世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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第11話 闇の胎動

 地球と月の重力場、そして遠心力の拮抗点であるラグランジュ・ポイント。

 五つあるそのポイントの一つ、地球と月の間に挟まれる位置にラグランジュ1がある。

 

 そこにある一つの資源衛星には、CBの所有するスペースシップ「プトレマイオス」が、強襲用コンテナの換装と、補給物資及びガンダム用の追加装備を搬入するために係留されていた。

 

 そして、艦内のブリーフィングルームでは4人のマイスターと、クリスとフェルト、スメラギとイアンが壁面モニターに映し出された新型ガンダムの戦闘映像を眺めていた。

 

「連携は取れているが、ガンダムの性能に頼り過ぎている」

 

 戦闘映像を眺めながら、ティエリアは自分の見解を述べる。

 アイリス社の工場施設を完全破壊した直後に現れたユニオン軍を殲滅すべく、砲撃戦仕様のガンダムは他の2機と共にその編隊へと立ち向かうのを確認した。

 だが、彼らの戦い方は機体性能でゴリ押ししていくようなものだった。

 

 特にバスターソードを装備したガンダムが、リニアライフルの集中砲撃を物ともせず装甲で受け止めながら、リアルドの編隊の真ん中に突っ込んで行った。その無謀ぶりが、この場にいる全員を呆れさせた。

 

 太陽炉を搭載したガンダムは装甲にGN粒子を纏わせることで、物理強度と耐弾性能を飛躍的に向上させることができるが、材質は三大国家陣営の量産機と同じEカーボンを採用しているため、GN粒子の恩恵を受けたとしても、決して「破壊されない」というわけではない。

 

 今は機体性能というアドバンテージのお陰で無傷で済んだが、ガンダムと同等性能を持つ機体が相手なら、ただでは済まないだろう。

 この機体性能頼りの戦い方から、搭乗者の実力や練度はそれほど高くないことが窺える。これを聞いた全員はティエリアの見解に同意し、肯いた。

 

「もし相手も同じガンダムだったら、確実にボコボコにされるな」

「全くロックオンの言う通りだ。フェルト、王留美から送られてきたMSWAD基地での戦闘映像を出してくれ」

「了解、映像を出します」

 

 フェルトがそう頷くと、先ほど王留美から送られてきた戦闘映像を壁面モニターに映し出す。

 

「フリーダムガンダム……今度はあの男が相手か」

「これが、ガンダム同士の戦い……!」

 

 モニターから流れてきたのは今から12時間前、アメリカ本土に位置するMSWAD基地を襲撃した新型ガンダムと、それと交戦するフリーダムガンダムとの戦闘映像だった。

 3機の新型ガンダムは3対1という数的に優位な立場にいながら、フリーダムに一方的に翻弄されて圧倒されていた。フリーダムは戦闘開始から2分も経たずに、3機の新型ガンダムを撤退させてみせた。さらに、基地には一切の被害を受けていない。

 

「おいおい……瞬殺かよ⁉」

「いくらガンダムでも、パイロットが性能を引き出せなければ意味がないね」

「それもあるが、パイロットの技量も違いすぎるぜ。粒子ビームをビームサーベルで斬り払うなんて、あの男の動体視力が人間離れしているな! それはさておき……刹那、あの3機についてお前の見解を聞かせて欲しいんだが……」

 

 自分の見解を聞かせて欲しいと問いかけてきたロックオンに、刹那はこう答えた。

 

「……⁉ ガ、ガンダムだ……っ!」

 

 咄嗟に意味不明な言葉を口走ってしまった。

 いつもの無愛想と見せかけて内心で焦りまくる刹那に、ロックオンは得心したように苦笑した。

 

「シンプルな答えだな……(刹那らしいというか……)」

「太陽炉を搭載したガンダムとはいえ、僕たちと同じCBに所属するとは限らない」

「アレルヤの言う通りだ。それにあの男は、新型と敵対している……何か裏がある」

 

 悠凪が新型ガンダムと敵対していることに対し、刹那は何か裏があると感じたが、これ以上は本人に問い質さないと分からないことだった。今は考えでも埒が明かないので、この難問を一旦棚に上げることにした。

 その後ティエリアは、スメラギに彼らが太陽炉を持っていたことについての見解を尋ねる。

 

「ところでスメラギ・李・ノリエガ、我々の知る限りでは、太陽炉は5基しかないはず。彼らは一体どこで太陽炉を調達したのか気になる……」

「私も気になるんだけど、情報が少なすぎで何とも言えないわ」

 

