世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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今回は女神――カレンの話がメインとなります。
本作の世界観と核心部分に関わる内容であるため、前話未読、または『崩壊3rd』未プレイの方などは読む際にご注意ください。


第33話 女神の告白

「ちょっと君、ノーブル学園の生徒ではありませんね。どうやって敷地内に――」

 

 学園の男性教師に発見されたカレンだったが、彼女は慌てる様子を見せずに制服のポケットから「花」のような小道具を取り出し、駆けつけてきた教師の面前に差し出した。

 

 すると、彼女が口を開き――。

 

「今は彼と大事な話をしていますので、私のことは見逃してください」

「――あっ……わ、分かりました」

 

 カレンの言葉は「依頼形」ではなく「命令形」だった。

 にも拘らず、男性教師はまるで催眠術にかかったかのように従順に返事し、フラフラと教育棟へ歩いていった。彼女は、人の意識や意志を操る術を持っているのか⁉

 

「貴女は今、何をしましたか?」

 

 その疑問を抱いたまま問いかけると、教師の背中をしばらく見つめてから、こちらに向き直った彼女はこう答える。

 

「この花は『渡世の羽(とせいのはね)』という、他人の大脳信号を操作し、意識を掌握することができますわ」

 

 どういう理屈で動いているのかは知らないが、作用を聞いただけで空恐ろしい感じがした。

 人の意識を操るなんてことを平然とやっている彼女に、思わず身構えてしまった。

 

 だが、何だろう……妙に違和感がある。

 この()の外観を持つ小道具を「渡世の()」と命名するのか?

 普通には考えられないネーミングだな。

 

「あっ、貴方に使うつもりはありませんから、そんなに身構えなくても――」

「そうですか。ところで、貴女は何をしに、ここに来たのですか?」

「貴方と美玖、そして隼人に会いにきただけです……と言いたいところですが、先ずは貴方に謝罪しなければならないことと、伝えなければならないことがあります」

 

 女神が謝罪を……一体どういうことなんだ、と私は疑問を禁じ得なかった。

 校門の噴水付近で立ち話もなんだし、とりあえず近くのベンチに座ってから話を聞こう。

 

 

 

 

 

「ねえ、黒き地獄――ジュデッカとの戦いは、まだ覚えてますか?」

「忘れるわけがありません。あの機体は特殊すぎますからね……!」

 

 常識外れの性能といい、紫色の結晶体で出来た触手といい。特殊すぎて今でも記憶が新しい。

 と私が言うと、カレンはひどく真剣な顔で私をじっと見つめながら話す。

 

「あのジュデッカは貴方の知る本来のジュデッカではなく、枝が分かれた宇宙世紀世界に転生したユーゼス・ゴッツォが作り上げた機体です。外観はそのまんまですが、中にはMSやMAの部品が使用されております。貴方が遭遇したユニコーンガンダムも、その世界に属する機体ですわ」

 

 枝が分かれた世界――並行世界の宇宙世紀にユーゼス・ゴッツォ、そして転生か。

 これらのキーワードを纏めてみると、私が戦ったジュデッカは「本来とは違う歴史を歩んでいる『並行世界の宇宙世紀』に転生したユーゼスがその世界の技術で作り上げた機体で、何らかの理由によって00世界に転移・出現してしまった」と考えていいだろう。

 

 そして、ユニコーンガンダムとユウ・シラカワは、ジュデッカを追って00世界にやってきたと考えられる。つまり、あの男は異世界からやってきた転移者で、ユニコーンガンダムはフリーダムと同じかそれに準ずる転移システムが搭載されているかもしれない。

 

「そんなことが……信じ難いというよりも、想像を絶するくらい驚きました」

「では、巨大な木を想像してみてください。頂点は目に見えないほど高く、葉は空をも隠す。木の下にあるのは無限の深さを持つ海で、その境界を触れることもできない――」

 

 と言いながら、カレンが私の傍に付き添って、私の手を握りる。

 一瞬、眼前の景色が一変し、私は広大な海に聳え立つ桜の木らしき巨木が見えてしまった。

 

「――あの木は⁉」

「海は広がり続け、木は根を伸ばして成長し続けます。そして海水が染み込んだ木は無数の歳月を経て、無数の枝に分かれ始め、無数の花や葉(並行世界)を実らせました」

「この終わりのない長い過程の中で生えた芽に、人類という名の文明が生まれたんですね?」

「ええ、その通りですわ。やはり貴方は……素晴らしいです」

 

 褒めてくれたのはいいが、なぜ距離を詰めて私に胸を押し付けるんだ?

