『ガンダムブレイカーモバイル』より、クズノハ・リンドウをゲスト参戦させました。
彼女が物語に絡んでくるのは37話と38話のみです。ご注意ください。
「ハロ、掌のパーツを」
「ワカッタ、ワカッタ」
傍に待機しているハロが耳をばたつかせながら返答すると、内蔵された手を伸ばしてアタッシュケースから小さな箱を持ち出した。中に積み込んだものは掌を構成するパーツと、パルマ・フィオキーナの発射口となるEカーボン製の金属パーツだ。
情報量が多いければ多いほど、それを比例にガンプラの性能も高くなる。
我が愛機のガンプラはリベル・アークに保存された設計図と、この世界にて販売されているRGキットを参考に、外装から内部構造まで完璧に再現されたPG以上の情報量を持つガンプラ。
この為、一部のパーツがミリサイズで生産されている。パーツ数が非常に多く組み上げる難易度もPGより高いが、幸い各パーツの色分けがきちんとされているので、塗装する必要はない。
だが、フレーム強度や性能を重点に置いて生産したことが裏目に出てしまい、パーツが多すぎて胴体を組み上げるのに半日もかかってしまった。しかも徹夜したせいで、美玖だけでなくシルヴィとエル、そして玲奈と篠原先輩にも余計な心配をさせてしまった。
ここ数日、受業後は食堂で昼飯を済ませて、すぐに寮に戻ってガンプラを作る毎日だった。
美玖とシルヴィの演奏を、聴きたくても聴けなかった。そして、部屋に引きこもる時間が増えたせいか、最近は心身が疲れやすくなっている。
「さて、現在時刻は――」
組み上げた掌を前腕部のジョイントに差し込み、午後4時35分を指す壁時計に目をやる。
今日も午後のエキスパートプランをまるまるサボってしまった。でも、きちんと担任の先生から許可を得たので、無断欠席にはならない。
さらに、担任の先生もガンプラに興味ありで「作品が完成したら見せてください」という要望が届いている。そう、今の私は、教師からにも期待されているのだ。
「本体はこれで完成……残るのはビームライフルだけか」
手を伸ばしてランナーを取ろうとするが、不意に衝撃的とも言える空腹感に襲われた。喉も渇いていた。こんな状態では集中力も下がるし、カップ麺でも作ろうか。と、私が行動に移ろうとした瞬間に、外から少し急いた足音が聞こえ、ノックの音がしないままドアが押し開かれた。
そこに入ってきたのは――。
「ただいまー、お兄ちゃん!」
「あっ、お……お帰り、美玖」
「――今日も来ちゃったわよ、悠凪!」
「絢瀬殿。準備中のお忙しい時に、お邪魔してしまい申し訳ありません」
「ほう、シルヴィとエルも来たのか。遠慮せず入ってくれ」
我が愛しの妻が帰ってきた。しかも、今日は高貴な客人を連れてきた。そして美玖が手に持った袋からは、油をたっぷり使った中華料理の芳香が漂ってくる。
やっと空っぽの胃袋を満たすことができる、と思いながら、私は美玖に袋の中身を尋ねる。
「いい匂いだ。どんな食べ物なんだ?」
「葱油餅と揚げ餃子です。お兄ちゃんはきっとお腹が空いていると思って買ってきましたよ」
「チョコ味のメロンパンもあるわよ!」
それら全ては、油や砂糖をたっぷり使った食べ物だった。
「お兄ちゃん、あーんして」
と、美玖は一対の箸で揚げ餃子を挟んで、私の口元に運んできた。
「うむ……なかなか美味いな」
「お口に合ってよかったです」
それを一口で食べると、シルヴィは美玖の真似をして半分に割ったメロンパン差し出してきた。
「今度はわたしの番ね。悠凪、あーんして」
「ちょ、ちょっと、シルヴィまで……っ⁉」
これは流石に不味いと思うので、私はそっとエルの表情を窺った。
私の視線に気づいたようで、ソファーに座った彼女は「やれやれ」と溜息をついてから、小さく頷いた。シルヴィ様の我儘に付き合ってやってほしい、と言っているかのような表情だった。
