アムールトラ/ビーストのきせき   作:今日坂

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第13話 ◉2人の軌跡

◉2人の軌跡

かばんさん達はいなくなったビーストを探して、ジャパリバスに乗ってジャングルを訪れた。しかしゴリラ達に話を聞いてみても、見ていないという。

 

ゴリラ「ただおかしな事があったんだ。キュルルさんの絵から、私達にそっくりな黒い一つ目のセルリアンが出てきて、どこかへ走っていったんだ。」

 

かばん「ここでもか…。実はキュルルさんと出会った他のフレンズからも、同じような報告が来てるんだ。私達はこれから各エリアを回って、ビーストを探しながら話を聞いてみる。もしかしたら、パークの危機が迫っているのかもしれない。」

 

その言葉を聞いて、ゴリラが考え込みながらこう言った。

ゴリラ「パークの危機…、私達も一緒に行って良いだろうか。何か力になれるかもしれない。」

 

かばん「いいよ、乗って!」

 

それからかばんさん達はジャパリバスに乗って、各地のフレンズ達に話を聞きながら、キュルル達の来た道を逆にたどった。休憩も挟みつつモノレールの線路に沿って進んで、翌朝サバンナに到着した。

 

各エリアを訪れるたびに「一緒に行きたい!」と申し出たフレンズを乗せたため、その頃にはバスはすし詰め状態となっていた。

 

 

話をまとめると、フレンズ型セルリアンはセントラルパークに向かっているらしい。またアヅアエンのバンドウイルカとカリフォルニアアシカは、海のご機嫌がどんどん悪くなっていると言っていた。これは海中のセルリウムが増えているという事だ。

 

かばんさんが考え事をしながらハンドルを握っていると、空から甲高い笛の音と共に誰かが舞い降りてきた。

カルガモ「そんなに速く走ったら危な…、わあ!?フレンズさんがいっぱい!」

 

お互い自己紹介をしてから、かばんさんはここまでの経緯を説明した。カルガモの話によると、やはりキュルルの絵から黒くて一つ目のカルガモ型セルリアンが現れたそうだ。

パークの危機と聞いて、彼女も同行してくれる事になった。そして急いでいると伝えると、空を飛びながら道案内をしてくれた。

 

しかし、駅のホームにも割れた岩のある水辺にもビーストは見当たらなかった。かばんさんは地図を片手に、カルガモにこう尋ねた。

かばん「このあたりに頑丈そうな建物があるはずなんだけど知らないかな?もしかしたらそこにビーストがいるかもしれない。」

 

カルガモ「キュルルさんが眠っていたという所でしたら知ってますよ。しっかりついてきてください。」

 

カルガモについてゆくと、隔離施設に到着した。建物のあちこちに大きな穴が開いている。

 

かばん「おーい、誰かいないかー?」

 

かばんさんは呼びかけてみたが、何の反応もなかった。どうやらここにもビーストはいないらしい。

 

 

かばんさん達が中に入ってみると、そこにはキュルルが眠っていたセルリアンの結晶とコンピュータ、そしてビーストが入っていた檻があった。

 

鉄格子は内側から破られていて、床にはぬいぐるみがたくさん並んでいる。かばんさんは、その中でひときわ目を引く大きなトラのぬいぐるみを抱き上げた。

 

結ばれているリボンには、「忘れないよ」「また会おうね」などの文字とフレンズの手形がびっしりと並んでいた。

 

かばん「アムールトラは、本当にみんなから愛されていたんだな。そして長い眠りから目覚めた後、ここをこじ開けて結晶に向かっていった。けど何か問題があって壊せなかったんだ。」

 

そして彼女はここを出た後、たった一人でパーク中を駆け回り、いつしかビーストと呼ばれ避けられるようになった。

 

それから結晶も触ってみた。ひんやりしていて、軽く叩くとキンキンと硬い音がした。

 

かばん「その後で、キュルルさんがここで目を覚ました。それから外に出て、そこで出会った2人と旅を続けている。」

 

誰からも愛されていたのに一人ぼっちになってしまったビーストと、一人ぼっちで生まれたけれどみんなに受け入れられたキュルル。同じ場所で過ごした2人の今は、あまりにも対照的だった。

 

こうしてしばらく思いを巡らせた後、かばんさんはこちらの様子を伝える為、キュルルと連絡を取る事にした。

かばん「ラッキーさん、キュルルさんがどこにいるか分かる?」

 

ラッキーさん「せんとらるぱーくニ向カッテイルヨ。」

 

かばん「いけない、止めないと!キュルルさんに繋いで。」

 

ラッキーさん「ワカッタ。」

 

 

かばん「もしもし、キュルルさん聞こえる?」

 

すぐにキュルルから返事がきた。

キュルル「ザッ…ばんさん?…したんですザッ。」

 

かばん「よく聞いて。大変な事が起こってるんだ。もしかしたらパークの危機かもしれない。私はフレンズ達とセントラルパークに向かうよ。危険だから、キュルルさんは安全な所にいて。」

 

キュルル「ザザッ…ビーストを……ザッ…セントラル…ザザ。」

 

かばん「ビースト?ビーストがそこにいるの?」

 

雑音が酷くて言葉が聞き取れない。かばんさんは通話を諦めた。

 

ラッキーさん「アノラッキービーストハ、疲レテイルミタイダヨ。何カ大変ナ作業ヲシタンジャナイカナ。」

 

かばん「急ごう。ああ、こんな事になるなら、ビーストの事をもっと話しておけばよかったなあ。」

 

かばんさんは急いで建物から出ると、フレンズ達を連れてバスを走らせた。

 

地殻変動により、セントラルパークは海に沈んでいる。

バスでは調査が難しいと考えたかばんさんは、一旦アヅアエンへ行き、そこから船で向かう事にした。




かばんさんがセントラルパークに向かうまでの経緯を書きました。
かばんさんはビーストがいなくなっている事に気付いた後すぐ探しに出掛けたのですが、ビーストとは逆の方向に向かったので、会う事はできませんでした。


いろいろと悩んだ話でした。
まずゴリラの口調を考えながら会話をさせてみると、かばんさんと同じものになってしまいました。これはセリフに名前が書いてあるので区別はつくと思い、そのままにしました。

そして時間です。次の話を書いてからこの話を書き始めたので、キュルル達とビーストの時間軸に合わせるのが大変でした。ずれると全員集合がクライマックスに間に合いません。それぞれのおおよその時間帯を書き出して、なんとかはめ込みました。

時間は決まりましたが、今度は隔離施設でかばんさんに何をやらせるかが問題でした。漫画版と異なり、かばんさんは研究所の資料で、ビーストについて既に多くの事を知っています。パークの危機が迫っている中、ここに長く留まってコンピュータから情報を得る必要はありませんが、無駄足にするわけにもいきません。

そこで思いついたのが、この小説のタイトルである『きせき』です。これには奇跡と軌跡の意味が込められています。なのでここでは、過去を振り返りつつ、ビーストとキュルルの軌跡についてかばんさんに思いを語ってもらう事にしました。そしてこの話の小タイトルも決まりました。

キュルルとの通信がうまくいかなかった理由については、最初は2人の距離が離れすぎていたからとしていましたが、後にキュルルのラッキービーストが疲弊していたからとなりました。



いよいよ、ビースト、キュルル達、かばんさん、それぞれが異なる思いを抱えつつ、セントラルパークに向かいます。バラバラに始まった旅が、一本の同じ道を歩き始めます。
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