世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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ガンダムアメイジングエクシア
GN-001A+GNR-001A

全高:18.3m
重量:56.2t(ブースター装着時は62.5t)
装甲材質:Eカーボン
動力源&推進機関:GNドライヴ

搭乗者:刹那・F・セイエイ

▼武装
GNバルカン×2
GNビームサーベル・ダガー×2
GNショートブレイド×1
GNロングブレイド×1
アメイジングGNソード×1
アメイジングGNシールド×1
トランザムGNブレイド×2(ブースター装着時限定)

▼特殊機能
トランザムシステム
オーバーブーストモード
GNフィールド(ブースター装着時は広域展開が可能)

▼特殊装備
トランザムブースター

 リベル・アークで製造されたパーツを装備した、ガンダムエクシアの強化改修型。2307年に現存する全てのCB製ガンダムを凌駕する性能を有してる。トランザムブースターを装着した状態なら単機で大気圏突入・離脱が可能。
 本来の形式番号はPPGN-001だが、この世界ではGN-001A、トランザムブースターの形式番号はGNR-001Aとなっている。Aは「驚異」を意味する。
 外見はプラモデルマスターグレード基準。


第20話 旅行者の居城にて(後)

 美玖の唇を思う存分に味わった後、私は邸宅を出て性能実験施設の指令室へと向かった。

 しかし、美玖の服を脱がそうとするのは欲望への敗北だった。危ういところだった。その好意に甘え、私は「種としての本能」という低俗な環境に、自分の主権を明け渡そうとしていた。美玖の服を脱がそうとしたあの指先の震えは、私の意志ではない。次は……次は、例え魂が焼き切れようとも、私の理性が全権を掌握した状態で、彼女を愛してみせる。

 

「エイフマン教授。スローネのGNドライヴを取り外したのですか?」

 

 ハンガーに固定された4機のスローネは破損した装甲だけでなく、胴体部のGNドライヴも取り外されていた。その行方を知るべく、私は作業中のエイフマン教授に問いかけたのだった。

 

「ああ……GN粒子に含まれた毒性を除去する為に、ワシが機体から取り外したのじゃ」

「GN粒子に毒性があるのですか?」

「ワシが簡単に調べたところ、このGN粒子は濃度や純度、粒子の圧縮率等によって、その特性が変化するのじゃ。通常は無害じゃが、特定の環境においては人体のテロメアや細胞を破壊し、再生を阻害する毒性を発揮するのじゃ!」

「細胞分裂に関係するテロメアを損傷し、再生を阻害する。付けられた傷は一生治らない上に再生治療もできないでしょう」

「ふむ、浴びた量によっては即死もありえるのじゃぞ」

 

 現物を簡単に調べただけでGN粒子の毒性に気付くとは……この爺さんチート過ぎない?

 砂糖2個入りのコーヒーを一口飲むと、話を続ける。

 

「強い力、弱い力、電磁力、そして重力……自然界の基礎的な力をすべて内包した原初粒子を発見し、それを生成する動力機関を設計したイオリア・シュヘンベルグの目的は、本当に『武力による紛争の根絶』なのでしょうか?」

「イオリアの目的は紛争根絶だけではない。真の目的は他にあるとワシは考えておるんじゃ。その答えの手掛かりは、GNドライヴにあるとワシは思う」

「それがエイフマン教授の見解ですか、把握しました」

 

 エイフマン教授の返事は、私の予想した通りだった。

 飲み干したコーヒーカップを机の上に置くと、私はふと、壁の向こう側に人の気配を感じた。

 

「(この感応波は……ティエリア・アーデか)」

 

 私と美玖以外に、NTの感応波に似た脳量子波を扱える者は2人いる。

 それがティエリアとネーナだ。タクラマカン砂漠で感じた波動に似ているので、前者だと思う。

 

「立ち聞きは感心しませんよ、ティエリア・アーデ」

 

 私がそう呼びかけると、ティエリアが壁の向こうから姿を現し、指令室に入ってきた。

 ティエリアは眼鏡を指で押し上げると、口を開いて、言う。

 

「済まない、立ち聞きするつもりはなかった。実は、我々のガンダムに搭載されている太陽炉から放出されるGN粒子も毒性が含まれていたが、今は技術向上で毒性が解消されている」

「ほう……アーデ君、もっと詳しく聞かせてもらえんかね?」

 

 エイフマン教授の言葉に頷いてから、ティエリアは通信システムを貸して欲しいと私に求めてきた。私はこれを了承した。00世界にいるトレミーとの通信が確立されると、メインスクリーンにトレミーの整備士――イアン・ヴァスティが映し出された。

