アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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負けない限り勝負は続く……でも

 普段は喫茶店だけど、何かあれば締め切られて説教部屋に変わる――そんな場所に曜ちゃんを伴って来ました。

 何かに怯えたように「魚の餌にするのは勘弁してください」と震えながら言うけど、未来を決めるのは曜ちゃんだし、魚の餌にするのはお姉ちゃんです。

 

 そんなふうに言ってみると彼女はギョッと目を見開き「とりあえず何か注文しよう」と私がメニュー表を差し出すと「どうせなら最後に大好きなハンバーグを食べたい」と項垂れました。

 

 たまたま材料を確保していたのか、それともおせっかいなみんなに「是非にも最後の晩餐に」と用意されたのか、熱々の鉄板に乗せられたソレは空腹感を呼び覚ますのに十分でした。

 

「曜ちゃんが描いてたデザイン……量があったから選別させてもらったよ」

 

 「どうせ最後だからこれが食べたいあれが食べたい」と注文の多い渡辺曜ちゃんを眺めながら、私は彼女が描いたデザインを一縷のミスもないように採点する。

 

 あえて言うならどれも100点満点に近い出来――それは褒めすぎかもしれないけど、90点以上なのは間違いない。 

 

 ことりさんが相手だから「曜ちゃんの実力ってこんなものだったの?」と言われるけど、もしも一般的な……いや、もう、日本のトップクラスのブランドでも勇んで「商品化しましょう」「今後ともよろしくお願いします」と言われるのは間違いない。

 

「……うん、これが95点で一番高い点数かな」

「ん?」

 

 超高速で平らげられるメニューに箸をつけるのを止めて、曜ちゃんがこちらを不思議そうに眺める。

 首を傾げながら「あっ!」と一息漏らして

 

「3000点満点とか?」

「クイズダービーじゃないんだよ」

 

 絵里さんが「綺羅ツバサに3000点」と言って、μ'sとA-RISEの皆様が笑っていたけど、元ネタがわからない若々しい世代は「わけがわからないよ」みたいな表情をしていた。

 

 これがきっかけだったのかグループごとに代表者を決めクイズ大会が行われた、他校からも遥ちゃんと姫乃ちゃんが参戦、トップになると「四星球」が送られることに。

 

 Aqoursからは梨子ちゃんが参加をし善戦するも「ここの出来が違うのよ」と真姫さんが脳を指差した際に憤慨、そのまま大乱闘へと発展。

 多くの欠席者を出したのが大きかったのか、近江遥ちゃんおよび東雲学院の皆様には「四星球」が送られた。

 

 なお「7つ集めると願いが叶う」のは本当らしい。

 また、乱闘の際に多くの物品が破壊された影響で「二度とやるな」と理事長が絵里さんとツバサさんの頭を鷲掴みしながら言ったため、開催は予定されてない。

 

「100点中だよ」

「これはことりちゃんから酷評を食らったやつで」

「求められているものが違うの、梨子ちゃんにも言われたでしょ?」

 

 ちなみに酷評を頂いたってのも間違い「そんな次元で満足してるなんて」の失望もあったし、曜ちゃんにも自信があったのか「これは周囲から見て満足する出来だ!」みたいに言って呆れに拍車をかけた。

 

 何度でも言うけど、Aqours以降にラブライブに参加したグループで「衣装判定S」をもらった人がそもそもいない。

 自分たちで作成し、かつ高い精度を誇るものだと「S」判定がつけられるそう。

 

 過去のラブライブではことりさんと曜ちゃんしかもらってないもので、μ'sとA-RISEの勝負は「どちらが勝ったのか」と論争の種になるけど、私としては衣装の部分が大きかったんじゃないかと思われる。

 

 そしてことりさんは「曜ちゃんが先だったら、自分が彼女よりも良い評価をもらうことがなかった」と言っている。

 

「ねえ、曜ちゃんはどうして満足しちゃうの?」

「……」

「や、違うよね?」

 

 曜ちゃんが「満足しているから成長が止まっている」と嘘をつこうとしたので「違うでしょ」と言った。

 満足しているかと聞かれて満足してると頷いたけど、自分で満足なんかしちゃいないから周囲の、とか、はやりのとか、語頭に付けてデザインを説明しちゃう。

 

「どうして?」

「自分のやりたいことに気がついたからさ」

 

