世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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第23話 終焉の始まり(後)

 悠凪と刹那がアルヴァトーレを対処している一方で、昏睡状態から目覚めたフォン・スパークはシャルの指示により、ラグランジュ4の外縁に位置する国連軍の補給基地に急襲をかけた。

 

「テメェらに割いてる時間はねぇんだよォ!」

 

 コックピットを狙って放たれたGNビームライフルを回避する為に、オービットフラッグが下に潜り込むように回避するが、そこでスラスターを全開にしたアストレアF2が粒子ビームに紛れるようにして突っ込み、プロトGNソードを振り上げて斬りかかる。

 

「こいつで終わりだぁ!」

 

 プロトGNソードの斬撃を、オービットフラッグはなんとかプラズマソードで受け止めてみせる――が、機体性能に差がありすぎてプラズマソードごと機体を両断されてしまう。

 こうして、腰を境に真っ二つに割れた最後のオービットフラッグが爆発し、宇宙の塵と化した。

 

「3分以内に全ての敵を殲滅しました」

「へへッ……まぁ、こんなモンだな!」

 

 ハナヨが報告を上げると、フォン・スパークが不敵な微笑みを浮かべながら答える。

 補給基地の破壊に成功したフォンは、このままシャルの作戦プランに従いチームプトレマイオスと合流するつもりだったが、そこに敵機が近づいていることを示す警告音がコックピット内に響き渡った。

 

「フォン、何かがこちらに接近しています。GN粒子の反応あり!」

「来やがったな、国連軍の虎の子のMS!」

 

 フォンがそう言うと、資源衛星の陰から4機のジンクスが姿を現し、一斉にGNビームライフルを放った。フォンが即座に操縦桿を動かし、下方向に向けてアストレアF2を加速させ、迫りくる粒子ビームを回避する。そして――。

 

「――使わせてもらうぜ、トランザムッ!」

 

 機体を赤に光らせたアストレアF2が残像が生じる程の速度で上昇すると共に、GNビームライフルを構える敵機の上半身を両腕ごと、すれ違いざまにプロトGNソードで斬り裂ぐ。

 更に左腕のGNバルカンでもう1機を牽制しつつ機体の向きを変え、2機目の右腕をGNビームライフルごと捥ぎ、胴体を真っ二つに両断する。

 

 3機目がGNビームサーベルを引き抜いて挑みかかろうとするが、未熟なパイロットが超加速で迫るそれを対応できずに斬撃を受けてしまい、機体を四つに斬り裂かれて爆発四散した。

 そして4機目は煙を突き破り、牽制のGNビームライフルを撃ちながらアストレアF2へと突撃する。フォンは岩石の陰で射線を切りつつGNランチャーで応射する――が、粒子ビームの熱線が回避され、宇宙の闇へと消えていった。

 

『あっぶね……当てられるところだったぜ!』

「あげゃ、いるじゃないか。腕の立つのが!」

 

 岩石の陰から踊り出たアストレアF2が2本のGNビームサーベルを引き抜くと、迫りくる4機目のジンクスに向かって突進する。

 

「ガンダムの力ァ、その身に刻めぇ!」

 

 フォンがそう言い放つと、その迫力に気圧された敵パイロットは一瞬反応が遅れてしまい、両腕を切断されて体勢を崩してしまった。

 

『な、なんだこいつ……速い⁉』

 

 この機を逃さず、アストレアF2は右足を蹴り上げ、ジンクスの機体を尖った岩石に向けて蹴り飛ばす。岩石と激突したジンクスは衝撃でバラバラに解体され、疑似太陽炉も機能を停止した。

 

「周辺に敵の反応ありません」

「あげゃげゃげゃ! さぁ、次行こうか!」

 

 周辺に敵影なし。

 操縦桿で向きを変えると、フォンはラグランジュ1に向けてアストレアF2を飛翔させた。

 

 

 

 

 

『その程度の攻撃でアルヴァトーレに対抗しようなど……片腹痛いわ!』

 

