世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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第19話 蒼と赤の剣舞

 スメラギはシャルの依頼を受け、フェレシュテの資源衛星内に保管している第二世代ガンダムと補給物資を回収する為に、プトレマイオスをラグランジュ1へ向かわせた。

 幸いなことに、この資源衛星は未だに裏切り者に占領されていないので、スムーズに回収作業を行うことができた。

 

「ガンダムサダルスード、及びアブルホール……コンテナへの積載が完了しました」

「残るのは倉庫内の補給物資とガンダムアストレアだけです」

「分かったわ、引き続き作業を続けてちょうだい」

 

 クリスとフェルトがそう報告すると、スメラギは返事しつつ特製ドリンクの入ったボトルを2人に渡した。

 

「あ、助かります」

 

 クリスが微笑して、スメラギからボトルを受け取る。

 

「フェルトもね」

「助かります、スメラギさん」

 

 艦長席に座ったスメラギがドリンクを一口飲むと、資源衛星内の格納庫との通信回線を開く。

 

「イアン、TYPE-F2の改修状況は?」

『突貫作業でやっている。しかし、最低でも12時間が必要だ』

「なるべく早めにお願い! いつ敵が来るか分からないから……」

『……分かった!』

 

 イアンがそう返事すると、スメラギは通信を切るのだった。

 そして艦長席にあるコンソールを操作し、シェリリンから提案された「アストレアTYPE-F2」の改修プランをブリッジのメインモニターに映し出す。

 

 改修プランの内容はこうだ。

 完成から15年を経て老朽化していた部品や腕部と脚部のハードポイント、グラビカルアンテナをエクシアの予備パーツと交換し、さらにガンダムであることを隠す為のセンサーマスクを取り外す。これらの改良により、機体の粒子制御能力が40%以上向上することになる。

 

 元々シャルはマスクを取り外すことを反対していたが、ハナヨが「フォンならそのマスクを取り外すと思う」と進言したことにより、これを仕方なく了承した。

 

 スメラギが資料を閲覧している最中に、ブリッジ左舷の通信席にいるクリスがドリンクボトルに口をつけ――。

 

「――ブハッ⁉ ……スメラギさん! このドリンクって……お酒じゃないですか!」

 

 クリスは息を吐き出して、ドリンクボトルを突き出しつつ抗議する。

 

「美味しいでしょう? 私の特製ドリンク」

「もう……スメラギさん!」

「……ふふっ」

 

 フェルトが控えめに笑い、スメラギとクリスはお互い目を合わせて微笑み合い、ブリッジは柔らかな雰囲気に包まれた。しかし、そんな雰囲気を破るかのように、通信が入ってきたことを示す断続的なビープ音がブリッジに響き渡った。

 

「スメラギさん、アレルヤからの定期連絡です……周辺宙域に異常なしとのことです」

「些細なことでもいいから、変化があったら直ちにこちらと連絡するよう、アレルヤに伝えて」

「了解!」

 

 スメラギの指示に頷くクリスは、警戒の為に出撃していたアレルヤに伝える。

 その後、ブリッジ内にいる3人は気を引き締め、周辺警戒しながら作業を継続するのだった。

 

 

 

 

 

「おや? 近くで戦闘が行われているようだ」

「赤い粒子ビームって……まさか、ヨハンたちが⁉」

 

 刹那たちがガンダムの調整を行っている最中に、私と隼人は宙へ消えて行った真紅の粒子ビームを目視した。

 チームトリニティが誰かと交戦しているかもしれない。そう判断した隼人はすぐさまガンダムに乗り込み、機体を発進させた。

 

「絢瀬悠凪! 今のを見たか?」

「ええ、この海域で何者かが戦闘を行っているようです。隼人は既に先行しています、我々も行きましょう!」

 

 走りながら声をかけてくる刹那に、私は僅かに頷き、刹那に出撃を要請する。

 

「分かった! 俺は仲間たちに知らせてくる!」

 

 刹那がそう返事すると、仲間たちに情報を伝えるべく来た道を引き返して行った。

 私はフリーダムのコックピットに乗り込み機体を発進させ、隼人のガンダムスローネフィーアが飛んで行った方向にある場所――クレ環礁へと向かった。

 