普段なら止めに入るのだが、彼女はそうしなかった。というか「止める気力がなかった」と見ていいだろう。寝不足らしい青白い顔をし、磨き抜かれたルビーのような瞳も光を失っている。
「ほら、早く口開けて。わたしが食べさせてあげるんだから」
「分かった、頂こう――」
メロンパンを一口かじってみると、強烈な甘さが口の中に広がっていく。
まるで砂糖の塊を口に入れたような感覚だった。
「これは常連のお店の最新作なんだけど、味はどうだったかしら?」
「全体的には美味しいが、甘さ控えめが好きな俺にはちょっと合わなかったな」
「そうなんだ。じゃあ、次は悠凪が好きそうな味のメロンパンを買ってくるわ」
と言いつつ、シルヴィは半分になったメロンパンをさらに半分に分けて、美玖に差し出した。
「揚げ餃子と葱油餅も美味しいんだけど、やっぱりあのお店のメロンパンが一番美味しいよね」
「ええ。チョコの味が濃厚で、甘くて美味しいです!」
どうやら、美玖もシルヴィも甘党のようだ。
2人が食事を楽しんでいる一方、私はエルの方に寄って「隣でいいか?」と尋ね、彼女が「構いませんよ。ここは貴公の部屋ですから」と返答すると、私はソファーに腰を下ろす。
「お疲れのようですね、絢瀬殿」
「ああ……疲れてはいるが、君ほどじゃないな。ここ数日、君も徹夜してただろ?」
私が言い、差し出した葱油餅を食べ終えた彼女がハンカチで口を拭くと、小さく頷いた。
「――騎士団の、仕事で、徹夜しただけです」
「それは、大変だったな」
その顔を窺うと、眠気に襲われたような朦朧とした表情で、いつ寝落ちしてもおかしくない状態だった。やがて空腹が満たされて急にだるくなったのか、彼女の身体がかくんと崩れ――。
「大した、こと……では……すぅ、すぅ……」
と言い終える前に、私の肩に体重を預けてくるエルだった。
いつも凛々しい顔立ちが、子供みたいに隙だらけになっている。寝顔と寝息も可愛くて、思わず見とれてしまう。今更だが、このギャップ、いくらなんでも反則すぎるだろ!
「うーん、寝ってしまったか」
「ふ、ふふっ……」
私が呟き、ぺろりと食事を平らげたシルヴィが楽しそうに笑う。
こいつ、私の分の揚げ餃子まで完食しやがったな。でも、いっぱい食べる彼女が可愛いから。
気づかないふりをしておこう。
「わたしを警護してるはずの時間帯に寝ちゃうなんて、初めてじゃないかしら」
「へー、初めてじゃないんだ」
「昔はね……わたしがピアノの練習をする時よく寝落ちするのよ、エルは――」
寝ってしまったエルを起こさないよう、我々は小声で会話する。
「ただ、ここ最近、エルはいつもより寝落ちの頻度が多かったわ。よっぽど寝不足なのかしら」
「シルヴィ、エルを数日、休ませてあげてみては如何ですか?」
「そうね……最近のエルは書類ばかりに気を取られているし、そうするわ」
あっさりと美玖の提案に頷いたシルヴィ。
再びエルの顔を窺うと、未だにすぅすぅと寝息を立てて寝ている。これでは身動きが取れそうにないので、私は彼女をソファーに横たわらせる。そしてクローゼットから引っ張り出したコートを布団代わりにかけてあげた。
「でも、エルの寝顔を知っているのはわたしだけだったのに、悠凪と美玖にも知られちゃった」
「まるで大事なものが、わたしとお兄ちゃんに取られちゃったかのような口調ですね」
「ち、違うの! 怒らないでね美玖!」
「怒ってませんから、ふふ。それにしても、お兄ちゃんは相変わらず紳士なんですね」
「エルに素敵なお布団をかけてくれてありがとう。あっ、そう言えば――」
エルの寝顔を眺めているシルヴィだったが、突然何かを思い出したように、私の方を振り向いてきた。急にどうしたんだ、と尋ねてみると、彼女はガンプラの話を切り出してきた。
「大会用のガンプラを製作してるって美玖から聞いたのだけれど――」
「本体はもう完成したよ。今持ってくるから、ちょっと待ってて」
組み上げたばかりのフリーダムをシルヴィに見せると、彼女の目がキラキラと輝やいていた。
