「検察官、論告をどうぞ」
「論告は以下の通りです。公訴事実についてはその証明は十分と考えます、被告人は殺意を持って被害者を毒殺したという事実は明白です。本件は、被害者を逆恨みして殺害を決意し、劇薬を準備して犯行現場におびき出したという事案であり、周到な計画に基づくものです。また、不法な手段を用いて劇薬を調達し、それを含む食事を被害者に提供しており、犯行態様も悪質です。従ってその刑事責任は誠に重く、被告人を死刑に処するのが相当であります!」
「弁護人、弁論をどうぞ」
「公訴事実について、被告人が殺意を持って被害者を毒殺したという事実は明白ですが、犯行後は自ら警察に自首をしており、被害人を殺害したことを深く反省しています。また、被告人はまだ若く、今回の犯行を心から反省していること、前科がないことも合わせて考慮の上、寛大な判決をお願いします!」
「それでは被告人、もう一度前へ出てきてください」
検察官と俺の弁護人、お互いの最終意見陳述を終えた後、俺は裁判長の命令に従い、席から立ち上がり前へ出た。
「被告人。最後に何か言っておきたいことはありますか?」
「……検察の論告に異論はありません。全ての責任は自分にあります。自らのしてきた事に、深く後悔しています」
「それではこれで、閉廷します」
そしてその翌日、俺は死刑判決を言い渡され、数週間後に控えた刑の執行への時間を過ごす為に刑務所へ収監された。
鉄格子の窓から青い空を見上げながら、俺は自分の凶行を振り返る。
もし俺の作ったプログラムが採用され、世界中に公開されれば、俺は次期社長になれると考えていた。だが、それを提出しようとしたとき、プログラムに致命的なバグがあると悠凪に指摘され、最終的に採用が見送られることになった。
出世の道を阻まれた俺は、悠凪の殺害を決意した。
当時の俺は「お前が余計なことをしなければ、俺はとっくに出世したんだぞ!」なんて考えていた。本当にバグがあるかとうかも検証ぜず、ただ憎しみに身を任せたまま「親友殺し」という凶行へと走った。
だけど、毒入りのご飯を食べた直後に地面に倒れこむ悠凪を見て、嬉しい感情が一切生まれはせず、ただ虚しさだけを抱いた。その虚しさを抱いたまま、俺は自らの足で警察に行き、自首したのだった。
収監されてから2日後、死刑囚の俺に面会を求める者がいた。面会室に足を運ぶと、そこに俺を待っている人物は社長だった。
数回に渡る検証の結果、俺の作ったプログラムに幾つかの重大なバグがあったと社長が言った。
そう、悠凪の指摘は間違っていなかった……間違っていたのは、バグの問題を解決せず、後先も考えず凶行に走った俺の方だった。
死刑が行われる日の夜明け、俺は後悔と自責を背負いながら、絞首台に足を運んだのだった。
そこにある粗いロープに首を絞められ、19年という人生に幕を閉じた。
――はずだった。
目が覚めたら、俺はいつの間にか自然に囲まれた緑豊かな場所にいた。
ここは天国なのか地獄なのかは分からないけど、眼前に広がる自然の景色に、俺は思わず「綺麗だな」と声を上げたのだった。
そして俺は、自ら神と自称する美少女と出くわすことになった。
「ようやくお目覚めになられましたか、風間隼人」
「ちょ、お前は誰だ⁉ なんて俺の名前知ってる?」
「私はカレン、この天界を司る神ですわ」
それから、俺を別の世界に転生させることができると彼女は言った。もちろん、アニメやゲーム作品の世界へ転生させることも可能だ。
そこで、俺は自分の生きていた時代と同じ年号を持つガンダム作品『機動戦士ガンダム00』の世界に、容姿と年齢を維持したまま転生させることをカレンに頼んだ。
普通なら「転生特典」を貰って、最初から強い状態で新しい人生を始めることができるが、俺は有罪判決によって死刑に処せられた犯罪者なので、それを貰う権利がないとカレンは言った。
だけど俺が「親友殺し」という凶行を行ったことに後悔の意を示したため、彼女は俺に「慈悲」を与えることにした。
彼女は擬似太陽炉搭載型のガンダム「ガンダムスローネフィーア」と『ガンダムW』に登場する超高性能AI「モビルドールシステム」の関連技術を俺に与えた。欲しいものではないけど、何もないよりマシだ。
これを使って何をするかは俺の自由で、CBに協力するもよし、国連軍に参加するもよしとのこと。あの下衆大使や自称救世主のイノベイドに協力したくないので、国連軍に参加するという選択肢は、なしだ。
CBにスカウトされるには、先ずは自分の知名度を上げなければならない。転生したばかりの俺の最初の商売は、性能を本来の半分以下に落とした「モビルドールシステム」をPMC経由で三大国家軍に販売することだった。
性能を半分以下に落とした理由だが、本来の性能を維持したMDを搭載したモビルスーツが大量生産されたとすれば、チームプトレマイオスが早期に壊滅してしまう可能性があったからだ。
それから一週間が経つと、案の定というべきか、ユニオンに所属する国連大使で、CBの監視者でもある二つの顔を持つ男――アレハンドロ・コーナーが俺の所にやってきた。その傍には、汚いアムロ……もとい、イノベイド――リボンズ・アルマークの姿があった。
「ミスター・カザマ、この世界に変革をもたらす為に、私に力を貸す気はないかね?」
「コーナー大使。正直に言って、貴方が一体何を言っているのか、自分には解りかねます」
「それもそうだな。では、分かりやすく説明しよう。私はユニオンの国連大使であり、ソレスタルビーイングの監視者でもある。世界を変革させるためには、斬新的な技術が必要だと私は考えている。モビルドールシステムを開発した君なら、私の言葉の意味が理解できるはずだ。どうかね?」
なるほど、そうきたか。
大使とリボンズに協力なんてしたくないんだけど、断れば間違いなく殺される、ここは……!
「分かりました……ソレスタルビーイングに協力します」
「賢明な判断だ。組織の一員として、君を歓迎しよう」
それから俺はCBの監視者として活動することになったけど、表向きは国連の一員となっているので、日常生活に支障をきたすことは無かった。
そして三大国家軍の共同軍事演習が行われる直前……俺は本来この『機動戦士ガンダム00』の西暦世界に存在する筈が無いモビルスーツを、目にしてしまったのだ。
ZGMF-X10A フリーダムガンダム
これを見た瞬間、俺は自分以外の転生者がこの世界に入り込んでいたことを確信した。
大使から提供された映像を見る限りでは、あのフリーダムは敵の武装やメインカメラではなく、コックピットばかりを狙って攻撃していた。
バラエーナに腕を吹き飛ばされたフラッグが一機いたけど、あそこで回避行動を取らなければ、とっくに消し炭または爆散していただろう。
「コックピットを狙っている……ということは、乗っている奴は絶対にキラ・ヤマトじゃない……もしかしなくても、俺と同じ『転生者』だったりするのか?」
風間隼人はその答えとなる人物と出会い、真実を知ることになるのだが、それは先の話になる。
つづく