 太陽炉……GNドライヴは5基しか存在しない。

 4基はそれぞれエクシア、デュナメス、キュリオス、ヴァーチェに搭載している。そして最初に作られた0ガンダムのGNドライヴは現在、CBのサポート組織「フェレシュテ」の所有する資源衛星に保管され、同組織の所有する第二世代ガンダムの動力源として運用されている。

 全員が知ってる通り、GNドライヴから放つ粒子は綺麗な緑色で、禍々しい赤色ではない。それに加え、太陽炉1基を生産するには、最低限でも数十年の時間がかかるため、イアンは新型ガンダムの動力機関を「GNドライヴに似た動力機関」だと推測している。

 

 それから戦闘映像を最後まで見ると、3機の新型ガンダムが撤退した直後に、フリーダムは奇妙な動きを取った。

 

「ん? 爺さんを掌に乗せて撤退したぞ……どうなっているんだ?」

「基地の関係者を連れ去った? やはり、何か裏がある……!」

 

 フリーダムは基地司令塔の最上階の窓ガラスを割って、白髪の老人を掌に乗せて撤退した。

 そしてその老人は、スメラギ・李・ノリエガがよく知っている人物だ。

 

「(エイフマン教授⁉ そんな……!)」

 

 悠凪がエイフマン教授を連れ去った理由は不明だ。

 次に会う時は、彼に問い質す必要があるとスメラギは思う。

 

 それから1時間が経ち、ブリッジの艦長席に座っているスメラギにラッセ・アイオンからの通信が入ってきた。

 

『ミス・スメラギ。強襲用コンテナの換装、及び『アヴァランチダッシュ』と『ガスト』の搬入が完了した!』

 

 搬入されたガンダム用の追加装備は、以前発生した資源衛星群の落下事故「メテオーアナハト(流星の夜)」で地球に落下する破片の破砕作業を行うために使用された装備で、前者はエクシア、後者はキュリオス用の追加装備だ。

 異世界のガンダム及び新型ガンダムの出現により、今後の武力介入はより一層厳しくなると考えているスメラギはヴェーダに進言し、これらの追加装備を持ち出した。

 

「了解、残りの補給物資の搬入が完了次第出航するわ」

 

 そう言い終えると、スメラギは通信を切るのだった。

 搬入終了の報告があるまで、スメラギは艦長席にあるコンソールを操作し、ヴェーダから提示された作戦プランをブリッジのメインモニターに映し出す。

 その中には、フリーダムガンダムを鹵獲するための作戦プランが幾つかもあった。この前却下したにも拘らず、ヴェーダが再び提出したプランだ。

 

「ごめんねヴェーダ、今回も却下させてもらうわ……」

 

 もちろん、スメラギはこれらのプランを採用する気はなかった。何故かというと、これは恩を仇で返すに等しい、卑劣極まりない行為だ。

 何よりも、スメラギ自身もマイスターたちと同じ、異世界からやってきた悠凪と戦いたくない気持ちを抱いている。それに悠凪は、こちらと敵対しないことを約束したのだ。

 

 スメラギはそう思いながら、これらの作戦プランを三大国家陣営への武力介入プランと入れ替えるのだった。

 

 

 

 

 

 時を同じくして、悠凪は宇宙に漂流しているガンダムラジエルを捜索すべく、火星と木星の間にあるアステロイドベルトに赴く。だが、ゲート内部の境界空間を通り抜けた先にあるのは小惑星帯ではなく、太陽系の中で一番飛び抜けて大きい巨大ガス惑星だった。

 

『悠凪くん……聞こえますか? 悠凪くん!』

「ああ、聞こえてるよ……美玖」

『地球圏以外の場所への転移が成功したんですね、良かったです……』

 

 その声に答えると、通信の向こう側にいる美玖が安堵したかのようにそう言った。

 

「いや……今フリーダムの現在位置は火星と木星の間にある小惑星帯ではなく、木星付近だ」

『うぇ⁉ エイフマン教授、これってもしかして……』

 

 フリーダムが木星付近に転移したことを美玖に伝えると、安堵した彼女は再び焦り始め、すぐ傍にいるエイフマン教授に原因を尋ねる。

 即座にシステムログを調べ、その原因を究明したエイフマン教授は私にこう伝えてきた。

 

