世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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今回はミナが初登場。
茜ちゃんも登場させたかったんですが、次回に持ち越しになりました。


第34話 学生寮の一日

「そうか、ご苦労だった。私の荷物はそのままで構わない……」

 

 午後4時15分。

 俄かに光量が落ち始めた太陽の下、女神の言葉に悩まされながらも、私はスマホに労いの言葉を吹き込んでいた。『はーい!』とネーナの朗々した声が応じる。

 

『そうだ、悠凪さん。あたしも自分のガンプラが欲しいです』

「……そうか。そう言えば、君たちはいま、学生寮にいるんだよな?」

『うん、そうですけど――』

「今そっちに向かっている。後でお金を渡すから、好きに使うといい」

 

 そう言ってスマホの通話を切るのだった。

 すると、美玖が私の方に寄ってきて――。

 

「今のは……ネーナですか?」

「ああ、ガンプラが欲しいという要望があった」

 

 と言いつつ道路から分かれた坂道を進むと、 あっという間に学生寮の玄関前広場に到着した。

 

「着きましたよ。ここがノーブル学園の学生寮です」

 

 エルが寮を紹介してくれた途端に、玄関前の女子生徒たちが騒ぎ始めていた。

 

「見て、今日転入してきた噂の兄妹だわ。本当に先生の言った通り、ここに住むことになるんだ」

「ちょ、ちょっと……ここって、女子寮じゃありませんの⁉」

「絢瀬さんが悪い人じゃなさそうですし、いいんじゃない?」

「この寮はさぁ……元々男女全員が入れる仕様なんだよ」

「それより、クルスクラウンさんとカバリェロさんもいらっしゃってますわ!」

 

 気にせず4人と一緒に学生寮に入る。

 室内を見渡すと、壁や天井、床や建具など……どこを眺めてもワンランク上の上質なデザインが施されており、上品で落ち着いた雰囲気を感じさせてくれる。さらに、壁や天井に使われた装飾も凝っている。ここは学生寮というより、高級ホテルと言っても過言ではないだろう。

 

 そして地上階には、カフェテリアとコンビニ、自販機も備わっている。

 食生活に困ることはなさそうだ。

 

「あっ、言い忘れてしまったわぁ。この寮に住む最初の男子は悠凪だから――」

「なんだと……この学生寮は女の園だったのか⁉」

 

 ずっとハロを抱えている玲奈が咄嗟に言い放った。

 この寮の実態をとうに知っていた私は、わざと驚いた顔で対応した。

 

「絢瀬さん、鳳凰院さん。学生寮へようこそ」

「……城ヶ崎か」

「こんばんは、城ヶ崎さん」

 

 と、見知った顔が迎えてくれた。

 

「寮監先生から貴方と鳳凰院さんは本日からこの寮にお住まいになる旨を聞きましたので、改めてご挨拶に参りました。クラスだけでなく寮生としても同窓ですね、よろしくお願いします」

「……改めてよろしくお願いします、城ヶ崎さん」

 

 この女は苦手だが、社会人としての最低限の礼儀を守らないといけない。

 私はとりあえず挨拶を返した。すると、彼女はすぐにコンビニの方に顔を向け、言う。

 

「ところで、運搬業者の皆さんが貴方をお待ちしております。コンビニの方におりますわ」

「分かっています。じゃあ、美玖は皆と一緒に、先に上で待っててくれ」

「では、また後ほど。行きましょう、みんな!」

 

 と、シルヴィ一行は美玖について行った。そして王女と騎士の存在に気づいた途端、女子生徒がキャーキャーと黄色い叫び声を上げていた。道場の時より凄い反応だった。

 転入初日で有名人2人と仲良しする美玖に羨望の眼差しを送る女子生徒がいる一方で、嫉妬する生徒も数少ない。城ヶ崎絢華という女も例外ではなかった。まあ……度が過ぎた行為をしてこない限り、こちらは何もしない。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ご苦労様です。ラッセさん」