 

 

 

 

 世界で最も北にあるクレ環礁の上空で、アリー・アル・サーシェスはチームトリニティに怒涛の猛攻を仕掛けていた。

 

「貴様……何故私たちを!」

『生贄なんだとよ!』

「そんなことが……!」

『同情するぜ、可哀想になぁ!』

 

 アインがサーシェス機の繰り出した斬撃を辛うじて回避すると、GNビームサーベルを引き抜いたツヴァイはサーシェスの駆るガンダムに斬りかかる。しかし、サーシェスはそれを予見していたように回避して見せ、隙ができたツヴァイを蹴り飛ばすように右足を蹴り上げる。

 

「クッ……この野郎!」

「私たちは、ガンダムマイスターだ!」

 

 体勢を崩されたツヴァイを援護すべく、ヨハンは雄叫びのような声を上げながらGNランチャーを連射するが、その砲撃が尽く回避され、粒子ビームの光軸は夕焼けの空に消えていった。

 

「この世界を変える為に!」

 

 GNランチャーの砲撃を全て回避したサーシェスは操縦桿を握り締め、乗機の粒子放出量を増加させながら向きを変え、アインに向かって速度を上げ、叫ぶ。

 

『御託は、沢山なんだよぉ!』

 

 神速で己の間合いに入ると、サーシェスは機体の右肩部に装備されたGNバスターソードを引き抜き、アインのGNランチャーの砲身を両断する。そのまま勢いを付け機体を一回転させ、アインをツヴァイに向けて蹴り飛ばすように左足を蹴り上げる。

 

 蹴り飛ばされたアインはツヴァイと衝突し、2機は組み合ったまま太平洋へ落下していく。

 

『ハハハッ! 月を見ぬまま地獄に堕ちなぁ!』

 

 狂気の笑顔でその一言を言い放ったサーシェスがGNバスターソードを構え直すと、組み合った2機にとどめを刺そうと飛び込むが、しかしその進撃はGNビームサーベルを引き抜いたドライに阻まれた。

 

『死に急ぐか? ならば望み通りにしてやるよぉ、お嬢ちゃん!』

「やれるもんなら……やってみろよ! このクソ男が!」

 

 元々は兄たちを始末した後、ネーナみたいな小娘をたっぷりと甚振ってから始末するつもりだったが、彼女が自ら死を求めるのなら仕方ない。そう思ったサーシェスは機体を加速させ、ドライの機体を真っ二つに斬り裂くように剣を振り下ろすが――。

 

『――これ以上はやらせはせんぞ! ひろし!』

『なに? ……くぉぉぉっ⁉』

 

 通信から声が聞こえてきたと同時、ネーナはスクリーンから1機のガンダムが自分を庇うように身を挺し、手にしていたGNバスターソードをサーシェス機に叩きつけたのを見た。

 強く叩きつけられた反動で、サーシェス機は後ろへ大きく吹き飛ばされ、手にしていた両手剣もこぼれ落ちてしまった。

 

「遅れて済まない……お前はヨハンとミハエルの所へ行け! こいつは俺たちに任せろ!」

「隼人さん……はい!」

 

 強敵に追い詰められ、深い失意と絶望に陥った3人に希望を与えるかのように、通信に再び声が響く。その声の持ち主は自分たち兄妹を対等に接してくれた、美味しいご飯を食べさせてくれた、そして見捨てたりしないと約束してくれた最高の上司――風間隼人だった。

 

 

 

 

 

 夕日が沈み、夜が訪れた。

 

「まさか、イナグトではなくスローネヴァラヌスでお出ましとはな!」

 

 隼人はサーシェスの乗機が本来の歴史と異なっていることに驚きを感じた。

 胴体部分はジンクスの先行試作機――スローネヴァラヌスのものではあるが、両肩と両腰の大型GN粒子発生装置が取り外されており、頭部と四肢、そして武装はツヴァイの部品をそのまま流用している。機体のカラーリングが統一されていないことから、急造品であることが窺える。

 

 ひろしがここにいるってことは、ラグナの野郎はもう粛清されたと考えた方が良い。ヴェーダもそろそろ、あのクソ大使に完全掌握されるだろう……まあ、対策を考えるのは後にして、今はこのクソ野郎をぶちのめすのが先だぁ!

