アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

122 / 125
またまた巻き戻ってしまう

 ――終わらない夏休みを延々と繰り返していたことも、私が倒れない未来のために試行錯誤したのもまた、あずかり知らないところで密かに行われていた。

 私が「そういえばそうだった」と気がつく時には、おせっかいな面々が問題を解決した後であり、そうなれば「なんでこんなことするんだ」と文句なんかは言えない。

 

 けど、腑に落ちない気持ちは何度も抱えており、リセマラじゃないんだから、そんなにポンポンループさせないで欲しいとは、言いたい。要望を聞き入れてくれないのは重々承知だけど、言いたい。

 

 起床した時に「スマホを確認したくない」気持ちと「日にちを確認しなきゃ」の気持ちがせめぎ合う。

 今日は何月何日だ? とか、忙しい日々を送っている方々ではあるまいし、日付の感覚をいちいち確認せねばならんとは……やっぱり文句は言いたい。

 

 虹ヶ咲学園で行われた選挙の翌日になってるのをスマホにて確認し「ホワァ!!!!」と叫びそうになった――でも、まだ時間が早い、夏とは違って太陽が出る時間も次第に遅くなってる。

 

 自分に何か原因があるのか探る。

 たしか……曜ちゃんがことりにクビにされたと聞いた。Aqoursで問題は解決するから、と介入するな、とばかりに睨みつけられた。

 問題の解決には至った様子だけど、梨子ちゃんが「渡辺ェェェェェ!!!」と叫びながら胸ぐらを掴みあげたので、彼女の想定とは違う思考を曜ちゃんがしてたんだろう。

 

 興味本位で聞いてみたけど「ごめんなさい」と真剣な調子で頭を下げられたので、あまりにも可哀想だからそれ以上問い詰められなかった。

 こちらを殴りつけてくれれば「私が殴られたんだから言えるよね」と続けられるけど「これ以上は聞かないで」と頼まれてしまえば、殊勝な私は「みんなも聞かないこと」と見回しながら言うしかない。

 

 ……おそらくこれは、今回のループ現象とは無関係と思われる。どちらかといえばμ's再結成の問題を後押しし、私にとっても都合が良い。

 もしもAqoursが自分たちと同じように9人で、と言うなら大歓迎だ。

 同じ時代にスクールアイドルにはなれなかったけど、同じ時代にみんなで集まることはできる。

 

 手荒な連中と結女に殴り込みをかけたのも無関係のはず――Liella!が神津島に送られたのは千砂都ちゃんの失言がきっかけだけど、どちらかといえば「鹿角理亞の島流し」が大元の理由であり、それに巻き込まれたに過ぎない。

 

 私が希に「私とニコがどうして9人で集まりたがらないか知っていたわよね?」と確認し、彼女が震えながら「今を生きるスクールアイドルのため」と答え――まあ、そこまで忘れたとは思わない。

 できるだけ自由でいて欲しいから「自由人っぽく振る舞うように」と忠告して「いいの?」と言うから「私がお願いしてるのよ」と苦笑いした。

 

 私もそうだけど、ニコも気がついていた――自分たちが仲が良すぎることを。

 何かがあれば――や、何もなくても9人が簡単に集合できる。忙しい面々もいるけど、予定を立てれば「どうしても無理」はありえない。

 

 ……それこそありえないんだ、私たちは高校卒業して何年経つ? 連絡が取れなくなることもない、顔を合わせるのは数年ぶり、もない。

 ニコがアイドルやってる時代、私が大学に通いつつぶらぶらとしていた時代……忙しいはずのニコも一年に数回9人で集まる時には参加していた。

 

 海外留学していたことりは「ごめんね」と言いつつ、ちゃっかり参加する機会を持っていた……まあ、私がなんたら女学院に殴り込みをかけた結果、パリと日本とを行き来しやすくなったのも影響してるんだと思う。

 

 学校の偉い人に「また金髪とチビがこっちに来てもいいのか」と脅迫したみたいだ……ま、まあ、ことりがそういうワガママを言えるほど才能を発揮したと……信じたい。

 

 このまま仲良しでいいのか、と、考えるのが私の悪い所で……ニコに「このままでいいのかな?」と聞いた。

 さすがのニコでも「何が?」と意図がわからなかったみたいで、再度説明を求められてちょっと言葉に困った「私たち仲良しでいいのかな?」と言って良いのか悪いのか。

 

 でも、話し始めてしまったから「9人で集まりすぎじゃない?」と言うしかなく、言われたニコも「こちとら時間を作って集まっとるんじゃ」と怒気を含ませた言葉を吐くけど、しばらくして「そうよね」とうつむいた。

 

 

「……私ね自信があるの、何年後の夏でも9人で高校時代に戻ったように……すごく楽しい夏を過ごせるって」

「馬鹿じゃないの? でも、私もその光景が思い浮かぶわ。真姫ちゃんは何年経っても変わらないんでしょうね」

「最初のうちはねかっこいい顔してるのよ、私、大人になりましたみたいな……酒が入って、ボロが出るの……同じなのよ」

「どうする? 子ども……あー、恋人とか、まあ、結婚とか……そういう、μ'sよりも優先しなければいけない事情があっても……こちらを優先する、なんてことになったら」

「ダメ?」

「……ダメだから、言ってるんでしょ?」

 

 できればニコから「ダメに決まってんでしょ、何を言っているのよ」と背中を押してもらいたかったけど、あなたはダメだと思ってるんでしょ? と本心を読まれてしまった。

 