「いえいえ。何か手伝うことがあればいつでも言ってくれ!」

 

 コンビニに入店した私は、カウンター席にいる灰色の工作服を着た男に労いの言葉をかける。

 すると、男――ラッセ・アイオンが笑顔で言い返してきた。

 

「刹那とネーナも、ご苦労様です」

「……また手伝うことがあれば、遠慮なく言ってくれ」

「えへへ。できれば美玖さんとお話ししたかったなぁ」

 

 と、刹那とネーナは返事をした。

 ネーナの要望は、後で美玖に伝えるとしよう。

 

「ドウイタシマシテ! ドウイタシマシテ!」

 

 紫色の球体に仕込まれた2枚の円盤を耳のように跳ね上げながら、HAROが合成ボイスを張り上げる。悪人の顔を模したようなデザインをしていながら、割と礼儀正しいHAROだった。

 

「そうだ、ネーナ。この封筒の中にあるお金は好きに使うといい」

 

 と言いつつ、10万円が入った封筒をネーナに手渡した。

 どうせガンプラ以外のものも買うことになるから、このくらいの金額なら大丈夫だと思う。

 

「わーい、ありがとう! これで兄兄ズのガンダムのプラモも買えるわ」

 

 まるで子供みたいにはしゃいでるネーナを見ていると、ラッセは「子供の面倒を見ているような感覚だぜ」と小さく呟き、さっきから無表情だった刹那がわずかな笑顔を口元に浮かべた。3人と別かれると、私はコンビニでリベル・アークでは生産されない食材――牛乳を購入し、手配された部屋に足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 テラスの階段を上がり、長い廊下を歩いていくと、美玖とシルヴィ一行の姿が見えた。

 シルヴィがハロを抱きしめながら天真爛漫な笑みを浮かべているのを見ていると、思わず口角が上がってしまった。そして、その傍にはエルと玲奈……おや、銀髪の少女がいるな。

 

 肩程まであるピンクがかった銀髪に、アメジストのような紫色の瞳を持つ美貌の少女。ノーブル学園の制服を身に纏っているが、その雰囲気から王族の高貴さと威厳を感じさせる。顔が小さくて身体も細く、その華奢な身体全体が、まるで猫のような柔軟さを持っているようだ。

 

 彼女はシルヴィの妹で、ソルティレージュ王国の第十王女であらせられる少女。

 その名前は――カミナル・ル・プルテア・ソルティレージュ・シスア。

 

「お待たせ、皆。おや、そちらの方は……」

 

 初対面の相手だから、先ずは敬語で挨拶をしないといけない。

 

「カミナル王女殿下とお見受けしますが、相違ございませんか?」

「お初目にかかりますわ、絢瀬様。わたくしはカミナル・ル・プルテア、ソルティレージュ王国の第十王女です。以後、お見知り置きを……」

 

 彼女がそう言うと、短めのスカートの裾を摘み上げる。片足を斜め後ろの内側に少し引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま優雅にお辞儀をした。

 これはヨーロッパ及びアメリカにおいて「カーテシー」と呼ばれるお辞儀だ。その一連の動作に澱みなく優雅であり、謙る礼でありながら見る者に高貴さを感じさせる舞のようでもあった。昔は格下の者が格上の者に対して行うお辞儀だったが、今は王族や貴族が客人などに面会する際に用いられるお辞儀となってきている。

 

「ふふっ……気軽に『ミナ』って呼んであげて、悠凪」

「と言っておりますが――」

 

 そっと彼女の表情を窺うと、彼女は笑顔で「ええ、それで結構ですわ」と返事をした。

 しばらくして、後ろから背中をツンツンされ、玲奈の声が聞こえた。

 

「ほら転校生さん、早く部屋に案内しようよ」

「……美玖の部屋はもういいのか?」

「ええ、そうよ。お姉様や妹たちの部屋と大差なかったけど、とても素敵な部屋だったわ」

 

