盛大なクラッカーの音が響いた。
「それでは皆さん!最上さんの改二実装を祝って、かんぱーい!!」
そして、吹雪の音頭に合わせて、勢いよくグラスがぶつかる。夜中、赤城の部屋にて、最上改二の記念パーティーが行われている。ちなみに赤城の部屋が選ばれた理由は、単に広いから。
パーティーと言っても、メンバーは5人。主役の最上とパーティーに浮かれる吹雪、北上と離れて少し不機嫌な大井に、お酒が飲めて上機嫌な伊勢と、ご飯が食べれて上機嫌な赤城。
「みんな、わざわざボクのために、その、ありがとう」
照れなのかお酒のせいなのか、少し顔を赤らめて言う最上。
「いえ!仲間の改二を祝うのなんて、当然のことですよ!我ら5人、進水日、時は違えどもまるで姉妹艦のようにこれからも仲良く、その、一緒に、過ごして…いく…いくんれす……」
呂律の回っていない吹雪。
「もう吹雪酔ってる?」
「…猛吹雪?何を言ってるんですか伊勢さん!」
「伊勢、もうすでにだいぶ酔ってるみたいよ。だから吹雪のぶんの料理も頂いてしまいましょう」
「はあ…北上さん…」
実に、カオスである。酔ってる吹雪に大食らいの赤城、そして大井。まともなのが伊勢と最上の2人のみ。過半数がまともでない。
片手にジョッキを持ったまま、吹雪が立ち上がり、
「実は最上さんに、私達4人からプレゼントがあるんれす!」
と言った。
「えっ!ボクにかい?」
「もちろんです!まずはこの吹雪、先陣を切ってお渡しします!」
ちょっと取りに行ってきます、そう言って吹雪は、部屋を出ていった。
「ああいうのって、普通、既に持ってきておくもんじゃないのかしら」
と、大井。
「まあまあ、吹雪ちゃんは良い子だから。ちょっと抜けてるとこがあるだけで」
と、それをなだめる伊勢。
「ボク、三隈や鈴谷たちにはよくプレゼントは貰うんだけど、妹以外からプレゼント貰うことなんてめったにないから、少し緊張しちゃうな」
と、頭を掻きながら言う最上。
「妹さんから大事にされているのも良いことですよ、最上さん。あ、そこの唐揚げとってください」
箸は依然として置かない赤城。
「おまたせ…しました……」
息を切らせながら吹雪が戻ってきた。おそらく、走ってきたのだろう。
「あなたもしかして自分の部屋まで取りに行ってたの?」
「?はい。プレゼントはサプライズで渡すつもりだったので、持ってきては最上さんにバレてしまうと思って」
はあ、とため息をついて、大井は
「…それなら鞄に入れてくるとか、そこの押入れとか物陰にこっそり隠しておくとか、すればよかったじゃない」
と言った。吹雪は、その手があったか、と感心した様子。しっかり酔っ払っているようだ。
「プレゼントは、これです」
取り出したのは、お守り。緑色の布地に、金色の字で『交通安全』と書かれている。
「…交通安全?」
「なぜ…?」
どういう意図なのか、大井が吹雪に問う。
「それはですね…」
酔っ払って、なおかつ呂律も満足に回っていない吹雪の説明は、なかなかに難解なものであったため、簡潔に説明すると、
「えーと、つまり、ボクと三隈がよくぶつかってるから、それのために?」
「そういうことです!」
そういうことだ。交通安全の効力は、はたしてどこまで効き目があるのだろうか。
「ありがとう、大切にするよ」
最上は、お守りを大事そうに眺めたあと、ポッケにしまった。最上、良い子。
「じゃあ、次は私が渡そうかしら」
そう言って伊勢は、バッグからプレゼントを取り出した。
「これは…瑞雲?」
「そう、でもただの瑞雲じゃないわよ」
「押すと変形したりするんでしょうか」
「吹雪はちょっと静かにしてて」
ちょっと裏を見てみて、と言われ、最上が裏を確認すると、そこには日向のサインがあった。
「あ、師匠のサイン!」
「そう、あなた日向と仲いいでしょう。だからそれ、日向の使ってたものよ」
「え、そんな、大丈夫だったんですか」
「最上のため、って言ったら日向、快くオッケーしてくれたわよ」
「あの、ありがとうございます!」
最上は驚きながらも、喜んでいる様子。目を輝かせながら、瑞雲をポッケにしまった。
ポッケの構造どうなってるんだ。
「じゃあ、次は私が」
赤城が挙手をする。そうして、鞄の中から搭載機の形をした、緑色の包装紙で包まれたプレゼントを取り出した。
「部屋に帰ってから剥がしてください。何が入ってるかはお楽しみということで」
「は、はい…」
この場にいる赤城以外の全員は心の中でこう思っただろう。
(((((絶対に瑞雲だ…)))))
プレゼントが被っているのを言い出しづらかったのだろう。幸いにも、ここにいる皆は『空気を読む』ことができるため、口には出さない。
「そ、それじゃあ最後は私が渡そうかしら」
順番的に最後に回ってきたのは大井。鞄からゴソゴソとプレゼントを取り出す大井を眺め、吹雪と伊勢はコソコソと話す。
「まさか酸素魚雷とかじゃないですよね」
「流石に…いや、ありえるかも」
そんな不安とは裏腹に、大井のプレゼントはヘアピンであった。
「ほら、あなたってオシャレとかに興味なさそうでしょ。その、せっかく整った顔立ちなんだから、オシャレに気を使ってみてもいいんじゃないかと思って…」
「!ありがとう。大井のこと、今まで気難しい娘かと思ってたんだけど、ほんとは意外と優しいんだね」
「ち、違いますから!」
「照れ隠しよね」と伊勢。
「照れ隠しですね」と吹雪。
「照れ隠しでしょうね」と赤城。
「うっさい!」
最上は、嬉しそうに
「せっかくだから今着けてみるね」
と言った。
「…どうかな?」
「めちゃくちゃ似合ってるじゃねーか!!」
思わず、声を出してしまった。
「「「「「!?」」」」」
5人の視線が、いっぺんに自分の隠れている押入れに向く。
近くにいた伊勢に、思いっきり押入れの戸を開けられる。
「…」
しばし無言の時が流れる。6秒ほど経ったとき、大井が鞄の中から酸素魚雷を取り出し、こっちに向かってきた。
「…提督?乙女の会話を盗み聞きしたら…どうなるかわかってますよね?」
喉元に酸素魚雷を突きつけられる。
「最後に言い残すことはありますか?」
「あー…えっと……」
「最上、改二実装おめでとう」
盛大な爆発音が響いた。