世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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第6話 介入の始まり

 この世界にで活動するには、個人IDカードが必要だ。

 

 私は空白のIDカードを用意した後、ハロに内蔵されたノートパソコンを開き、マニュアル操作でユニオン政府の人口管理サーバをハッキングしようとしているが、ハロは10秒も立たずにサーバのセキュリティを突破して見せた。

 

「セキュリティ突破完了! セキュリティ突破完了!」

「24世紀のセキュリティもそこまで頑丈ではないようだ……いや、カレンの作ったハロが強すぎたか」

 

 カレンの作り上げたハロの驚異的な性能に感心しつつ、私は予め用意した個人情報をサーバにアップロードした。

 

 履歴や家族構成はともかく、名前に関しては偽名を使ってもどうせバレるので堂々と本名を使う方が良い。美玖もそれを了承しているので問題ない。

 

「よし、出来た」

 

 私は2枚のIDカードの内1枚を美玖に渡す。

 

「もはや犯罪行為ですね……」

「分かっているさ……でも私たちはこの世界の外からやってきた異邦人だ。この世界の社会に溶け込む為には、こうするしかない」

「うん……」

 

 仕方ないとは言え、罪悪感を感じて暗い顔をしている美玖に、私は彼女の頭をそっと撫でてやった。

 

「もう、子供扱いしないでくださいって言ったじゃないですか……えへへ」

 

 口では嫌だと言いながらも、彼女は嬉しい笑顔を浮かべた。

 その笑顔は天使のように愛らしく、こうして見ているだけで、先程の戦闘で蓄積された疲れが吹き飛び、癒されていくように思えた。

 

 さて、IDカードも電子マネーも用意できたので、市街地に行ってこの24世紀の日本を観光しよう。フリーダムはミラージュコロイドによって姿を隠されているので、誰かがこの森の奥まで来ない限り、見つかることはまず無いだろう。

 

 市街地に繋がる道を歩いていると、空に向かって聳え立つ高層ビル群を視界に捉える。車は大通りを行く、中心部に近づくにつれ通りには人があふれ、道を走る車も増えてくる。3世紀前の日本にも見慣れた光景だ。

 美玖を連れて軌道エレベーターを登り、低軌道ステーションから地球を眺めたい所だが、明日には三大国家軍の共同軍事演習がタクラマカン砂漠で行われるので、()()が終わってから登る事にしよう。

 

 いくつかの角を曲がり、お洒落な商店街に入ると、美玖は私の手を繋いできた。あまりにも突然で、私はびっくりしてしまった。

 そして、彼女は私の手を繋ぎながら、照れたように口を開いた。

 

「こうして手を繋いでいると、傍から見たら恋人同士に見えるかしら?」

「きっとそう見えてると思う。それに私は、超絶美少女の君が恋人で鼻が高いよ」

 

 美玖に対する感想をそのまま呟いて、私は彼女の手をより強く握ったのだった。

 

「悠凪くんの手、大きいです。わたしの手、包み込んまれるみたいになってて……しっかりした感触や骨格が分かっちゃいます」

「分かるよ……美玖の手の華奢さも、くんにゃりした柔らかさも」

 

 その一言を聞き、一気に焦り始めた美玖だったが、私が顔中で微笑みを見せると、バラのようにふんわりと頬を染めて息を呑んだ。

 そして俯くと、もじもじし始めて「そう言われて嬉しいです」と小さく呟いた。

 

「悠凪くんと手を繋いでる感覚、もっと感じたいです」

「私だけじゃなくて良かったな。じゃあ、このまま商店街を一周回ろうか?」

「はい、よろしくお願いします……」

 

 手を繋いで歩くこと数十分、そろそろステップアップしてもいいのでは? と考えていた美玖は得意げに首を傾げ、嬉しそうな笑顔で私を上目遣いで見上げる。そして指を絡めた手に力を入れて恋人繋ぎにしてきた。

 流石に恋人繋ぎはそういう名称だけあって、密着感が今までとはまるで違う。

 彼女の積極的なアプローチもあって、繋いだ手を安易に離せなくなってしまった。

 

 そして恋人繋ぎで歩くこと数分後――。

 

「――悠凪くん……大好きです」

 