 

『この俺の邪魔をしやがって……テメェ、洒落にならねえぞ!』

 

 不機嫌な声でそう言ったサーシェスは機体を加速させ、フィーアとの距離を詰めながら、左手でGNハンドガンを連射する。隼人はGNバスターソードを構え、雨のように押し寄せる粒子ビームの奔流を巨大な剣身でやり過ごす。

 

 左腕のGNハンドガンを連射しながら接近してくるヴァラヌスに、隼人は回避する素振りは一切見せず、ただ防御に徹している。まるで「何か」を待っているようだった。

 

『おらおら! どうした、ビビってんのかい?』

 

 と、通信から挑発の声が聞こえる。

 

 そしてヴァラヌスがGNビームサーベルを引き抜いた瞬間、夜空の向こうから九つの光軸が真っ直ぐ、ヴァラヌスに向かって飛来した。咄嗟にそれを回避したサーシェスはすぐさま機体を後退させ、スクリーンを確認する。

 

『翼持ちと、ソレスタルなんたらのガンダムだとぉ⁉』

「テメェをぶちのめしたいやつは、俺だけじゃないってことだ!」

 

 サーシェスはスクリーンから、こちらに高速で接近してくる機体はフリーダムと、その背中を追随しているエクシア、デュナメス、ナドレ、そして強襲用コンテナの5機を視認した。

 本来は虫の息の兄妹にトドメを刺すという楽な仕事だったが、ガンダム5機と戦うことは予想してなかった。流石に分が悪いと思ったサーシェスは急いで撤退するが――。

 

 ――しかし、そんな機会を与えるほど、悠凪たちは甘くないのだ。

 

「ロックオンとティエリアは、ここで敵に牽制射撃をお願いします。隼人、奴のファングコンテナを破壊するんだ!」

「了解だ! 牽制は俺たちに任せろ!」

 

 デュナメスはGNツインライフルとGNキャノン、ナドレはGNビームライフルでヴァラヌスを牽制している一方で、隼人が周辺の環境テータをコンピューターに入力すると、待機中のGNファングに攻撃指令を送る。

 

「環境テータ入力……よし! 行けよぉ、ファングゥゥッ!」

 

 鋭い叫び声がコックピットに響き渡り、2基のGNファングが射出される。ヴァラヌスが小刻みな動きでデュナメスとナドレの牽制射撃を回避している間に、GNファングはヴァラヌスの側面に回り込み、そのままの勢いで特攻を仕掛ける。

 

 この攻撃に気づいたサーシェスはすぐさま回避行動を取るが、その動きよりも隼人の牙が届く方が早い。高速で飛行する牙がヴァラヌスのサイドアーマーと衝突し、膨脹する火球に姿を変え、両側のファングコンテナを完全破壊する。

 

 その爆発を合図に、エクシアとフリーダムは一斉に動き出し、オールレンジ攻撃の手段を失ったヴァラヌスに肉迫する。高速移動モードで一気に距離を詰めるエクシアはGNソードを展開し、一気呵成の勢いで斬りかかる。

 

『クッソたれが……邪魔すんなよ、クルジスの小僧が!』

 

 なっ、この声は⁉

 何故だ……何故このような下劣な男がガンダムに乗っている!

 

「アリー・アル・サーシェス! 何故だ、何故貴様がガンダムに!」

「なっ……サーシェスだと⁉」

 

 通信から響く声に、ロックオンは絶句し、怒りを露わにした。

 まさか、こんな所で家族の仇と出くわすとはな……!

