングの言葉通り…それを少し克服出来るようにはなっていたんだ。

それにキラーもいる。

もし、仮にキッドがワノ国へ行くと言えば止める筈だ。

…昔からあの二人は良くバランスが取れていたからなァ。」

 

懐かしげに目を細めるレオヴァにクイーンは何とも言えない顔をしつつ、思考を回転させる。

そして、導き出した答えを口にした。

 

 

「…ってことはよォ。

ワノ国に攻め入る発言はフェイクの可能性があるってレオヴァは考えてるワケだな?」

 

「そうだ。

確かに“あの海賊団”が同盟にいることで戦闘員の数は一気に増えたとは思うが、それでも足りない事はキッド達も分かってる筈だ。

そうなると、こちらの戦力をどうにかして削ろうとキラーが提案するだろう。

……で、クイーンならどう手を打つ?」

 

「なるほどォ?

そうだなァ~……おれならハチノスを落とす。」

 

「確かに、一理ある。

ハチノスはワノ国に次ぐ、第二の拠点だからなァ。」

 

レオヴァがふむ、とクイーンの意見を頭で計算しているとキングも口を開く。 

 

 

「大きな拠点を狙ってくる可能性は高いが、外の工場に手を出してくる可能性もあるんじゃねェか?」

 

「はぁ?工場だァ…?

アホキング、戦力を削ぐなら拠点を潰しに来るに決まってんだろ。」

 

「アホはテメェだ。脳ミソの代わりにあんこでも詰まってんじゃねェのかァ?

戦力を削る方法は、なにも相手を潰すだけじゃねェ。

工場が壊されりゃあ、そこに部下共を向かわせなきゃならねェんだ。

そうなりゃ人員が分散することになって、ナワバリ内の戦力低下につながるだろうが…!!」

 

「うぐっ……だが、それをあいつらが思い付くとは思えねェけどなァ。」

 

「…普通なら、どこが必要性の高い工場なのかなんて分かりゃしねェ。

だが、あの生意気なガキ共は少しとは言えウチに居たんだ。

それを知ってる可能性がある限り、あり得ない話じゃねェ。」

 

キングの話にレオヴァは同意するように頷くと、小さく唸った。

 

 

「キングの言うように、工場に手を出されるのは厄介だ。

重要な工場はほぼ全てがワノ国とハチノスにあるとは言え、日用品など貿易用の工場も大切だからな。」

 

「はぁ~…いよいよ面倒なことになって来やがったなァ…」

 

大きく溜め息を吐くクイーンにレオヴァは言葉を続ける。

 

 

「だが、キッド達はほぼ工場の場所を知らない。

情報を手に入れられたとしても、情報管理が緩い場所の工場は壊されても大した影響のない場所だ。

……そう考えると、少し絞れるんだ。キッド達が狙いそうな工場の場所を。」

 

「マジかよ、レオヴァ!

てか、なんでキッドのガキは工場の場所知らねェんだよ…?

レオヴァ自ら何かと世話焼いて、色んな所連れて行ったりしてたんだろ?。」

 

「ん?…まぁ色んな景色を見せたりはしていたが。

まだ見習いの二人に重要拠点や工場の場所は教えてねェし、連れて行ってもねェ。

完全にウチに入ったワケでもない見習いに重要な情報は渡せねェだろ?」

 

当然のように言ってのけたレオヴァに、クイーンはこう言う所あるよな…と微かに顔を引き吊らせた。

 

どんなに目をかけていようが、世話を焼こうが。

結局、レオヴァは本当に信頼を寄せる者にしか大切な事は教えないのだ。

それは裏を返せば、信頼している者以外は皆が裏切るだろうと考えているようにも取れる。

 

ずっと信頼を置かれているせいで忘れかけていたレオヴァの一面にクイーンは苦笑いしつつ、話を促した。

 

 

「で、その絞り込めた工場ってのは何処だ?」

 

「新世界のあの冬島の工場か、パンクハザードの研究所と工場が怪しいな。」

 

「なら、あの冬島の工場にはドレークでも行かせるか!

パンクハザードは確かドフラミンゴの野郎に一任してるんだったか?」

 

「一任という言い方は止せ、クイーン。

ドフラミンゴはウチの傘下じゃねェ、対等な協力関係だと言ってるだろう。」

 

「ハッ!対等、ねェ?」

 

思わず笑ったクイーンにレオヴァは困ったように眉を下げた。

 

 

「で、レオヴァ坊っちゃん。どうするんだ?