 天にも昇らんばかりの幸せそうな表情になっていた美玖は、そっと宝物を渡すかのように囁いてくれた。もう、可愛い過ぎるだろ! 私を悶えさせて理性を壊す気か⁉

 

 それからしばらく経って、私たちは其々アイスティーを買い求め……

 

「ふふっ、わたしはアイスミルクティーにしましたわ」

「意外だったな、私と同じくアールグレイで来る思ってたが」

「ミルクの甘い味が好きなんです……はい、悠凪くん」

 

 そう言って美玖はさらに身体を密着させつつ、私にアイスミルクティーを差し出してきた。

 

「飲ませてくれるのか?」

「はい、悠凪くんにも一口飲んで欲しいです……間接キスになりますが、相手が悠凪くんなら、わたしは構いません」

「そう言われたら、飲まないわけにはいかないな……いただこう」

 

 アイスミルクティーを一口味わう。

 香り豊かな紅茶の味とミルクの甘さが口の中で広がり、スッと喉を奥へと通っていった。

 

「なかなか美味しいな。美玖、このアールグレイを飲んでみて」

「ええ、いただきます! うぅ……味はちょっと苦いですね」

「砂糖抜きだから、まったく甘味はないよ」

 

 商店街の喫茶店を後にした後、私たちは恋人繋ぎしたまま街中を散策し続け、夕方7時頃になったら大通りの高級ホテルに泊まることにした。

 

 ホテルに入ると、周りの視線が気になった……私を警戒しているようだ。

 十中八九、私のことを「女子高生をホテルに連れ込まんと企む、いかがわしい輩」と勘違いしているに違いない。

 私の服装はスーツに灰色のコート、美玖はいつもの制服を着ているので、誤解されてしまうのも致し方ないか……。

 

 まさか、この世界のこの時代でも、こんなことが続いているというのか?

 そして宿泊手続きをする際、1人のスタッフが私と美玖に尋ねてきた。

 

「お客様、失礼ながらお尋ねいたします……お二人はどのようなご関係ですか?」

 

 その無粋な質問に対して、私と美玖はこう答えた。

 

「彼女は私の恋人だ」

「彼はわたしの恋人です」

「そ、そうでしたか、大変失礼いたしました!」

「お客様、お部屋の用意ができました。こちらへどうぞ……」

 

 部屋に案内されて暫くすると、別のスタッフが夕食を運んできてくれた。

 食事を済ませてから2時間後、美玖は枕を抱きしめたまま、ベッドの上で眠りについた。

 相変わらず無防備な寝姿を見せてくれる美玖を見ると、またイタズラをしたくなった。

 

 だが、この前は注意された為、彼女が嫌がる事をしたくないので、止める事にした。

 

 明日にはタクラマカン砂漠の共同軍事演習が行われるし、三大国家陣営の戦力も把握しておきたい。そう考えた私はハロに内蔵されたノートパソコンを開き、必要な情報を集めることにした。

 

 調べた結果、やはりテロリストを利用してソレスタルビーイングを誘い出し、あらかじめ砂の下に埋めた双方向通信用端末を通じてガンダムの位置を探知し、全方位攻撃を行い、マイスターたちを疲弊させてガンダムを鹵獲する作戰だった。ここまでは原作通り。問題は――。

 

「(参加モビルスーツの総数が……2000機を超えているだと⁉)」

 

 原作では部隊数52、参加モビルスーツ総数が832機に対して、この世界では部隊数160、参加モビルスーツ総数が2112機と3倍近い数になっていた。

 それに加えて、第五次太陽光発電紛争で使われたモビルアーマー――アグリッサが32機も配備されている。

 

 私がこの世界に介入した事で本來の歴史に影響を与えたのか? それとも別の原因か……いずれにしても予定に変更はない。

 チーム・トリニティより先にソレスタルビーイングを助け、話し合いの機会を作る。

 

 それと、今後の行動方針も考えないといけないな。

 

 

 

 

 

 同時刻、タクラマカン砂漠に位置するユニオン軍の駐屯基地。

 

「おいおい……幾らなんでも増産しすぎだろ! 国家間戦争でも始めるつもりか⁉」

 

