アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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ゆいがおーのがおがおー

 リハビリがてらに結ヶ丘女子高等学校まで歩くことにした――十月の日差しは真夏に比べて幾分か和らいで、しかし歩いていると少しだけ汗ばむ季節でもある。

 スポーツの秋、体育の日もあるしね? 東京オリンピックも過去には行われたし。ブルーインパルスが作り上げる五輪のマークが感動的だった、とおばあちゃまも言っていた。

 

 ある日を境に体調面の回復が目立ち「英玲奈に五寸釘でも刺されていた」「誰かがラストエリクサーでも使った」と、話題の種になるけど、真実は闇の中なので詳しくは分からないとしておこうか。

 

 公共交通機関であるとか、自転車であるとか、文明の利器を使用すればいいのにと思われるかもしれないけど、今日は歩いて行きたい気分。

 

 それらを扱えないゴリラだからではない、天井からぶら下がるバナナを取れない知能しかないからじゃない――一応、オトノキはクロマティ高校よりも偏差値が高い、引き算ができれば入学できる高校ではない。

 

 ちなみに7の段が出来なかった聖良ちゃんはスポーツ推薦――別にスポーツで邁進しようとか、彼女が望んだわけではなく、学校側から「スポーツ推薦ということで入学してください」と頼まれた。

 

 彼女単独でスクールアイドルとして活躍しつつ(ラブライブに出場する気はなかった)運動系の部活に助っ人で参加してはレギュラークラスの活躍をするので、三年生になって「スクールアイドルに集中します」となった時には才能を惜しまれていた。

 

 ダイヤちゃんとしても「運動系の部活で名前を残している鹿角聖良」は過去から認識していたらしい。

 千歌ちゃんがAqoursを結成し、私たちと出会いスクールアイドルの知識を深め、同年代にSaintSnowとかいう別格の存在がいることを知り、ダイヤちゃんは「ラブライブの優勝は無理」と首を振っていた。

 

 聖良ちゃんが単独でラブライブに出場していなかったのは、姉妹で優勝しなければ意味がないとの目的のため――だけど、それが理亞ちゃんのプレッシャーとなり思わぬ失敗に繋がった。

 

 「うまくいきませんね」と聖良ちゃんはお酒を飲みつつ苦笑いしながら後年に言うけれども「私としては北海道旅行に行けたからいいわ」と……あんまりフォローになってないな?

 

 各部活で類稀なる才能を放っていた聖良ちゃんがスクールアイドルに集中し、その妹のミスで北海道予選に敗退したって事実は函館聖泉女子高等学院の生徒から不評を買った。

 

 ダイヤちゃんを経由してそのことを知った私は「ちょっと北海道旅行に行ってくるからお土産に何がいい?」と妹に尋ね「か、カニ!」 と言われたから「分かった」

 

 ――ちなみに、その時に購入した北海道のカニはオトノキのスクールアイドル達の「東京予選突破記念パーティー」に活用された。

 

 奇しくも北海道予選を突破したスクールアイドルに亜里沙たちは敗戦したので、ラブライブ出場の前にご当地のものを食べるとその相手に負けるとのジンクスが今でもあるとか。

 

 ともあれ一人で行くつもりが本来は忙しいはずのツバサに「北海道旅行に行くんですって? オフだから付き合ってあげるわ」と言われ、金銭面ではダイヤちゃんの工面がなくても平気な状況にはなった。

 

 行ってみれば生徒を納得させる手段が「SaintSnowが優れてなかったから予選敗退した」とするしかなく、随分上から目線で指摘もさせてもらい、理亞ちゃんからはかなり恨まれてたはずなんだけど……や、指摘もそうだし、「函館聖泉女子高等学院がラブライブで優勝すればいいんでしょう!」と啖呵を切ったのもあるし……。

 

 当時の自分の行動を思い出すと「これが若さか」とシャアみたいなことを言いたくもなる。

 

「スクールアイドルが他の部活よりも劣っている……などと言われれば、じゃあ、全国ナンバーワンになって証明してみせればいい……理亞は発破をかけないと頑張れない子なんですよね」

「あの時は、理亞ちゃんが足を引っ張っていたって言われていて、ついカッとなってしまって」

「SaintSnowが……いえ、理亞が足を引っ張ったというのは事実ではありませんし、怒るのは当然です。かばいきれなかった私が悪いのです」

 

 ちなみにラブライブに個人で出場して優勝してみせたのは鹿角理亞しかおらず、今でも当校には「鹿角理亞ちゃんみたいになりたい!」との理由で入学希望者が押し寄せてくるとか。

 

 などと、もう一度μ'sで集まって頑張ってみよう! とみんなの前で宣言してからの日々を思い出しつつ、結ヶ丘までの道のりがあと数十分くらいになり。

 

「あらあら~?」

 

 見られている――お知り合いだっただろうか、年齢は若い、もしかしたら自分と歳が変わらないかもしれない。

 でも、佇まいは年上……落ち着いた感じ、黒髪が長く、スタイルも良く、育ちがいい感じがする? お嬢様……ああ、深窓の令嬢ぽい感じかな?