 どうやら、私が刹那たちと話している間に、彼女たちは美玖の部屋を一通り見回したようだ。

 

「あっ、そうだ。ミナもご一緒してもいいかしら?」

「もちろん構わないよ」

 

 後ろに振り向き、私は褐色のドアを目前にした。

 部屋の番号は手渡されたカードキーの番号と一致しているので、この部屋に違いない。

 

「きらきらきら……期待の目線」

 

 シルヴィからの目線を感じながら、私が黒いセンサーパネルにカードキーをかざし、ドアノブを掴むと、解錠されたドアは軋む音を立てて押し開かれた。そして、買ったばかりの牛乳を玄関前の小型冷蔵庫に入れる。

 

「へえー、これが殿方の……悠凪の部屋なんだぁ」

 

 定期的に掃除されているのか、部屋に黴臭さは感じられなかった。カーテンの閉じた窓ガラスも綺麗に磨かれている。カーテンを開ける気になれず、隙間から差し込むわずかな光を頼りに部屋を見回った我々は、本棚に並べた本と、机の上にある二つのアタッシュケースに目を止めた。

 

 刹那たち3人が整理してくれたのか、全ての本が大きな本から順に、左から並べている。

 よく見ると本棚だけでなく、机の上に飾ってある小物まで綺麗に整えている。見る者に清潔感や規則性を感じさせるような置き方だった。

 

「あら、書物がいっぱい並んでありますわね。絢瀬様は読書家ですの?」

「俺はそれほど熱心な読書家というわけではないが、本を読むのが好きなだけさ」

「ふふっ……お兄ちゃんは昔から、本を読むのが好きでしたね」

「ああ、全ては中学生の頃から始まった――」

 

 中学生になった頃から、本を読むのが好きだった。

 読書が私の生活の一部だったと言っても過言ではない。特に、週に一度の図書館通いが何よりの楽しみだった。当時は日本だけでなく、海外のSF娯楽小説も読んでいた。大人になっても、本を読む習慣は変わってない。

 

「こんなことを言うのもなんだけど、紙の本より電子書籍の方がいいんじゃない? 安いし、場所取らないし、スマホを取り出せばいつでも読めるんじゃん」

「玲奈、君の言い分は分かるよ。でも、紙の本と電子書籍の間には決定的な違いがあるんだ」

 

 ミナと玲奈と話している傍から、シルヴィとエルがこちらに寄ってきて――。

 

「どういう違いがあるかしら……聞いてて気になってきちゃった」

「その違いに関しては、私も気になったところです」

 

 と、2人は興味津々に尋ねてきた。

 

「本をぺらぺらめくる時の動作と、スマホの画面をスクロールする感覚が違いすぎる。この感覚の違いは致命的だ。紙に指で触れている感覚や、本をぺらぺらめくった時に瞬間的に脳の神経を刺激する感覚は、電子書籍では絶対に味わえないものだ」

 

「……そういうものなんですか?」

「本はただ読むだけじゃない、自分の感覚を調整する為のツールでもあると俺は思うんだ」

「精神的な調律――言わば『チューニング』みたいなものなんでしょうか?」

「ああ……調子の悪い時に、本の内容が頭に入ってこないことがある。そういう時は、何が読書の邪魔をしているか考える。逆に調子が悪い時でもスラスラと読める本もあるんだよ、エル」

 

「なんだろう……聞いていると、あたし今までの人生、ずっと損をしてたような気分になるわ」

「考えすぎですよ、玲奈」

「そっ、そうかもね……」

 

「絢瀬様は読書に強いこだわりをお持ちですわね」

「俺は紙の本派だから。でも、電子書籍のメリットを否定するつもりは毛頭ないよ」

「なるほど……悠凪はガンプラ以外に読書も趣味だよね。ところで、これはなにかしら?」

 

