世界を越えし自由の翼   作:絢瀬 悠凪

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第7話 世界を渡る者と天上人(前)

『大丈夫か? ソレスタルビーイングのガンダムパイロット……』

 

 ゆっくりと降下して着地し、地面に倒れていたエクシアに、フリーダムは手を差し伸べる。

 刹那は迷うこと無く差し伸べてきた手を掴み取り、エクシアの機体を起こした。

 同時に、エクシアとヴァーチェのコクピットモニターに通信ウィンドウが開かれ、そこに映し出されているのは、顔立ちが整っている銀髪紫眼の青年だった。

 

「お、お前は……⁉」

「何者だ⁉」

『私は絢瀬悠凪、この機体……フリーダムガンダムのパイロットです』

「フリーダム……ガンダム? そんな機体……聞いたことがない、それになぜ我々を助ける?」

『それは……ん?』

 

 悠凪が話を進もうとする時、3機のコックピットに警告音が鳴り響いた。AEU軍の駐屯基地が位置する方角から、多数のモビルスーツが迫ってきた。

 その正体はイナクト31機、ヘリオン169機、合わせて200機のモビルスーツで構成された大部隊だ。さらにその後続には6機のアグリッサが追随している。

 

『早く体勢を立て直してください! 敵が来ています!』

「ティエリア!」

「わ……分かった!」

 

 砂地を蹴って身を躍らせたフリーダムに、エクシアとヴァーチェは背中のコーン型スラスターからGN粒子を放出させると、その行動に追随した。

 悠凪はその場でフリーダムの全砲門を開き、マルチロックオンシステムで迫りくるAEUのモビルスーツ隊に照準を定める。

 

 この時、プラズマソードを引き抜き、フリーダムに目掛けて真正面から突っ込んでいったイナクトから、外部スピーカーで声が発せられた。

 

『見つけたぜ! 今までのやつらとは違うタイプだが、お前もガンダムなんだろ⁉ なら俺の敵に決まってるだろうが!』

 

 そのイナグトのパイロットは「最初にガンダムに介入され、ボコボコにされた男」として、当て擦りでその名が広まっている人物、自称・AEUのエース――パトリック・コーラサワーだった。

 

「なんだ炭酸か……」

 

 無表情でそう呟いた悠凪はトリガーにかけた指に力を込め、迫り来るAEUのモビルスーツ隊に向けてフルバーストを連続で撃ち放った。

 雨あられのごとく放たれ続けた砲撃は夜空を照らし、AEUのモビルスーツを正確に捉え、次々と撃破していく。

 後方に控える6機のアグリッサは、その図体の大きさゆえ回避に間に合わず、フリーダムに手も足も出ずに全機撃破された。

 

『うわぁ⁉ なんだこいつ、強すぎだろ⁉』

 

 フリーダムの圧倒的な性能に驚かされ、一瞬動きが鈍ったパトリック。

 再び警告音が鳴り響き、我に返ったパトリックが目にしたのは、真正面から迫り来る赤いビームの光条だった。

 

『なんじゃそりゃー!』

 

 咄嗟に回避行動を取るものの間に合わず、機体はビームの光条に貫通され、あっけなく墜落してしまった。地面に激突した機体は大破しているが、コックピットだけは無傷のようだ。

 

 MSの爆発が生み出す火球は放射状に連鎖して、人間が作りうる限りの絢爛たる炎の宝石細工を生み出した。だが、それらの宝石の内部には優美でも華麗でもない生と死の姿があることを、悠凪は知っている。

 そしてフリーダムは1分間フルバーストを撃ち続け、最後の1機のヘリオンを葬った瞬間、砲撃が飛び交う戦場は静寂な砂漠へと戻っていった。

 

「(たった1分で200機のモビルスーツを……!)」

「(なんという性能だ! こんな機体、ヴェーダにも情報がなかった……!)」

 