 

『GN粒子の毒性を除去する手順か。今そちらにデータを送る、確認してくれ』

「協力を感謝する、ミスター・ヴァスティ」

『礼には及ばん。手を組んている以上、情報を共有するのが当たり前のことだ。それとワシのことはイアンと呼んでくれ、プロフェッサー』

 

 通信を切ると、エイフマン教授はイアンから提供されたデータを元に、スローネの太陽炉の毒性除去作業を開始する。折角の機会なので、GN粒子の発光色を毒々しい赤色から綺麗な緑色に変更しておこう。

 

 

 

 

 

 エイフマン教授が作業を進めている間、警備担当の水色ハロから「工業温室に異常あり」という報せを受けた私は、異常の正体を確かめるべく温室へ足を運ぶ。

 

「フシンシャ、ハッケン!ハッケン!」

 

 広大な果樹園の中で歩き回っていると、水色ハロはラグビーボールのように跳ねながら、電子音声で叫ぶ。どうやら、目の前でブルーベリーをつまみ食いしている男が「異常」の正体のようだ。

 

 にしても、見覚えのある背中姿だな。

 

「隼人、こんなところで何をしているんだ?」

「散歩したいんだけど、気づいたら迷子になっちゃってさ。それから腹が減ったのでつい――」

「――果物をつまみ食いしたな?」

 

 ちょっと威圧を込めた声で問いかけると、隼人が頷く。頷くが、なんだか青ざめた表情で私を見つめていた。立ち姿がいつも通りに見えるが、全身が小刻みに震えている。

 

「ここは私の城だ。だから、ここにある資源は全て私の物……分かるな?」

「サーセン、もうしません!」

 

 隼人は大きく頷いて謝罪し、もう二度としないと約束してくれた。

 しかし、謝ればいいってもんじゃない……つまみ食いしたからには働いてもらうぞ!

 

 その前に、味の感想でも聞いてみようか。

 

「で、味は?」

「美味すぎで言葉が出ないレベルだった!」

「そうか……ではつまみ食いした分を働いてもらうぞ、隼人!」

 

 そう言って私は隼人の腕を掴み取り、性能実験施設の指令室へと連行していくのだった。

 

 

 

 

 

 改修プランその1。

 スローネドライのミサイルボットに「ビーム攪乱幕ミサイル」を搭載する。

 ビーム攪乱幕は宇宙世紀由来の武装で、ガス状の特殊な気体を散布して、ビームの威力を大幅に減衰・無効化することができる。国連軍の主力量産機――ジンクスはビーム兵器を主武装にしている為、ビーム攪乱幕の前では無力な存在でしかない。

 ビーム攪乱幕の影響を受けた状態で唯一使える兵装はGNクローだが、近づかれたら回避行動などで距離を取れば対処できる。

 

 改修プランその2。

 スローネアインの追加装備である「トゥルブレンツユニット」をリベル・アークの設備で再生産し、フォーリン・エンジェル作戦に投入する。

 このトゥルブレンツユニットを構成するパーツは、設計図の記されている通りに製造される。

 唯一の変更点は、腰部のGNファングコンテナにGNファングが搭載されること。

 

 改修プランその3。

 エクシアの追加装備である「アヴァランチダッシュ」をも凌駕する性能を持つ装備を作る。

 

「アヴァランチダッシュを超える装備って、GBFのユウキ・タツヤが作った()()を作ればいいんじゃないかな?」

「アメイジングエクシアのバックパックか。GNセファーのデータを流用すれば作れるだろう」

 

 隼人の提案を取り込み、作業を始める。

 前世の記憶とエクシアのデータ、そして隼人の献身的な協力のおかげで、設計図を速やかに完成させることができた。現在、隼人は机の上に突っ伏して寝ている。余程に疲れているのだろう。

 

 城内の通信システムでここに来るようにと刹那に呼びかけると、私は00世界にいるトレミーと連絡を取る。エクシアの改修プランをイアンに提出し、その許可を貰うのが目的だ。

 

『ほう……エクシアの改修か』

「ええ、アヴァランチダッシュのデータを閲覧させていただきました。この装備の欠点として、各GNコンデンサーへのチャージに時間がかかる他、蓄えられたGN粒子は10分で完全放出される為、稼働時間が短いので、長期戦に向いてません。そこで私は、アヴァランチダッシュ以上の継戦能力と突破力を持ち、さらにエクシアの白兵戦能力を最大に発揮できる支援機と武装を考案しました、設計図をご覧になりますか?」

 

 イアンが興味津々に頷くと、私はアメイジングエクシアとトランザムブースターの設計図をメインスクリーンに映し出す。

 