 流石に不味いと思った私は、近づいてくるカレンとの距離を保つように離れる。

 

「あっ、その、困りますよ。私は……!」

 

 私が言うと、彼女がむすっとした顔を見せ――。

 

「あら、女神である私がお嫌いですか?」

「いえ……ただ、美玖に怒られますので」

 

 と聞いた彼女が「そうなんですか」と言いながら意味深な微笑みを見せ、話を切り替える。

 あの微笑み、きっと何か考えているに違いない。

 

「貴方が交戦したジュデッカは、その木から観測された並行世界に侵入し、一度はネゲントロピーという現地組織を率いる盟主によって撃破されました。しかしながら、その残骸は崩壊エネルギーによって侵食・汚染されてしまい、復活を遂げたのです」

 

 話を聞くと、ジュデッカは一度「盟主」とやらに撃破されたが、その残骸は「崩壊エネルギー」という謎のエネルギーによって侵食され、再生して復活を遂げたようだ。

 その後にジュデッカは私の面前に現れました、と彼女に聞いてみると、彼女小さく頷いて「その通りです」と返事をした。

 

「そう言えば、あの木の名前は何です? それに『崩壊エネルギー』とは何なのですか?」

「ふふっ……貴方は良い質問をしますね。あの桜の木は『虚数の樹』という、量子の海――貴方が時空の狭間と称する空間の深層部に存在する特別な場所で、通常の世界とは全く違う法則が働いています。そして『崩壊エネルギー』は、虚数の樹から観測された世界しか発現できないエネルギーで、神秘や災厄、または『魔法』と呼ばれるような事象を引き起こせる性質がありますわ」

 

 これらの全てを聞いた途端、無秩序だった全てが突如綺麗に並べられていて、暗闇の中で延々と続く小さな道が見える。並行世界の誕生や継続などの仕組みと、戦ったジュデッカの秘密。

 その「崩壊エネルギー」に侵食・汚染されてしまったからこそ、ジュデッカは常識外れの性能を発揮することができた。これで、私の心中にある一部の疑問が解き明かされた。

 

「聞くだけだと、周囲に放射能をまき散らす原発以上に危険なものですね」

「その認識は間違ってませんよ。人類の文明を幾度となく葬ってきた、災厄のエネルギーなんですから。でも、この崩壊エネルギーを正しく扱えば、崩壊に打ち勝つことも可能のはずですわ」

 

「目には目を、歯には歯を、そして崩壊には崩壊……ですか?」

「そう……崩壊には崩壊をぶつけて対抗するしかありません。そして、私が貴方にこれらのことを教えたのは、崩壊に染められたジュデッカが貴方を襲ったことが、私にも責任があるからです」

 

 カレンは真剣な口調で語り出した。

 神という存在はだいたい傲慢でプライド高いのが印象だったが、彼女は違った。

 丁寧に相手を尊重しつつも、親近感のある態度だ。もう少し話を聞いてみるか。

 

「貴女にも責任があるとは……どういうことですか?」

「私がフリーダムガンダムに組み込んだ転移システム『千界一乗』こそが、一連の出来事の発端になっていたのですから。その特殊な性質のせいで、ジュデッカを誘き寄せてしまったのです」

 

 千界一乗(せんかいいちじょう)。初めて聞く名前だ。

 フリーダムに搭載された転移システムは「クロスゲート」ではなかったのか?

 

「それは……どういうことですか?」

「ご存知だと思いますが、人類は往々にして、変化や未知のものを恐れます。貴方が使うのを躊躇わないように配慮するつもりで、システムの名前を変更しましたが……結果的に貴方に嘘をついてしまい、このような事態を招いてしまいました。本当に申し訳ございません。もし、謝罪だけでは足りないというなら、私の身体を好きにしても――」

 

 顔を赤らめたカレンが、私に向かって頭を下げながら言い放った。

 誰もそんなことは求めてないのに、急に何を言っているんだ、この女神は⁉

 

「ちょ……それはいいですから! それより、千界一乗の詳細についてお聞きしたいですよ!」

「えっ、うん。少々ややこしくて長い話になりますが、最後まで話をきちんと聞いてください」

 