「凄い……MGのギミックをRGに導入するなんて。指は、全指可動の構造になっているわね」
「ああ、パーツの強度はしっかり保たれているから、そう簡単には折れないよ」
「そうなんだ。デスティニーの腕に、あら? レールガンはストフリのものになっているよね」
「こっちの方が見栄えも性能もいいから、入れ替えたのさ」
私が説明し、シルヴィはフリーダムをしげしげと観察し続ける。その視線を追いながら、美玖もフリーダムから目を離せずにいる。ふとフリーダムから目を上げると、シルヴィは難しい顔をしていた。というか「何か物足りない」と感じているような顔だった。
「凄く出来のいいガンプラではあるけれど、ガンダムの世界観に囚われすぎているって感じね」
「うん、確かにそうかもしれないな」
自分の乗機のガンプラで大会に出場するつもりだが、傍から見れば世界観に則ったコンセプトのガンプラにしか見えないだろう。イオリ・セイがこのフリーダムを見たら、きっとシルヴィと同じことを言うに違いない。でも、それでも、私はこの道を突き進むつもりだ。
「だがな、シルヴィ。俺にとってガンダムは――モビルスーツは兵器なんだ。その本質をより深く掘り下げ、より多くの人々にその素晴らしさを伝えたいのだよ。それに、三代目メイジンは『ガンプラは自由だ』と言ってたしな」
「そうね。悠凪の好きに作れば、それでいいんじゃない。それは悠凪の『自由』なんだよね!」
そうだ、ガンプラをどう作るかは私の『自由』だ。
誰に何を言われようと、それに左右されずに己の信念を貫き通すことが重要だ。
他からの束縛や干渉を受けず、自分の思うままに振舞えることこそが『自由』なのだから。
美玖とシルヴィの協力を得て完成した携行武器をフリーダムに取り付けると、壁時計の針は午後7時を指していた。ボーン、ボーンと部屋中に響き渡る時報を聞きながら、シルヴは未だに眠っているエルの方に歩み寄り、彼女を起こそうと、その頬を指でつんつんする。
「うーん、いつまで寝ているのかしら。ほらエル、起きなさいエル!」
「ちょ……寝た子を起こすなって」
指でつんつんされ、眠りを妨害されたエルは起こされてしまい――。
「シル……もうちょっと寝かせて」
聞き間違いではなかった。今、エルはシルヴィのことを「シル」と呼んでいた。
それは彼女が今置かれている立場では、絶対に許されない呼び方だった。
シルヴィとの関係が「姉妹」から「主従」へと変わった今、この呼び方だと不敬罪に問われるのだが、シルヴィは笑っていいのかわからないというような複雑な表情をしていた。その眼から零れ落ちた粒を見ているうちに、なんとなく理解できた。
王族といい政治といい、いつの時代でも変わりなく複雑なものだな、と。
「はっ、しまった! つい寝落ちして――」
「もう夜の7時になってたよ、エル」
「す、すいません……あら、このコートは誰のものでしょうか?」
「それはね、悠凪がお布団の代わりにかけてあげたのよ」
シルヴィの言葉を聞いた途端、ソファーから立ち上がったエルは、私のコートを胸に抱きしめるようにして、顔を赤く染めて俯いていた。
「ちゃんとお礼を言いなさい、エル」
「うぅ、えっと――ありがとう……」
と言いつつ、エルはコートを綺麗に畳み直し、私に手渡してきた。
ぶむ、もじもじと恥じらっているところも可愛いな。
コートをクローゼットに戻すと、私は窓ガラス越しに外の光景を見渡した。
日はすでに地平線に沈み、あたりは一面の闇の掌中にある。周囲に設えられた街灯が仄かな光を放ち、羽虫を呼び集めてはいるものの、玄関前広場を照らすには心もとない。まるで、極端に星の少ない宇宙を見ているかのようだった。
外縁の森林も暗闇に沈み込み、微かに暗さの違う闇の塊としか見えない。
何やら寒々とした気分になり、私は室内に目を戻すと――不意に腹の虫が騒ぎ出してきた。
「お腹がすいたのですね。晩御飯にしましょう、お兄ちゃん」
「そうだな。今日は……カルボナーラパスタを頼む」