 スメラギ・李・ノリエガとイアン・ヴァスティから提供した分析データによると、蒼き翼のガンダムはGNドライヴを搭載していないにもかかわらず、キュリオスの数倍以上の運動性、エクシアの倍以上の機動性、デュナメス並みの射程とヴァーチェに次ぐ火力を同時に備わっている。

 

 さらに、高機動戦闘しながら複数のターゲットに向けて同時に精密射撃を行うことができることから、イアンに「単機で戦場を支配できる究極のガンダム」と称された。

 

 だが、最も恐ろしいのは、こんな複雑な機体を扱いこなしているパイロットだ。ある意味人間の枠を超えていたのかもしれない。

 

 実際にフリーダムの戦い方と地面に散乱する残骸を目にした刹那とティエリアは、操縦桿を握る手を震わせながら、呆然として息を呑んだ。

 データ以上の性能だ。こんな機体が存在していたとは思ってもみなかった。

 

 気を取り直したティエリアはコンソールを操作し、再びフリーダムとの通信回線を開いた。

 

「改めて聞く、何の目的で我々を助ける?」

()()()()のガンダムは一体何の為に戦っているのかを知りたい。だから私は、君たちを助けたのです』

 

 悠凪の返事を聞き、刹那とティエリアは困惑の表情を示した。

 

 ソレスタルビーイングが掲げる「紛争根絶」という理念は、AEUの新型MS披露会への武力介入と、軌道エレベーターを襲撃するテロリストの殲滅を行った直後に、イオリア・シュヘンベルグのビデオメッセージと共にメディアに報道され、世界中に知り渡っているはず。

 

 なのに悠凪は「一体何の為に戦っているのか」とこちらに問いかけてきた。

 そして「この世界」という言葉が引っかかる……まるで自分がこの世界の外からやってきた人間であることを示唆するような物言いだった。

 

「この世界のガンダム? 一体何を言っている……ティエリア、お前はどう思う?」

「この男がふざけているとは思えない、それに信用できると思う……上手く言えないが、そういう感じがする(にしても、この頭に伝わってくる『奇妙な感覚』はなんだ? 脳量子波に似ているが、まるで違う……この男は一体?)」

「そうか……お前がこの男を信じるというのなら、俺も異論はない」

 

 先程の行動を思い返せば、悠凪は敵ではないことが明らかになっいる。でなければ、地面に倒れたエクシアに手を差し伸べるはずがない。それに、もし悠凪が敵だったら、自分たちはとっくに撃墜されていただろう、と刹那はそう考えている。

 ティエリアの判断に異論はないが、「この世界」という言葉がどうしても引っかかってしまう。

 敵ではないとはいえ、刹那は悠凪のことを完全に信じることができなかった。

 

『君たちのガンダムは4機いる筈ですが、他の2機は?』

「北西5kmに位置する山岳地帯に敵と交戦中だ」

『なら急がねば……!』

 

 聞きたいことは山ほどあるが、今はロックオンとアレルヤの救援が最優先だ。

 悠凪の事は一旦棚上げして、刹那とティエリアは、山岳地帯に向けて飛んでいったフリーダムの背中を追随した。

 

 

 

 

 

 同時刻、北西の山岳地帯。

 三大国家軍の奇襲を受け、撤退中のデュナメスとキュリオスは敵の攻撃によって分断され、キュリオスは山岳方面へ、デュナメスは渓谷方面へ、それぞれ撤退を試みることになってしまった。

 

 追撃部隊を振り切ったアレルヤが、安全な代替ルートを模索している最中に、別の方角から接近する敵部隊の反応をEセンサーが捉えた。

 

「うあああぁぁぁっ! この感覚は……超兵が、来る……!」

 

 その正体は人革連の超兵1号……ソーマ・ピーリスが所属する部隊だった。

 彼女から発せられる脳量子波を感じ取り、頭が割れそうな激痛に襲われたアレルヤは、凄まじい絶叫をあげながら、自分の頭を両手で抑える。

 

『見つけたぞ! 被験体E-57!』

「く、来るな……来ないでくれ!」

 