 と、シルヴィがアタッシュケースの電子ロックに指差ししながら尋ねてきた。

 中には拳銃と薬莢が収納されているから、見せるわけにはいかない。このケースが開かれる日が来ないことを願っている。なぜならケースが開かれることは、事故発生を意味することだから。

 

「これ、電子ロックじゃん。高そうなブツでも入っているのかな?」

「ブツ言うな。ケースの中身についての詮索は遠慮してもらいたい」

 

 確かに玲奈の言う通りだ。所有しているだけで違法行為になる危険物が入っている。

 私に断れたのか、玲奈は少し興ざめたように静かになった。その一方で、シルヴィはもう一つのアタッシュケースに目を止めて「こちらは開けてもいいかしら?」と問いかけてきた。

 

「そちらは開けても大丈夫ですよね、お兄ちゃん?」

「ああ。いま電子ロックを解除するから、少し待っててくれ」

 

 満面の笑顔を向けてくる美玖に返事しつつケースを解錠し、蓋を開ける。

 

「これは、フリーダムガンダムのガンプラだわ」

「お姉様のスノーホワイトのような出来栄えではありませんけど、丁寧に作られておりますね」

 

 お姫様たちがガンプラを観賞している一方で、私は再び思索に入った。

 「スノーホワイト」はどのガンダム作品に登場する機体だったのか、と。私は何か大事な知識を忘れてしまったかもしれない。なかなか思い出せないので、シルヴィに聞いてみることにした。

 

「なあ、シルヴィ。その『スノーホワイト』はどの作品の機体なんだ?」

「小説作品『フローズン・ティアドロップ』に登場するウイングゼロよ」

「――プロドゼロ1号機か」

「ええ、そうよ」

 

 シルヴィのヒントのお陰でやっと思い出した。

 作中では、この機体は元々ドクターJが開発したMSで、そしてある日……ヒイロの訓練相手を務めていたヒイロのクローン人間「アルファ」によって持ち去られた。そんな彼と共に宇宙空間を漂流していた所に、近くにあるウィナー家の所有する資源衛星に拾われた。

 

 その後、彼はプロトゼロを捨て、どこかへと姿を消した。残されたプロトゼロはカトルの父――ザイードの命令で解体されることになった。そして、解体されたプロトゼロをリビルドした機体がスノーホワイトだ。ファンの間では「白雪姫」とも呼ばれている。

 

 ソルティレージュは北ヨーロッパに位置する国だから、冬になると雪がたくさん降る。

 そして、シルヴィはその国のお姫様だ。雪の国の王女は「白雪姫」と意味が近いこともあって、天使を模した外観を含め、彼女の人物像と絶妙にマッチングしているガンプラだと思う。

 

「できれば、君の作ったスノーホワイトを見ておきたかった」

「じゃあ、明日持ってくるわ――」

「いけません、シルヴィ様。ガンプラを学校に持ち込むのは校則違反です」

「プラモデル部が解散させられる前は違反じゃないんだけどなぁ……」

 

 エルに校則違反だと叱られ、シルヴィはしょぼんと肩を落とした。その直後に玲奈が言い放った言葉が私の気を引いたが、その前に――。

 

「なんで俺のベッドにダイブしているんだ君は。それに、いつまで美玖を抱きしめるつもりだ?」

「はーい、初ベッドとお宅の妹さんを堪能しておりますっ!」

 

 いつの間にダイブしたのかは知らないが――。

 

「初ベッドか、随分と不思議なこだわりだな。それより美玖が嫌がっているから、いい加減――」

「おっぱい気持ちいいから、もうちょい堪能させてよ」

「れ、玲奈……もう、許してください……っ!」

 

 男として、玲奈の言い分に完全同意せざるを得ない。

 だが、それは度が過ぎたボディタッチだったようで、美玖は恥ずかしくて嫌がっている。そんな変質者めいた行為をする玲奈に、ミナとエルも呆れたような顔を向けていた。

 