 PMCトラストから送られてきた生産報告書を閲覧した隼人は驚きの声を上げて、机に拳を叩きづける。

 生産されたMD搭載型ヘリオンの数は1000機。此度の軍事演習を参加するモビルスーツ総数の半分近くをこれが占めている。しかも、その全機をこの軍事演習に投入することが既に決定している。

 

 モビルドール。

 それは疲労を知らず、死すら恐れず、下した命令を忠実に遂行する機械兵士だ。

 このままでは4機のガンダムは物量に圧倒され、確実に鹵獲されてしまう。そして世界は、アレハンドロ・コーナーを始めとする俗物たちの支配下に収まってしまう。

 そんな世界は御免被る。そう考えた隼人はこの瞬間から、徹夜で策を練り始めた。

 

 その考えた策の内容は三つ。

 一つ目が本命だ。

 

・フリーダムがこの軍事演習に介入してくることを想定し、介入してチームプトレマイオスのガンダムを救助した場合、こちらは介入せずに様子を見守るに留める。

 

 そうでなかった場合に備え、もう二つ策を練った。

 

・フリーダムがこの軍事演習に介入しなかった場合、監視者権限を行使して原作通り「チームトリニティ」を派遣し、チームプトレマイオスのガンダムを救助する。さらにガンダムスローネドライ経由で「アンチMDウィルス」を戦域全域に発信し、MD搭載機の機能を停止させる。

 

・フリーダムが介入し、さらにチームプトレマイオスのガンダムに攻撃を仕掛けた場合、自らガンダムスローネフィーアで出撃し、これを撃退または撃墜を試みる。

 

「(この先がどうなるか、何が待っているのかは分からない。今はフリーダムが味方であることを祈るしかない……)」

 

 

 

 

 

 翌日、タクラマカン砂漠。

 

「デュナメス、目標を狙い撃つ!」

 

 ガンダムデュナメスのGNスナイパーライフルが火を噴く。放たれた粒子ビームは濃縮ウラン埋設施設を破壊しようとしたテロ組織のモビルスーツを次々に撃破し、人員輸送車に至っては跡形もなく消滅させた。

 

「テキセンメツ! センメツ!」

 

 オレンジハロからの攻撃対象全滅の報告により、ミッションは完了した。

 スメラギ・李・ノリエガが提案したミッションプランは一撃離脱。キュリオスにテールユニットを装備させて飛行形態のままSFSとして運用し、その上にデュナメスを乗せる。空中からの超長距離狙撃で速やかに目標対象を撃滅し、現場から撤収することになっていた。

 

 そう、わざわざ袋叩きにされるのを待つ必要などないのだ。

 

 だが、あらかじめ砂の下に埋めた双方向通信用端末によって、ガンダムの位置は既に三大国軍に知られていた。

 

「ミッション終了、離脱するぞアレルヤ!」

「了解!」

 

 アレルヤの返答と共に、キュリオスは加速していくが、作戦空域から離脱しようとした瞬間、2機のコックピット内に警告音が鳴り響いた。

 

「敵襲⁉」

「くっ!」

「ミサイルセッキン! テキセッキン!」

 

 デュナメスはキュリオスのテールユニットから離れ空中に身を躍らせ、襲来するリアルドとミサイル群に向けてGNスナイパーライフルを連射しながらGNミサイル全弾を放つ。

 キュリオスはテールユニットのミサイル発射口を開き、積載した誘導ミサイルの全弾を撃ち尽くした後、テールユニットをパージした。

 

 2機のガンダムから放つ砲火が、迫り来る敵機とミサイルを捉え、空中に巨大な煙の塊が出来上がった。

 リアルド部隊が爆煙をあげながら、飛行型態のキュリオスに肉迫してくる。

 しかも、減速する気配がない。

 

「こいつは……特攻か⁉ 避けろアレルヤ!」

 

 敵の意図に気付いたロックオンはGNビームピストルに持ち替え、優先攻撃のターゲットを飛行形態のリアルドに切り替わるが、撃ち漏らした3機のリアルドがキュリオスに衝突し、巨大な爆発を引き起こした。

 その直後、キュリオスは飛行形態のまま地面へ自由落下した。

 

「アレルヤ!」

 

