俺だけにウマ娘のステータス画面が見えている   作:酒池肉林太郎

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前回までのあらすじ

起きたらグラスが家にいた


グラスワンダー①前編

ただの成り行きです、と。

グラスワンダーは静かにそう答えた。

 

「……そうか」

 

自分でもか細いと思えるほどの相槌を打って、掛け時計へと視線を移す。短針は既に17時を回っていた。

 

おおまかな経緯はこうだ。

桐生院さんの担当している選手のハッピーミークが、練習中転んで怪我をした。怪我そのものは膝を擦りむく程度の軽度なものだったが、大事を取ってその日は練習を一旦切り上げ、桐生院さんはハッピーミークと共に近くの外科へと向かうことにした。

 

その折に偶然現れたのがグラスだった、らしい。

日頃桐生院さんに世話になっていたとかどうとかで、事情を聞いたグラスが代わりに俺の見舞いに来る運びになったそうだ。

 

その旨の電話が桐生院さん本人から掛かって来たのが数分ほど前の話。よほど申し訳ないと感じていたのか、しばらく慌ただしい謝罪を聞くことになったが、別に誰かが悪い訳でもない。強いて言えば風邪を引いた俺が悪い。

 

しかし、よりにもよって何故グラスが俺の部屋に来る。本人は成り行きと言っていたが偶然にしては出来過ぎだ。ただ、あり得ないレベルの偶然が起きない限りグラスが俺の部屋に来ないというのも事実ではある。

 

しかし気まずい。

 

グラスが落ち着かなかった様子は最初だけの話。

どこか澄まし顔で佇む今の彼女に動揺の色は見えない。サイドテーブルに置かれたリンゴのすり身からは「さっさと食え」とでも言わんばかりの圧さえ感じる。尤も本人にその気はないのだろうが。

 

流石に何を喋ればいいのか分からずひたすら沈黙していると、意外にも先に口を開いたのはグラスの方だった。

 

「…珍しい、ですね、貴方が風邪を引くなんて」

 

「そうだな」

 

「あれだけ健康には気をつけていたのに」

 

確かに本来選手の模範であるべき俺が体調を崩すなど言語道断ではある。幸い休暇中の出来事だったので大ごとにはならなかったが、本来なら信用を落としかねない失態だ。

 

「取り敢えず、必要なものは買い揃えておきました。念のため薬も。レシート置いておきますので、精算は後日桐生院トレーナー経由でお願いします」

 

「悪いな」

 

「いえ」

 

抑揚のない声で、グラスが小さく首を振る。

グラスは基本的に物腰の柔らかい優しい少女だが、俺の前では大体こういう塩っぽい対応だ。

 

トレセンで再会して以来、ずっとこうだ。

いや、こんな関係になったのはアマチュアの大会を見に行く約束すっぽかしてからだから確か約一年か。あの時は碌な別れも告げずに日本に帰ったのも良くなかった。

 

だがここに来たということは満更縁を切りたいという訳でもないのだろうか。嫌いな奴の看病なんて俺だったら来ない。

 

…そういえば、こいつトレーナーがまだいないんだったな。ちゃんと訓練出来ているのか。

 

ふとそんな疑問が俺の脳裏を過ぎって、気がつけば自然と目を凝らしていた。

 

【グラスワンダー】

 

【調子】

普通

【体力】

76/100

【ステータス】

スピード:D

スタミナ:E

パワー :D

根性  :E

賢さ────

 

「トレーナーさん」

 

こちらの雰囲気が変わったのを察したのか。

穏やかながらもどこか冷えた印象のグラスの声が、俺の集中を乱すように鼓膜に噛み付いた。

 

「何か、私の顔についていますか?」

 

「…いや」

 

勝手に見るな、と。

俄に微笑む彼女は言外にそう訴えている気がした。

悟られないようにしたつもりだったが相変わらず鋭い。まあ、今更俺がこいつの心配をする資格もないか。

 

「…ああ、そうだ。グラス、お前に渡すものがあったんだ」

 