ドフラミンゴの奴に増援を出すと言った所で受け入れはしねェだろう。」

 

「……そうだな。

一応、麦わらの一味やキッド達についての情報を渡して様子を見るしかねェ。

もしもの事があれば、流石にドフラミンゴもこっちの増援を受け入れる他なくなるだろうしなァ。」

 

仕方がないと小さく息をつくレオヴァに、クイーンはお汁粉片手に笑う。

 

ルーキーぐらいに簡単にかき乱される事はないだろうと余裕を見せるクイーンとは裏腹にレオヴァの眉間には皺が寄ったままだ。

 

 

「…一応、本当にナワバリに攻めてくる可能性も視野に入れてハチノスにも幹部を送っておきたい。

構わねェか、父さん?」

 

こちらを見上げて問い掛けてくるレオヴァの姿に、カイドウは酒を飲んでいる手を止める。

 

 

「構わねェ!

この際だ、ハチノスだけじゃなくマリンフォードと魚人島にも送っとけ。

キッドの小僧の同盟はデカい話になってる。

それに便乗して海軍の馬鹿共が乗り込んでくる可能性もあるからなァ。」

 

「ありがとう、父さん。

キング、まだ時間あるか?

誰を何処に送るか話し合いをしてェ。」

 

「勿論だ、レオヴァ坊っちゃん。」

 

どうするか、と話を始めたレオヴァとキングの見慣れた風景を眺めながらカイドウはまた新しい酒瓶へ手を伸ばした。

 

 

キッドの小僧でも麦わら帽子の小僧でも、海軍でも。

この愛おしくも少し穏やかすぎる日々の楽しい刺激になるなら構わないと、カイドウは僅かに口角を上げた。

 

レオヴァの言う海賊王になる為のラストスパートが“今”ならば、己の息子以外で全力をぶつけられる強者が現れるかもしれない。

話に聞いた“ジョイボーイ”も楽しみだ。

そう思い、カイドウは笑ったのだ。

 

戦いはカイドウにとって必要不可欠なものなのだ。

マリンフォードでの戦争のように。

息子と共に何も考えず、ただ目の前の強者を食らう瞬間は最高に楽しい。

 

 

だが、海賊団の頂点に立つものとしてカイドウには組織を安定させる務めがあった。

その為、酔っていない時は溢れ出る破壊衝動をコントロールして“船長”として務めて来た。

 

だが、今では“自分を抑える”必要はない。

好きに生きられるのだ。どこまでも自由に。

 

カイドウという一人の男を肯定し支える“息子”と言う存在がいる限り、この自由は揺らがない。

 

何処までも行ける。

そうカイドウは確信していた。

自分とレオヴァが共に進めば、越えられぬものなどない。

百獣海賊団こそ、世界最強であると。

 

 

始めは信頼の置ける者はキングただ一人だったが、気付けばその数は増えていた。

信頼関係など役に立たないと思っていた昔の自分では考えられない思考に、カイドウはまた小さく笑った。

 

 

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時は戻り、現在。

 

麦わらの一味とキッドとキラーを乗せたサニー号は嵐の中を突き進んでいた。

 

 

「おいおいおい!

やべぇよ、この嵐っ!」

 

「ちょっと、ちょっと!ど、どうなっちゃうんですか~!?」

 

「サニー号は問題ねェ!!」

 

慌てた様な声を出すウソップとブルックとは違い、フランキーは不敵な笑みを浮かべながら舵を取っており。

その横では、楽しげな声を出すルフィもいた。

 

三者三様の反応の中、前を見据えていたゾロが声をあげた。

 

 

「なんだ、ありゃあ?」

 

同じ方向を見ていたナミとロビンも思わず声を漏らす。

 

 

「なにあれ!?あり得ない!」

 

「……赤い海?」

 

麦わらの一味が一斉にそちらへ目を向けると、大きな音と共に火山が噴火する。

 

その光景にルフィは瞳をキラキラさせながら燃え上がる島を指差した。

 

 

「見ろ!火山が噴火したぞ!?

スゲェ~!ここがポンクハバード(・・・・・・・)か!!

なぁ、早く行こう!!」

 

ワクワクが抑えられないと眩しい笑顔で仲間を振り返るルフィに、思わずキッドとキラーが声を荒げる。

 

 

「「パンクハザードだ!!

遊びに行くんじゃねェんだぞ、麦わら!!」」

 

億超えの二人の怒声も何処吹く風なルフィをナミ達は溜め息混じりに眺めながら、上陸の準備を始めた。

 

 

まず、パンクハザードで工場を破壊する前にイネットを生捕りにしなくてはならない。

そうなると最初は慎重に動き捕獲後に盛大に暴れる、という流れなのだが

この作戦をちゃんと理解出来ているのか怪しい雰囲気の麦わら帽子の男の姿にキラーは大きく溜め息をついた。

 

 

「行くぞ、お前ら!