 

 

 

 

 フリーダムに組み込まれていた「クロスゲート」の正体は「千界一乗」という名の巨大な装置のブラックボックスで、正式名称は「永劫の鍵・千界一乗」だそうだ。彼女が先程に見せた渡世の羽とは同じ時代に製造されたもので、本来は崩壊エネルギーを動力源としていた。

 

 時空の狭間に拠点を構えることで、全ての並行世界を観測できるうえ、行きたい世界にいつでも行くことができる。私が言い放ったこの言葉がきっかけとなり、彼女は千界一乗を転生特典として私に譲渡することにし、私がよく知っているあの門に――クロスゲートに名前を変えた。

 

 動力源が崩壊エネルギーから縮退炉から生み出した電力に変わったものの、千界一乗の特殊性や門を開けるなどの機能がそのままだったせいで、崩壊エネルギーに侵食・汚染されたジュデッカを誘き寄せてしまった。でも、あれを倒した以上、もう襲撃される心配はないとカレンは言った。

 

 そして、千界一乗のブラックボックスが組み込まれたフリーダムガンダムは、全ての並行世界において虚数の樹への門を開ける唯一無二の「次元移動用広域殲滅型MS」となっていた。根源区画《テメリオス》の高台の中央に浮かんでる環は「千界一乗」のビーコンで、本体は通路の反対側の隔壁裏にあるとのこと。

 

「待ってください! あの環は『空の至宝』ではなかったとしたら、リベル・アークの電力は何処から供給されたのですか⁉ 私には全く検討がつきませんよ!」

「ビーコンから発する微弱な電磁波と光を部屋の隔壁が吸収し、そこから()()()の増殖原理を応用して消費した以上の電力を生成――貴方は理解できましたか?」

 

「FBRって……高速増殖炉!」

「相変わらず理解が早いですね」

 

 学校では教えられていないが、本で読んだことがある。

 FBRとは――劣化ウランで炉心の周辺を囲み、この中のウラン238がプルトニウム239に変化して燃料となり、エネルギーを発生しながら消費した以上の燃料を生成し続ける原子炉だ。

 

 つまるところ、リベル・アークの電力供給システムはウランやプルトニウムなどの放射性物質の代わりに、電磁波や光と言ったグリーンなエネルギーで発電していると同時に、消費した量以上のエネルギーを無限に増殖し続けることになる。そして輝く環――ビーコンが安置された部屋自体が動力炉であることが、私に予想以上の衝撃をもたらした。これらは数世紀先の技術だ。

 

「今更聞くんですが、どうして私にこれらのものを与えたのですか?」

「それはもう……貴方が正しく使ってくれると信じてますからですよ」

 

 それは、とてもシンプルな理由だった。

 私は「そうなんですか」と答えつつ、彼女の方に向き直る。

 

「貴女はどういう判断基準で物事を判断するのかは知りませんが……私に力を与え、本物の美玖に会わせてくれたことに感謝してます。お陰で私は窮地を乗り越えることができました」

「ふふっ、それはどうも。近い内に、私は貴方に崩壊などの超常的な力を振るう存在に対抗できる『力』を与えるつもりです。ですがその前に、貴方には私の質問に答えてもらいます」

 

 と言いつつ、彼女は女神としての威厳を感じさせるような、真剣な眼差しを向けてきた。

 これまでにない真剣さに心を打たれた私は、思わず息を呑んでしまった。

 

「そう緊張しなくても結構ですよ。答えに間違いなど存在せず、あるのは態度の違いだけです」

 

 言葉から察するに、彼女は私がどう「選択」するのかを知りたいだけかもしれない。

 私が「了解しました」と言いながら頷くと、彼女は最初の質問を投げてくる。

 

「崩壊エネルギーに侵食・汚染されたジュデッカは貴方とユニコーンガンダム、その世界に生きる戦士たちが撃破しました。では、この事件を終わらせた鍵は誰だと思います?」

 

 サイコ・フレームから発した暖かい光が、すでに答えを物語っている。

 あの光は、私自身だけが生み出したものではない。刹那たちも、フォン・スパークも、国連軍の兵士たちも……そして隼人も、ユウ・シラカワもあの中にいる。

 

 そう、この質問の答えはとうに決まっているのだ。

 