 

 でも黒髪が長く、深窓の令嬢な知り合いは該当者はいるけど、顔を合わせたことすら忘れるほど疎遠の関係になった人はいないハズ?

 

 でも誰かに似ている……この雰囲気もそうだし、穏やかでおしとやかで、笑顔の可愛らしい……。

 

「あなたはもしかして、娘の言っていた絢瀬絵里ちゃんかしら?」

「娘? ……ああ!?」

 

 顔を合わせて両親トークってしないけど、恋ちゃんはよく「母親に困らされた話」をテレビ番組でサイコロを振ったわけでもないのに長々と話す。

 困ったと言っている割には「すごく楽しそう」で「その話は前にも聞いたことがあるな~」と思っても、本当に大好きなんだな、と頭に浮かぶので無粋なことは言わない。

 

「先日はどうもご迷惑をおかけしました」

「いえ、学校創立おめでとうございます。ご苦労も多かったと思いますが、これからも結ヶ丘女子高等学校が続いていることを望みます」

「ふふ、音楽科と普通科が手を取り合える下地ができました、あなたのおかげです」

「いえいえ……でも無理をしちゃいけませんよ? 私みたいに倒れて周囲に心配をかけてはいけません」

「あらあら~? 年下の子に心配されるほど、私はお年寄りじゃありませんよ~?」

 

 葉月花さん――結ヶ丘女子高等学校の創立に携わり、多くの人の協力を得て……多かったものだから変な人もいたけど。

 

 神宮音楽学校は結ヶ丘女子高等学校として新たに羽ばたこうとしている――初めての学校祭がちょうどニジガクの選挙の後に行われるそう。

 

「今日は、娘の顔を見に……ではなく、実は学校のマスコットキャラを募集してて、生徒会長に直接見せに行こうと思って」

「学校のマスコットキャラですか……そっか、創立一年目だからそういうのも考えるんだ」

 

 私が学生の時代には考えられないな……と思いつつも、これから学校を有名にするために親子で頑張ってるんだなって姿には、嫉妬と羨望が入り混じった感情が浮かぶ。

 

「……これは?」

「ゆいがおーです」

「ゆいがおー」

 

 がおーっていうことは……恐竜をモチーフにしてるんだ、ちょっと白くてユーモラス、マスコット……うん。

 

「いいんじゃないですか? 私は、イラストには明るくないので」

「そう? ちょっと不採用みたいな顔してるよ~?」

「いいえ、まったくこれっぽっちもそんなことはありません」

「うん~、だったら採用してもらえるように絵里ちゃんには頑張ってもらおうかな?」

「はい?」

 

 生徒会長の親が頼んだら半強制的にそれになっちゃうから、あくまで一般公募から……

 

「恋ちゃんによろしく言っておいてね?」

「いいんですか?」

「家に帰れば、恋ちゃんとは会えるもの、その時にまた構ってもらおうかな」

「娘さんに怒られても私の責任ではないですからね?」

 

 「あらら残念~」とこちらに背を向けて歩いていく花さんを眺めながら、

 

「アレで昔、私たちみたいなことをやってたっていうんだから……想像できないな、映像とか残ってないかな?」

 

 ちなみに神宮音楽学校の学校アイドル部は高校の歴史を延命させるほどの活躍を見せ、UTXの芸能科設立とスクールアイドルA-RISE結成のきっかけとなった――

 

 UTXの活躍を見た穂乃果がスクールアイドルμ'sを結成したため、オトノキに入学希望者が集い、神宮音楽学校は幕を閉じることになる。 

 

 当時の音楽学校にスクールアイドルがいたら……もしかしたら歴史も変わっていたのかな。

 学校アイドル部が廃校が決まりかけていた音楽学校を延命させたのが気に食わなくて、スクールアイドルを許さなかったのが……

 

「本当に嫌な大人ね……」

 

 機嫌が悪くなりそうになったけど、結女のマスコットキャラの笑顔を観て笑わなきゃなって思った。

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