アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里は神を屠る

 栞子ちゃんが「まーちゃん」と呼ぶクマがこちらを興味深そうに見る――我々は彼女を放っておいたいけ好かないヒトに日頃抱えているストレスをぶつけ、ややもそれば憂さ晴らしをしよう――正義の心にそんな意図がなかったとは言わない。

 

 海未は果南ちゃんを「絵里の前に行きなさい」と言いつつ、必死こいて前へ通しやろうとしながら「これが因果応報というものですか」とため息をつき。

 果南ちゃんは海未の攻撃をガードしつつ、私を前方へと突き出し「バタフライエフェクトの原因を作った人間が食べられるべき」と言いつつ「正義感の強い暇人って問題しか起こさないわー」と嘆いている。

 

「ま、相手がクマだろうがなんだろうが、幼い子を一人放っておいて、自分の欲望を優先したとか、私は許せないからね」

 

 果南ちゃんに向かって「いいよ、私が盾になる」と言い「ありがとう絵里ちゃん、香典返しはいらないからね」と彼女に応じられた――私が果南ちゃんに香典を送ったら軽くホラーである。

 この場で生き残ろうとも、だ。彼女より長生きできる自信がない。

 

「ほう、神に楯突くか、面白いな人間」

「人間じゃなくて絢瀬絵里、あなた犬とかも犬って呼ぶの? ピカチュウとかもピカチュウって呼んじゃうの? サトシなの?」

 

 肩甲骨をほぐすように、グルングルンとシコースキーみたいに腕を回しながら、自称神様を討ち倒す気満々である。

 前面に立ってない一同は「クマに賭けるニャ」「あ、ずるい、私も」「わたくしは絵里さんに」「では私も」と――ダイヤちゃんはいつの間に蘇生してたの? アニメやマンガでよく見る、血の気を失って倒れるヒトやってたのに。

 

「それに、自称神ってのも、他の人から神って言われるのも、問題行動しか起こさないイメージがあるじゃない」

「たしかに! 絵里さん! そうだとよ! 自称神にロクなやつはおらね!」

 

 クマに対しての恨み節ではなく(自称ではなく、正真正銘の神だそうなので)神を自称するヒトの問題行動は、神様を崇める巫女の彼女からすれば、たいへん憤りに値するみたい。

 

「クハハハ……一撃……いや、三撃猶予を与えてやる、それで余を討ち倒すことができないなら、分かっているな」

「いいわよ、昔やってたオンラインゲームで神殺しって言われてたのが現実になるし」

 

 ちなみにボスキャラの神を殺したとかじゃなくて、ランカーのヒトを次々に屠っていったので神殺しってあだ名されてた。

 誰だアイツはって言われてたので、綺羅ツバサって名乗ってた、あの子も絢瀬絵里を自称してたからおあいこ。

 が、真姫も海未も絢瀬絵里を名乗っていたので、どれがほんとうの絢瀬絵里なのかと話題になってた――綺羅ツバサって名乗ってるやつなのよ。

 

一番有力視されてたのは、真姫が操ってたキャラ――ボイスチャットでモノマネを披露したそうなので。

 

「絵里、二撃で倒せなければ、私に任せてください」

「巻き込まれるのは私だけでいい」

「理亞のお菓子を持ってきています」

 

 それはあらゆる意味でまずい、おおかた「絵里に食べさせて感想を聞いてきます」とか嘘ついて作らせたに違いない。

 相手がクマでなければ「私が食べる」とかばったろうに、神だったばかりに理亞のお菓子を食べさせられるなんて――

 

 海未のセリフを聞いてお菓子の直撃を食らった「果南、ダイヤ」の両者が「かわいそう」「同情しますわ」と、顔を手で覆いながら嘆き、凛も自分の料理を棚に上げて「見た目だけは美味しそうだもんね」と。

 

 栞子ちゃんも「お菓子」に興味を持ったものの、みんなの不穏な様子から「まーちゃん、ごめんなさいするなら今のうちだよ!」と説得に動いた――が、人間に倒されるなんて微塵にも感じていない神は余裕の態度。

 

「じゃ、一発目……覚悟しておきなさいよ!」

「グハハ! 人間風情が神に逆らっ……グハァ!?」

 

 今まで人間相手に全身全霊で蹴り技を使ったことがない、そもそも人様に足を向けるなんて、とおばあさまに教育されていたのもある。

 ツバサや果南ちゃんなどの腕っぷしに自信がある面々が蹴り飛ばす姿を目にしても、殴り飛ばすか他のメンバーに出番を譲っていた。

 

 普段から足腰は大事だと鍛えてはいたけれども、蹴り飛ばすためにしていたんじゃない。

 こんな機会だから脚を使ってしまったけれども、できれば今後、こんなことをせずに一生を終えたい。

 

「……アレ、大したこと無いんじゃないの?」

「わたくしが見るに、倒れこんだ振動と地響きから、ヒグマ並の体重は有しているはずです」

「なるほど、じゃ、大したことないわ、海未ちゃん、理亞のお菓子貸して」

「嫌です、私が是非に食べていただくんです」

「あ、ずるい凛も!」

 

 絢瀬絵里が全身全霊で蹴りを放ち、巨躯を少々浮き上がらせつつふっとばしたあと、ビクンビクンと震える神様に「追撃」をしようとする面々。

 

 ダイヤちゃんがよくやったと言いたげに近づいてから、胸を揉みしだきつつ「これぞまさに神」とか言い出したので、幼い子が見ているのでやめてちょうだいとため息をつく。

 

 ちなみにダイヤちゃんがわしわしを私にすると、亜里沙の預金に4万円が追加されるので、妹はそれをわしわし預金と名付けている。

 

「え、あ、まーちゃんを……」

「ごめんなさい、アナタの大事な」

「んなことねえけども、寒空の下で放って置かれたのは怒ってるし、お世話も偉そうで大変だっただ」

「……」

「でも、ホントに、神様で太刀打ちできるヒトなんておらんかったのに……どうして?」

「あー、スクールアイドルだから?」

 

 これ以外に説明のしようがない、我々一同は常人には理解できない事柄を説明する時「スクールアイドルだったから・だから」と言い、煙に巻こうとする。

 果南ちゃんもよく潜って魚を獲ってきてはコツを聞かれ「スクールアイドルだからね」というし、凛も男性芸能人をフルボッコする運動能力を発揮したときには「スクールアイドルなんで」と言っている。

 

 A-RISEの三名も「スクールアイドルだからできた」と言っていたので、元スクールアイドルは戦闘民族ってスレが立ってたの知っている。

 

「すごい……わ、わだすも、スクールアイドルになってみたい!」

 

 「え?」みたいな反応をする一同――理亞のお菓子は一つ残らず神様の口に放り込まれ、さっきまでビクンビクン震えていた身体が停止している、神だから死ぬことはあるまい。

 

「わだすなんて、おぼこで目立たね女の子だけど! ちんちくりんでも、アイドルできるってなったら、村の女の子たちに夢を与えられるだ!」

 

 果たして彼女が目立たない女の子か、には一考の余地があるけど、夢を追いかける少女の目を否定する人間は一人もいなかった――スクールアイドルなので。

 

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