 アレハンドロ・コーナーの言葉は、大げさでも嘘でもなかった。

 高出力モードに切り替えたアメイジングGNソードライフル、GNアーマーTYPE-Dの全力砲撃。そして、フリーダムの必殺技とも言える「ハイマット・フルバースト」による十重二十重の集中砲火も、尽く強固なGNフィールドに阻まれ、掠り傷一つ負わせることはできない。

 

 私は唇を噛んだ。

 膨大な発電量を誇る縮退炉を搭載したフリーダムの火力でも、アルヴァトーレのGNフィールドにまったく通用しない。

 だが、ミーティアの圧倒的な火力なら、奴に有効打を与えられるかもしれない。

 そう考えると、私はリベル・アークにいるエイフマン教授に通信を送った。

 

「エイフマン教授、ミーティアの射出準備をお願いします!」

『うむ、分かった。3分待て!』

 

 通信を切ると、我々の無力さを嘲笑うかのように、アルヴァトーレは片側11門、両側22門の側面ビーム砲を掃射した。私と刹那の機体は、その織り目にある僅かな隙間を潜り抜けてアルヴァトーレに接近する。

 

 アメイジングエクシアは右腕のGNソードを振り上げ、アルヴァトーレに斬りかかる。

 

「ここは……俺の距離だ!」

 

 超高温に加熱されたアメイジングGNソードは巨体を包み込む圧縮粒子の流れをすり抜け、黄金の装甲を斬り裂く――しかし、致命傷にならなかった。そしてGNフィールドの出力が弱っている瞬間、私はフリーダムを加速させつつ、アルヴァトーレの右側クローアームの関節部分に目掛けて二刀流ソードスキル「ゲイル・スライサー」を繰り出す。

 

『お、おのれ!』

 

 右側クローアームを切断されたアルヴァトーレは、反対側のクローアームを振り上げ、追い討ちをかけようとするアメイジングエクシアを叩き潰す勢いで振り下ろす。

 刹那は素速く機体を退かせはしたものの、躱し切れずにアメイジングGNシールドが粉々に粉砕されてしまう。左腕に残っていた破片を振り払いつつ、アルヴァトーレの間合いから離れる。

 

「刹那、一旦下がってください!」

 

 そう呼びかけた私は機体を後退させつつ、牽制のバラエーナとクスィフィアスを連射する。

 

「了解……!」

 

 アメイジングエクシアが離れると、アルヴァトーレを包んでいたGNフィールドが消失した。

 疑似太陽炉が活動限界を迎えたのではなく、奴は恐らく大型GNファングを射出するつもりだ。

 

「あの武器は……スローネと同じ!」

「(やはりGNファングを使うか)」

 

 私の予想通り、GNフィールドの消失はアルヴァトーレの攻撃を示す兆候だった。

 機体の尾ひれに当たる部分が開き、六つの物体が飛び出してきた。金の延べ棒らしき物体は其々後方からGN粒子を噴出し、先端から粒子ビームを迸らせながら縦横無尽に急迫してくる。

 

「刹那、ここは私が……!」

 

 GNファング――ガンダムスローネツヴァイとフィーアにも装備された鋭い牙。

 しかし、アルヴァトーレに搭載されたGNファングは砲撃威力と稼働時間を重視した大型タイプであり、1門のビーム砲以外の機能を排除した簡素な設計になっている。さらに大型の故、運動性は本来のGNファングより遥かに劣っている。

 

 墜とすのは容易い。ならば――。

 

「――ビーム・コンフューズ!」

 

 2本のビームサーベルを腰に収まると、私はフリーダムの右肩に装備されたビームブーメランを引き抜き、迫りくるGNファングの群れに向けて投擲する。そして、回転するビーム刃に目掛けてビームライフルを一射した。

 

 石竹色のエネルギー波を浴びた6基のGNファングが相次いで炸裂し、オレンジ色の火球を膨れ上がらせる。私が虚空を舞うビームブーメランを回収すると、通信からアレハンドロ・コーナーの声が聞こえてきた。