「鳳凰院殿が嫌がっております。ほら妃殿、離れてください!」

「え、ええー⁉」

「はぁ……はっ……た、助かりました、エル……」

 

 2人をやや強引な手段で引き離すエルだった。

 にしても、美玖の喘ぎ声が色っぽいな。少しでも気を抜けば理性が吹き飛びそうだ。

 

「相変わらずはしたない女ですこと」

「うーん、カミにゃんって辛辣……」

「ケンカは、良くナイ、良くナイ!」

 

 と、2人の間に割り込んだハロが愛想を振りまく。少し強張ったミナの口元が僅かに緩み、その手がハロのボディを包むようにした。可愛らしい笑顔だった。

 

「お姉様のキュロちゃんと似ておりますわね。このハロは絢瀬様が自作したロボットですの?」

「いや、このハロは友人からの贈り物だ」

 

 シルヴィと玲奈だけでなく、ミナまでハロに興味を示している。

 そんなミナがハロを抱え、黄緑色の球体を頬でスリスリしながら楽しんでいた。今更だが、ハロのようなマスコット的な存在が、常に年頃の女の子に好かれる気がする。

 

 さて、それはさて置きとして、玲奈にこのノーブル学園のことについて聞いてみるか。

 

 

 

 

 

「さっきの話の続きだが……玲奈、昔のプラモデル部について何かを知っているか?」

「うん……そうね、その時の部長とほぼ話したことないんだけど、3人だけの部活で、全員がガンプラバトル地区大会の常連選手ってとこね。でもね、1年前の静岡県大会でオネェみたいなやつに負けちゃった以降は衰退し始めたわよ」

 

 オネェみたいなやつ。

 まさかと思うが、一応名前を聞いてみるか。

 

「なるほど。ところで、その『オネェ』は――エレオノーラ・マクガバンという名前なのか?」

「あっ! 確かそういう名前だった気がする!」

「マクガバン殿ですか……変わった趣味の持ち主、という印象の方でした」

「かつてはガンプラ塾の講師さんだったけど、今は塾を離れ別の職に就いたって噂があったわ」

 

 エレオノーラ・マクガバン。塾の生徒から「エレ男」という二つ名を付けられる女装男。

 女性的な容姿と服装、そして口調から「女性」だと思われがちだが、実際の性別は男だ。二代目メイジンの勝利を至上とする思想に心酔しており、バトルで敗れた者のガンプラを試合終了と同時に処分するなど、過激な行動をする狂人でもある。

 

 話に割り込んできたシルヴィとエルの言葉から察するに、2人はエレ男と面識があると見ていいだろう。しかし、シルヴィはソファーの上に座り込み、気分が悪そうな顔をしていた。

 

「シルヴィ、急にどうしたんだ……顔色が悪いぞ?」

「ううん、何でもないわ。ただ、マクガバンさんのことが苦手なだけよ」

「その人物と面識があるのか?」

「昔はガンプラ塾で一度会ったことあるけど、怖い人だったから、その……」

 

 と言いつつ、シルヴィは視線を下に向けていた。まあ……ガンプラバトルを「殺し合いの場」と捉えているような異常者だから、シルヴィが怖がるのも無理はないだろう。そして、先程から話を聞いていた美玖がお水を差し出し、それを飲んだシルヴィがようやく落ち着きを取り戻した。

 

「シルヴィ、少しは気分良くなりましたか?」

「ええ、ありがとう。美玖」

 

 と、シルヴィが礼を言い、美玖が微笑む。

 エレ男の話はこのくらいにして、私はプラモデル部が強制解散させられた原因を詮索する。

 

「そう言えば、プラモデル部が解散させられた原因は、大会に敗北したことと関係あるのか?」

「それもあるけど、一番の原因は前任生徒会長の考え方よ。あいつが会長やってた頃、シルヴィはまだ転入してないから知らないと思うけど、プラモデル部の解散は独裁政治が横行した結果よ」