 だが、心配している暇は無かった。ロックオンがアレルヤに気を取られた隙に、別の方角からモビルスーツ形態のリアルドがデュナメスに接近してきた。

 ロックオンは対応が遅れて、デュナメスは2機のリアルドに組み付かれてしまった。

 

「組み付かれただと⁉」

 

 そう吐き捨てると同時に、ロックオンは2機のリアルドがコックピットを含む下半身を分離させ、爆発寸前の危険物から離れるように距離を取るのを見た。

 

「こいつらはまさか……自爆する気か⁉」

 

 次の瞬間、巨大な爆発はデュナメスを飲み込むのだった。

 

 一方、リアルドの特攻を受けて地上に降下したキュリオスはシェルフラッグ部隊と交戦する最中に、シェルフラッグ部隊は別方角から撃って来た一筋の光に飲み込まれて、跡形もなく消滅した。

 アレルヤは知っている、これはティエリア・アーデの駆るガンダムヴァーチェからの砲撃だ。

 

 そう、作戦プランはB2へと移行したのだ。

 

 同時に空中に巨大な爆発が広がり、爆煙の中から現れたのはゆっくりと落下していくデュナメスだった。

 

「ロックオン!」

「大丈夫だ……プランはB2に移行した、これより離脱する!」

「了解……!」

 

 

 

 

 

 少し前、タクラマカン砂漠の一角に待機している刹那とティエリア。

 

 ファーストフェイズの終了予定時刻を過ぎた。だが、作戦終了を報せる通信は未だに届いていない。デュナメスとキュリオスが撤退に失敗したと判断し、ティエリアは操縦桿を握り締め、GNバズーカの砲口を、2機のガンダムがいる方角へと向けた。

 

「GNバズーカ・バーストモード……圧縮粒子、完全解放!」

 

 トリガーを引くと同時に、機体に蓄積された圧縮粒子が一気に放出され、それを引き受けた巨大な粒子ビームの光軸が砂漠の大地を焼き、向こう側にあるシェルフラッグ部隊を文字通り完全消滅させた。

 

「ファーストシュート完了……GN粒子、チャージ開始……」

 

 GNバズーカ・ハイパーバーストモードでロックオンとアレルヤの撤退ルートを確保したガンダムヴァーチェは、圧縮粒子を再チャージすべくその場に待機していた。隣には刹那・F・セイエイの駆るガンダムエクシアが護衛に付いている。

 

 この時、2機のコックピット内に警告音が鳴り響いた。

 そして2人が目にしたのは、上空から大量のミサイルが降りかかってくる光景だった。

 

「この物量は⁉」

「対応が早い……!」

 

 刹那はGNソードライフルとGNバルカンでミサイルを迎撃するが、圧倒的な物量の前に迎撃が間に合わず、エクシアとヴァーチェはミサイルの飽和攻撃を受けてしまった。体勢を立て直すと、刹那とティエリアは既に8機のアグリッサと合計100機以上のイナクトとヘリオンで構成された大部隊に包囲されていた。

 

「このままでは、包囲殲滅される!」

「突破口を開く、刹那・F・セイエイ……フォーメーション・S32だ!」

「……了解した!」

 

 ティエリアの提案に従い、刹那はエクシアをヴァーチェの後ろへ下がらせる。同時にティエリアはヴァーチェのGNフィールドを展開させると、敵の編隊へ突撃していった。

 ヴァーチェが敵機の攻撃を引きづけている間に、エクシアは折り畳まれていたGNソードを展開し、行く手を阻む敵を手当たり次第に斬り倒していくのだった。

 

 

 

 

 戦闘開始から4時間が経過し、砂漠は夜闇に包まれていた。

 タクラマカン砂漠に位置するAEUの駐屯基地、その中央に聳える指揮管制塔では、作戦指揮官であるカティ・マネキン大佐が1人のAEU兵士に現在までの戦況を報告するよう命じた。

 

「戦況を報告しろ!」

 

 呼ばれた兵士は挙手敬礼をし、報告を読み上げる。

 

「ハッ! 第72モビルスーツ隊から、デカブツガンダムの鹵獲に成功したと連絡がありました。近接タイプのガンダムは外人部隊と交戦中、人革連は羽根つきのガンダムを追跡中、狙撃タイプのガンダムはユニオン軍の第8独立航空戦術飛行隊と交戦中、以上です!」