 

『アルヴァトーレを相手にここまで対抗できるとは、流石は異世界のガンダムだ!』

「アレハンドロ・コーナー! 貴様のエゴによって、今また世界が歪められようとしている!」

『フッ、私を旧世界の独裁者と同じだと考えてもらっては困るな。世界は私の指導によって、より良き方向へと変革していく。言わば、私は時代の救世主だ!』

「しかし、その称号の裏には私利私欲という名の『動物的本能』が見え隠れしているぞ」

『なっ、なんだと……⁉』

「人間を目的ではなく、貴様の欲望を達成するための手段として扱うその振る舞い。それは理性の敗北であり、文明への反逆だ。普遍的な正義を解さず、ただ力の均衡にすがる貴様のような支配者は、歴史の必然がもたらす『自由』の前に消え去るべき俗物にすぎないのだよ」

『正当なる指導者である私を俗物呼ばわりするとは、身の程を弁えていないようだな、ユウナギ・アヤセ。己の非礼を、あの世で詫びるがいい!』

 

 アルヴァトーレが全砲門を開き、フリーダムとアメイジングエクシアに向けて斉射した。

 

 

 

 

 

 一方その頃、隼人とロックオンは残り11機のブラックシリーズを対処していた。

 

「クソが! 何てアンチMDウィルスが通用しないんだッ⁉」

 

 迫りくる11機の黒いガンダムに、アンチMDウィルスも、そしてバックドアプログラムも通用しなかった。メインプログラムの脆弱性がアレハンドロによって対処されたか、それとも11機の黒いガンダムはMD搭載機ではなかったか。

 

 しかし、先程のジンクスに通用したことから察するに、メインプログラムの脆弱性は対処されてないことが明らかになっている。となると恐らくは、後者だ。人が乗っているのかもしれない。

 

 それを確かめる方法は、一つしかない。

 

 隼人が操縦桿をぐっと動かして機体を翻らせると、3機のブラックアブルホールから放ったGNミサイルの弾幕をひらりと回避し、両腰のスカート部から六つの光を走らせた。

 

「GNファング、射出!」

 

 緑色の粒子を噴出し、無軌道に迫ってくる六つの牙に、3機のブラックアブルホールはGNバルカンで応射する。二つまでは撃破したが、残りの四つを撃ち漏らした。

 ガンダムアブルホールは15年前に建造された第二世代ガンダムである為、機体性能に置いては第三世代ガンダムのデータを基に建造されたスローネより劣るのは明らかだ。宇宙の海を縦横無尽に飛び交う四つ牙が内1機のコックピットハッチを抉り、両脚のGNバーニアを故障させた。

 

 一瞬のうちに、故障したGNバーニアが小爆発を起こし、機体のバランスを崩した。

 

「その面、拝ませろやぁあ!」

 

 隼人はこの隙に乗じてそのブラックアブルホールに急迫し、破損したコックピットハッチを強引にこじ開ける。中にいる「存在」を目にした瞬間、隼人とロックオンは顔を歪めた。

 

「女の子⁉」

「ネーナ、なのか……⁉」

 

 コックピットの中にいるのは、黒いパイロットスーツを着た少女だった。控えめにそばかすが散らしている頬と、目尻の跳ね上がった小悪魔的な大きな瞳。ネーナと瓜二つの顔だ。

 しかし、その瞳にハイライトがなく、まるで空洞のようだった。感情もなく意思もない。映像をさらに拡大すると、彼女の四肢が鎖のようなもので縛られているのを見た。

 

 隼人の推測通り、このブラックアブルホールはMD搭載機ではなかった。

 他の10機と、刹那が撃墜した最初の1機も同じなのか……?