 

 突き飛ばすようにしてヴァラヌスとの距離を離すと、ライフルモードに切り替えたGNソードを連射する。エクシアの動きに呼応して、背中の翼を大きく広げたフリーダムはビームサーベルを引き抜き、ヴァラヌスに挑みかかる。

 

「もう逃げ場はない、観念しろ! アリー・アル・サーシェス!」

 

 急加速で間合いを詰めたフリーダムは、剣を持った右腕を大きく振り上げ、片手剣七連撃ソードスキル「メテオブレイク」を繰り出す。

 サーシェスは唇を噛み締め、その連続攻撃を辛うじて防ぎながら、叫ぶ。

 

『クソ! どうなってやがるんだこいつは⁉』

 

 あまりに先の読めない機動にサーシェスは攻勢から守勢に転じざるを得なくなった。猛烈な勢いで振るわれる斬撃をGNビームサーベルでやり過ごしていると、別の方角からナドレがGNビームライフルを向けていた。

 

「今だ! 絢瀬悠凪!」

 

 感応波を通して、ティエリアの意図を悟った悠凪は、メテオブレイクの第七撃目を即座にキャンセルして、ヴァラヌスをナドレの射線に向かって蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたヴァラヌスはナドレの射線に入り、粒子ビームに右足首を貫かれた。

 

 サーシェスが機体の姿勢を安定させると、背後からエクシアとフィーアが斬りかかる。

 

「貴様のような男が、ガンダムに乗るなど……!」

『チッ……テメェの許可が要るのかよぉ!』

 

 GNソードを振り上げ、己の間合いに入ったヴァラヌスに斬りかかるが、それに合わせるように振るわれたGNビームサーベルに斬り払われ、体勢を崩してしまった。エクシアに追い打ちをかけるように、ヴァラヌスは左足を振り上げ、GNソードをエクシアの右腕から蹴り飛ばす。

 

「もらったッ!」

 

 フィーアが両肩のGNビームサーベルを引き抜くと、背を向けているヴァラヌスに向かって突進する。サーシェスは急接近する敵機にヴァラヌスを正対させ、振るわれた粒子束を斬り払う。

 

『動きが丸見えだよぉ!』

 

 そう叫んだサーシェスは機体を上昇させ、フィーアの左肩を踏みつけてから180度反転、そのまま一気に加速して離脱を試みるが――しかし、そこに強襲用コンテナから放たれた粒子ビームが飛来する。

 

『カトンボが! 目障りなんだよぉ!』

 

 サーシェスはその射線を見切ると小刻みな動きで躱し、GNハンドガンで応射する。

 

「なんて正確な射撃だ⁉」

 

 緊急旋回してそれを辛うじて回避したラッセの声が響き、ロックオンは長砲身のGNツインライフルを掲げ、その砲口をヴァラヌスに向け、撃ち放つ。巨大な光条が夜空を裂き、ひらりと身を躱したヴァラヌスの機影が宙に浮かび上がった。

 

 ヴァラヌスのコックピットに、ロックオンの声が響いた。

 

「KPSAのサーシェスだな⁉」

『クルジスのガキに聞いたかぁ!』

「クッ……アイルランドで自爆テロを指示したのはお前か! 何故あんな事を!」

 

 怒りを抑えられなくなったロックオンは機体のGNフィールドを展開し、離脱しようとするヴァラヌスに体当たりを仕掛ける。

 

『俺は傭兵だぜ……それにな! AEUの軌道エレベーター建設に、中東が反発すんのは当たりめーじゃねぇかぁ!』

 

 それを難なく回避したサーシェスがそう言い返すと、水平方向を制御して機体を旋回させたデュナメスはGNアームズの左側面に装備された大型ミサイルコンテナを展開し、積載されたGNミサイルを斉射する。デュナメスの行動に呼応するように、フリーダムは全砲門を開き、ヴァラヌスに目掛けてフルバーストを放つ。

 

「関係ない人間まで巻き込んで!」

『テメェらだって同類じゃねーか、紛争根絶を掲げるテロリストさんよぉ!』

「咎は受けるさ……お前を倒した後でな! この戦争中毒めがぁ!」

 

 そのどれもが広範囲を制圧する攻撃。回避するのは至難の業だ――しかし、ヴァラヌスは全弾を回避して見せた。スクリーンからその機影を見たロックオンは、心の中で舌打ちをした。

 