 トランザムブースター。

 形式番号はGNR-001A。GNセファーのデータを元に設計されたこのブースターは機動力や運動性の強化の他、大型GNコンデンサーを内蔵している。その為、トランザムシステムの稼働時間を大幅に延長させることができる。

 ブースターの両翼はクラビカルアンテナとして機能する。GN粒子の質量変化を利用することで粒子を一切消費することなく爆発的な加速力を生み出し、高速移動を可能となる。

 さらに、ブースターには大型実体剣「トランザムGNブレイド」が装備されている。この武器はグリップを引き出すことで手持ち武器として使用できる。

 

 アメイジングGNソード。

 刃はGNコンデンサー内部に採用されている半透明の導熱素材を改良した新素材で、GN粒子を熱変換すると同時に、接触した物質を超高温で溶断することができる。

 さらにライフルモードの銃口が3門に増加し、GNキャノン並の火力を有する。

 

 アメイジングGNシールド。

 取り回しに優れた小型のGNシールド。表面にGN粒子を纏わせることで攻撃を防ぐ他、側面のパーツを展開することで打突兵器にもなる。

 

 エクシア本体の露出したGNコードはすべて装甲内に収納し、防御性能を向上させる。さらに一部の装甲を流線形状構造のものに交換し、機体の空気抵抗を軽減させる。但し装甲の交換により、両肩後部にあるGNビームサーベルは取り外される。

 

 なお、改修後のエクシアをアメイジングエクシアと命名し、形式番号をGN-001Aとする。

 

『こんな素晴らしい発想があったとは……刹那に見せたのか?』

「いいえ、まだです」

 

 と言ってる側から、ドアが開き、刹那が指令室に入ってきた。机と床に散らばっていた書類を見て、刹那は戸惑っている様子だったが、次第に荒れた部屋を片付けるのを手伝ってくれた。

 

「助かります、刹那」

「俺をここに呼んだ理由は、あの設計図のことだろう?」

 

 刹那はメインスクリーンに映っていたアメイジングエクシアの設計図を見上げながら、私に問いかけてきた。私は頷いてから、イアンと共に記された内容を刹那に説明する。

 

 私とイアンが内容を説明していくと、刹那の目がキラリと輝きはじめる。

 

「絢瀬悠凪、エクシアの強化改修を頼む!」

『刹那がそう言うのなら、ワシも文句は言わん。ミス・スメラギにはワシが話をつけておく!』

「感謝します、イアンさん」

 

 パーツの製造は今すぐにでも開始できるが、換装や調整作業はすべてエイフマン教授頼りだ。待機中のハロたちに製造の指示を出し、無重力区画のEカーボン製造施設をフル稼働させる。教授にメッセージを残しておこう。

 

 その後、私と刹那は眠っていた隼人を起こし、3人で指令室を出て格納庫へ向かった。

 

 

 

 

 

 一方、悠凪がお留守の間に、邸宅に客人が訪れていた。

 

「お茶かコーヒーでもいかがですか?」

「コーヒーをお願いするわ」

「分かりました。紅龍さんも一杯いかがですか?」

「いえ、自分は結構です」

 

 その客人とは、CBの元エージェントである王留美と、彼女に仕える執事の紅龍だ。浮遊城の主がお留守と聞いて帰ろうとするが、美玖は2人を引き留めた。

 

 お湯が沸騰するのを待っている間、美玖はソファーに座る王留美を観察する。

 

 彼女は莫大な財産と権力、そして人脈と地位を持ってる。

 それなのに、もっともっと欲しがっている。

 彼女の心中には、底の知れない虚無が広がっているようだ。

 

 その財産と地位は、この前の暗殺事件で失われたと聞いたが、それ以前の問題だと思う。

 

 自分と同じ十代の少女なのに、一体何が彼女をそうさせたのでしょう?

 そして、彼女がエージェントとしてCBに参加した理由は何でしょう?

 

「王留美さん……つかぬ事を聞くですが、どうして貴方がCBに参加したのですか?」

「それはもちろん、この歪んだ世界を変える為ですよ」

 

 美玖の質問に対して、王留美はむすっとした顔で答える。

 しかし他人の想いを知り、感じることのできる精神感応力を持つ美玖にとって、王留美の答えは嘘だとすぐに分かった。

 

 王留美はCBの掲げる紛争根絶には興味を持っておらず、寧ろ武力介入によって世界が変わっていく様子を楽しんでいるようだった。

 彼女が変えようとしているのは歪んだ世界ではなく……もしかして、自分の人生?