ふと昨日の件を思い出す。

静かにベッドから立ち上がり、冷蔵庫の中に保管しておいた包みを取り出す。といってもよく見るような洋菓子だが。

 

静かに土産を差し出すと、グラスはどこか怪訝そうに眉をほんの少し顰めた。

 

「なんですか、これは」

 

「昨日合宿場の下見で長野に行ったから、その土産だ」

 

「…?タキオンさんに渡せばいいのですか?」

 

「なんでそうなる。お前の分だ」

 

「私に?」

 

「ああ」

 

頷くと、グラスは神妙な顔のまま沈黙した。

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

包みを見つめたまま、グラスはピクリとも動かなくなった。どういう感情なんだ、この顔は。

 

「すまん。要らないなら────」

 

「…ありがとうございます」

 

俺の声にかぶせるように、グラスが静かに土産を受け取る。結果的には受け取ってくれたが、流石に突拍子が無さすぎたか。

 

いい機会だし、この流れのまま今までの無礼を謝っておくか。グラスとここまで接近出来るチャンスが今後現れるとも限らない。今度合宿で面倒を見る機会はあるが、こいつがそれを蹴る可能性も捨て切れない。

 

今のところ小声で死ねって言って来る気配も無いし今日はかなり機嫌が良さそうだ。

 

謝るなら今だな。

今しかない。

 

「グラス。今年の1月頃、お前からの電話を無視し続けたことがあっただろ」

 

「はい?」

 

「あの時もそうだったが、今まで────」

 

「トレーナーさん」

 

鋭く俺の名を呼ぶその声が、彼女の雰囲気が変わったことを如実に知らせた。

 

「私は今、桐生院さんの頼みで、トレーナーさんの看病に来ています」

 

グラスは貼り付けたような微笑みを浮かべて、あくまで穏やかな語調のまま続けた。

 

「取り敢えず今日は、それだけにしませんか?」

 

この笑い方は本気で怒っている時のそれ、のような気がする。

このまま謝って今までの無礼を清算したいところだったが、本人は謝罪すら許さないということだろうか。

 

「…そう、か」

 

グラスの方から望んで俺に近づいて来たと思い込んでいたが、普通に桐生院さんへの義理で仕方なく嫌々看病に来た線が濃厚になって来た。やはりここに来たのは偶然かも知れない。

 

「それよりもトレーナーさん。今更ですが、何かお腹に入れませんか?もし宜しければ、こちらを」

 

まるで何事も無かったかのように、盆に載せられたりんごのすり身の皿を掌で指し示す。別段食欲があるわけでもないが、せっかく作ってくれたんだし、喉も乾いていたので食っておこう。何かしていないと沈黙が余計に際立つ。

 

そこから先、お互いしばらく無言だった。

皿の中身を片付けている間、グラスはただじっと俺を無表情で観察していた。

 

結局、グラスがどういう心境でここに来たのか分からずに今日は終わるだろう。なまじ意識が高いだけにやはり感情が読みにくい。

 

それとも俺がただ感情の機微に鈍いだけで、普通は分かるものなのだろうか。

 

「あの、トレーナーさん」

 

グラスが再び口を開いたのは食い終わった瞬間だった。

 

「何か、して欲しいことはありますか?」

 

「え?」

 

質問の意味が分からず、思わず当惑の声が漏れた。

 

「洗濯、とか」

 

「あ、ああ…」

 

家事か。

確かにこのまま風邪が続くとも限らないが、かと言って手伝ってもらうほど不精している訳でもない。

 

「今は別に溜まってる家事はない。大丈夫だ」

 

「そう、ですか…」

 

「お前も忙しいだろうからそろそろ────」

 

帰宅を促そうと言いかけて、その時初めてグラスが俯き気味に目を伏せていることに気付いた。

 

「どうした?」

 

「…トレーナーさんは、何故この学園に就職したんですか?もう続ける意味なんて無いのでは?」

 

唐突だった。

おおよそ予想していなかった問い掛けに、少しだけ言葉が喉に詰まった。

 

「俺は…」

 

何故今、そんな事を俺に聞く。

 