 何回か「どうして?」と聞いたけど、一向に口を開く様子がなかったので「もしもし、お姉ちゃん?」と電話をかけたふりをすると、それから曜ちゃんは9回目の「どうして?」で答えをくれた。

 

「……私がやりたいのはデザイナーじゃなかったんだ」

「え?」

 

 絵里さんやツバサさんに赤子の手をひねるように勝利した水泳をやるではなし、任せられたからと店長してた頃に戻りたいわけでもなく。

 てっきり私は「デザイナー」こそが自分の天職だと思っていたと推測してたけど。

 

 嘘をついてる気配はない、もう一回繋がってないスマホに向かって「曜ちゃんを魚の餌にする件だけど」と言ったけど「私のやりたいことができないのならそれでもいい」と真剣な面持ちで言われた。

 

 ――めちゃくちゃかっこいい、梨子ちゃんも「うわっ、渡辺めちゃくちゃイケメンじゃん!」と言うこともあるし、曜ちゃんのファンクラブに今でも参加しているのはほぼ100%女子。

 

 ちなみに千歌ちゃんのスマホの待ち受けは、こういう表情をしている時の曜ちゃんだったりする、早くくっつけばいいのに。

 

「私は……Aqoursの衣装を作りたいんだよ」

「……」

「着るのも、Aqoursのみんなじゃなくちゃだめ、どうしても加減しちゃう……デザイナーはそんなに甘い世界じゃなかったよ、いつことりちゃんから破門にされるかなって思ってた」

「……ハハ……」

 

 天才だ……ルビィはずっと「曜ちゃんよりも衣装担当に相応しい」って……出来とか、そういうのじゃなくて、お姉ちゃんとずっと作っていたっていうのもあるし、三年生が卒業する前には「衣装はルビィに」と言われていた。

 

 曜ちゃんが衣装を作るよって言い出した時、すぐに投げ出すんだろうなって思った、本当にミシンも使えなかったから。

 

 彼女が卒業してからも「衣装担当は曜ちゃん」って言ったのは、ちょっとした復讐心もあった、花丸ちゃんやサファイアお姉ちゃんと私でパフォーマンスをした時に「ルビィちゃんの衣装の方がいいよね」と言われたいがために、影でずっとずっと努力を続けてきた――結局越えられずに「衣装評価A判定」

 

 「外部依頼で制度の高いもの」につけられる評価が理亞ちゃん相手の敗戦に繋がったわけじゃないけど……。

 

 こんな人に勝てるわけない……ただでさえ世界的にも認められるようなデザイナーに「才能がある」と言われる人が「Aqoursじゃなきゃ全力を出せない」と言う。

 

「ああ……だからあの時、花陽ちゃんは……」

「ん?」

「一回ね、私が衣装担当だったらどうだったかなって、聞いたことがある、花陽ちゃん、今でもスクールアイドルには詳しいし、アイドルの知識もある……だからそんな人から見て、自分がAqoursの衣装のデザインをしていたらどうだったかなって」

 

 遠慮なくって言ったら、本当に遠慮なく「曜ちゃんには絶対に勝てなかったと思うよ」と断言された。

 

 そりゃそうだよね、相手は「Aqoursが着てくれないと全力を出せない」とか言っちゃうんだ、ことりさんとかから「あなたには才能があるよ」と言われたらルビィ……全身全霊でデザイナーとして頑張っちゃう。

 

 でも、どんな人から「才能がある」「あなたはトップになれるかもしれない」と言われても「Aqoursのみんなじゃなきゃ嫌なんだ」と曜ちゃんは言う。

 そんな人に……こんな甘い自分が、勝てるわけなかったんだ。

 

「負けました……Aqoursの衣装は曜ちゃんが作るべきだね」

「まるで再結成するかのような言い方」

「するでしょ、あの千歌ちゃんだよ? 近くでμ'sのメンバーが踊ってたら、高校時代に戻ったみたいに無垢な表情のままでさ、私たちも! って言い出すに決まってるよ」

「……あー、それはこんな表情かな?」

「曜ちゃん……高校時代の千歌ちゃんの顔面アップの待ち受けなの?」

 

 一矢報いるために「気持ち悪いよ?」と言ったら、厨房の方からAqours三年生組の「気持ち悪いですわ」「気持ち悪いね」「ベリー気持ち悪いわ」との声が聞こえてきた。

 

 ……誰かしらいると思ったけど、まさか全員いるなんて。

 

 

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