 物理的な距離が近ければ近いほど、頭痛の痛みが更に増していく。

 その激しい頭痛に支配されたアレルヤは操縦桿を握る力すら残っておらず、機体の操縦が不可能になってしまった。

 

 この時、アレルヤは自分の内に潜む「凶暴性を備えたもう1人の自分」に声をかけられた。

 

「(ったく、仕方がねぇ……さっさと身体を寄こせ、アレルヤ!)」

「(ハレルヤ⁉)」

 

 はっきりと声が聞こえた瞬間、身体の主導権が奪われ、アレルヤの意識は深く沈んだ。

 身体の主導権を得たハレルヤはすぐさま操縦桿を握り締め、迫り来る紅梅色のティエレン「ティエレンタオツー」にキュリオスを正対させると、その機体に目掛けてGNサブマシンガンを撃ち散らした。

 

「ハァッハァッハァ! かかったな女ァ!」

『ッ……! 急に動き出した⁉』

 

 咄嗟の判断で機体を捻らせ、ビームの銃弾を回避しながら、ピーリスはキュリオスに向けて滑空砲を連射する。

 放たれた砲弾は正確にキュリオスの胴体に命中するが、ダメージは与えられなかった。

 

『少尉、一旦下がれ!』

『了解です、中佐』

 

 セルゲイ・スミルノフ中佐の命令に従い、ピーリスは即座に機体を後ろに跳躍させ、キュリオスの間合いから離れるが、機体が着地した瞬間の僅かな硬直を狙ったかのように、キュリオスは猛スピードで肉迫してきた。

 間合いに入ったキュリオスはGNシールドに内蔵された細身の剣「GNシールドニードル」を飛び出し、ティエレンタオツーの左腕に目掛けて突き出した。

 

『なに……⁉』

 

 突然の奇襲攻撃に対応できず、ティエレンタオツーの左腕が串刺しにされ、シールドクローに引き裂かれたうえ、ついでとばかりに蹴り飛ばされる。

 蹴り飛ばされたティエレンタオツーのコックピットが激しく振動し、ピーリスの身体は左右に激しく揺さぶられる。その隙にティエレンタオツーはキュリオスに地面に押さえつけられ、胴体を踏みにじられる。

 

「よう女ァ! あのクッソたれな研究施設にどれだけの数のガキが人体実験で死んだか、テメェは知ってるか?」

『貴様の言葉に耳を傾ける程、私は愚かではないぞ!』

 

 そう吐き捨てると、ピーリスは右手でキュリオスの脚を引き剥がそうとするが、うまくいかなかった。

 

『少尉はやらせん!』

『中佐⁉』

 

 次の瞬間、セルゲイの声と共に連続して放たれた滑空砲がキュリオスを命中し、機体のバランスを崩した。その隙に乗じて、ティエレンタオツーはキュリオスを蹴飛ばすようにして脱出した。

 それと入れ替わりでセルゲイの駆るティエレン高機動B指揮官型と、数十機のティエレン地上型から放つ滑空砲の嵐が、キュリオスに降りかかっていった。

 キュリオスは背中にある飛行形態時には機首となる部分を起こし、機体を覆うGNフィールドを展開させ、迫り来る砲弾を防ぐ。

 

 そのとき、ハレルヤの頭の中に声が響いた。

 

『(ガンダムのパイロット、その場から防御態勢を維持してください!)』

「あァ? なんだテメェは……⁉」

 

 そして数秒が経った後、遠い空の向こうから2つの熱線が真っ直ぐ、セルゲイの駆るティエレン高機動B指揮官型に向けて飛来した。

 あまりにも突然の攻撃に、セルゲイは避けきれずにその攻撃を受けてしまった。

 

『馬鹿な……超長距離射撃だと⁉』

 

 一直線に飛ぶ熱線はセルゲイ機の右半身を掠め、ビームの高熱と飛散した紫電がセルゲイの機体をぐずぐずに溶かしていく。右半身を失って、身動きが取れなくなったセルゲイ機を、ピーリスのティエレンタオツーは支える。