美玖が晩御飯を用意している最中に、カーテンを閉めた私はシルヴィの方に歩み寄り――。
「外は、もう夜だ……領事館に帰らなくていいのか?」
「もうちょっとお二人と一緒に居たかったのにな……」
「そう我儘を言わないでください、シルヴィ様。明日は大会の開始日であることをお忘れになられましたか? このまま居続けると、絢瀬殿にご迷惑をかけることになります」
エルはああ言っているが、でも私は迷惑など微塵も感じない。
ダージリンティーの入った紅茶のポットと、人数分のカップを机に置くと「晩御飯を食べてから帰れば?」と二人を誘う。するとシルヴィは「やった!」と、とても嬉しそうに笑っていた。
「えっ、よろしいのですか?」
「俺には構わない、むしろ大歓迎だ。さあ、紅茶を飲んでリラックスしよう」
「では、頂きます――これは、ダージリンティーですね。とても良い味です」
「この生き生きとした風味……とても美味しいだわ」
二人が紅茶を堪能している最中に、私は食材の下処理をしている美玖の方に振り向いて「というわけで、さらに2人分追加だ、美玖」と伝えて「はーい」と彼女は振り向きもせずに答えた。
やがて用意した食事が平らげられ、時刻が10時を過ぎた頃、二人は専用のリムジンで領事館に帰って行った。今日も楽しかったが、大変な一日でもあった。ただ、おふざけが好きな金髪ギャル――妃玲奈がこちらに来なかったのは意外だった。多分、買い出しに行ってたかもしれない。
「明日は大会だから、早めに休んで備えよう……」
と呟きながら、私はベッドに倒れ込むのだった。
大会当日の土曜日。
駿府城公園――それは、駿府城の跡地を利用して整備された公園である。春には桜の名所として知られるのだが、処暑の季節に入った今、その景色は見当たらなかった。だが、私の目指す目的地はそこではなく、北御門橋付近に位置する静岡市中央体育館が目的地だ。
「おいおい……街が埋め尽くされているではないか⁉」
「ここにいる人々は皆、これから行われる大会を楽しみにしているんですよ」
「それも、そうだな」
私は出場選手だから、早めに到着しないといけないのだが、体育館外の駐車場と城北通りは既に大勢の観客に埋め尽くされていた。これでは中に入れそうにないな、と困っているところに、黒のグラサンをかけた男が私に声をかけてきた。
「あの時の少年と少女か……そう言えば、名前を聞いてなかったな」
「先週以来ですね、メイジンさん。自分は絢瀬悠凪で、彼女は自分の妹――鳳凰院美玖です」
挨拶を返した私が名乗り、隣にいる美玖が軽く一礼する。
「絢瀬悠凪……そうか、君がこの大会の出場選手の一人か。私が選手専用入口へ案内しよう」
「どこから入ればいいか分からなくてちょうど困っていたところです。では、お願いします」
凄まじい観客の群れを迂回して、我々は体育館側面にある専用入口へ向かった。途中、すれ違う観客が、少し窺うような目をこちらに向けてくるのが気になる。ユウキ・タツヤに――三代目メイジン・カワグチに気を取られているか、それともノーブル学園の制服が目立ち過ぎたか。もしくは美玖の足元に転がっているハロが気になったのか。
「熱いな……私服で来ればいいのに、なんで制服で――」
「篠原先輩がそう指示しましたから、仕方ないんですね」
もし篠原先輩の「会長命令」がなければ、今頃は私服で来ていた。
今朝は「なぜ制服で来なければならないんですか」と尋ねたが、彼女は何も語らなかった。
でも、この命令はきっと何かの意味があると思う。
「絢瀬君、大会に出場するのは初めてなのか?」
「ええ。ガンプラ歴は7年程度ですが、ガンプラバトル大会に出場するのは初めてです」
「では聞くが、君のガンプラバトル歴はどのくらい?」
「1ヵ月未満です」
「これは驚いた。君がシルヴィア王女と対等に渡り合えるとは、ある少年の事を思い出すな」
それは誰の事なのか、ちょっと気になったので、私はメイジンに問いかけることにした。