不思議島~~!!」

 

「おい、ルフィ。

さっきぐる眉に渡された弁当持ったのか?」

 

「あっ!やべぇ!!」

 

弁当を取りに引き返したルフィの姿にキッドはまた額に青筋を浮かべる。

 

 

「ガキの遠足かァ…!?」

 

キッドの苛立ちを含んだ声をBGMに、パンクハザードに突入するための準備が進められるのだった。

 

 

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あれから無事、火の海を越えてパンクハザードへの侵入を成功させた一味とキッド達は灼熱の中を汗だくで進んでいた。

 

 

「暑~~い~…」

 

「…うるせぇぞ、麦わら。

気の抜けた声出すんじゃねェ!」

 

キッドの声も心なしか覇気がない。

 

 

「う~……おれもフランキーと船番してれば良かった…」

 

「そっか、チョッパーは暑いの苦手だもんな。」

 

一味の中でも特に辛そうなチョッパーをウソップが労るような目で見ていると、ロビンが足を止めた。

 

 

「ロビン?

どうしたのよ、早く先へ…」

 

「待って、ナミ……今何か聞こえなかった?」

 

「え…?」

 

「こ、怖いこと言うなよロビン~!」

 

ナミとウソップがキョロキョロと辺りを見回すが、一面火の海で何も見当たらない。

 

 

「ほら、ロビン何もいねぇ……」

 

最後まで言葉を発することが出来ずにウソップが固まる。

 

 

「ちょっと、なによウソップ!?」

 

「おい、どうした?」

 

騒ぐナミ達の異変に気付いてルフィと共に先頭にいたゾロが振り返ると、物凄い顔でウソップが燃える建物を指さしている。

 

それに釣られるようにゾロ達が目線をずらしていくと、燃えている建物の脇にカラフルな“何か(・・)”が居た。

 

 

「アツツ……ア、ア……」

 

「タケステ~クレル、オオオオオ…」

 

「スイタ、ノ……オナカカカ」

 

良く分からない“何か”は声の様なものを発しながら、ぞろぞろと物陰から現れる。

 

“何か”はそれぞれがカラフルな色をしていた。

大きさは2mくらいの個体や4m以上の個体までおり、ナミ達は見上げる形になっている。

 

しかし、ウソップが声を失ったのはその大きさ故ではなかった。

この“何か”には、生理的に受け付けないイヤな雰囲気があるのだ。

 

カラフルでファンシーな胴体に不釣り合いな顔の様なものが付いているが、あるパーツは“眼”だけだ。

ちぐはぐな場所にある口から発せられる、人間の声に近いようで異なる音は思わず耳を塞ぎたくなる。

 

 

 

よたよた、のそのそ…とこちらへ近づいてくる“何か”にナミは思わず悲鳴を上げた。

 

すると、その声に反応するように鈍かった“何か”達の動きが俊敏になっていく。

 

突然、ナミやウソップに襲い掛かって来たように見える不気味な“何か”をゾロが切り伏せた。

 

 

「なんなんだ、コイツら!?」

 

「「ゾ、ゾロ~!」」

 

半泣きでナミとウソップはゾロの後ろへ身を隠す。

 

一方、得体の知れない“何か”は先ほどよりも数を増している。

 

 

「カエセ……ム…メ……アア…」

 

「オ……オオオオオ……タベ、テ」

 

「ママ…マママ……ネ?」

 

寒気がするような動きで迫ってくる“何か”に一味とキッド達は戦闘態勢に入った。

 

 

襲いくる大量の“何か”を斬り伏せ、時には殴り飛ばすが一向に倒れる気配はない。

斬られた個体も、ウネウネ蠢きながら這ってくる始末だ。

 

ウソップ、ナミ、チョッパー、ブルックは『ひいぃ!』と情けない悲鳴を上げながら、息も絶え絶えに“何か”を吹っ飛ばしている。

 

 

「おい、これじゃあ埒が明かねェぞキラー!!」

 

「分かってる、キッド!

進むための道を作るしかない。

これ以上、ここで体力を消費するのは愚策だ!」

 

「任せろ、キラー!

おい、麦わらァ!そこ邪魔だ!!!」

 

キッドが腕を掲げると瓦礫の中から破片が集まってくる。

 

あっという間に自分よりも大きくなった瓦礫の腕を前に突き出し、キッドは進みたい方へ向けた。

 

 

「“反発(リペル)”!!!」

 

キッドの腕に集められた鉄屑が物凄い勢いで飛び出していくと、“何か”の間に道が出来る。

 

 

「行くぞ、キラー!!」

 

「分かった!

