緑茶に映った自分の顔を眺める――私には、残念ながら璃奈ちゃんの悩み事を解決する言葉は述べられそうにない。
ソロライブの目下の懸念は、何より璃奈ちゃんの分かりづらい感情表現に行き至る。
同好会を含め、同じ年代の各スクールアイドルが「なぜ、璃奈ちゃんがソロでステージに立たないか」を「彼女自身を含め」理由を把握できていなかった――グループでは舞台に立っているので、力不足……だと、恥ずかしながら私も考えていたし。
「ギャラ子はさぁ、子役だった時があるんでしょ?」
「高い壁がありましたよ、端役は……まあ、雪姫さんと仲が良かったから、割り当てられたんでしょうね」
もしも自分の力だけで芸能界で端役を勝ち得ていたら、もう少し調子に乗った人格になっていたかもしれない。
自分の立場や……自分の役目、乗り越えられない壁――どれもこれも、不満を胸に抱いていても解決できない悩み。
努力だけで問題が解決するなら、世の中の悩みはすべて……英雄の力によって解決したんだと思う。
類稀なる才能で、全ての人たちの問題を解決して、世界中の人が幸せに暮らせるような……解決後には人々の頂点に立って、優雅に微笑んで見せて。
少なくとも世界史の授業で学ぶような、散々もてはやされたけど最終的には処刑されるとか、革命は起こしたけど孤独に死んでいく、暗殺されるとか、悲劇的な結末は起こりうるまい。
「努力で解決できない悩みって……諦めるしかないのかな?」
かすみちゃんが空の果てでも眺める見たいに、どこか遠くにある答えを見つけたいと心の底から願って、手を伸ばしたら届かないかな? とでも言いたげに右手を空に向けて。
かざした手に届く日差しは、私にも届くし、きっと入院中の絵里さんにも届いていると思う。
どこにでも、誰にでも、平等に日差しは舞い降りて、それなのに世の中には「日に当たるのがダメな人もいる」「日が見えない人もいる」魔法とか奇跡みたいな力でも起こさない限りは、抗えない何かが、私達の目の前にはたくさんある。
それを一つ自覚しただけだというのに、まるで巨大な石ころが目の前に迫ってきて「怖くて、逃げ出さなきゃいけない!」と、心底震えて……泣き出してしまいそうになる。
「……ギャラクシー」
感情が高ぶってくると出てくる言葉――ふざけてるって、言われることもあるし……なんやかんや言って、私を表す言葉でもなってる。
平安名すみれ――Liella!の一員としてスクールアイドルをやってる、そこそこ実力はあると思ってる。
もちろん、既に有名グループの仲間入りをしてる東雲学院や、藤黄学園のみなさんとは、差も比べ物にならないくらい。
「かすみちゃん、自分が世界一かわいいと思いますか?」
「あれ? ギャラ子はまだ気が付いてなかった? かすみんは世界一可愛いかすみんなんですよ? ほら、笑顔もこんなに可愛い!」
璃奈さんの抱える問題を把握してかすみちゃんも笑顔がぎこちない、その笑顔では、とても世界一可愛いのは主張できない。
自覚はあるのか両手の指を頬に当てながら、ウインクをする姿勢のまま……長いため息をついた。
「かすみんはー、可愛くなるために努力してきたし、これからも世界一可愛いばっかのワンダーランドのお姫様になるんだよ、たどり着けるって信じているし。でも、でもりな子は……それこそ魔法でもかけない限り、表情の変化が難しい」
無理でも努力をすれば何とかなる、なら、璃奈ちゃんはソロステージでパフォーマンスを披露していたと思う。
「……いや、ちょっと待って? 璃奈ちゃんは曇った窓ガラスに、笑顔の絵を描いていた?」
慌てて立ち上がったので、両手に持っていたお茶が手に溢れる、熱くてしょうがなかったけど、そんなことよりも気持ちが高ぶって仕方がなかった。
「ギャラクシー!!!! これったらこれよ! 絶対にコレぇ!!!」
言葉はかなりハイテンションになったけど、かすみちゃんが「わけがわからないよ」みたいな表情をしているので、きちんと説明する。
つまりアニメーション、璃奈ちゃんの情報処理学科の一面を最大活用する。
彼女の表情は伝わりづらいかもしれない、それでも、背後に「彼女の心情を示すアニメーション」さえあれば、ファンにも意図が理解してもらえるはず。
「ギャラ子!!!! それ、めっちゃイイ案だよ!! 早く! みんなに披露しに行こうよ!」
各々、考えをまとめるまでチームを組む……くじ引きで決まった、かすみちゃんとの編成。
「天王寺璃奈!!! ジ・アニメーション!!!! ギャラクシー!!!!!」
これがアニメーションなら、雄大なBGMと一緒に私たちは駆け出して、陽光も歓迎せんばかりに輝いて。