「その『少年』は、誰のことなんです?」
「第七回世界大会の優勝者……スタービルドストライクのファイターを務める、あの少年だ」
「確か――レイジ、という名前でしたね」
「ああ。バトル未経験でありながら、卓越した才能を持っていた。君はレイジ君と似ている」
「そうなんですか……」
実際、私は本物のMSを操作する経験を持っているから、バトルをスムーズにすることができたのだが、こちらには「事情」があるから、そう簡単にメイジンに教えるわけにはいかない。通路を抜けてロビーに足を踏み入れた私は、カウンター前に立つ女に目を付けた。黒髪ロングだ。
「あれは……城ヶ崎絢華か」
そう、私の苦手なあの女も来ていたのだ。彼女はホシテレビ会長一族の人間だから、テレビ局の仕事を任されて、ここに来たのもおかしくないか。とりあえず挨拶くらいはしておこう――と私が声をかけようとしたところ、美玖が私より一足先に挨拶をした。
「おはようございます、城ヶ崎さん」
「ほっ、鳳凰院さん⁉ おはようございます……」
黙々と何かに集中しているのか、声をかけられてビックリする城ヶ崎だった。
「おはよう。まさか君も制服で来たとはな」
「おはようございます、絢瀬さん。これは、その――し、篠原先輩の、ご命令ですので」
「そうか。俺たち以外にも、この『会長命令』が知れ渡っているのか」
「え、ええ……『来場する生徒は必ず制服を着るように』って、そういうご命令でした」
私と美玖だけでなく、他の生徒にも通達されていた。
となると、王族であるシルヴィとミナ、そしてエルも正装ではなく制服で来るかもしれない。
「あ、危うく忘れるところでした。カワグチさん、関係者の方々が放送室でお待ちです」
「分かっている。用が済んだら直ぐに向かう――」
メイジンが答えると、こちらに振り向いて「絢瀬君、もう少し話をしよう」と言い――。
「正直、ノーブル学園の生徒が再び地区大会に出場するとは、私は心底から嬉しく思う」
「再び? その、メイジンさんは……昔のプラモデル部について、何かご存知ですか?」
「当時部長だった真田君は大会常連選手であり、私の後輩だった。
そう言い残したメイジンが城ヶ崎と共にロビーを去り、私は衝撃の情報に心を揺さぶられる。
昔のプラモデル部の部長、その姓氏は真田という。しかも、すでに他界している故人だ。
どういう人だったのか、ちょっと気になってきた。大会の後は篠原先輩に聞いてみるか。
「皆さん、お待たせしましたー! 本大会の司会を務めるキララでーすっ!」
案の定というべきか……司会は「ガンプラアイドル」として知られているキララだった。
そんな彼女があざとく「キララン☆」と挨拶をすると、観客席から大勢の観客の黄色い叫び声が湧き上がる。美玖しか眼中にない私は、黙々とその顔を眺めることにした。
「それでは、本大会のルールについてご説明しまーすっ!」
観客たちが静まるのを見計らって、マイクを握った彼女は大会のルールを説明する。
彼女の説明を聞いている内に、後ろから背中をつんつんされて――。
「ふふっ、絢瀬君みっけ!」
「なんだ、篠原先輩ですか」
「なんだってなによ! わざわざ試合を観に来たのに、冷たいな……」
「それはすいませんでした。そう言えば、今日も髪を下したんですね」
私が言うと、篠原先輩が照れたようにそっぽを向きながらチラ見して――。
「今日は、お気に入りのヘアピンも付けたから、えっと……その――」
よく見ると、左前髪にウィングヘアピンが付いている。天使の羽を模した金属ヘアピンにリボン結びの装飾が合わさったものだ。落ち着いた照明の光が、表面に反射している様は実に神秘的だ。銀色の長髪に金色に輝くヘアピンの組み合わせは、客観的に見ても美しいと思う。
「――絢瀬君は、どう思う? わたしに似合うかしら?」
そうか、篠原先輩は私に感想を求めているのか。
でも、玲奈や他の女友達に聞いて見ても良かったのに、何故わざわざ私に聞くんだ?
