アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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ゆいがおーのがおがおがおー

 結女に足を踏み入れた瞬間に多数の生徒に歩み寄られ「あ、これはやばい」と直感的に気づいた――まるで、鉄腕ダッシュの放送中に浮かぶ文字みたいに「――やばい」と絢瀬絵里の隣に並んでいる光景を想像して欲しい、意外としっくりくるはず、自意識過剰だろうか。

 

 女子生徒達がカバンから何かを取り出すのに気がつき「スタンガン!?」と身構えたけど、一般的な女子高生はスタンガンを鞄の中にこしらえてはいないはずだし、いたとしても私に構えるのはやめていただきたい、どう見ても不審者に見えると言うなら反省する。

 

「え? サインが欲しい?」

「そうなんです! ここでもスクールアイドルをやってて……それを見てたらμ'sのライブにも行きあたって! 自分が小さい時に……」

 

 Liella!からμ'sに行き当たってくれたのはとても嬉しいけど、 この子たちがランドセルを背負う前から自分は高校生だった、との事実が世代の差の認識に拍車をかける。

 曇りのない瞳には邪気なんて全くなく、本当に昔からとっても素敵で! との言葉が称賛なのは分かっている、分かっているんだけど、釈然としない何かが自分の胸の中にモヤモヤとなって沸き起こる。

 

 それでもサインをくれと言うのだから、お高くとまって「私のサインをもらうにはスクールアイドルをやらないとね~」とドロンジョ様みたいに高笑いしながら言うのも憚られる。

 

 愛想笑いにならないように気をつけながら、さらさらと――でも、今の女の子って、ちゃんと筆記用具とサインを書くためのノートを用意してるのね……それも時代の流れてやつなのかしら? 手の届かなかったアイドルってのは、スクールアイドルの広まりで……もしかしたら今日会えるかもしれない存在になって、だったら、失礼のないようにしなきゃな。

 

 そんな心構えがあるのかもしれない、私の思い込みの可能性は――そっちの方が高いか。

 

「母から電話があって絵里さんが来ると言ってましたが、到着が遅れたのはそれが理由なんですね」

 

 いちごのシールが貼られたノートパソコンに目を向けながら、 ちらりとこちらに視線を向け仕事に戻る。

 スクールアイドルとの両立で苦労をするのは、自分にもわかる部分がちらほらとあるので「お手伝いします」と頭を下げる。

 書類仕事や、雑用などには定評がある、顎で使いやすい先輩とはμ'sの二年生にも言われることだし。

 

「初めての学園祭なのでしょう? 成功させたいのならおとなしく先輩を頼りなさい」

 

 恋ちゃんも干支一つ離れた先輩に「じゃあ、全ての仕事を任せていちごパフェを食べるから」とは言いづらかったのか「いいえ、何もかもお任せするわけには」と遠慮したけど、学園祭の成功を人質に「いいから黙って働かせろ」の脅迫に成功した。

 

 その中に「マスコット案」とわかりやすいタイトルのファイルがあったので「ゆいがおー」をこれ見よがしに挟んでおいた、彼女が後日「何ですかこれは!」と破り捨てないことを祈りたい。

 

「学園では生徒会選挙……だそうですが」

「恋ちゃんだったら、どっちに投票する?」

「難しいところですね、他校のことですから、あくまでも自分が交流の折に仕事をしやすいかどうかを考えてしまいます」

 

  個人の感情は抜きにして、仕事相手として選ぶのなら「中川菜々」だったみたいだ、 慣れ、もあるんだと考える、彼女は中川菜々、三船栞子の両方と仕事をしたことがある。

 

 一人で生徒会を運営している上に、新設校なので仕事も多い、校内でも人徳と努力で乗り越えている栞子ちゃんと、会長として一年間仕事をし、しかもスクールアイドルとして名を残している優木せつ菜なら、一緒に仕事をしたいのはそりゃあ一択になるよね、と。

 

「意地悪な聞き方をしたけど、でも……選ばない柔軟さも……会長として必要だと思うわ」

「それは人生訓か何かなんでしょうか?」

「高校時代の私だったら……や、μ'sであった自分なら、そうだったんだろうな」

「……よく分かりません」

「高校生なんてまだ子どもなんだから、なんでもかんでも決め付けなくていいのよ、ってだけ、可能性を狭めるだけ」

 

 私が選ぶのなら中川菜々一択だし、今まで散々自分でも周囲でも言ってきたと思うし。

 でもそんな大人たちが決めた「仕事ができるニンゲン」よりも、人気で選ばれる代表があってもいいと思う。

 

 この子ならできる、と一人で仕事を抱えている恋ちゃんの姿を見て、なんでもかんでもできると期待されるのも、いいことばかりじゃないんだなと考えてしまった。

 

「困ったらいつでも頼ってちょうだい、私はね、顎で使われることには定評があるのよ?」

「誇れないと思うので胸を張るのはやめてください」

 

 恋ちゃんにしては珍しく厳しめのツッコミ、ただ、正論の範囲内だと思う、私が逆の立場だったら何言ってんだろうとは考えるはずだし――なお、恋ちゃんが何を言ってるんだろうと思っているかは。

 

「それに……他校で仕事をされている絵里さんよりも、自校の仲間を頼った方が手っ取り早くていいですからね」

「確かに私も……仕事ができる相手よりは、仲間を選ぶ……穂乃果を選んだのは私情だと何度もネタにされたものだわ」

「辛いですか?」

「間違ってたかもしれないと反省したことはあるけど……でも」

 

