アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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天王寺璃奈番外編 1

 ボク、ミア・テイラーには作詞のセンスは無い――0であるとは言わない、自身の曲に見合うほどの歌詞を書く自信がない。

 言葉というのは難しい、どれほど長く心の中を打ち明けたとしても、相手に伝わらない時だってあるし、短い言葉でも胸に響く時だってある。

 

 時間をかけていいものが完成する時だってあるし、思いつくままに作って驚くほどに評価を頂くこともある――作詞として、有名歌手を担当するである海未さんには、残念ながら「歌詞を書いていただけないでしょうか」のお誘いを断られた。

 

「璃奈にはソロは難しいでしょう」

 

 ……なんでボクが曲を作るから作詞をお願いします、と頭を下げて回っているかと言うと、すみれとお茶を飲んで秋の空を見上げていると、璃奈がトコトコって効果音が付きそうな歩き方でやってきて。

 

「ライブがしたいので曲作りをお願いしたいの」

 

 今まで璃奈が関わるQU4RTZに曲を提供したことがあるけど、彼女単独ではそもそもライブをしたことがなく、璃奈の問いかけに「え、QU4RTZに曲を作ればいいの?」と勘違いした。

 

 隣にいたすみれに「そういうことではありません」と静かに窘められ、キャラ作りも忘れて忠告するくらいだから、彼女もちょっとは驚いてたんだなって、今となっては思うけど。

 

 

「本人がやる気になっているんだったら、それを止めることはない、絵里なら言うと思うけど」

「いいえ、絵里でも、璃奈を止めるでしょう」

 

 この場に絵里がいないので(入院している)どちらであると結論付けるのは喧嘩にしかならない。

 ボクが失言に気づいて、頭を下げようとすると海未さんがそれを静止させる――言葉足らずでした、と逆に謝罪された。

 

「今のままでは、彼女のやる気に見合う結果は出ません」

 

 つまり、実力不足であるとか、ステージに立つ資格がないとか、ネガティブな理由で舞台に立つのを控えろと言ってるのではなく、やる気になっているからこそ、気を付けなければいけないポイントを指摘してる。

 

 幸運にもボクも、ランジュも、栞子も、ニジガクでソロデビューをしたスクールアイドルはファンから歓声を得られた……個人的には、ファンの声援に見合うものができた、ではなく、ひたすらに安堵していたと表現するのが、ボクの感情として正しいと思う。

 

 残念だけど、偉大なる作詞家だって、文豪だって、自分の心を……表現したいことを言葉にするのは難しいって言うから、ミア・テイラーの感情はこうであるっていうの、自分ですらよくわかんないけど……。

 

「私は正直、自分一人だったら挫折したでしょうね?」

「ニジガクはソロで活動するけど……ひとりじゃないよ? 仲間でもあり、ライバルでもあるんだ」

「いいえ」

 

 何に否定をされたのかわからなかった、仲間でライバルって部分だったのか、その活動をするけど一人きりじゃないって部分なのか。 

 

「正直……ライバル、と……呼べる相手がいなかったので、あ、スクールアイドルだった時の話ですよ? 今では、負けたくない相手なんて、いくらでもいます……絵里もそうですし」

「複雑な感情だね、大人になるってそういうことなの?」

「子どもの時から感情なんて複雑ですよ? 小さな頃はそれを言葉にできないだけです……分からないことを言葉に出来るようになるのが、大人になるって事なんじゃないでしょうかね? そのように考えると……私もまだまだ、大人だなんて言い切れません」

 

 μ'sの曲を作詞して、尊敬に値する――と言われて久しいのに、まだまだ、なんて言われてしまうと、少し困る。

 μ'sが活動を終えてからどれくらいの時が流れたというのか、たどり着けないゴールに向かって走っているとか、自分がちっぽけに思えてしょうがない。

 

 もしも自分が世界的に有名な作曲家になったり、誰しもからチヤホヤされる存在になったら、目に見えないゴールに向かって走るってのも平気になるのかな?

 

「仲間でライバルと……そのような表現されるものが、いかなる存在か……私にはわかりかねるんですよ? 自分達は、いつだって挑戦者で……壁はどこまでも高くて、同年代にA-RISEがいるんですよ?」

 

 現代のスクールアイドルから「人間をやめてる」ネタにされる、μ'sやAqoursのメンバーですら「A-RISEって別物」と、度々表現されていて、絵里にも「A-RISEが素人にしか見えないって本当ですか?」と……「しおりこ」が尋ねた、アイツの空気の読めなさも少しはいいこともある――ボクだったら、絶対に聞けないだろうし、ランジュもそうだろうし。

 

「今の私からすれば、スクールアイドルをやっていた頃のA-RISEは素人にしか見えないわね」

 

 うまくはぐらかされたけどね? 高校時代にどのような感情で「A-RISEを素人と言ったのかは」秘密のままだった。

 「しおりこ」は諦めきれなかったのか、果敢にA-RISEのメンバーにも「かの発言を絵里さんが」を含めて聞いたらしく、絵里からも連絡が入っていたのか、A-RISEのメンバーも「あの頃の自分は、素人もいいとこだった」と苦笑いしながら答えたらしい。

 

「自分たちが……仲間でライバルと言ったら、A-RISEには勝てなかったでしょう。時が流れて……許される時代になった、そういうことなのかもしれない。9人……多人数グループっていうものが、古いのかもしれませんね?」

 

 いないこともない……それでも数は多くない、少なくともAqoursの時代に見られた「とりあえず9人集めました」的なグループは全滅したと言ってもいい。

 

「ですが、あえて指摘をさせてください。ステージの下では仲間でライバルかもしれない、ユニットを編成するかもしれない。でも、歓声を得られなかった時に舞台の上には、自分一人しかいないんです――今の璃奈では……何かを恐れている彼女には、荷が重いです」

 

 その何かまでは教えてくれなかったけど、璃奈に「かれこれこういう事情で」と説明した時に、彼女は「……」と一瞬だけ顔を伏して、窓に映る自分の顔を見つめた。

 

 ハァ、と息を吐いて白くなった部分に――ニッコリ、とでもさせるかの如く、自分の顔を笑顔にさせるみたいに。

 それを見て、彼女が何を恐れているのか、海未さんがぼかした表現がよくわかった。

 

 

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