 

『中佐⁉ ご無事ですか!』

『私は無事だが、機体はもう動けん……』

 

 セルゲイの無事を確認し、安堵に胸を撫で下ろす間もなく、見えない敵からの砲撃が再び仲間を襲う。漆黒の夜空から放たれた赤色のビームの光軸に、仲間たちの機体が次々と撃破されていく。

 

『スミルノフ中佐! 我が隊はすでに壊滅寸前です! これ以上は……』

『やむを得ん、全機撤退しろ!』

 

 もはや、ここまでだ。これ以上の戦闘行動は、ただ兵を無駄死にさせるだけだ。

 見えない敵に不意を突かれ、部隊が壊滅寸前に追い込まれたセルゲイは、ピーリスと残存するティエレンと共に撤退していった。

 

 ハレルヤの窮地を救ったビームが飛来した方向からエクシアとヴァーチェ、そしてアンノウンの反応をEセンサーが捉えた。

 

「あのメガネの仕業じゃねえな……やったのはあのガンダムだな!(んじゃ、俺は寝るから、後はテメェに任せたぜ、アレルヤ……)」

 

 ヴァーチェに次ぐ大出力の砲撃が可能な機体、恐らくはセンサーに表示されたアンノウン……

 蒼き翼を持つガンダムだ。

 

「無事か! アレルヤ・ハプティズム!」

「ああ……なんとか。ところでティエリア、さっきの砲撃は一体……?」

『撃ったのは、私です』

 

 蒼き翼のガンダムからの通信が割り込んできて、コックピット内の通信ウィンドウにはパイロットと思わしき青年が映し出された。

 

「救援を感謝する……えっと、一つ質問していいか?」

『ええ、手短にお願いします』

「さっき僕に語りかけてきたのは、もしかして君か……?」

『そうです。どうやら、君も()()()()()を持つ人間のようですね……それはさておき、最後の1機は何処に?』

「僕と別れた後は、北にある渓谷地帯へと向かっていた」

 

 アレルヤと合流した後、4機のガンダムはロックオンの駆るガンダムデュナメスを救援すべく北にある渓谷地帯へと進路を取っていた。

 

 

 

 

 

 一方その頃、ロックオンはユニオン軍の第8独立航空戦術飛行隊と交戦を続けていた。

 

「指先の感覚が……!」

 

 迫り来るオーバーフラッグの編隊に、ロックオンはGNスナイパーライフルで迎撃するが、敵機は夜空で自由自在に動いて照準を絞らせず、長時間の戦闘で疲弊していたロックオンは弾を外してしまう。

 

「コウホウチュウイ! コウホウチュウイ!」

「AEUのヘリオンだと⁉ 包囲されたか……!」

 

 渓谷の出口を封鎖するように陣を構えたヘリオンの編隊は銃弾をばら撒き、デュナメスの退路を封鎖する。それに呼応するかのように、渓谷上空にいるオーバーフラッグス隊もリニアライフルで一斉攻撃を行った。

 デュナメスが足止めを食らった隙に、1機のフラッグが急に編隊から離れ、スラスターを全開しながら、猛スピードでデュナメスに接近する。

 ロックオンはすぐさまGNスナイパーライフルを連射するが、粒子ビームが尽く回避され、虚しく宙に消えていった。

 

「こいつの動き、見覚えがあるぞ……! まさか、アザディスタンの時の……!」

『抱きしめたいな、ガンダム!』

 

 真正面から接近していたフラッグは高速で低空飛行しながら変形し、リニアライフルを地に突き立てて、勢いのままデュナメスを張り倒していた。

 

「ぐあぁっ!」

 

 コックピットが激しく振動し、ロックオンは失神した。

 デュナメスを張り倒したフラッグは、両膝をついて動かないデュナメスの頭部を鷲掴みにした直後、そのパイロットは「ある言葉」を言い放った。

 