 

 玲奈の尖った口調から、前任生徒会長への不満が感じられる。

 しかも「独裁政治」という言葉まで出てきた。どうやら、前任はろくでもない人のようだ。

 

「玲奈、前任はどんなやつだった?」

「そうね――自分が気に入った部活だけを至高のものとし、自分に合わなかった部活を決して認めない性格。言ってしまえば『傲慢』の二文字を具現化したような人ね。『プラモデルは子供のオモチャ』といちゃもんつけて廃部決定とか、乱暴すぎてドン引きしたわ、全く!」

 

 はぁ……聞いているこちらも怒りを覚えた!

 プラモデルはただのオモチャじゃない、組み立て方次第では芸術品にも成れる。まさかガンプラバトルが流行っている世の中に、またこういう想像力不足と感性不足な輩がいるとは。

 

「ああいう性格だから、きっと多くの生徒の怒りを買ったんだろうな」

「うん、被服部も被害あってたわ。けれど、解散させられてないのは不幸中の幸いってね」

「事情は理解した。篠原先輩が会長の座に就いた今は、そういう問題はなくなったのか?」

「そう、前任と違っていい人だよ。性格いいし、美人だし、何よりおっぱいでかいし」

 

 と、玲奈がそう言いつつ、スマホに表示された篠原先輩の写真を私に見せる。

 エルに勝るとも劣らないほどの美貌の持ち主で、大人の魅力を感じさせるような女性だったのは分かったが、いちいち胸の豊かさを強調しなくても良いのでは……?

 

「おい、反応なしかよ。てっきり会長がタイプだと思ってたわ」

「今の俺は美玖しか眼中にないから、他の女で俺を惑わせると思うな!」

 

 と、心の声が漏れてしまった。

 そして気づいたら部屋内の雰囲気が桃色になっており、女子全員の頬を赤らめ、恥じらうようにしている。不味いな……これは、やっちゃったパータンだぁ!

 

「ちょ……えっ、ええー⁉」

「ゆ、悠凪くん……じゃなくて、お兄ちゃん⁉」

「絢瀬様と鳳凰院様は血の繋がりのない兄妹とお聞きしましたけど……」

「どうやら、昼休みの時のやり取りは、冗談ではなかったんですね」

 

 ミナとエルが頬を紅く染めながら視線を逸らし、シルヴィが私の方に寄ってき――。

 

「ふふっ、悠凪は美玖に一途だね。恋って本当に素敵だわ!」

「シルヴィったら、茶化さないでくださいっ! わたしとお兄ちゃんは、あの、その……」

「ほう……お熱いですねお二人さん。結婚式はいつになります?」

「あのさぁ、悪ノリはここまでにしてもらおうか!」

 

 現在時刻は夜7時20分。

 もうこんな時間だから、シルヴィたちを領事館に帰らせた方がいいと思うのだが、私が自爆してしまった1分足らず、何故かキャッキャウフフな百合展開になっていた。

 

「柔らかくて暖かい、まるで抱き枕みたい!」

「はぁ……ん、はっ……シルヴィまで……んん……」

「いい声をしてますな、美玖ちん」

 

 恥ずかしがってる美玖がサンドイッチの具材のように、シルヴィと玲奈の間に挟まれていじられていたのだ。エルとミナも止めようがなく、眺めることしかできなかった。

 

 よく考えてみたら、このまま眺めてるのもいいか。

 でも、翌朝は生徒会室に出頭しなければならないので、美玖を助けることにした。

 何故なら、遅刻はよくないのだから。

 

 つづく

本作のオリ主以外のオリキャラ中に、誰のことをもっと知りたいですか?

  • 風間隼人
  • 篠原聖奈
  • 鳳凰院美玖&カレン
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