「…俺はトレーナーになる為に海外の大学院まで進学した。その俺がトレーナーになることになんの不自然がある」

 

「貴方は別に、トレーナーになりたくてなった訳ではないでしょう?」

 

グラスは俺と目を合わせないまま淡々と続けた。

 

「ただそうすればあの人が────」

 

「グラス」

 

自分でも驚くほどに、俺の声は硬く強張っていた。

 

「お前にはそう見えたのか?」

 

そこで初めて俺はグラスを正面から見据えた。

傷口に触れられるような痛みに耐え切れず、威嚇するような視線で。

 

グラスは俺と目を一瞬だけ合わせると、微かに瞳を揺らしてまた顔を伏せた。

 

「…すみません。口が過ぎました」

 

「別にいい。前、ルドルフにも似たようなことを言われた」

 

つまり側から見ればどこかやる気のない危うそうな奴に見えるということだ。

 

「………………………ルド、ルフ?」

 

よほどその名前にピンと来なかったのだろうか。

顔を伏せたままグラスが聞き返す。

心なしか震えた声で。

 

「生徒会長のことを言っているのですか?」

 

「それ以外いないだろ」

 

「珍しい、ですね。あ、貴方が、そこまで他人と距離を縮めるなんて」

 

確かにアメリカにいる頃、名前を呼ぶくらい親しくなったウマ娘はグラスだけだった。今思えば無駄に壁を作る変な男だったが。

 

「俺だってもう学生じゃない。いつまでも無愛想じゃいられないだろ」

 

いや、それは今も大概か。

…そもそも何故俺は中等部の生徒なんかに本音を吐き出しているんだ。

 

「……………………まあ、この学園は他と比べても、特に端麗なウマ娘も多いですからね」

 

割とストレートに棘のある言い方だ。

よく分からんが知らない間に怒らせたらしい。

取り敢えずもう一度寝るか。

寝たらこいつも帰るだろう。

実際まだ少し眠い。

 

「…俺はもう少し寝る。そんなに具合も悪くはないから、もう帰っても大丈夫だぞ」

 

「………………取り敢えず、寮の門限まではいます。一応引き受けた身ですから」

 

俺は「そうか」と相槌を打って、ゆっくりとテーブルを指差す。

 

「鍵はテーブルにあるから、帰る時ポストに入れといてくれ」

 

「分かりました」

 

それが彼女との最後の会話となって、しばらくして俺はまた眠りに落ちた。

 

 

トレーナーが静かに寝息を立て始めたのを確認してから、グラスは息を殺しながら彼の側へと身を滑らせた。

 

「………貴方も、人並みに眠るんですね」

 

真上から寝顔を覗き込みながら、グラスは独りごちた。

 

「トレーナーさん。一応、悪いとは思ってくれていたんですね。てっきり私…」

 

勝手に嫌われたものだと思い込んでいた。

ならいっそこちらも、というのが事の発端だった、ような気がする。

 

いや。

発端は、ただの嫉妬か。

 

「…でも、普通そう思うじゃないですか。あれだけ念入りに約束してた大会の応援には結局来なかったし、心配して電話したのに一度も出ないし、トレセンで私があんなに冷たく当たっても、全然興味なさそうな顔をして」

 

思えば、確かに彼から直接拒絶の言葉を聞いた訳ではない。電話に出なかったのは、よく考えれば出られるような精神状態ではなかったからだ。

 

「トレーナーさん。別に私のこと、嫌いになった訳じゃなかったんですね」

 

あくまで囁くように、グラスは独り言を続けた。

 

「さっきはごめんなさい。なんだかよく分からなくて、変な意地を張ってしまいました。私って、意外と馬鹿だったんですね」

 

素直に許せば良かった。

彼がここまで下手に出る機会などそうそうないだろう。

 

「ねえ、トレーナーさん。まだお仕事続けるつもりなんですか?」

 

今日ここに来た理由はそこだった。

グラスは彼の人柄をそれなりに理解しているつもりだ。

それ故に何となく分かる。

今この男は、多分無理をしながら働いていると。

 

「最初は辞めるつもりだったと、貴方のご友人から聞いていたのですが…」

 

