世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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※お知らせ
体調が少し回復したので、執筆を再開いたします。
読者の皆様、コロナワクチン接種後は身体の変異等の副反応に気を付けてください。


第32話 エキスパートプラン

 昼休みが終わり、いよいよ自由研究の時間がやってきた。

 ルート分岐は三つ。被服業にあんまり興味がないので、この選択肢は除外だ。シルヴィと一緒に音楽堂に行くも良いが、エルと一緒にフェンシング部の練習に参加するのも悪くない。

 

 よく考えてみたら……今日は、身体を動かしたい。

 フェンシング部の練習に参加しようか。

 

 剣の戦いには個人的に興味があるし、かっこいいだと思う。これをきっかけにSAOにハマってしまった。それに、一年戦争の最終決戦では、アムロ・レイとシャア・アズナブルは大破した機体を乗り捨て、宇宙要塞ア・バオア・クーの一室でフェンシング対決を繰り広げていた。

 

 その中、彼らはこんなやり取りをしていた。

 

 ――ニュータイプでも身体を使うことは普通の人と同じだと思ったからだ!

 

 ――そう、身体を使う技は、ニュータイプと言えども訓練をしなければな!

 

 あの女神――カレンが力を与えてくれたからこそ、今の私がある。

 強大な力ではあるが、磨かなければ腐り落ちる。その時、守りたいものも守れなくなる。

 

 古往今来、強大な戦士たちは常に己を磨き、更なる高みを目指している。

 シルヴィを守る騎士であるエルもそうだったに違いない。彼女と一緒にフェンシング部の練習に参加すれば、何か新しい収穫を得られるかもしれない。例えば、彼女の剣技とか。

 

「剣の戦いに興味があるので、今日はカバリェロさんについていきたいと思うが――」

 

 そう言いながら、私はエルの反応を伺う。

 すると、彼女は――。

 

「そうなんですか……絢瀬殿の実力を確かめるのに、いい機会かもしれませんね。それと絢瀬殿、鳳凰院殿。私のことは気軽にエルとお呼びください」

「――ッ!? ああ、今後もそうさせてもらう。エル」

 

 私が返事すると、シルヴィと玲奈の間に挟まっている美玖が小さく頷いた。

 親しい関係ではない女性を愛称で呼び捨てるのはマナーに反していると思うが、ご本人は嫌がる様子はなかった。にしても、彼女のような堅物が自ら申し出るのは予想外だった。

 

「って、美玖ちんはどうする?」

「わたしは、シルヴィについて行きますわ」

 

「それじゃあ音楽堂に案内するわ。行きましょう、美玖!」

「うぇ!? シ、シルヴィ!?」

 

 玲奈と別れると、美玖はシルヴィに手を引かれたまま音楽堂の方へ走って行った。

 その一方で、私とエルは学園の敷地内にある屋内道場に足を運ぶのだった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 流石は貴族たちの通う学園。この道場は全校生徒の倍の人数を収容できるスペースがある。

 そう言えばこの道場……原作主人公である市松央路が腕を切り取られかけた場所だったな。

 

「フェンシング部は、いつもここで練習するのか?」

「いえ。本来は別の場所で練習してたのですが――」

 

 エルの話によると……この道場は元々剣道や柔道の練習が主な場所だが、フェンシングの需要が高まってきていることにより、部長が生徒会長を通じて道場を貸してもらうことになった。今日はフェンシング部の貸し切りとなっているが、練習のない日は他の部活に使わせるとのこと。

 

「なるほど。ところで、この学園の生徒会長は何者なんだ? ちょっと、気になっててさ」

「現在の生徒会長は3年A組の篠原聖奈殿です。日本防衛大臣のご息女であらせられます」

 

 それを聞いた途端に、思わず心臓が跳ねてしまった。

 原作では語られていない所に足を踏み込んだ上、生徒会長の身分が「防衛大臣のご息女」という予想斜め上のものだった。こちらの「事情」もあるし、用心するに越したことはないだろう。

 

「それでは、用意しましょうか。貴公の分の着替えがこちらです」

「ありがとう」

 

 生徒会長の件は一旦棚上げにし、更衣室で着替えを済ませる。

 渡された服は白一色で、胴体の部分が通電仕様のメタルジャケットに覆われている。

 そう、切っ先が当たったら音が鳴るやつだ。

 

「あっ! 今日はカバリェロ様がいらっしゃってるわ!」

「今日はフェンシングを取ってればよかったな……」

 

 私が戻ると、先に着替えを済ませたエルに対する黄色い歓声が道場に飛び交っていく。道場内に飛び込んできた女子生徒が外までビッシリと埋め尽くしており、大きいカメラを担いでいる女子もいた。彼女たちの反応は、まるで男性アイドルに出会った時のそれだった。