 

 突如、通信から少女の声が聞こえた。

 

『殺シテ……』

「何だ⁉」

『オネガイ……()()()()()()、殺シテ……』

 

 発信源は、目の前に漂うブラックアブルホールだった。

 ネーナと瓜二つの顔を持つ少女は、死を望んでいた。それを知った隼人がGNビームライフルの銃口を向けたものの、トリガーを引くことを躊躇った。

 

 しかし瞬く間に、隼人の甘さを嘲笑うかのように、真紅の粒子ビームが横から飛来し、ブラックアブルホールの胴体を貫通した。型をとどめていた機体が爆発し、少女の意識と肉体が灼熱の炎に焼かれ、この世界から消滅した。

 

『さっさと撃てば良かったのにね』

「味方を撃つとは、まともじゃねえな……!」

「だ、誰だテメェは⁉」

 

 隼人とロックオンは、ブラックアブルホールを撃破した粒子ビームが飛来した方向を見遣る。

 サブモニターに「GNY-004B」と標記されたその機体――ブラックプルトーネ。

 

『僕はヒクサー・フェルミ。そしてもう1機のプルトーネには僕の親友が乗っているよ』

『グラーベ・ヴィオレントだ……』

 

 前者は初耳だが、後者は知っている名前だった。

 グラーベ・ヴィオレントは5年前の戦いで命を落としていた。そして彼の亡骸と乗機であるガンダムラジエルは悠凪によって回収され、リベル・アークにて保管されている。

 今、ここで自分たちと対峙しているグラーベは一体「何者」なのか、と隼人とロックオンは驚きを隠せなかった。

 

「バカな……グラーベ・ヴィオレントは死んだはずだ!」

『僕の()()()が蘇らせたんだ。イオリア計画をより効率的に遂行する為にね』

 

 蘇らせたと言うより、その創造主が新たに作り出したクローンだろう。

 そしてグラーベがイノベイドであることを悠凪とシャルさんから聞いている。となると……その創造主とやらは、リボンズ・アルマークだ。

 もしかすると、このヒクサー・フェルミと名乗った人物も、ネーナと瓜二つの顔を持つ少女も、リボンズが作り出したクローンかもしれない。

 

「待てよ……アブルホールに乗っているのはネーナのクローンなら、アストレアとサダルスードに乗っているのは――」

『君は鋭いね、ハヤト・カザマ。アストレアにはミハエル・トリニティ、そしてサダルスードにはヨハン・トリニティが乗っているよ。ちなみに僕の言うことを聞かないと困るので、精神操作の薬を投与してあるよ』

 

 何という非道な行為だ。だからあのネーナは「あたし達を殺して」と俺に願ったのか。

 モビルドールというとんでもないAIをこの世界に公開した俺は、奴らを批判する権利も資格もないけど、あのネーナの願いを叶えてあげようと思っている。

 

「おいテメェ、ヒクサー・フェルミと言ったよな……」

『どうしたんだい?』

 

 隼人の問いかけに、ヒクサーは快活な声で答える。すると――。

 

「今からテメェをぶちのめす、覚悟しな! ロックオン、援護を頼む!」

「了解だ、任せろ!」

 

 スローネフィーアがGNビームライフルを向けると、2機のブラックプルトーネがGNシールドを構えて戦闘態勢に入る。

 ロックオンはGNツインライフルと大型GNキャノンの照準を2機のプルトーネに絞る。2機が動き出した瞬間、ロックオンはトリガーにかけた指に力を入れ、フィーアはGNビームライフルを放つ。粒子ビームの閃光を合図に、他の8機も戦闘に加わり、双方は乱戦状態に陥っていた。

 

 

 

 

 

 アルヴァトーレとの戦闘は、未だに続いている。

 

『ガンダムエクシア、確かマイスターのコードネームは刹那・F・セイエイ……』

「組織の裏切り者……アレハンドロ・コーナー!」

『フッ、裏切りなどではない。私はただ、イオリア計画を時代に沿った形に修正しただけさ!』

「貴様のような支配者に、その権利があるのか!」

 

 側面ビーム砲の掃射を高速機動で躱しながら、刹那はアレハンドロとの口論を続けた。

 しかし、お互いに語言という意思疎通の道具を持っていたとしても、相容れることのない思想を持つ2人は最初から、分かり合えるはずがなかった。

 

