アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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かのんキレる

 皆様は世界三大珍味をご存知だろうか? いずれも癖の強い食べ物で好き嫌いがはっきりしている――あいにくと絢瀬絵里としては、食べる機会が少ないために、素晴らしいものとは判断できないけど。

 とにかくまあ、高級食材……あるいは価値のあるものとして取り上げられる。

 

 第二に美味しくない食べ物とは何だろうか? 好き嫌いは別にして、美味しくないのは体が拒否をする、あるいは戻してしまう――そんな食べ物を美味しくないと言っていいんだと思う。

 

 あれが美味しくないこれが美味しくない、そんな話ははたまた論争の種になりがちだけど、すごく美味しくない物っていうのは、誰しもが「これは美味しくないから捨てましょう」と結論づける。

 

 あらゆる人たちが汗水流して苦労して作った代物を不出来であるから、とナシにしてしまうのは心苦しくもあるんだけど、食べたところですぐに出てくるような物体は、やはりなしにしてしまった方がいい。

 

 あの温厚で、誰に対しても心優しく、自分を犠牲にしてでも誰かを守りたいと希う強い少女――や、もう少女とは呼べない年齢だけども、あの、小泉花陽でさえ「そんなものは食べちゃダメだっていつも言ってるんじゃない!」と、 オトノキ時代には生徒会長として、はたまたスクールアイドルの先輩として、敬意を抱いていた金髪の頭を強くはたく。

 

 そのような物体なのだ――世界三大……激マズ料理人達が作る代物は、どんな聖人君子であろうとも「これは毒物だから捨てなくちゃだめ!」と、厳しい態度を取らせてしまう――そんな、とてつもなく凶悪な物体なのだ。

 

 花陽の幼馴染である星空凛の作る料理というのは、これまた独創的な味をしている、口の悪いことりなんかは「独創的の独りって漢字が毒物の毒だよね」と表現するけど、的確かどうかは任せる。

 度々お見舞いされれば神様も「人類は神を超越している」と表現する。

 

 脂汗を流しながら完食する姿があまりにも可哀想なので「仕方がないから食べてあげるわよ」と、苦笑いしながら口に入れる。

 

 オリジナリティって言葉があるけど、オリジナルっていうのは……どんなものでも許されるっていう言い訳の言葉じゃないんだな、ある程度基礎となるものがあって、そこからアレンジを個人で加えるのがオリジナリティって他の人から表現されるものなんだと……私なんかは考える。

 

 凛の場合は根幹とする料理センスそのものが破綻しているので、作り上げられる代物は、当然破綻した物体Xになってしまう。

 

 だけども「絵里ちゃん食べてくれないの?」と首をかしげながら、上目遣いをされてしまうと、花陽が眼でこれは捨てるべきだよと懇願するように眺めていても「食べないわけがないじゃない」と、笑いながら言ってしまう。

 

 その笑いには苦笑いも含まれているけど、もちろんおくびにも出さない、遠巻きに眺めている一同が「アイツは底抜けのバカなんじゃないか」と考えているのが、眼を見ただけでわかる――こういう時に一番辛いのが、近くにいる花陽の呆れたようなため息で、本当にこの人は何を考えてるんだろう? 

 

 と、言わんばかりなのが本当に心苦しい。先輩に対してそのような態度をとれば、私に対して好感度の高いPrintempsの面々が先輩に調子こいた態度とってるんじゃない。

 

 なんて考えるのが手に取るようにわかる、彼女達の性癖はやや特殊で、感情をできるだけ表に出さないようにするから、こちらも性根を読み取って気がつかないふりをしているけど……好きな相手にはできるだけ素直になってほしいものだ、人間は普通素直な好意の方が嬉しく思う。

 

 南ことりも、顔と声は天使なのに発言は悪魔にしか聞こえない――そんな陰口を叩かれなくてすむ、陰口を言うような人間と仲良くなりたくない、とことりは笑いながら言うけど、敵はできるだけ作らないでいただきたい。

 

 敵なんてものは自分の知らないうちにできているものだ、とA-RISEのリーダーであるツバサも笑いながら言うけど、私もそう思う。

 でも、自分で作ってしまうのと、勝手にできてしまうのとは違う、敵意には回避をする術がある――そうしないと私のように面倒ことばっかり送る人生になっちゃうわよと、いつか苦笑いしながらいう日が来るだろうか。

 

 ……絵里ちゃんの抱える問題に巻き込まれてこっちはいい迷惑だったよと、笑いながら言われる可能性は大いにあるかな。

 そう考えていたとしても、直接口には出さないで欲しい、いい迷惑だったという言葉は褒め言葉にはなるまい。

 

 さて、少し話がずれてしまったけど、激マズ料理人は星空凛ただ一人ではない、近くにメシマズが一人でもいるだけで珍しいというのに、まだ何人も紹介しなきゃいけないというのが頭が痛い。

 

 考えてみてほしい、もしも料理が苦手だと言うなら人間には「努力をする」という特性がある。

 例えば恐竜は強く生きるために体を大きくして、世界的にも覇権を握ったと考えてもいい、ところが寒冷化に対応ができず絶滅してしまったわけだけど、 体を大きくする努力をして、一度でも頂点に立つ――そんな存在は一握りだ、歴史的に絶滅したと結論付けられても、人間がそうならないとも限らない。

 

 後世の歴史書で人間ではない何かが「人間と呼ばれる愚かな生き物がいた」と記す可能性はないわけじゃない、少なくとも絢瀬絵里がそこまで生きていたら、人間ではない何かに改造されている。

 人間離れしているとネタにされている自分が、 実は人間ではない存在でしたなんて勘弁していただきたい。

 