 

 4機のガンダムは分断され、デカブツのガンダムは既に鹵獲してある。その報告を聞いたマネキン大佐は勝利を確信したように微笑みを浮かべた。

 

「ここまでのようだな、ソレスタルビーイングも……」

 

 この時、通信士は別の報告を読み上げた。

 

「大佐! 戦闘空域に接近する機影があります……ユニオン軍から提供された情報にあった新型ガンダムです!」

「味方を助けるつもりだな。だか1機だけではどうにもならない! モビルスーツ隊を発進させろ! 敵は1機だ、包囲して殲滅しろ!」

 

 何の兆しもなく、突如姿を現した5機目のガンダム。ユニオン軍から提供された戦闘映像を見る限り、あの機体は今までのガンダムと違って、光る粒子を放出する特殊な機関が搭載されていないことが分かった。

 高速機動をしながら複数の敵に精密射撃を行う戦闘スタイルから察するに、あの機体は多分「単機で戦況を覆す意図したワンオフの高性能機」として開発した機体であろう、とカティ・マネキン大佐はそう考えている。

 

 MDを搭載したヘリオンもまだまだ残っているので、慎重に対処すれば、問題なく撃退できるのだろう。上手く対処できれば、あのガンダムを鹵獲することも可能だ。

 

「出番だぞ、少尉。期待している」

「ハッ!」

 

 パトリックはカティに挙手敬礼をし、司令棟を出てモビルスーツ格納庫へ向かった。

 

 

 

 

 

 私がタクラマカン砂漠に着いた頃は、既に日が暮れる時間だ。フリーダムのコックピットから周りの景色を見渡すと、そこは砂漠の荒野と散乱するモビルスーツの残骸だらけだった。

 まるで、戦いに敗れたモビルスーツの墓場のようだ。

 

「ん? センサーにモビルスーツ反応……前方か!」

 

 私は映像をモニターに出すと、反応が示したのはAEUイナクトとヘリオン、アグリッサ6機を含む大部隊だった。部隊の中央には電磁パネルに囲まれて身動きが取れないガンダムヴァーチェの姿があった。

 

 そして別方角には、その部隊を追いかけているガンダムエクシアと、その行く手を阻むアグリッサの姿が確認された。

 あのアグリッサが気になる……動きが素速い。パイロットはアリー・アル・サーシェスなのか?

 

 いずれにせよ、世界の害悪でしかない存在を殲滅する事に変わりはない。

 

「ターゲット、マルチ・ロック……!」

 

 私はマルチロックオンシステムでAEU軍の機体に照準を定め、フルバーストを連続で撃ち放ったのだった。

 

 

 

 

 

『逝っちまいな!』

 

 サーシェスの声と共に、アグリッサの脚部から青白い光が灯る。直後、青白いスパークが雷の乱舞となってエクシアに襲い掛かった。

 

『どうだ、アグリッサのプラズマフィールドの味は? 機体だけ残して消えちまいな、クルジスのガキかぁ!』

「うわああああぁぁっ⁉(俺は……死ぬのか……この歪んだ世界の中で……)」

 

 刹那が悲鳴をあげ、死を覚悟したその時、AEUのモビルスーツは次々と撃破されていき、電磁パネルに囲まれて身動きが取れないヴァーチェも、先程の砲撃によってイナクトとヘリオンが撃破された事で解放された。

 

 エクシアをプラズマフィールドで閉じ込めていたサーシェスのアグリッサも例外ではなく、盛大に爆炎をあげた直後、アグリッサから分離脱出したサーシェスのイナクトが撤退していった。

 

 爆煙に遮られた視界が風で振り払われ、刹那とティエリアが見たものは、空に浮かぶ蒼き翼の機影だった。

 

「ガンっ……ダム……!」

「あのガンダムは……!」

 

 その機体は、ヴェーダの報告にあった太陽炉非搭載型のガンダムだった。

 そしてそのガンダムから、通信が入ってきた。

 

『大丈夫ですか? ソレスタルビーイングのガンダムパイロット……』

 

 つづく

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