『私にはその権利がある。それはコーナー家200年の悲願――』

「――どれだけ大層なことを言っても、貴様がやろうとしていることはただの支配でしかない!」

 

 その戯言が耳に入り、堪忍袋が限界に達した私は両者の通信に割り込んだ。

 

「絢瀬悠凪……?」

「刹那、もう良いでしょう。例え言葉が通じ合っても、分かり合えるとは限りません」

『分かり合えないから争いが起こる! だから人類は、世界は私のような一握りの指導者によって統治され、初めて恒久平和を得ることができるのだ!』

 

 戯言も甚だしい。

 一握りの人間だけで統べるほど、世界は小さくないのだ。

 

 これ以上、世直しなど考えていない俗物と話しても無駄だ。それに時間は――。

 

「ちょうど3分経った……アレハンドロ・コーナー、もう貴様は消えて良い!」

 

 私がそう吐き捨てると、コックピットのコンソールを操作してフリーダムから1km離れた後方にクロスゲートを出現させた。すると、ゲートの中心部から灰色に塗装された、全長70m超えの巨大ブースターが飛び出してきた。

 

 GNアームズを超えた大きさを持つ巨大ブースターに、刹那は面食らった顔をしながら、通信で私に問いかける。

 

「絢瀬悠凪、あれは……⁉」

「フリーダム専用のMS埋め込み式戦術強襲機『ミーティア』です。一言でいうと、君たちが開発したGNアームズとよく似たものです」

 

 刹那の問いかけに返事すると、私はミーティアにドッキングの指令を送る。

 

「ドッキングセンサー!」

「援護は俺に任せろ!」

 

 アメイジングエクシアが前に出てGNフィールドを展開し、フリーダムに向けて飛来する熱線を防ぐ。この機に乗じてミーティアが慎重に、かつ迅速にフリーダムの背後から接近してくる。

 巨大ブースターに似たミーティアが変形を開始し、左右に突出している巨大なウェポンアームはそのままに、左右へと展開していく。翼の位置を上方向へ調整すると、その中央にある固定アームへフリーダムが背中を押し込み、エネルギー供給を開始させる。

 

「これが、お前の切り札か」

 

 ドッキングが完了した。その姿は、フリーダムが自機より五周ほど、大きな重兵装のユニットを背負った……或いはその重兵装のユニットにフリーダムが取り込まれたように見えた。

 これを目の当たりにした刹那は、思わず感心の言葉を呟いた。

 

「世界の歪みを断ち切る為に……行きましょう、刹那!」

「ああ、行こう!」

 

 私の呼びかけに、刹那は了解の意志を示す。

 ミーティアのメインスラスターが閃き、側面ビーム砲の掃射を超加速で潜り抜けたフリーダムはアルヴァトーレの背後に回り込み、集中配置された7基の疑似太陽炉に目掛けて全砲門一斉射撃を行う必殺技「ミーティア・フルバースト」を放った。

 

 連続で降りかかってくるミサイルとビームの嵐を、アルヴァトーレはGNフィールドで辛うじて防いだが、次第にGNフィールドの強度が徐々に弱まっていく。

 それを見抜いた私はウェポンアーム先端中央に備える大口径ビーム砲「120cm高エネルギー収束火線砲」の照準をアルヴァトーレの左側面の破損箇所に絞る。そして、トリガーを引いた。

 

 放たれた熱線は縮退炉によるエネルギーの恩恵によって陽電子破城砲以上の威力を発揮し、アルヴァトーレの強固なGNフィールドを一瞬で貫き、黄金の機体を中破させた。

 

『おのれ! やってくれたな、ユウナギ・アヤセ!』

 

 機体が半壊状態に陥ったアルヴァトーレはすぐさま向きを変え、フリーダムに反撃しようとする――が、そこに周囲に散らばる爆煙を突き破ったアメイジングエクシアが斬りかかる。

 

「――うおおおおおおっ!」

『なっ、エクシアだと⁉』

 