 例えば君ってデビルマンに顔が似てるよね、とそんな風に言われたとする。涙する人もいるかもしれない、私も「絢瀬絵里ってデビルマンにそっくりじゃない?」と言われたら、心に大きなダメージを受ける。

 

 でも本題はそこじゃない、デビルマンに似ているよね、でも、あなたは人間だよね、なら、まだネタになるレベルだ「私ってちょっとデビルマンぽいのかしら?」と首をかしげるぐらいでちょうどいい。

 ただ、これが本当にデビルマンだったら話は別だ、似ているんじゃなくて、デビルマンだったら、もう、それは人間じゃない。

 

 

 人間離れしているだったら、そういう存在もありかな、で許されることでも「実はデビルマンでした」では、周囲の人間もドン引きだ「アイツはデビルマンだったのか」と言われるだけならまだしも「あいつはデビルマンだから距離を取ろう」とμ'sのメンバーに言われたら凹むし、ツバサに「デビルマンとは勝負できないから」と見捨てられたら死ぬほど悲しい。

 

 が、私の周囲の人間には味覚が人間のそれじゃないんじゃないか、と疑わしくなるメシマズが何人もいる。

 実は家系にデビルマンがいて、調理技術に著しく支障があるんですと告白されても「まあ、それならしょうがないわね」と納得してしまうようなメシマズが何人もいる。

 

 なんでそんな人間が揃いも揃って自分の周りにいるのか、と考えてしまうけど、類は友を呼ぶって言葉で表現されないと願いたい。

 周りの子が美味しいと食べてくれる料理が、実はそうではなかったとかなら、申し訳なくて首をくくりたくなってしまう。

 

 ……鹿角理亞の作るお菓子は見た目は素晴らしい、いっそのこと「調度品」とか「モニュメント」として活用したい、外に長期間放っておいても、なぜか腐ることがない、姉の聖良ちゃんが「虫もよらない」って言うから当然なのかもしれないけど……やっぱり当然じゃないんじゃないかな?

 

 ひとまず彼女のお菓子を一口食べると、常人はトイレに駆け込む、見た目が普通なものだから、被害者は数多くいる。

 

 西木野真姫を通じて研究材料にされたこともあった、が、中身は普通のお菓子だと判明した「現代の技術では、コレを食べると吐き出してしまうのかがわからない」と研究者の皆様が総じて首を振ったそうだ。

 

 現代の科学技術では炭火で調理をするとなぜ魚が美味しくなるのかわからない、そんな研究もあるそうだから、ひとまずはそういうことにしておこう、わからないものは分からないのだ。

 

 

 最後に紹介するのは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の中でもトップクラスの知名度を誇り、人気も高い優木せつ菜。

 彼女の作る料理は……独特だ、以前まではツバサの弟でもある雪菜クンが相方としてデスゲイズ的な料理を作っていたけれども、残念ながら彼はかのんちゃんの手ほどきによりデビルクックとしての地位を献上してしまった。

 

 どうすればいいのかとツバサも涙目で弟の作る料理を食べながら言っていたけど、きちんとした指導により調理技術は向上した現在、姉の甘やかしが大きかったのではないか説が広まっているけど……個人的には渋谷かのんにとんでもない資質があるんだと考えている。

 

 それを含めて考えてみたい――この度のイベントの発言は千砂都ちゃんの「この中で一番美味しい料理を作る人って誰なんですかね?」だった。

 

 これがもし「この中で一番料理が下手くそなのは誰ですかね?」だったら、凛も、理亞ちゃんも、せつ菜ちゃんも乗り気にはならなかっただろうし、それどころか「そんなわけで料理を作るなんて嫌」とゴネて、ストレス解消のために私がサンドバッグにされたかもしれない。

 

 体の調子は絶好調じゃないけど、一発や二発蹴り飛ばされても平気になった。人体に悪影響を及ぼすほどに蹴り飛ばすのは罪人扱いされてもしょうがないから、やめておけと忠告したい、人の話を聞いてくれるかどうかは分からないけど。

 

 ともあれ凛たちが「いくら人から料理が上手ではないと言われる自分でも」と考えていても「こいつらには負けることはない」と、うまく煽った、それもまた千砂都ちゃんの想定通りだったんだと思う、なかなか計算高くて良いことだけど、彼女の完全たる誤算は本性を示したかのんちゃんが予想以上に怒り狂ったこと。

 

 

 あの時のことを思い出すとまだ肝が冷える。

 

「お前の団子をむしり取って、Liella!で美味しくご賞味してくれる……穂むらのお団子のあんに漬け込んでな!」 

 

 ひと癖もふた癖もある女の子だとは思っていたけど、感情が高ぶって怒り心頭に発するとはあそこまでやさぐれるとは。

 発言の内容も恐ろしかったんだけど、千砂都ちゃんにとってはお団子を毟り取られるというのが怖かったみたいで、関節の外れた人形みたいにペコペコと頭を下げる姿は、ツバサと上野動物園に遊びに行った時に亜里沙に「パンダの人形を買ってくるから」と約束をし、楽しさにかまけて手ぶらで帰宅。

 

 妹から「パンダは?」と尋ねられて全てを思い出し、海未から習った土下座をしながら、何度も何度も頭を下げた姿が……かのんちゃんに「後生だからお団子だけは」と懇願する姿とよく似ている。

 

 その姿があまりにかわいそうなものだから、メシマズ料理人たちが「自分が一番美味しい料理を作る」と言っている姿を見て「試食は私がするから」と言うしかなかった。

 

 甲乙つけがたい、どれもこれも素晴らしい、とごまかせたと思うけど、相変わらずひどい味だった。

 

 

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