「――その場にいる全ての人々です」

「それが貴方の答えですか、把握しました」

 

 彼女が一瞬だけの微笑みを見せると、次の質問を投げてくる。

 

「貴方が一度自分を殺害している風間隼人の命を助けた理由は、何なんでしょうか?」

「人は変わっていくものからです。悪い方向に変わっていく者がいれば、良い方向に変わっていく者もいます。そして今の隼人は後者に当てはまります。だから私は彼を助けたのです」

「そうなんですか……貴方の答えは、把握しました」

 

 そして、彼女が投げてきた三つ目の質問は――。

 

「貴方は今後、私が与えた力をどう行使するつもりですか?」

「数多の並行世界に旅をし、まだ見ぬ未来を見る為に……!」

 

 私が答えると、表情をゆるめた彼女がさらに問いかける。

 

「面白い答えですね。詳しく教えてもらえますか?」

「人生は物語のようなものです。その中に不愉快や悲しいことが多く、真っ暗な空のような暗くて美しくない人生を送る者がたくさんいます。人類は常に運命に抗おうとするが、その抵抗は徒労に終わるか、最初から諦めて受け入れるのが多いです。でも、今の私は無力ではありません――」

 

 私がそう言うと、そっと遠くにある虚数の樹から視線を外し、カレンの方に向き直る。

 

「世界の外から、私は新たな人生と、他人の運命さえも変えうる力を与えられたのです。この力で空を包む暗闇を払い、光をより彼方へ届け――美しくない世界を望むものに変えてみせます!」

「……ふふっ、貴方の旅の続きがとっても待ち遠しいです。その答え、きちんと把握しました」

 

 エイフマン教授と沙慈の姉、そしてロックオンたちを生存させ、00世界の行く末を変えた理由は、当事者がそう成りうる可能性の未来を見る為だから。そして介入したからには、最後までその結末を見なければならないことも分かっている……それは、当たり前の責任だ。

 

 身勝手なことだとも分かっている。

 それでも私は前へ進む。美しくない世界を望むものに変える為に。

 

 そして、この世界にも救済対象が1人いる。金恋のヒロイン――僧間(そうま)理亜(りあ)だ。

 彼女の抱える持病を根治させ、必ず全員が望む「ゴールデンタイム」へたどり着いて見せる。

 

「次に会う時は、美玖と隼人にも会わせてください。二人に伝えたいことがありますので」

「分かりました、この後は二人にそう伝えておきます」

「では、お話はこのくらいにしましょう。()()()()が貴方を呼んでいますわ」

 

 

 

 

 

 と、気がついたらカレンの姿は何処にもなく、代わりに「お兄ちゃん」「絢瀬殿…」と女の声が聞こえている。驚きの声が喉から出そうになって、私は目を見開いた。

 

「心配しましたよ、お兄ちゃん」

「……やっと起きたわね、悠凪」

「うーん、どうしてこんなとこに寝てんだよ。風邪ひいちゃうよ?」

 

 最初に視界に入ったのは、余計な心配をさせてしまったか、泣きそうになった美玖とシルヴィの顔だった。2人の後ろに玲奈が立っている。3人に声をかけようとする時「やっとお覚めですか」という声がすぐ傍に発し、学園制服を身につけた金髪美女――エルが視界に割り込んできた。

 

 どうやら私は、ベンチに座ったまま眠ってしまったようだ。

 先ほど話していた女神は何処にもいなかった。まるで最初から存在しなかったかのように。

 

「絢瀬殿……校内を散策したいと聞きましたが、どこか具合が悪いのですか?」

「いや、ただ歩きすぎて足が疲れただけさ。心配をかけて済まない、4人ども」

 

 適当な理由で誤魔化し、慎重にベンチから起きる。すると――バスケットボール大の球体が飛びかかってくる。咄嗟に受け止めながら「ハロ⁉」と私は反射的に応えてやった。どうやって学園の敷地内に入ってきたんだ……荷物と一緒に寮の部屋に置くとラッセさんに依頼したはずだが。

 

「お兄ちゃんが元気で良かったんです。ところでハロ、どうして部屋を抜け出したのですか?」

「寂シかったカラ、寂シかったカラ!」

 

 美玖がむすっとした顔で言い、ハロがカバーをバタバタさせながら合成ボイスを繰り返す。

 

