【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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「完結させておいて更新するとは何事か」と思われたかもしれませんが、どうしても、書きたくなってので、ご容赦いただけると幸いです。


シンジ君の心配

「健康診断のお知らせ?」

 

「第三村の高齢者向けに健康診断が行われているみたい。先生なんか後期高齢者じゃんね」

 

アスカ君がミカンを頬張りながら教えてくれた。私宛にハガキが届いたと思えば、内容は第三村診療所による、健康診断のお知らせだ。なるほど、確かに、私は推定74歳を超えた後期高齢者に該当している。

 

「貴重な医療の資源だ。私なんかに注ぎ込まんでいいものを」

 

「そうもいかないでしょ?先生は数少ない全てを知る人だから。長生きしてもらわないとね~」

 

「老骨に鞭を打っていることは否定せん。だが、いつまで経っても、私を頼られては困るな」

 

「まぁ、まぁ。私たちにとって、唯一無二の家族なんだし」

 

平穏が訪れようとも、復興の最中では、医療の資源は貴重である。この冬月コウゾウに費やされるとは恐縮に尽きた。第三村で生きるお爺様とお婆様に比べれば、私なんか稀代の大罪人となろう。とてもだが、希少な医療を注ぎ込まれる対象に含まれなかった。

 

とは言え、この世界の理を須らく知っている人間だ。おいそれと旅立たせては、色々と不都合を生じさせる。つまり、長生きすることが罪滅ぼしになって、最期まで働き続けなければならない。

 

もっとも、私は彼の差し金だと気づいているがな。

 

(シンジ君が仕組んだことだな…やれやれ)

 

~数日前~

 

碇シンジ君の姿は、第三村診療所(鈴原医院)にあった。

 

「冬月先生の健康診断をしたい?」

 

「うん。実は、最近の先生は老化が激しそうなんだ。NERVにいた頃と比べて、柔らかくなったけど、それに合わせて、随分と年を取ったような気がする」

 

「具体的には?」

 

「そうだなぁ。やっぱり、歩く速度は遅くなった。それに、段差を上がるのも大変そうに見える。老眼鏡をかけることも増えたかな」

 

第三村診療所で医師の真似事(本人談)をしている鈴原トウジと話し合うのは碇シンジだった。現在のシンジは、罪滅ぼしとWilleやKREDITで仕事に励んでいる。しかし、彼の根幹には、未だに恩師にして祖父である、冬月コウゾウへの恩返しが否めない。

 

その冬月コウゾウは、急速に老化しているように感じた。NERV副司令官の際は少年少女のために辣腕を振るい、時には、少年に優しく寄り添ってあげた。立場からして、許されざる儀式を発動した。しかし、最後の大逆転のウルトラCを決める礎を築き上げる。

 

ただし、第三村の中では違った。元大学教授の学者と知れている。定年後にWilleで活動した功労者と見られ、シンジやレイ、アスカ、マリ、カヲルは研究室(ゼミ)の教え子と認識されていた。

 

「わかった。定期健康診断どころじゃない。人間ドックをやろう」

 

「本当に?」

 

「男に二言は無い。それに、ワシも冬月センセに長生きしてもらいたい。何というか、万が一の時に必要な気がする」

 

鈴原トウジは碇シンジの旧友のため、間接的に冬月コウゾウを知っている。絶対に機密情報を漏らさず、シンジは絶対の信頼を置いては友として依頼した。

 

「ありがとう。お金は…」

 

「そんなもの要らんわ。シンジの頼みに金を求めるなんて、男の名が廃る」

 

「ごめんね。よろしく頼むよ」

 

このように、冬月コウゾウを囲うことがあった。なお、客観的に見てもである。高齢者の医療は必要とされた。人口のゴッソリ削られた現世において、高齢者も貴重な労働力である。各人が得意とする分野で活躍してもらいたい。長年の経験から得られた知識や技術は、何物にも代えがたかった。ましてや、NERV副司令官の冬月コウゾウは、それは計り知れないだろう。農作業の労働を免除されていることは、老人の頭脳を高く買っている証拠だった。

 

かくして、碇シンジの依頼から健康診断が計画される。

 

~健康診断の日~

 