「銀色の長髪に金色のヘアピン、絶妙に似合っていると思いますよ」
「そう、ありがとう。うふふっ……」
私から褒められて、嬉しそうに微笑む篠原先輩。
不意に、背後に発した人の気配に気を取られ、私が振り向くと――そこには美玖と玲奈、そしてネーナが立っていた。彼女が来ていたことは、刹那たちもこの体育館内にいるに違いない。
「お兄ちゃん、飲み物を買ってきましたわ――あら、篠原先輩もいらしたのですね」
「うふふっ……お兄ちゃんって、まあ、そういうことにしておくわ」
美玖が缶コーヒーを差し出し、ネーナが小さな声で笑いながら呟く。
あのさぁ、私は聞こえているから、もう笑うなよ全く。
「さっきリストを見たんだけど、悠凪は第一試合に出場することになったらしいよ」
「そうか。そう言えば玲奈、シルヴィたちはもう着いたのか?」
「とっくに着いてたわよ。2階のVIPルームにいるんだけど」
居場所は分かった。なら、一回戦が終わったら会いに行くとしよう。
◇◆◇◆◇
『只今より、静岡県ガンプラバトル大会、第一試合を始めます』
やっと始まるか、私のデビューバトル。
「ガンダムファンの皆さんーっ! 第一試合はプロのファイターであるクズノハ・リンドウが出場します。彼女の実力は折り紙つきです。でも、対戦相手の絢瀬悠凪も侮れませんよ。彼はノーブル学園の生徒で、しかも初出場で聞きましたが、しかしガンプラバトルの実力に、キャリアとは全く関係ありません! さあ皆さん、盛大な拍手で二人を歓迎しましょう!」
キララの気合いの入った演説に動かされ、観客席から万雷の拍手が起こった。観客の拍手喝采を浴びながら、私は悠然とレッドカーペットを歩いていく。そして中央に設置された大型バトルシステムで、対戦相手の女性――クズノハ・リンドウと目を合わせた。
長い黒髪に紫色の瞳、端正な顔立ちで凛とした雰囲気を持つクールビューティーだ。
使用するガンプラは、薄紫と白のツートンカラーで塗装された、HGCEインパルスガンダムがペースとなった改造ガンプラのようだ。
篠原先輩の言う、ベスト16のヤサカ・マオ以外に注意すべき強者の内一人。
どんな戦い方をするのか、楽しみでたまらない!
『Field 5, City. Please set your Gunpla.』
今回のフィールドは市街地――スペースコロニーの内部のようだ。
コロニーに穴を開けないように気を付けないとな。
『Battle start.』
「クズノハ・リンドウ、エンツィアン、行くわよ!」
「絢瀬悠凪、フリーダム、出る!」
つづく
本作のオリ主以外のオリキャラ中に、誰のことをもっと知りたいですか?
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風間隼人
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篠原聖奈
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鳳凰院美玖&カレン