 刹那は雄叫びを上げ、アルヴァトーレに向かってアメイジングエクシアを突進させた。アルヴァトーレは迎撃するようにビーム砲を向けたが、時はすでに遅い。

 超高温に加熱されたアメイジングGNソードが黄金の装甲に深々と突き刺さり、横に薙いで創傷をつける。しかし刹那の攻勢は、それだけにとどまらなかった。

 

「GNブレイド、セット……斬り裂く!」

 

 左手にGNロングブレイドを抜かせると、刹那はアメイジングGNソードで斬った箇所に向けて剣を横一閃に振るった。そして横に、縦に、2本の剣で無数の斬撃を浴びせていく。

 敵にまだ十分なダメージを負わせていないと判断した刹那は、操縦桿を動かしてアルヴァトーレから離れると、アメイジングGNソードライフルと左腕のGNバルカンで追い打ちをかける。

 輝かしい装甲に無残な傷跡を幾重にも付けられ、各所から煙とスパークを散らす。

 

 それでも2機のガンダムの攻勢は、止まることはなかった。

 

 ミーティアとドッキングしたフリーダムが右側のウェポンアームを振り上げ、戦艦をも一刀両断する威力を持つ超巨大ビームソードを顕現させる。

 

「デッド・エンド・スラッシュ!」

 

 決め台詞を言い放つと、虫の息となったアルヴァトーレに目掛けて唐竹割りに振り下ろす。

 斬り裂かれた機体が盛大な爆発をあげる。さらに二発、三発と閃光が瞬き、溢れ出す黄金のGN粒子と爆煙が、アルヴァトーレの機体を包み込んだ。

 

「終わった……のか?」

「いいえ、まだです!」

 

 私が刹那の疑問に返事するとほぼ同時に、アメイジングエクシアのコックピットではロックオンされたことを示す警告音が鳴り響いた。次の瞬間、黄金の熱線が虚空を走った。

 小刻みな動きでそれを回避すると、刹那は機体を振り向かせ、粒子ビームの飛来した方角を見つめる。爆発四散したアルヴァトーレの残骸から、黄金のMSが1機、姿を現した。

 

 刹那が即座に身構え、黄金のMSが右手のGNビームライフルを投げ捨ててGNビームサーベルを引き抜くと、GN粒子を噴出しながら突進してくる。

 振るわれる粒子束を、アメイジングエクシアはGNソードで受け止める。

 

『時代に取り残されたガンダムが、ここまで私を苦しめるとは』

「生きていたのか、アレハンドロ・コーナー!」

 

 これ以上、言葉を交わす必要などない。

 俺たちのすべきことは、この男を――世界の歪みを打倒することだ。

 

 アメイジングエクシアのスラスターが閃き、敵の斬撃を弾き飛ばす。間髪を入れず、黄金のMSがアメイジングエクシアの腰を強かに蹴りつけた。慣性によって飛ばされた機体に急制動をかけると、刹那はGNソードをライフルモードに切り替えて連射する。

 

 そこに黄金のMS――アルヴァアロンが翼を前面に回してGNフィールドを展開した。

 

『無駄だよ! このアルヴァアロンにもアルヴァトーレと同等のGNフィールドがある!』

 

 粒子ビームがあっけなく弾き飛ばされ、あらぬ方向へ飛び去っていく。

 しかしこの瞬間、フリーダムからの通信が割り込んできた。

 

「同じ防御手段が二度も通用すると思っているのか?」

 

 瞬く間に、刹那は超巨大ビームソードに左半身を斬り裂かれたアルヴァアロンを目にした。

 勝機は、ここにある。

 

「エクシア、セブンソード・コンビネーション!」

 

 急接近するアメイジングエクシアに、アルヴァアロンはGNビームライフルを連射する。

 しかし、GN粒子の質量変化を利用して尋常じゃないスピードで飛行しているそれを足止めすることはできなかった。

 