『まさに……眠り姫だ!』

 

 その正体はユニオンのトップガンであり、変態だった。

 

 

 

 

 

 それからしばらくが経つと、無力化されたデュナメスはリニアシールドを搭載した4機のヘリオンに鹵獲され、連行された。

 この時、グラハムは司令部との通信を試みるが、ノイズが走るのみで応答がない。何かに通信を妨害されていると判断したグラハムは、有視界通信で隊員たちに警戒の指示を出す。

 

 ノイズが徐々に増していき、全ての無線通信が遮断されてしまった。もしや他の3機のガンダムがこちらに近づいているのか、と思った矢先に、部下からの有視界通信が入ってきた。

 

『緊急事態です、グラハム上級大尉! 後方から接近する機影あり……こいつは、ジョシュアをやったあの蒼き翼の……うわあぁぁぁ!』

 

 突如、一筋の赤色の光軸が遠方から飛来し、グラハムに通信を送っていたフラッグの上半身をパイロットもろとも焼き尽くした。残った下半身は真っ直ぐ地面へと激突し、火球に転じる。

 

『来たか、新型のガンダム……なに⁉』

 

 赤色の光軸が飛来した方向に振り向くと、グラハムは驚きを隠せないように目を見開いた。

 こちらに接近してきたのは新型だけではなく、その後ろには確認済みの3機のガンダムが追随している。

 しかもその中には、自分の心を射止めた「近接タイプのガンダム」の姿を捉えた。

 

 同時に、グラハムはこの不毛な渓谷に多数のガンダムと巡り会えることを、女神のくれたチャンスと捉えた。ならば、望むのはガンダムとの心躍る戦いのみ……!

 

「ガンダムよ……この想い、今日こそ君たちに!」

 

 スラスターを全開にしたカスタムフラッグは、地に突き立てたリニアライフルを回収すると、力強く地を蹴って身を躍らせた。

 リニアライフルの射撃モードを「連射モード」に切り替えると、空に浮かぶフリーダムに目掛けて弾丸を撃ち散らす。

 

『太平洋での借りを返させてもらうぞ、蒼き翼のガンダム!』

「来るか、グラハム・エーカー!」

 

 スラスターを軽く噴かして、それを横ロールで回避したフリーダムはすかさずビームサーベルを引き抜き、真っ直ぐカスタムフラッグに肉迫し「バーチカル・スクエア」を放った。

 グラハムは咄嗟にプラズマソードを引き抜き、連続で振るわれる光刃を受け流す。青とピンクの光刃が激突し、三度、四度と干渉光を瞬かせる。

 

「全部受け流された⁉ やはり……強い!」

 

 ソードスキルの格闘プログラムによって繰り出された四連撃が全部受け流されたことに、悠凪は驚きつつも、グラハムの卓越した技量に納得と感心の意を示した。

 

『隊長を援護する! 撃ちまくれ!』

『『了解!』』

 

 ダリル・ダッジの呼びかけに応じ、11機のオーバーフラッグはフォーメーションを組み、リニアライフルでフリーダムに波状攻撃を仕掛ける。同時に、地上にいるヘリオン部隊もその銃口をフリーダムに向けた。

 銃弾が放たれたその瞬間、フリーダムはカスタムフラッグの下半身に目掛けて左足を蹴り上げ、その反動を利用して後退する。蹴られた衝撃がカスタムフラッグのコックピットを貫き、グラハムの体を激しく揺さぶられる。

 

『くっ……足癖が悪いな、ガンダム!』

 

 一瞬だけ意識を失いかけ、気がつくと翼を大きく広げたフリーダムが全砲門を開き、こちらにその銃口を向けていた。

 

「ターゲット、マルチ・ロック!」

『いかん! 全機散開!』

 