 

「――って、カバリェロ様の隣に男がいる!?」

「彼は、今日2年A組に転入してきた噂の転校生ではなくて?」

「ガンプラバトルでクルスクラウンさんと対等に渡り合ったという……」

「プラモデル部は潰されたから、そんなのどうでもいいわよ!」

 

 と、私の存在に気づいた途端、女子たちが騒ぎ始めていた。

 

「彼女たちにとって、俺がいると何か不都合でもあるのか?」

「絢瀬殿、気にせずこちらへ」

 

「――突然の事で驚かせてしまい、申し訳ありません。この方は私が呼んだ客人です。今日は彼も一緒に練習に参加させて頂きたい……迷惑でしょうか?」

「あっ、いえいえ。カバリェロ様がそう仰るのなら……」

 

 騒いでいる女子生徒たちにどうしようかと思ったが、エルの鶴の一声で場が収まった。

 

「それでは改めて、練習を始めましょう。絢瀬殿は皆さんの動きを見様見真似でいいので、やってみてください」

「分かった。やってみる」

 

 私はエルの指示に従い、フェンシング女子たちの動きを真似てみることにした。

 格闘プログラムでソードスキルの動きを再現して見せたが、実際に剣を握るのは初めてだ。

 

 ちょっとワクワクしてきたので、私は身体の中心に剣――フルーレを構え、捻り入れつつ前方に突き出し、すかさず斜め上へ二撃目を突き出した。ただ、これをやって見たかっただけだ。

 

 細剣ソードスキル「パラレル・スティング」

 SAOのヒロインであるアスナが『SAOプログレッシブ』にて使ったソードスキルだ。

 

「見事な剣捌きです。絢瀬殿、フェンシングは初めてではないのですか?」

 

 と、やっている傍から、エルがこちらに歩いてきた。

 

「昔、ちょっとな……」

「そうでしたか。ウォーミングアップはここまでにして、そろそろ勝負に参りましょうか」

「ん、勝負とは……?」

「一対一の試合です。私は貴公の実力に興味がありますので」

 

 と、試合を挑まれてしまった。

 ソードスキルの動きは私の脳内に入っているが、剣技に対する造詣が浅い――素人同然だ。

 何より、私のやったことは所詮「物真似」でしかなく、剣の戦いにおいては、本物の騎士である彼女に敵うわけがない。でも、私とてガンダムのパイロットだ。ここで引く訳にはいかない。

 

「分かった。試合を受けよう」

「因みに、貴公の電極は切っておきますので、ご安心を。所謂『ハンデ戦』というものです」

 

 ハンデ戦か……これではエルの実力を体験できないな。

 

「いや、電極のスイッチをオンにしよう。君との勝負は、予想以上に楽しめそうだから」

「……いいでしょう。ならば私も本気でお相手いたしますが、構いませんか?」

「ああ。そうでないと困る」

 

 傍から見れば、私は生意気なことを言ってるかもしれないが、エルが本気を出さないと、新しい収穫を得られないと判断したからだ。まともにやっても勝てないかもしれないが……まともにやらないときっと後悔する。だから、この試合――全力で挑ませてもらう!

 

 

 

 

 

 その後、私はエルに連れられ、競技スペースに敷かれたカーペットの上に立つ。

 

「ルールはフルーレ。つまり切っ先を胴体に当てれば勝ち、という内容でいかがですか?」

「ああ、問題ない」

「剣を構えてください。それでは――始め!」

 

 エルが掛け声をした瞬間、一気に間合いを詰めてきた。

 

「はっ!」

「せい!」

 

 エルの出方を探る為に、私はわざと攻撃権を彼女に譲った。アムロ・レイの戦闘能力を獲得したお陰で、動体視力が強化され、その動きは止まっているように見えた。彼女が真っ直ぐ放ってきた突きを、私は剣の切っ先を当てて軌道を逸らす。

 

 だが、エルはすぐさま体勢を立て直し、一直線に突きを放ってきた。

 迫りくる切っ先と対峙し、鋭敏に覚醒している意識に対処を促された私は、反射的に細剣ソードスキル「ストリーク」を繰り出してしまった。でも、彼女の剣を斬り払うことに成功した。

 

「流石はフェンシング世界大会で銀メダルを獲得した選手……手強いな!」

「ご存知でしたか。それより、貴公も中々やりますね。その反応速度、並大抵ではないんです」

 