『どうやら転移先の座標にある小惑星が多すぎで、ゲートを開くことができないようじゃ。だからシステムが勝手に転移先の座標を一番近い惑星の付近に変更したのじゃ』

 

 先ずは状況を説明する。

 転移先の座標に小惑星が多すぎたため、次元転移システムが「障害物が多すぎでクロスゲートを展開できない」と判断し、転移先の座標を本来の座標と一番近い木星の付近に変更したとのこと。

 まあ、クロスゲートを通り抜けた直後に衝突事故が起きたら不味いし、言わば安全装置といったところかな。

 

『ところで絢瀬君、近くに何か珍しい物体があるのか?』

「珍しい物体ですか……ん? 宇宙船の残骸があります!」

『……! 絢瀬君、その映像を見せてくれ!』

 

 エイフマン教授の要望に応じ、私は目の前で漂流している宇宙船の残骸の映像をリベル・アークに送信した。この映像を受け取った美玖は目にも止まらない速さでキーボードを打ち、宇宙船の詳細情報を調べる。

 

『最も酷似しているのは船籍番号9374……木星有人探査船……『エウロパ』です!』

「この船が……あの『エウロパ』だったのか⁉」

『まさか120年前に木星圏を目指して航行された探査船を目にすることができるとはのう……』

 

 木星の第2衛星「エウロパ」の名を冠したこの探査船は、今から120年前に行われた「木星有人探査計画」との名目で調査隊が乗り込んでいたが、到着直後に事故で失われたとされている。

 だが実際は事故自体が偽装であり、ここで建造された5基の太陽炉を地球圏へ射出した後に機密保持のため、開発メンバーを全員抹殺したうえで事故を装って自沈したのだ。

 そして調査隊のメンバーがCBとその協力者だけでなく、イノベイドも紛れ込んでいた。原作で確認された個体は、リボンズやビサイドと同じ塩基配列パターンを持つ「スカイ・エクリプス」だけだった。

 

 それから刹那たちが武力介入を開始した82年前の2225年、コーナー家の調査団がこの船の残骸を捜索し、紫色のハロ――HAROと初期型太陽炉の開発データを地球圏に持ち帰った。

 

「(船を持ち帰ることはできないが、記念として写真を撮っておこう……)」

 

 探査船の写真を保存した後、私はフリーダムの進路をアステロイドベルトに向け、ガンダムラジエルの捜索を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 一方、レイフ・エイフマン教授の抹殺に失敗したチームトリニティに、ラグナ・ハーヴェイからの映像通信が入ってきた。

 

『ターゲットの抹殺に失敗したうえ、機体まで損傷しただと⁉ この役立たず共めが! これでは私は、あの青二才に嘲笑われるのではないか⁉』

「ラグナ総裁、誠に申し訳ありません……っ!」

 

 怒鳴りを散らし、隼人を侮辱するラグナに不満を感じながらも、ヨハンは謝罪の言葉を述べた。

 

『機体の修理が終わり次第、貴様らは宇宙に上げ次の指示を待て!』

 

 そう言い残して、ラグナは通信を一方的に切るのだった。

 ラグナの威圧的な態度に嫌気をさしたミハエルとネーナは、それぞれ愚痴をこぼす。

 

「あのオッサン、ウザすぎてモニター越しに殴りたくなったぜ!」

「隼人さんを青二才呼ばりするなんて、一体何様つもり⁉」

 

 自分たちを対等に接してくれた隼人に対して、ラグナの態度は威圧的で高圧的だった。同じ監視者でありながら、自分たちに対する扱いは天と地ぐらいの差がある。

 ラグナの下に働くことに不満を抱いているものの、この決定は監視者たちの意向によるものだったため、実行チームである自分たちは黙って従うしかなかった。

 

「ミハエル、ネーナ。スローネを貨物コンテナに積み込め!」

「「了解……」」

 

 それからしばらくが経つと、ヨハンたちは修復された3機のスローネを、ラグナがあらかじめ用意した貨物コンテナに移動させ、軌道エレベーター経由で宇宙に上がるための準備を整う。

 

 そして宇宙に上がった直後、ガンダムを起動した3人に「CBのサポート組織『フェレシュテ』の所有する資源衛星に保管されている0ガンダム、及びGNドライヴを回収せよ」という旨のメッセージと、資源衛星の座標データがラグナから届いた。

 

 ミッションの内容を把握した3人は、0ガンダムと太陽炉を回収すべく行動に移るのだった。

 

 つづく

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