 即座に指示を飛ばすが、それを即座に対応できる隊員は殆どいなかった。迫る砲弾を高速機動で回避しながら、フリーダムは全砲門を斉射したのだった。

 連続で放たれた砲撃に、地上にいるヘリオン部隊が次々と撃破されていく。グラハムたちは回避だけで精一杯で、反撃する暇もない……動きを止めると、一瞬で撃墜される。

 

『なんなんだあの動き、普通のパイロットが耐えるはずが……うわあぁぁぁー!』

『クソ、避け切れない! うわあぁぁぁー!』

 

 砲撃が続いた約30秒、地上に展開しているヘリオン部隊があっけなく一掃され、2機のオーバーフラッグも回避に間に合わず、フリーダムの放つ光線に捉えられてしまい、撃墜された。

 こうして、オーバーフラッグスはまた2人のフラッグファイターを失った。

 

『くっ……ガンダムゥ!』

 

 堪忍袋の緒が切れたグラハムの怒鳴る声が、外部スピーカーを通じて戦闘区域に響き渡る。そう叫んだグラハムはリニアライフルを捨て、もう1本のプラズマソードを引き抜いき、スラスターを全開しながらフリーダムの懐に飛び込むが、その行く手は刹那の駆るエクシアに阻まれた。

 

「アレルヤたちの後を追え! こいつは俺に任せろ!」

『済まない……!』

 

 通信を済ませると、悠凪はアレルヤたちの後を追い、デュナメスの救援へ向かった。

 フリーダムが飛び去った後、GNロングブレイドを引き抜いたエクシアは、緑色のツインアイを輝かせ、猛スピードでカスタムフラッグに肉迫した。

 

「お前の相手は、この俺だ!」

 

 両機が鍔迫り合いになったその時、カスタムフラッグから外部スピーカーで声が発せられた。

 

『我が愛しのガンダムよ、君にも逢いたかったぞ!』

「また、この男か……!」

『どれだけのガンダムが現れようと、私の心を射止めたのは君……美しき光と共に我が眼前に降り立った君だ! あの日の甘美なときめきが、今の私の胸にある! そう……それこそが私をこうも突き動かす!』

「なっ、なんだこの男は⁉ 付き合っていられん、さっさと片付ける!」

 

 その喧しさに驚いた刹那は、即座に外部音声を遮断し、ユニオンの変態やその取り巻きたちとの戦闘を繰り広げ始めた。

 

 

 

 

 

 一方、フリーダムが地上のヘリオン部隊を一掃した直後、キュリオスとヴァーチェはデュナメスを救援すべく、別ルートでデュナメスの位置が確認された座標へと向かった。

 

「あれは……ロックオン! 今助ける!」

 

 デュナメスを視認したティエリアは操縦桿を握り締め、デュナメスをリニアシールドで拘束しているヘリオンに狙いを絞り、両肩に装備されたGNキャノンを一射した。粒子ビームの光条が闇を走り、寸分の狂いもなくヘリオンの背中に命中し、撃破した。

 他の3機はすぐさまヴァーチェの方に振り向くが、動きが止まったその瞬間、キュリオスのGNサブマシンガンから放つ光弾に撃ち抜かれ、相次いで火球に転じた。

 

 爆発の衝撃がデュナメスのコックピットを揺らし、失神していたロックオンが意識を取り戻す。

 

「……何が起きている?」

「キュリオス! ヴァーチェ! キテクレタ!」

 

 ロックオンはモニターから外の状況を確認する。オレンジハロの報告通り、キュリオスとヴァーチェが自機のすぐ傍にいる。同時に、両機からの通信が入ってきた。

 

『『ロックオン、無事か?』』

「ああ……おかげで助かったぜ、刹那はどうした?」

『ユニオンの部隊と交戦中だ、これより彼と合流する』

 

 来た道を戻ろうとするとき、3機のコックピット内に電子警告音が鳴り響いた。全方位から多数のモビルスーツが大きな波のように、こちらの位置に押し寄せてきた。

 その正体はヘリオン140機、アグリッサ10機、合わせて150機のモビルスーツで構成された大部隊だった。ヘリオンだけならなんとかなるが、アグリッサが10機を含んだ場合は、こちらにとって非常に分が悪い。