 ここで互いは一旦距離を取ったが、エルは更に踏み込んできて剣を突き出す。攻撃手段がルールによって制限されているせいか、動きが単純で直線的すぎる。ならば、こちらも攻勢に――。

 

「ここだ!」

 

 マスク越しにエルの目から「こちらの左肩を狙っている」ことが分かった途端、私は手に持った剣を素早く突き出し、それを斬り払う。刃が跳ね上がり、エルが体勢を崩してしまった。

 

「隙を見せたな……ならば!」

「なっ!?」

 

 勿論、体勢を立て直す時間は与えない。与えるつもりはない。

 エルが驚きの声を上げたそこに、私は身体の中心に剣を構えて、捻りを入れつつ真っ直ぐ彼女の胸元に目掛けて細剣ソードスキル「リニアー」を繰り出し――。

 

 切っ先がエルの胸元に当たったと同時に、有効判定を示すピー音が道場に響き渡った。

 

「カバリェロ様が……負けた!?」

「えっ、嘘でしょ!?」

「速すぎて剣先が見えませんでしたわ。あの庶民は一体何者?」

 

 エルの敗北を目の当たりにし、観戦している女子たちが騒然となる。

 

「もしルールという縛りがなかったら、負けたのは俺の方だったかもしれない」

「何にせよ、貴公は実力を持って私を負かしたのです。そう謙遜なさらなくても結構ですよ」

 

 と言いつつ、マスクを外した彼女の方から握手を求め、私はそれに応じて手を差し出した。

 

「そう言えば、絢瀬殿。どうして私の狙いが分かったのですか?」

「ん? 何のことだ?」

「先程は貴公の左肩に目掛けて剣を突き出したのに、どうして予測できたのですか?」

 

 私は僅かに顔を俯け、そしてもう一度エルに向き直る。

 

「マスク越しても、君の目が見えたから」

「なっ、視線で攻撃を読んだのですか!?」

「このスティール網に覆われたマスクでも、まるでルビーのように光輝いている君の目までは隠せなかった。だから予測できたんだよ……」

 

 事実をそのまま伝えるつもりだが、エルは照れたように視線を逸らし「そ、そなんですか……」と返事をした。そして気が付いたら、周りの女子から刺すような視線を感じた。

 

「そうだ、エル。まだ時間はあるし、これからは音楽堂に行ってみたいと思うんだが」

「えっ、そうですか。では、私もお供いたしましょう」

 

 なぜ女子たちが刺すような視線を送ってきたのかは知らないが、とりあえず道場を離れて音楽堂に向かうことにした。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「そう言えば、絢瀬殿――」

 

 音楽堂に向かう途中、エルが急に話を切り出してきた。

 

「昨日、貴公と妹君の個人情報を精査したのですが……何かを隠していませんか?」

「ん、何のことか? 具体的に説明してもらえると助かるが――」

「貴公が個人情報を偽っている可能性があると言っているのです」

 

 これは驚いた。どうやら、ソルティレージュの情報部は伊達ではないようだ。

 個人情報を偽っていることは事実だが、今は彼女に、この世界の人々に秘密を知られるわけにはいかない。この世界の人々は、まだ()()()と対面する準備ができてないだから。

 

「あのさ、エル。仕事熱心はいいことだが、他人の秘密に足を踏み入れるのはどうかと思うぞ」

「それは失礼しました。ですが、シルヴィ様をお守りする身として、それらは必要な仕事です」

 

 と言いつつ、彼女は頭を下げた。

 

 どこまでも真面目で実直な性格。

 それが彼女の――エロイナ・ディ・カバリェロ・イスタの魅力の一つと言ってもいいだろう。

 

「それが君の職責であることは分かっている。だから、その……非難するつもりはないよ」

「……ご理解いただき、ありがとうございます」

 

 エルは私の言葉を聞くと、下げた頭を上げる。

 

「もし状況が俺に隠し事を許してくれなかったら、その時は君とシルヴィに全てを話そう」

「えっ……本当に、いいんのですか?」

「ああ。でも、その日が永遠に来ないことを切に願っている」

 

 この話は、これで終わりだ。

 

 

 

 

 

 その一方で、音楽堂では二回目の演奏が始まろうとしていた。

 

「ねえ美玖……演奏に参加してみたいと思わない?」

「ヴァイオリンで参加したいのですが、レンタル可能な楽器は音楽堂にあるのでしょうか?」

「それならあるわ。ついてきて!」

 

 始めから観客席で演奏を鑑賞する美玖だったが、シルヴィに誘われて、二回目の演奏に参加することになった。美玖は演奏用のヴァイオリンを選ぶ為に、シルヴィと一緒に音楽堂の裏にある楽器置き場に移動した。ここは、数え切れない程たくさんの楽器が保管されている場所だ。