 黒歴史だわーと、何度となく言ってきたと思うし、もしかしたら信じられてしまったかもしれないけど。

 

「間違ってたかどうか誰かに決められる筋合いはないのよ、そんなことより自分で決めたことの方が大事、自分が間違ってたと思うのなら責任を晴らす手段はひとつしかないわね」

「……」

「誰かを頼ってはならないというのが、自分自身の戒めだと思うのなら今すぐやめなさい……いい、絶対だからね?」

「正直な話、生徒会の仕事で頼りになりそうなメンバーはすみれさんくらいしかいないんですが」

「……生徒会長として賑やかしを受け入れる心の広さは必要だと思う」 

 

 学園祭の成功を人質に取った手前、こちらから積極的にLiella!の他のメンバーも仕事に携わせて、と言いづらくなってしまった。

 こんなこと普通だよ~と言いながら書類整理をするかのんちゃんや、特にのコミュニケーションで人と仲良くなれるクゥクゥちゃんや千砂都ちゃんも戦力外にはならないはずだけど、生徒会の仕事よりも任せられる仕事はいくらでもある――それこそスクールアイドルとして人を呼べる。

 

 ――知名度において学校が求めるレベルに至っているかは、疑問の余地があるけど。

 

「賑やかしなんて、失礼ったら失礼! このショウビジネスの世界に生きてきた私が、生徒会の仕事をこなせない道理なんかないわ!」

 

 生徒会に不届き者が入ってきたと勘違いしてLiella!のみんながこっちを伺っているのは知ってた、あえて口出しをしなかったのは恋ちゃんが本当に気が付いていなかったから――半分くらい顔を出していたような気がするんだけど……。

 

「すみれ、その痛々しいセリフはグソクムシみたいなマスコットキャラくらい酷いデス」

「……すみません、ギャラクシーに代わる新しいキャラ付けをと考えて気負い過ぎました」

 

 どうやらすみれちゃんはマスコットキャラを考える分野は苦手みたいだ、書類整理に関しては「実家でやってますので~」と余裕そう。

 かのんちゃんも「これぐらい普通だから~」と余裕っぷりを見せ、クゥクゥちゃんも学力の高さを活用して仕事に取り組む……ケド、あと一人、グループの中でダンスの指導に取り組み、ことり、海未、とμ'sの2年生に失言をかますをコンプリートするまで、あと一人な嵐千砂都ちゃん。

 

「私にはたこ焼きを焼くくらいしか才能がないので、なんでもかんでもできる人とは訳が違うんだよ~、じゃあ私はかのんちゃんを信じて……」

「あ」

 

 ケド、穂乃果に失言をする前に、私に癇に障ることを言って助かった部分もあったんじゃないかな?

 

「乗り越えられないこともたくさんある、できないことも沢山ある。でも、信じるって言葉を自分の都合よく使っちゃダメよ? 誰かを信じるのなら自分も頑張りなさい」

「……わ、わあ、絵里さん、目がとっても怖いな~? 下働きから何でも、顎で使えると評判な嵐千砂都なので、皆様も是非使ってください!」

「ことりから、顎で使われている私からすると……ひとつだけアドバイスできるんだけど聞きたい?」

「ええ、そのようにガンをつけられると、後輩としては頷かざるを得ません、あー! 聞きたいです聞きたいです!」

「よろしい」

 

 クゥクゥちゃんとすみれちゃんは愛想笑いを浮かべながら、千砂都ちゃんの頭を握り上下に振る……当人の意思が損なわれている現場を目撃しているけど、後で私が誰かから殴られればいいこと。

 

「言われる前に努力をしなさい、言われる前からやったら、誰にも文句は言われない……や、言わせないわ」

「言われる前にやるってそんなに大事ですか?」

「とにかくつべこべ言わずにやれ」

「アレー?」

 

 そう、信じる信じないはともかくとして、信じてるから~と逃避の姿勢をとったことには「バツ」をつけなくちゃいけない。

 できるできないに「だったら努力しろよ」とは言えない、でも、できることを逃げるのは良くないことだ。

 

 そこはちゃんと大人として「やらなきゃいけないことはやらなくちゃだめよ」と言わなくちゃいけない、手段が強引だったのは認める。

 

「正直なのと失礼なのは違うんだからね? ホント、本当だからね?」

「すみれ、アレです、すみれの見習うべきキャラクターはアレです」

「なるほど……口癖や強調とは、ただ使えばいいというわけではないんですね……」

 

 こうしてLiella!には「生徒会の仕事を頑張る日」と「スクールアイドルの練習をする日」が取り決められ、できないことは正直に音楽科や普通科の生徒を頼るとなりました。

 

 

 

 生徒会選挙においての討論会の準備に励む、中川会長が先頭に立って指示をするも「私は絶対に負けますから大丈夫です!」と、何を大丈夫と思っていいのか分からない世迷言を聞きつつ、何かをしてください言われる前に頑張る。

 

 やりすぎたら倒れると実感しているので、やりすぎていたら誰かが止めてくれるはず。

 

「何を大丈夫だと思っていいのか分からない世迷言を申し上げますね?」

 

 頑張りすぎていたら誰かが止めてくれるはずよと、お高くとまって言ったら、会長に怪訝そうな表情で言われた。

 ゆいがおーが同年代には不評だけど、今を生きるJKには好評なので、カルチャーショックをひしひしと感じているなか、同じことを考えるって何かシンパシー。

 

 

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