おい、麦わら達こっちだ!」

 

「急げ急げ!!」

 

「ルフィ、早く来いって!」

 

一目散に出来た道へ向けて走り出す。

 

だが、やはりと言うべきか“何か”達はぞろぞろと後を追いかけてくる。

 

 

「くそ~!まだ追ってくるのかよ!?

こうなったら…

必殺緑星(みどりぼし)(タケ)ジャベ(リン)!!

 

ウソップ達が走って来た道に一瞬で鋭い竹が生え、“何か”達がそれに阻まれる。

 

 

「おぉ!!

やるじゃねェか、ウソップ!」

 

「へへっ、まぁな!

だけど、この火の海の中じゃ長く持たねぇ。急げ~!」 

 

ゾロに褒められ、照れたように笑っていた顔を引き締めるとウソップは走り出す。

 

他の一味も一瞬、止めていた足をまた動かしキッドとキラーに続くのだった。

 

 

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あれからずっと走り続けているうちに炎に包まれていた場所を抜けた一味とキッド達は目の前の光景に唖然としていた。

 

 

「炎の海の次は雪山かよ!!?…へっくしょい!」

 

「良かった~!

おれ暑くて死ぬかと思った…」

 

「そうか、チョッパーは寒いの強いんだよな。」

 

先ほどの“何か”を振りきって余裕のある会話をする一味を置いて、キッド達はどんどん先へ進んで行く。

 

 

「まずは研究所と工場を見つけねェと話にならねェ。」

 

「…だいたいの位置しか分からないからな。」

 

キッドとキラーの会話に、ゾロが口を挟む。

 

 

「なら、手分けすりゃ早いじゃねェか。」

 

ゾロの提案にキラーは数秒沈黙した後、一味へ顔を向けた。

 

 

「もし、手分けするとした場合。

誰と誰は一緒にした方が良いとかはあるか?」

 

「ゾロはナミかロビンとか、誰か付かないと駄目だな。」

 

「そうね、一生合流出来なくなりそうだし。」

 

「そうか、ロロノアは単独行動させては不味い…と。」

 

「おい!?」

 

流れるように自分の名前を出されてゾロが抗議の声を上げるが、一味はうんうんと頷いている。

 

そんなやり取りをしつつも話は進み、キラーとナミによって研究所と工場を探す為のチーム分けが成立した。

 

 

「じゃあ、私とゾロ、ウソップ、サンジくん、ロビンね!

……ゾロ、勝手に1人で行動しないでよ?」

 

「何でさっきから、おれだけ名指しなんだよ!!」

 

「当たり前じゃない!

自分の過去の行動思い出してみなさいよ!?」

 

「何かあったか…?」

 

分からないと首を傾げたゾロを、ナミとウソップは呆れた顔で見つめた。

 

その横ではキラーがキッド達の方を向いて口を開いている。

 

 

「おれとキッド、残りの麦わらの一味で組む。

もう一度繰り返すが、手分けして探した(のち)

発見次第、渡した電伝虫で連絡を取り……合流してから施設へ侵入する。

いいか?

くれぐれも問題を起こして、こちらの存在がバレるような真似だけはするなよ。」

 

「おう!分かった!!」

 

一番、分かってなさそうなルフィの返事にキラーは少しの疲れを感じながらも、ナミを振り返る。

 

 

「分かってるわよ。

まずは隠密行動、でしょ?」

 

「…そっちはしっかり理解してくれてる様で何よりだ。

合流にはさっき渡したキッドのビブルカードを使ってくれ。

それは後で、麦わらのビブルカードと交換と言う形で返して貰うからな。失くすなよ。」

 

「問題ねェ、おれが責任もって預かっとく。」

 

サンジの返答に軽く首を縦に振って返すと、キラーはキッドの方へ歩いて行く。

 

そのキラーの後ろ姿を見ると、逆の方向へナミ達も歩き出した。

 

 

 

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ルフィ達と別れてから1時間近く極寒の中を彷徨っていたナミ達は大きな建物を発見していた。

 

 

「おい、ナミ!

これって……」

 

「キッド達が言ってた施設…!?

やっと見つけた!」

 

「まさか、山と一体化してるとはな…」

 

驚くナミとウソップの横でサンジも大きな施設を見上げる。

 

 

「よし、ナミさん。

まずはルフィ達に連絡を。」

 

「そうね!」

 

ナミは電伝虫を取り出して、受話器を構える。

プルプルプル…と暫く呼び出しが鳴ったあと、受話器からキラーの声が届く。

 

 

「……おれだ、何か問題か?」

 

「いえ、施設を見つけたの。」

 

「そうか…!今から向かう。

何処かで隠れていてくれ。」

 

「えぇ、洞窟があるからそこに隠れてる。」

 

必要なことだけ告げると切れた電伝虫をまた仕舞い、ナミは洞窟を指差した。

 

 

「あそこなら吹雪も防げそうじゃない?」

 

「ナイスアイデアだぜ、ナミ!