グラスは少しだけ前屈みになりながら、更に顔と顔の距離を数センチだけ縮めた。

 

「一体誰の口車に乗せられたんですか?足の弱い選手でも見つけましたか?この前ナイスネイチャさんの勉強も見ていましたよね?そんなことをする義理なんて別に無いんですよ?どうして他の娘にはそんなに優しいんですか?」

 

まだ眠りの浅い今ならば、小声でもこれだけ喋ればあっさりと眠りから覚める可能性が高い。その事実に心臓を加速させて尚、グラスが口を閉ざすことはなかった。

 

「あんなに辛そうな顔をしてまで、まだここにいる必要があるんですか?」

 

大方、折に触れて彼女との思い出でも頭に過るのだろう。その辺りはグラスにとってはまだ理解が及ばない感情だが、観ていればなんとなく分かる。

 

「ねえトレーナーさん。どうしてスズカさんの担当になろうと思ったんですか?」

 

グラスの指先が彼の顔に伸びようとしたその時、インターホンのベルがゆっくりと鳴った。

 

来客だ。

グラスはしばしの間逡巡して、リビングのモニターに映る訪問者を確認する。

 

そこには、サイレンススズカの姿が映っていた。

 

「………っ」

 

ほんの少しだけ息を呑む。

彼女も看病か何かだろうか。

 

だが彼女が来ることはトレーナー本人からは聞いていない。彼が訪問のメッセージを見逃していたのか、それともグラスに伝えることを忘れていたのか。

 

彼の体調不良がグラス以外に漏れているとすれば、やはり桐生院トレーナーからだろうか。それとも事前に本人に教えてもらったのか…。

 

恐らく前者だ。担当に弱みは見せるような真似はしない。偶然の重なった結果だろう。つまるところグラスと似たような流れでここに来ている可能性が高い。

 

どちらにせよ桐生院トレーナーから正式に看病を任された身だ。一応、彼の友人であることは間違いない。留守を預かるのも仕事の一つか。分かりやすく説明すれば大事にはならないだろう。多分。

 

グラスは眠っているトレーナーを一瞥して、玄関へと向かう。

 

しかし、女子学生が夕暮れに堂々と成人男性の家に訪ねてくるなどあまりにも不健全と言わざるを得ない。

 

グラスは自分の現状を棚に上げながらそう思った。

 

 

「え?」

 

扉から現れたグラスを目の当たりにして、サイレンススズカは目を丸くした。

 

グラスにとってはおおよそ予想していた通りの反応だ。手に下げているビニール袋は見舞いの品か何かだろうか。

 

取り敢えず手短に今の状況を説明してこれを受け取ったら帰って貰った方がいいだろう。

 

「あ、え?貴女、確かスペちゃんの…?あれ?え?な、なん…で」

 

「ああ、スズカ先輩。誤解しないで下さい」

 

「え、えぁ、で、でも、なんで、その…」

 

「トレーナーさんの体調が悪いから、買い物を代わりにやってあげただけなんです。本当は桐生院トレーナーがやる予定だったそうですが、急用が入ったみたいで、私が代わりに」

 

「あ、ああ…。そ、そう、なの…?」

 

「そう、偶然なんです〜」

 

事実、あの場に偶然居合わせたのは本当だ。

 

「スズカさんも、彼のお見舞いに?」

 

「そ、そうなの。風邪を引いたって聞いて。最近なんだか忙しそうだったから。日頃のお礼も兼ねて」

 

「分かりました。お見舞いの品は本人に渡しておきます。どうもありがとうございました」

 

「………………………そ、そう、ね…」

 

スズカは歯切れの悪い返事をして、そっと袋を差し出した。心なしか手が震えている。

 

せっかく来てくれたのに門前払いは流石に酷だろうか。当たり前のようにさっさと帰そうとしているが、大方彼女もまた彼を一目見に来たのだろう。にも関わらず家に着いたらよく知らない女が出て来て帰らされるのは、少々可哀想な話か。

 

いつものグラスワンダーならこういう時、果たしてどうするのだろうか。

 