第三村診療所に指定された日時にやって来ると、お子さんを連れたお母様がいらっしゃった。こんな困難な時代であるが、未来ある子供たちのため、粉骨砕身しなければならない。

 

一層に気が引き締まるが、気さくに話しかけてくれる。

 

「あ、冬月先生。どうされたんですか」

 

「いえ、健康診断の連絡を頂戴しまして。まぁ、後期高齢者なものですから」

 

「あ~そういう」

 

「恥ずかしながら、長生きしてしまった者です」

 

他愛のない日常会話をしていると、冬月さんの名前を呼ばれた。お子さんに見送られながら診療室に入る。診察室では、医者がすっかり板についた鈴原トウジ先生に迎えられた。普通は座ったままだが、彼は律儀に立ち上がっている。自分の影響力というものを再認識した。

 

「ほぼ人間ドックです」と説明を受けるが、丸一日かかるものでなかった。どうやら、最新の医療機器のおかげで半日程度で済むらしい。結果も随時出るため、後日に再訪する必要もなかった。

 

「世話になります。鈴原先生」

 

「それは勘弁してください。ワシは冬月コウゾウ先生程に働いていません」

 

「謙遜してはいけないよ。鈴原先生は十分以上によくやっている。医療というのは、一寸たりとも、欠かせない分野なんだ。素晴らしい貢献を果たしてくれている。私のような老い耄れが先生と言われる筋は皆無だ」

 

鈴原トウジ先生との交流は薄かった。しかし、お互いにシンジ君を経由している。彼は第三村を医療で支えている。本人は謙遜しがちだが、本当によくやってくれた。私が招いた世界に文句を一つも言わない。

 

さて、この後は採血やレントゲン、心電図など細々とした検査を受ける。老体に負担の無いように、随所に気遣いが散りばめられて、自分が老人なんだなと苦笑いしてしまった。

 

半日程度をかけて入念な健康診断が行われる。

 

そして、家に帰るが、案の定で家族から質問攻めに遭った。

 

「結果はどうでしたか!」

 

「そんなにズイと迫らんでも大丈夫だよ。通常の老化の範囲内であって、年齢を踏まえれば、特に気になるところは無いらしい。あくまでも、高齢者の基準だがね」

 

「じゃぁ、ダメじゃないですか」

 

流石の主夫力である。シンジ君は鋭いことこの上なかった。鈴原先生から手渡された健診結果を見せることを強いられる。本来は私の方が立場は上であるが、ここまで老いてしまうと、しっかり者のシンジ君に詰められることは少なくない。

 

「高血圧が見えますね。減塩を工夫します」

 

「贅沢は言わんよ。君の好きにすればいい」

 

「骨密度も低いので、骨を強くします。僕たちは先生に1日でも長く生きてもらうことに意味を見出しました」

 

こう言われては、反論のしようがなかった。若者に支えられる老人とは、あまり良い構図でない。むしろ、恥ずべきことだ。しかし、私に関しては例外なようである。皆が一緒に過ごすことを望んでいる。あまりにも迷惑をかけたくないため、最期まで健康に生きたかった。

 

「生物は必ずや最期を迎える。君も例外でない」

 

「わかっています。母さんや父さん、先生に生かしてもらいました。1日1日を無駄にしません」

 

「母と父以上に真面目だ。流石はシンジ君だよ」

 

すると、ちょっとした騒ぎを聞きつけたのか、レイ君がやって来る。

 

「何かあったの?」

 

「いや、特に…」

 

「ほら、これ。先生の健康診断の結果なんだけど、血圧と骨密度が良くないんだ」

 

隠し通すことは不可能らしい。レイ君に共有されてしまい、ポーカーフェイスの黄金仮面は変わらないが、機微を感じ取った。彼女も私の長生きを望んでおり、シンジ君と並ぶ強敵だ。

 

「これは考えないといけない。私は副司令のおかげで、碇君と一緒に生きられている」

 

「参ったな…」

 

この後も仕事から帰ったアスカ君やマリ君、カヲル君に共有されている。皆が私の長生きを希望して堪らなかった。迷惑をかけないことが信条であるが、むしろ、迷惑をかけられることが本望のようである。

 

「もう少し、生きないといけないかな。ユイ君…」

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