もう寒くてよ~…」

 

ブルブルと震えるウソップはあらぬ方向へ進もうとしていたゾロを捕まえつつ、ナミ達の後ろへ続いた。

 

 

5人が洞窟に入ると、そこは真っ暗で何も見えない空間が広がっていた。

その薄気味悪い雰囲気に、急いでウソップは簡易松明を作成すると、サンジの方へ先端を向ける。

 

サンジはウソップの意図を察すると、タバコ用のライターで火を付けた。

そして、その松明を洞窟に向けた瞬間、一味はビクリと大きく肩を揺らす。

 

洞窟の壁にある無数の穴に先ほど遭遇した“何か”が大量に居たのだ。

 

あまりの光景にウソップが悲鳴を上げそうになった瞬間だった。

 

 

「“サイレント”…!」

 

一味の周りに半透明の膜が現れる。

 

 

「うわああ!!さっきの気持ち悪いのだ~~!!

って、えぇ!?これなんだ!?」

 

「ナミさん、ロビンちゃん!

おれの後ろへ!!」

 

ゾロとサンジがナミ達を庇いながら、少しずつ後退していくと、暗闇から人が現れた。

 

 

「待て、この円から出るな!!

ドールズ”に襲われるぞ!」

 

現れた金髪の男の正面に素早くゾロは移動し、睨みを利かせる。

 

 

「……何者だ、お前。

それにドールズってのは…まさか、アレのことを言ってんのか?」

 

「そうだ。

“ドールズ”は、その穴の中にいるカラフルな奴らの事だ。

……おれはロシ…コラ……あ~…コラサン(・・・・)って呼んでくれ。」

 

突然現れた謎の男を訝しげに見ながらも、サンジが口を開く。

 

 

「なんで、この半透明のドームにいると奴らは襲って来ないんだ。」

 

「それは、ドールズは“音”に反応して襲って来るからだ。

コイツらの目はモノを認識出来ない代わりに、音を拾う。」

 

「なんだそりゃ…ちぐはぐじゃねェか…」

 

サンジは意味が分からないと顔をしかめる。

後ろではウソップがなるほど…と頷き、その横からロビンが次の質問を投げ掛けた。

 

 

「確かに、襲っては来ないようだけれど…

何故あなたはそんなにこの“ドールズ”というものに詳しいのかしら?」

 

ロビンの問い掛けに、一味は鋭い視線を“コラサン”と名乗った男に向ける。

 

 

「……それは…」

 

「それは…?」

 

「おれは、もうここに潜入してから1週間ほど経ってるからだ。」

 

「「潜入…?」」

 

ウソップとナミが目を見開くと、コラサンは言葉を続ける。

 

 

「ここはドンキホーテファミリーが秘密裏に研究所や兵器を生産している場所なんだ。

……おれは、ドンキホーテ・ドフラミンゴの悪事を暴き、止める為に来た!!

 

コラサンは強い意思を宿した瞳で、一味を見つめ返すのだった。

 

 

 

 




ー補足ー

キッド&キラー:昔、百獣海賊団にいた事が発覚。
何故抜けたのかは不明だが、カイドウとレオヴァからは目を掛けられていたらしい。
今作品では赤髪とは戦闘になったが、腕は持ってかれずに済んでいる(百獣での鍛練と、キラーの引き際の英断により)

コラサン:海賊ではなさそうだが…?
咄嗟に嘘を付けない性格だが、上手くやれるのか。

ナミ・ウソップ:帰りてぇ~~!!(心の叫び)
─────────────────────
ジャック:狂死郎達を連れて赤鞘回収へ。
部下に捕獲用の睡眠弾を持たせる為にレオヴァに許可を貰いに来ていた。
キッドの事を良く知ってそうな口振りだが…?

キング&クイーン:あのクソガキ共ォ…(ブチギレ)
クイーンはあまり関わりがなかったが、キングはレオヴァ経由で少し関わりがある。

カイドウ:キッドの小僧達に少し灸を据えてやれ、とゴーサインを出した。

レオヴァ:そろそろ帰って来い。
もし、百獣に帰ってくる気がなければ……

↓『番外編』
“キラー、暖かな記憶”
https://syosetu.org/novel/279322/9.html

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