 アメイジングエクシアには、7本の剣が装備されている。GNロングブレイドを引き抜き、肉迫していたアルヴァアロンのGNフィールドに鋭い剣先を突き立てた。

 その直後、高周波で振動する刃は黄金の領域を突き破り、その胴体に刃を突き込ませる。

 

『貴様っ……!』

「武力による紛争根絶……それこそが、ソレスタルビーイング!」

 

 続きざまにアメイジングエクシアがGNショットブレイドを引き抜き、その右腕を刺し貫いて背中の翼に縫い付ける。同時に、アルヴァアロンの黄金のGNフィールドが消失した。

 

「ガンダムがそれを成す! 俺と共に!」

 

 刹那はそう言いながら、機体の腰背部にある2本のGNビームサーベルを両手に抜き、その胸元に突き立てる。さらにトランザムブースターに装備されている大型GNブレイド「トランザムGNブレイド」を両手に抜き、アルヴァアロンにX字斬りを見舞う。

 

「そうだ……俺が!」

 

 2本の大型GNブレイドを手放し、折り畳まれていたアメイジングGNソードを展開する。

 そして、アルヴァアロンの胴体に目掛けて剣を縦一文字に薙ぐ。

 

「俺たちが、ガンダムだッ!」

 

 7本の剣による斬撃を刻み付けられたアルヴァアロンは、損傷箇所からスパークと火花を散らしていた。

 一方、血まみれとなったアルヴァアロンのコックピットでは、GNロングブレイドに身体を突き刺されたアレハンドロに、一つの通信が入った。

 

 

 

 

 

 ヒビが入ったサイトモニターには、微笑みをたたえた青年の顔が映し出される。ミント色の髪と大きな目、形の良い鼻筋……その青年は、リボンズ・アルマークだった。

 

「り、リボンズ……」

『アレハンドロ・コーナー、貴方はいい道化でしたよ』

 

 咄嗟に何を言っているのか理解できなかった。

 

「……なに⁉」

 

 モニターに映るリボンズの微笑が、徐々に悪意の滲んだものになっていく。

 

 リボンズが、私を裏切った?

 それとも最初から、私を利用していたのか?

 

 イノベイターである彼を見つけ出し、保護したのは私だ。

 彼の能力に気付き、ヴェーダを掌握させたのも私だ。

 クレーエ・リヒカイト医師に彼の遺伝子を調査させ、トリニティたちを作らせたのも私だ。

 

 ラグナ・ハーヴェイを仲間に引き入れたのも。ハヤト・カザマ(風間隼人)を勧誘したのも。曽祖父の代から続けられていた疑似太陽炉の建造を引き継いだのも、国連軍に譲渡したのも。ミク・ホウオウイン(鳳凰院美玖)という小娘を誘拐する計画と、異世界のガンダムを手に入れる為の計画を立てたのも私だ。

 

 全ては私がやった。私がやったんだ……それが違うというのか⁉

 私は最初から、リボンズに選ばされていたというのか⁉

 

『これはイオリア・シュヘンベルグの計画ではなく、僕の計画になっていたのさ』

「リボンズ……貴様、我がコーナー一族の悲願を……!」

『そういう物言いだから、器量が小さいのさ』

「……リボンズーッ!」

 

 自分を愚弄し、利用したリボンズに対する怒りが頂点に達したアレハンドロは、残り僅かの気力を振り絞り、リボンズの映る画面に拳を叩きつけた。

 しかし、拳を叩きつける間もなく、アレハンドロの肉体は爆発によって塵と化し、その醜い野望と共に宇宙の海へと消えていった。

 

 アルヴァアロンの機体が一瞬だけの恒星となって、そして消滅した。

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 

 地球方面から、1機のMSがアメイジングエクシアに猛接近していた。

 

「ユニオンのフラッグ……疑似太陽炉を搭載している⁉」

 

 それは背中に疑似太陽炉を積み、真紅のGN粒子を放出するユニオンフラッグカスタムだった。

 

『会いたかった……会いたかったぞ、我が愛しのガンダムッ!』

 

 つづく




ガンダム00ファーストシーズン編完結まで、あと2話です。
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