 

「貴方が変えようとしているのは世界と言うよりも、自分の人生なのでしょうか?」

「……ッ⁉ どうして、それを……!」

 

 自分の考えが目の前の少女に筒抜けになっていることに、王留美は驚きのあまりに絶句した。

 同時に、お湯が沸騰したことを知らせるピー音が客室中に響き渡った。

 

「遠い昔、とある王国には王女がいました……」

「えっ……?」

 

 美玖は細かく挽いたコーヒー豆をドリッパーに入れると、話を続ける。

 

「元々は一般家庭に育ち、音楽の道を志す普通の女性でしたが、国家の議会が形式的な王制を復活させた際に、嘗ての王族の血筋を引いていた彼女は、王女に担ぎ上げたのです」

「担ぎ上げられた……本人が望んでもいないのに、国の象徴に選ばれたのですか?」

 

 王留美の言葉に、美玖はコーヒーを淹れながら頷く。

 

「ええ。自分が望んだ人生ではないと分かりながらも、彼女は国家と国民の為に尽くし、国を立て直す為に世界各地で援助を求めました。しかし、彼女の国は経済困窮の小国である為、大した成果は得られませんでした。やがて親しい側近が去り、戦火に国を焼かれ……それでも彼女は、奮闘を続けました」

「彼女をここまで駆り立てるものは何でしょうか?」

 

 その質問に、美玖は微笑んで返事をする。

 

「それは『強い信念』だと思います」

 

 この時の王留美は、自らの姿を物語の王女に重ねた。

 何故なら、自分も望んでいない人生を歩んでいるからだ。本来ならば王家を継ぐのは紅龍だったが、先代の身勝手な判断で紅龍を当主の器ではないと見限り、王留美を後継者に選んだ。

 そして後継者として選ばれた王留美には自由が一切なく、四六時中、王家の当主となる為の徹底した英才教育を施していた。

 その後、虐待にも等しい環境で育てられた王留美は、自分の人生を歪ませた王家への鬱憤から、世界の変革を強く望むようになった。

 

 世界がどんな風に変わっても問題ない。歪められた自分の人生をやり直せればそれでいい。

 当時はそう思っていたが、考え方が変わった。

 

 その女性は王女に選ばれてしまった運命に逆らわず、受け入れ立ち向かうのに対し、自分は「人生をやり直したい」という適当な理由で逃げようとしている。今のままでは、自分はこの王女以下の存在ではないか?

 王留美が思考に陥ったその時、美玖は口を開き、言う。

 

「王女は独りで奮闘を続けましたが、貴方は独りではありませんよ。王留美さん」

 

 そう言い終えると、美玖はカップに淹れたコーヒーを差し出す。

 王留美は感謝の言葉を述べると、美玖から受け取ったコーヒーに口をつける。

 

「美味しい……上手く表せませんが、悩みが消えていく気がしました」

「それは良かったです!」

 

 王留美がコーヒーを啜っていると、外から甲高い電子音声が聞こえてくる。

 

「オレハ、オマエの兄サン、ジャナイ!」

「兄サン、記憶ガ。兄サン、記憶ガ……」

 

 音の正体が気になった美玖がマスターハロを連れて邸宅を出ていくと、ロックオンの相棒であるオレンジハロはごろごろとこちらへ転がってきた。

 

 美玖はオレンジハロを拾い上げる。

 

「ストラトスさんのハロ……どうしてここにいるのかしら?」

「おい!ハロ!」

 

 その声がした方へ振り向くと、ロックオンとトリニティ3兄妹がこちらに走ってきたのを見た。

 ネーナの足元には、HAROの姿があった。

 

 その後、美玖はオレンジハロをロックオンに手渡し、ロックオンは優しく微笑んで受け取る。

 

「えっと……かなり騒がしい声が聞こえたのですが、何かあったのでしょうか?」

「ハロは紫色の奴が自分の兄さんだと言い張ってさ、でも紫色の奴がそれを覚えていない。その後はハロ同士の喧嘩にまで発展したのさ、ははっ……」

 

 ロックオンは苦笑いしながら、美玖に事件の顛末を話した。トリニティの長男――ヨハンの話によると、HAROのメモリ領域が破損していることが原因かもしれない。

 

 元IT関係の悠凪なら直せるかも……?

 

 

 

 

 

 翌日、格納庫。 

 エイフマン教授の突貫作業のおかげで、エクシアの改修が僅か1日で完了した。目がキラキラと輝いている刹那は、生まれ変わったエクシアを見上げる。

 

「アメイジングエクシア……異世界の技術を取り入れた機体……俺のガンダム!」

 

 つづく

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