「あっハロ、あたしのとこにおいて!」

「ハロ、ハロ?」

「ハロは今日も元気だよね」

「うむ。シルヴィの言う通り、ガンダム原作と同等の可愛さだね」

 

 と、玲奈の腕の中に収まられたハロだった。

 

「ふふっ、悠凪も元気で良かったわ。そう言えば……悠凪と美玖は玲奈と同じ、学生寮に住むことになるでしょ。もし良かったら、お二方のお部屋に行ってみたいな」

「うん。わたしは構いませんが……お兄ちゃんはどうされますか?」

 

 それを聞くと、私は「構わない」と頷いてから答える。

 この後、シルヴィはエルに公務の予定を尋ねるが、そのような予定はなかったとエルが言った。

 つまり本日放課後のシルヴィは暇、ということだ。

 

「ねえ悠凪。わたし、誰かの私室に入ったことがあまりないの。あるとしてもお姉さまや妹たちの私室ばかり。男性の私室は初めてだわ……だから、その、そこはよろしくね」

 

 目がキラキラと輝いているシルヴィが言い放った。

 この様子だと、今日の学生寮は大騒ぎになりそうだな。

 

 

 

 

 

 闇に包まれた部屋に、スクリーンに図示されたデータを眺めながら、カレンが小さく呟く。

 

「崩壊には崩壊をぶつけて対抗するしかありません。貴方に与えられる武器はこれしか――」

 

 嘗ての仲間――サクラが使っていた太刀「御霊刀・寒獄氷天」の建造データを基に、世界の泡に存命しているアナ・シャニアテから譲渡されたフロストジェム(律者コア)を融合させ、加えてナノロボットで作られた金属「魂鋼」を混ぜて鍛造する、冷気を操れる新たな「神の鍵」。

 

 外見はSAOのメインキャラ――ユージオが使用するあの剣の外観を模倣する予定だ。

 データ上では天火聖裁と同じ破壊力を有しているとされているが、鍛造するに必要な素材が不足している――眠りに入った律者コアを再活性化させる為の「触媒」が必要だ。

 

「雪山を舞う結晶体……氷元素に満ちているあの結晶なら、触媒として使えますわね」

 

 思考の末、彼女はもう一つのスクリーンに目をやりながら呟いた。

 その画面に映し出されたのは、一点の曇りもない白い世界だった。そして中央に拡大表示された青色一色の物体は、八つの立方体で構成された巨大で奇妙な生物で、その世界に生きる学者たちに「ダレット」というコードネームを付けられた。

 

「テイワット……方舟と呼ばれる世界。まさかもう一度赴くことになるなんて」

 

 スメールを治めているブエルは、今も元気なのかしら。

 ドラゴンスパインで触媒を入手するついでに、彼女に会いに行きましょう。 

 友人の顔を思い出しながら、次の目標を定めたカレンは即座に行動を起こすのだった。

 

 つづく




▼永劫の鍵・千界一乗(レプリカ)
外見は全高10メートル以上の巨大な装置で、列車の車両を彷彿とさせる横長の外観を持つ。
前文明では量子の海の探索に利用され、無数の並行世界を観察するに使用された。
カレンが悠凪に渡したものが模造品であるものの、機能はオリジナルと全く同じ。
現時点では唯一、カレンが完全複製に成功している「神の鍵」である。

▼破壊の鍵・天火聖裁(レプリカ)
第24話ラストで、エンブリヲを成敗する為にカレンが使用した武器。
普段はコアを分割し出力を抑えた双銃形態だが、二丁を合体させて大剣にもなる「神の鍵」。
この模造品は火属性の帝王級崩壊獣のコアが二つ組み込まれており、オリジナルとの差が天と地があるものの、それでも通常兵器を圧する凄まじい破壊力を有している。
なお、この天火聖裁は模造品である為、第零定格出力は使用できない。

▼意識の鍵・渡世の羽(レプリカ)
羽が舞うと共に対象の精神に強烈に働き掛ける能力を持つ「神の鍵」。
他人の大脳信号を操作し、その意識を掌握できるが、強靭な精神力を持つ対象に効果はない。
なお、この渡世の羽は模造品である為、洗脳以外の機能が全てオミットされている。

本作のオリ主以外のオリキャラ中に、誰のことをもっと知りたいですか?

  • 風間隼人
  • 篠原聖奈
  • 鳳凰院美玖&カレン
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