 

『馬鹿な……! まだあれだけの数がいるなんて!』

『僕たちを嬲り殺す気か⁉』

「このままじゃ、俺達は……!」

 

 突如、ハロが両目のLEDを点滅させながら「アンノウン接近中!」の報告を上げた。同時に包囲網の外から、尋常じゃないスピードで接近する1機のモビルスーツをEセンサーが捉えた。

 

「アオイツバサノガンダム! セッキンチュウ!」

「あの未確認のガンダムか⁉」

『来てくれたのか?』

 

 3人がフリーダムを目視したとき、こちらに押し寄せてきた敵機はすでにフリーダムから放たれた砲撃に次々と撃破されていく。その動きはどっても綺麗で、まるで夜空に舞う機械仕掛けの天使のようだった。

 この光景を目にしたロックオンは、驚きが隠せないように口を開き、もう全部こいつ1機でいいんじゃないかな? と思った。

 

『これからは敵の足止めをしている彼と合流する予定だったんですが……もうその必要はなかったようです』

「どういうことだ⁉」

『すでにこちらに向かっています、その後ろに敵機の反応がありました』

 

 悠凪がそう言った後、エクシアとそれを追いかけてるフラッグの編隊を4人が視認した。ティエリアは先頭のカスタムフラッグに目掛けてGNバズーカを一射し、ロックオンもGNスナイパーライフルを連射する。

 

 飛来した強烈な粒子ビームに阻まれたことで、オーバーフラッグズの隊員たちは追撃を断念するも、先頭のカスタムフラッグはGNバズーカの一撃を横ロールで回避し、すぐさま空中変形「グラハム・スペシャル」を行う。

 

『突出し過ぎです! グラハム隊長!』

『隊長ぉ!』

 

 隊員の呼びかけに耳を傾けず、プラズマソードを引き抜いたカスタムフラッグは急加速しながらエクシアに猛接近した。

 相対距離は50m以下、回避は間に合わない。そう判断した刹那はGNロング・ショートブレイドを引き抜き、急接近するカスタムフラッグにエクシアを正対させた。

 

 大きく振るわれるプラズマソードをGNショートブレイドで捌きながら、刹那はその右手に目掛けて斬撃を繰り出す。咄嗟の判断で機体を捻らせるグラハムだったが、躱しきれずに右手が切断され、手にしたプラズマソードもこぼれ落ちてしまった。

 

『それでこそ、私が生命を懸けて恋焦がれるだけの相手だ!』

「くっ……しつこい!」

 

 宙を舞うプラズマソードを左手で掴み取り、再びエクシアに斬りかかろうとするも、今度はフリーダムのビームライフルから放つ光条によって阻まれた。気がつくと、前方には5機のガンダムが集結して、こちらに武器を向けていた。

 

『隊長ぉ! ここは後退を!』

『AEUから提供された無人のヘリオンはすでに全滅です! それに周辺区域の友軍が撤退を開始しています! 我々でだけでは勝ち目がありません!』

『ここは引く勇気が必要か……全機撤退せよ!』

 

 半壊した部隊で5機のガンダムに戦いを挑む無謀な人間はいない。

 それに、これ以上貴重なフラッグファイターを失うわけにはいかない。そう判断したグラハムは隊員たちに撤退指示を出した。

 

『では、また会おう! 我が愛しのガンダムたちよ!』

 

 そう言い残して、グラハムは隊員たちと共に作戦空域から離脱した。

 太平洋方面へ向けて脱出した後、悠凪はコンソールを操作し、4機のガンダムに有視界通信を送った。

 

「全員無事で何よりです……さて、場所を変えて話し合いましょう……」

『ちょうどいい、我々も貴方に聞きたいことがある、話し合いましょう』

 

 ティエリアがそう返事を告げると、王留美の別荘にいるスメラギたちに連絡したのだった。

 

 後編へ続きます。

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