 ソレスタルビーイングは紛争根絶という理念の為に戦っている。

 ハッキリした信念はなく、争いの火種を撒き散らすテロリストなどと一緒にされては困る。

 

「我々を貴様のような男と一緒にされては困るッ!」

 

 そう叫んだティエリアはGNビームサーベルを引き抜き、GNビームライフルを乱射しながら、ヴァラヌスに挑みかかる。サーシェスは機体を傾けて回避するが、胸部装甲を掠めてサーベルとの間に火花とスパークが飛び散る。

 

「ティエリア、下がれ!」

 

 刹那がそう叫ぶと、左ウエポンアームにマウントされた2本のGNブレイドを引き抜き、ヴァラヌスの背後から斬りかかる。

 しかし、それを予見していたのか楽々回避してみせたサーシェスが機体を急速に後退させ、エクシアの間合いから離脱する。

 

 そして5機のコックピットに、サーシェスの声が響いた。

 

『ガンダム……こいつはとんでもねぇ兵器だ、戦争のし甲斐がある!』

 

 ヴァラヌスがもう1本のGNビームサーベルを引き抜き、二刀を構えて突進する。

 

『テメェらのガンダムもその為にあんだろぉ!』

「――違うッ!」

 

 左手のGNショートブレイドで斬撃を受け流そうとするが、その全力を込めた突きに受け流しきれずに剣が弾かれてしまう。

 

「絶対に違う! 俺たちのガンダムはッ!」

 

 確かにガンダムは兵器だ。だが、使い方次第では人を守る力になりうる。

 絢瀬悠凪はそれを証明してくれた……どんな力であっても、結局はそれを使う人間次第だ。

 

 そう……俺はこの力を、紛争根絶の為に使う!

 俺たちのガンダムは、その為に存在している!

 

 しかし、GNロングブレイド1本だけでは、2本のGNビームサーベルには敵わない。

 手にしていたGNロングブレイドはあっけなく弾き飛ばされ、さらに背後を取られた。

 

 この瞬間、刹那は死が間近に迫っているのを感じた。

 

『こいつで終わりだぁッ!』

 

 しかし、X字に振るった2本のGNビームサーベルが、空を切った。

 

 

 

 

 

 アリー・アル・サーシェスは絶句した。

 確実に仕留めたはずが、何の手応えもなかった。

 

『なんだ? どうなってやがる⁉』

 

 サーシェスはふと、視界の端を何かがよぎったような気がした。

 

『そこか!』

 

 サーシェスは振り向きざまにGNハンドガンを乱射する。

 しかし、粒子ビームを放つ瞬間、もう既にそれは消えている。粒子の軌跡を追って機体を旋回させ、GNハンドガンを乱射し続けるが、尋常じゃない速度で動くそれを当てることはできない。

 

「エクシアが消えた? どうなっているんだ⁉」

「いや、エクシアは消えていない。それにしてもこのスピード……速すぎる⁉」

「(よし、トランザムの制限が解除された……!)」

 

 ロックオンは目視でエクシアを探しているが、見つけることができなかった。

 その一方で、高速で飛行しているエクシアの反応を3機のEセンサーが捉えた。

 

 今のエクシアは、基本スペックの2倍近いスピードで飛行している。

 

「(封印が解けるか……)」

 

 心からそう呟くと、悠凪はコンソールを操作し、エクストリームブラストモードを起動させる。

 同時に、悠凪の頭の中にある「何か」が割れた。

 

 その直後、フリーダムの機体が淡い銀色に光り、背中の翼が蒼く輝き始める。

 2本のビームサーベルを引き抜くと、それを二刀に構えたフリーダムは残像が見える程のスピードでヴァラヌスに肉迫していった。

 

 一方で、刹那はコックピットのスクリーンを呆然と眺めていた。

 サーシェスの攻撃を、そのまま受けるつもりは勿論なかった。例えエクシアに重大な損傷を受けようとも、刹那は応戦しようとしていた。

 

 しかし、エクシアは想像を絶するスピードで刹那の思いに応えてくれた。

 そしてサブモニターには今まで見たことのないインタフェースが表示されていて、中央にはCBのエンブレムと「TRANS-AM」の文字が表示されている。

 