 

「美玖、使いたいヴァイオリンを選んで」

「……うーん、どれにしましょうかな?」

 

 物色の末、美玖は棚に置いてある多数のヴァイオリンではなく、棚の裏に隠されていた年代物の白いヴァイオリンに注目した。その異質さに惹かれる美玖は、白いヴァイオリンを持ち上げた。

 

「あら、少し埃がついてますね……」

 

 ついていた埃をハンカチで丁寧に拭い取ると、美玖はしばらくの間、白いヴァイオリンをじっと観察していた。高級感のある白い本体は、灯りの下に淡い銀色の光を放っているよに見え、顎当てとペグ、指板は本体と対照的な艶有り黒塗装が施されている。

 

 この白いヴァイオリンは楽器というより、むしろ芸術品のような美しさを放っている。

 弓を手に持って、試しにE線だけを弾いてみると――きれいに澄んだヴァイオリンの音色が楽器置き場の中に響き渡った。非常に聴き心地のいいチューニングだ。

 

「このヴァイオリン、気に入った?」

「ええ。この子にしますわ!」

 

 二人は他の生徒たちと共に、二回目の演奏の準備に取り掛かるのだった。

 その一方で、この学園の生徒ではない金髪の少女が音楽堂の片隅に身を隠し、美玖を眺めながら「私の()()()()よ。そのヴァイオリンの音色を、私にも聴かせてください」と心中で呟いた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 この学園の音楽堂は、大昔にこの地に建てた教会をそのまま再利用されたものだ。

 エルの話によると、建物自体は改築されていないが、室内に防音と反響を抑える壁材と天井材が新しく敷き詰められており、現在は小型のホールとしても使えるとのこと。

 

「……これは、楽器の音か」

「どうやら演奏の真最中のようですね。さあ、中へ入りましょう」

 

 私が分厚い門を押し開くと、色んな楽器の音色が聴こえた。ピアノにヴァイオリン、吹奏楽器が数種類。そして舞台に目を向けると、私は中央に立つヴァイオリンを弾く少女に魅了された。

 

「(美玖が、ヴァイオリンを弾いている!?)」

 

 彼女がヴァイオリンを弾けるなんて知らなかった。思いもしなかった。

 だが、綺麗なものだ。ピアノを演奏しているシルヴィはもちろんだが、美玖からどうしても目が離せなかった。彼女が弓を滑らせる度に、しっとりとした音色が音楽堂内に広がっていった。

 

 華麗なる音色が耳に響き、陶然たる思いが、私の全身を満たしていく。

 とにかく、聞いていて心地よい。音がするすると耳に滑り込む。もはや言葉が要らないと思えるほど、この演奏は素晴らしかった。エルも感心したように舞台に立つ生徒たちを見つめている。

 

 何より、二人共ダントツで美少女でスタイルも抜群。シルヴィはピアノに手を置くだけで一枚の絵画にしたいくらい美しい。そして美玖は、ただヴァイオリンを弾くだけではなく、楽曲のリズムに合せて緩く身体を動かしていた。美人でシルヴィよりスタイルがよくて、上品かつ優雅な仕草は「美しい」という単語だけでは表現しきれないものだった。

 

「流石はシルヴィア様、とてもお上手ですわ」

「ええ、ピアノってこんなに滑らかな音が出るものなのね!」

 

「鳳凰院さんは、なんて美しいのでしょう!」

「それだけじゃない。彼女はシルヴィア様と……周りと合わせている」

「初めてヴァイオリンを弾く者の実力ではありませんね……」

 

 様になっている、上手い。そして何より美しい。周りからの評判も上々のようだ。

 そう、異彩を放つ二輪の花はご本人でも気づかないうちに、観客たちの注目を集めていた。

 

 やがて演奏が終わりを迎え――。

 

「ブラヴォー!」

 

 咄嗟にイタリア語を口にしてしまった。

 拍手しながら私が席から立ち上がり、次々に周りが模倣する。

 

「「ご静聴、ありがとうございました!」」

 

 万雷の拍手を浴びながら、美玖とシルヴィを始め、舞台に立つ生徒たち全員は輝くような笑顔で深々と一礼をした。

 そして、こちらに歩いてきた美玖とシルヴィを、私とエルは拍手で出迎える。

 

「細かいことはよく分からないが、素晴らしい演奏だった」

「とても素敵な演奏でした。シルヴィ様、鳳凰院殿」

 

「ふふっ、来てくれてありがとう!」

「ありがとう……お兄ちゃん、エル」

 