「……正直、私が言って聞いてくれるとは思わない」

「絵里、自分だけがそう、そんなふうに考えないことよ、私が言ったって、何を言ってるのニコちゃんよ……穂乃果からすればね」

 

 忙しくても穂乃果から誘われれば「まあ、穂乃果が言うから」と、私も考えるだろうし「こんな風に集まるのは不健全だと思う」と提案しても「何言ってるの絵里ちゃん」で終わる。

 

「……しょうがない、私が集まれない状況を作るか」

「あなたには無理でしょ?」

「じゃあ、ニコにはできるの?」

「私にも無理よ」

 

 こちらの様子を伺うこともなく楽しそうにしている希には申し訳ないんだけど、彼女が同調してくれる理由付けをした。

 もちろん嘘じゃない、スクールアイドルをやっていたから卒業しても仲良し――私たちがやってたのは部活だ。

 学校を卒業したら一度終わらせなければいけない、終わらせるからこそ仲間と頑張れるスクールアイドルだから。

 

「高校卒業して……もう一度ラブライブ! なんてコトができるグループは……やっぱり不健全よ」

「まったく……あんたこそ、そういう状況にならないように健康には気をつけときなさいよ?」

 

 父親を早くに亡くしたニコに「健康には注意するように」とここで忠告されたにも関わらず、結局私は無理をして倒れるハメになった。

 彼女の思惑通りかそうでなかったのかは不明だけど「くたばる前に9人で集まる」方向になったのは……何と言うか不健全ではあるけど……。

 

 

 私とニコとで「かれこれこういうことで」と希に説明をし、念押しするようにニコも「あなたに任せるから」と言う。

 どちらかといえば9人で集まるのを望んでいた彼女は「え? 今のままでもいいじゃない?」と言うけれど「いつまでも学生気分でいられないのよ」「だんだんとそういう方向性でね」と説得をした。

 

 ……が、希が不安を覚えたのか、花陽も巻き込んでしまった。希一人だけだったら「三年生の考え方で」とみんなに説明でき「希は巻き込まれただけだから」とフォローできたのに、凛との関係に迷っていた花陽を「後のスクールアイドルのために9人で集まれないようにする」ためのメンバーに入れてしまった。

 

 私がすっ飛んでなんとかしようと思いきや、ニコの行動が早すぎた。

 自分が到着する頃には「希が絶対に何とかしてくれるってさ」と首を振りながら言うので、ニコにも希にも弱みのある私は「なんとかできなかった時にはわかってるでしょうね?」と強く言うしかなかった。

 

 なんか9人で集まる機会が少なくなったよね、と穂乃果に言われても希一人が協力者なら「やっぱりなんやかんや言って忙しいもの、社会に出てると機会が少なくなるのよ」と言えたのに。

 

 穂乃果よりも年下でかつPrintempsで同じユニットを組んでいた花陽を仲間に引き入れられたので「でも、花陽ちゃんまで受けが悪いんだよね~?」とまで言われてしまうので「それぞれに大切なものができたのよ」と、白々しく言うしかなかった。

 

 おかげで「どうしても花陽さんを妹のサポートにつかせたい」のダイヤちゃんの願い事を「花陽のやりたいことを優先」と言えなくなってしまった。

 そしてそちらの方が都合が良かった。距離をとれれば「花陽は忙しいから」と彼女を守ることもできた。

 

 ちょっと話ズレてしまったけど、ニコは「いい、9人が集まる状況になった時……集まれないメンバーが嫌われてしまいそうになった時、その時は絶対に何が何でも9人が集まる状況を作るのよ? 花陽には絶対にそれは忠告しなきゃダメよ?」と。

 

 ニコは「東條希は自分の忠告を覚えていたけど間違えた」で「あなたを信用していたのに」と泣きながら怒ったけど。

 私は希とニコ以上に仲がいいと思ってるから「覚えとるに決まってるやん」って嘘を看破し「希?」と本気で憤慨して睨みつけてしまった。

 

 凛やことりから「尿漏れ」と希がネタにされてるのを止めないのも、ニコは嘘をつかれたのに感づいて怒ってるからだし、私にも許せない部分がある。

 もともと自分たちの提案で希の意思を捻じ曲げたから必要以上に言うことはないけど……私たちの「花陽が悪者になってしまうような状況は避けてね?」を忘れられてしまったのは、やっぱりもうちょっと怒って良かったんじゃないかと思う。

 

 が、どれもこれも「しなければ良かった」過去ではあるけど、巻き戻してまでやり直そう――とはならないはず。

 

 神津島から戻ってきたみんなが「すごいユニットがいました」と「これから自分たちも頑張らないと」と言ってたのは……うん、これはなさそう。

 ただ、調布飛行場から小型飛行機で神津島に向かった際に「今度は船にしよう」と結論づけるイベントがあったのも……「しなければ良かった」範囲の些細な話だ。

 

 ちゃんとエチケット袋に出来たって言うし、酔っ払った真姫が一回耐えきれずに私の顔に吹きだしたことがあるし。

 「殴られたり蹴り飛ばされたりするよりも痛くないから気にするんじゃない」と言ってしまってから、なおさら彼女の好感度が上がってしまったけど……。

 

「……そういえば、真姫がコソコソと何かをやってる? 梨子ちゃんに挑発したのも、シチュエーションではあり得るけど……西木野真姫の行動としてはおかしい、あえて、あのような態度をする必要があったんじゃないか……や、あの後に曜ちゃんがクビになって……うん」

 

 どこまであの時の状況が「現状」になってるかも確認しておかないと、何も知らないふりをするのも……結構疲れるんだけどな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。