「そうだ、スズカさん。もし宜しければ、なんですが」

 

「え?」

 

「実は私、看病も兼ねて来ているんですけど、スズカさんも手伝って頂けませんか?私一人では少し不安で…」

 

「え、で、でも…」

 

「トレーナーさんの担当のスズカさんなら、彼のことも色々とお詳しいと思いますので」

 

「そ、そう……ね。うん、その方がいいかしら。分かったわ」

 

 

年上の異性の部屋に入って緊張でもしたのだろうか。

サイレンススズカを部屋に通すと、露骨に落ち着かない様子で目線を泳がせていた。

 

「あんまり物がないのね…。トレーナーさんらしいわ」

 

そこは同感だった。

必要最低限のものだけがある簡素な部屋だ。

娯楽に関するものが置かれていないところが特に彼らしい。

 

「そうですね。仕事以外は、あまり関心のない方でしたから」

 

「……詳しいのね」

 

「私がアメリカのウマ娘養成機関にいた頃、サブトレーナーとして一時期。本当に顔見知り程度なので、スズカさんの方がお詳しいと思いますよ」

 

「そ、そう、かしら…」

 

リビングのテーブルを一つ拝借して、グラスが先ほどまで腰を据えていたスツールの隣に並べる。

勝手に客人を上げたとなれば彼は怒るだろうか。

 

スズカは小さく会釈して、依然として寝たままのトレーナーの顔を興味深そうに覗き込んだ。

 

「…………この人も眠るのね」

 

スズカの彼に対する印象はグラスと近いらしい。

どうやら徹底して仕事に専念する姿勢はアメリカにいた時とさほど変わりはないようだ。

 

「そういえばスズカさん、この前新聞に載ったそうですね」

 

「え?そうなの?」

 

「はい。デビュー戦も、この前のマイルも、大差での勝利だったと聞きました。憧れます」

 

「…トレーナーさんのおかげなの。細かいところまで、とてもよく見てくれるから」

 

確かに彼が見れば飛躍的な成長も望めるだろう。

素直に言うことを聞けば、の話だが。

一時期調子を落としていたと聞いていたが、この態度から見るに上手く回っているのだろう。

 

「ところでスズカさんは、どういう経緯でトレーナーさんと知り合ったんですか?」

 

「…2月ごろ、偶然学園で出会ったの。その頃は一番調子が悪い時だったから、とにかく闇雲に練習していたら、突然トレーナーさんに『走り方が合ってない』って声をかけられて…」

 

大方、思ったことがそのまま口に出たのだろう。

彼が他人に対して無闇に干渉するとも思えない。

 

「トレーナーさんはそのまますぐに立ち去ろうとしたけど、私が思わず引き留めたの。話を聞けば、スランプから抜け出せる気がして」

 

「それで?」

 

「そして、その、ええと…。トレーナーさん、本当は私の担当になるつもりはなかったらしいんだけど…」

 

不意にスズカは歯切れが悪くなった。

何やら口止めされていることでもあるのだろうか。

大方、本来彼がこの学園に来るつもりはなかったという辺りだろうか。

 

「彼にスズカさんの熱意が伝わった、ということですね?」

 

「そ、そうだったらいいんだけど…」

 

「きっとそうですよ。アメリカにいた頃から、ちゃんと頑張れる選手に惹かれるような方でしたから」

 

思い当たる節があったのかどうかは知らないが、スズカはグラスの言葉で仄かに頬を赤く染めた。

 

「羨ましいです。私、まだ担当が見つからなくて。スズカさんとトレーナーさんみたいな、素敵な関係を築けるような人がいればいいんですが…」

 

「グラスさんなら、きっとすぐに見つかると思うわよ」

 

「ありがとうございます、スズカさん」

 

ようやく緊張がほぐれて来たのか、スズカは淑やかに微笑んで、グラスもまたいつものように微笑みを返した。

 

その一方で、グラスはなんとなく察した。

 

この人(サイレンススズカ)が、彼をこの学園に引き留めたのだと。




次回
これ一本で1500日分のポリフェノールが手軽に摂取出来る編に続く。
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