 と言っている傍から、後頭部に水色のリボンがついている女子生徒がこちらにやってきた。

 サラサラの銀髪を指でクルクルと巻きながら、彼女は美玖に声をかけた。

 

「まさかその骨董品が日の目を見ることになるなんて」

「……貴女は、どなたですか?」

「あっ、篠原先輩は今日も来てくれたのですね!」

 

 シルヴィの言葉から察するに、目の前にいる銀髪の少女はノーブル学園の生徒会長――篠原聖奈のようだ。エルに勝るとも劣らない程の容姿で、淑やかな大人の魅力を感じさせる。

 

「自己紹介が遅れたわね。わたしは篠原聖奈、このノーブル学園の生徒会長を務めているわ」

「本日付けで転入になりました、鳳凰院美玖と申します。よろしくお願いします、篠原先輩」

 

 と、美玖は礼儀正しく挨拶を交わし、篠原先輩は「そう畏まらなくてもいい」と返事した。

 

「そう言えば、篠原先輩は先程、このヴァイオリンは『骨董品』と言いましたよね?」

「ええ、それはね――この白いヴァイオリンは理事長のコレクションで、2世紀の年月が経っても誰にも弾かれずにお蔵入りしていたのよ。フランスの骨董屋に大金で購入したと理事長から聞いているんだけど……実際はとあるドイツ貴族が所有していた遺産だそうよ」

 

 話を聞いているこちらも驚きを隠せなかった。

 こんな貴重な楽器を生徒の手が届く場所に置くとは、何を考えているんだここの理事長は!?

 

「そうなんですか。でも、どうしてこのような貴重なものが楽器置き場に置かれたのですか?」

「さあ……多分理事長は、このヴァイオリンを弾ける若い世代の演奏者を待っていると思うわ」

 

 と、篠原先輩がその話を終えると、笑顔で私の顔を覗き込んできた。

 彼女が付けているらしい甘い香水の匂いが漂ってき、強烈な芳香がプンと鼻をついてくる。

 

「君が絢瀬悠凪ね。お噂はかねがね聞いているわよ」

「あの……篠原先輩、顔が近いですよ?」

 

 浮気だと思っているのか、美玖がジト目で私を睨んでいる。ここは距離を離れた方がいい。

 すると、篠原先輩が不満そうに頬を膨らませた。

 

「はぁ、釣れないわね。絢瀬君ってさ、プラモデル部を復活させたいと思わない?」

「復活させたいと思います。その条件について、貴女とお話がしたいのですが――」

「それでは翌朝、生徒会室まで来なさい。これは会長命令よ、いいわね?」

 

 ウィンクしながら命令を下してきた篠原先輩に、私は「分かりました」と返事する。これを受け取った彼女は「では、また明日ね!」と言い残して、満足げに音楽堂を立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、わたしたちも教室に戻りましょう」 

「いや、俺はしばらく校内を散策したいので、美玖はみんなと一緒に教室に戻っていってくれ」

「そう……分かったわ。美玖、エル。教室に戻りましょう」

「では、絢瀬殿。また後ほど」

 

 去っていく3人の背中を見送ると、私は校内散策を開始した。

 いや、散策というのは嘘で、真の目的は「人探し」だ。しかもそれは、普通の人間ではない。

 

 さっきから、遠くから誰かに見られていることに気付いてた。

 あのサファイアと同じ青色の瞳、忘れるわけがない。商店街の時はすれ違っていたが……今度は逃がしはしない。そして、広場の噴水付近まで歩くと、急に後ろから声をかけられた。

 

「――もう探さなくて結構です。私はここにいますよ、絢瀬悠凪」

 

 私はその言葉を聞いて、一瞬心臓が跳ね上がってしまった。

 そして後ろを振り向いた私は、世界の外の存在――神との再会を果たした。

 

 つづく




 リメイク前と違い、悠凪VSエルのフェンシング試合にSAO要素を導入してみました。
 原作のシーンも確認しながら執筆しましたので、いかがだったでしょうか?
 物語の内容に関するご感想を頂けると幸いです。

 なお、今回に初登場の生徒会長――篠原聖奈ちゃんは本作のオリキャラです。
 画像が見たい方は下記のリンクをご覧ください:
https://twitter.com/ChristopheASE/status/1283086151725662208

 ラストにカレンとの再会を果たしはしましたが、彼女から力を貰うのは先になります。
 ミホヨの『崩壊3rd』の設定を熟知している読者様なら、もう察しがついていると思います。

本作のオリ主以外のオリキャラ中に、誰のことをもっと知りたいですか?

  • 風間隼人
  • 篠原聖奈
  • 鳳凰院美玖&カレン
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