「このガンダムは……!」

『GNドライヴを有する者たちよ……』

 

 突如、コックピットの通信モニターに映像が割り込んできて、映像に映し出された老人はCBの創設者――イオリア・シュヘンベルグだった。

 

『君たちが、私の意志を継ぐものなのかは分からない。だが、私は最後の希望を……GNドライヴの全能力を君たちに託したいと思う。君たちが真の平和を勝ち取る為、紛争根絶の為に戦い続けることを祈る。ソレスタルビーイングの為ではなく……君たちの意思で、ガンダムと共に』

 

 やはりイオリア・シュヘンベルグの計画は、紛争を拡大するようなものではなかった。

 

『どんな手品か知らねぇが――なにッ⁉』

 

 静止したエクシアの背後から、ヴァラヌスが躍りかかったが――その進撃は蒼く輝くフリーダムに阻まれる。種割れ状態の悠凪が操縦桿を握り締め、二刀流上位ソードスキル「スターバースト・ストリーム」を発動させる。

 

 全ての追加ユニットを展開して「GN粒子最大開放モード」へ移行したトランザム中のエクシアはGNクローに内蔵されたGNビームサーベルを発振させ、ウエポンアームに装備された2本のGNビームサーベルを引き抜くと、目にも追えないスピードでヴァラヌスに飛びかかった。

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

 直後、サーシェスの駆るスローネヴァラヌスは蹂躙された。

 蒼く輝くフリーダムに全身を斬り刻まれ、赤く輝くエクシアに打たれ、蹴り上げられる。

 

『――ぬがあああああっ⁉ こっ、この俺がぁぁっ⁉』

 

 スローネヴァラヌスのコックピットには、サーシェスの悲鳴が木霊する。

 

「刹那! その者にトドメを……!」

「了解……アヴァランチダッシュ、争いの権化を駆逐する!」

 

 宙に舞い上げられたヴァラヌスに向かって、4本のGNビームサーベルを構えたエクシアが飛翔し、その機体を四つに斬り裂く。

 

『まだだ! まだなんだよ! 俺はまだ満足しちゃいねえんだ――くそがぁぁぁっ!』

 

 斬り裂かれたヴァラヌスの機体がX字に割れ、巨大な火球に転じる。擬似太陽炉の真紅の粒子が空中に散布される。

 

 刹那は自らの手で争いの権化に引導を渡し、自分の過去と決着をつけることができた。

 そしてしばらくが経つと、黒い爆煙の中からエクシアが姿を現す。

 

「これが、トランザムシステム……俺は、俺たちは、託されたんだ!」

 

 

 

 

 

 戦闘が終えると、我々は海上にある無人島に不時着したチームトリニティの元へ向かった。

 

「あいつらをお前の拠点に?」

「そうだ、そこなら機体の修理や補給、そして改造を行うことができる」

「俺は賛成だけど、お前らはどうする?」

 

 隼人がそう問いかけると、兄妹3人は首を縦に振り、賛成の意向を示した。

 

「ソレスタルビーイングの皆さんも、私と一緒に来てもらえませんか? 君たちに是非、お見せしたいものがありまして」

「我々に見せたいものとは?」

 

 確認するように問いかけてきたティエリアに、私は答える。

 

「……ガンダムです。火星と木星の間にあるアステロイドベルトで発見され、私が回収しました」

「なら、我々も行こう。後でスメラギ・李・ノリエガに報告する」

「了解だ、ティエリア」

 

 私は次元転移システムのインタフェースを開き、クロスゲートを空中に出現させる。ふと周りを見ると、全員が驚きを隠せないように、口をあんぐり開けていた。

 

「うわぁ……やっば俺の知らない新兵器か⁉」

「改めて見ると、やっぱスゲーもんだな……」

「そのゲートを通り抜けた先が私の本拠地です、行きましょう」

 

 これだけのガンダムを目にしたら、エイフマン教授がどんな反応を示すのか、楽しみだ。

 美玖はきっと、寂しがってるんだろうな。

 

 つづく

 

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