アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里は三船栞子にお見舞いされる

 朝香果林という女の子は誰かの問題に対して――特に仲のいいエマちゃんが抱える問題に対しては積極的に前に出て解決しようと動くけれど。

 コト、自分の抱える問題に対しては積極的に逃避する傾向にある――自分が強く出られる相手に対してはAT全振りで攻撃してくるけど、いざ、力が通じないと見るや、なりふり構わず逃げ出してしまう。

 

 3年生になろうかって時期になってまで、寮でお手洗いに行こうとすると迷うのは、攻撃力に全振りしたせいで、方向音痴の解決方法をアドバイスしようとする人間を「攻撃する相手」と認識――もちろん積極的にアドバイスしてくるような相手にマウントを取りたいだけの奴がいるのは私だってよく知っている。

 

 攻撃する相手の攻撃力が低いか、方向音痴だって構わないと彼女自身が認識するか――ただ、自分の弱点を露出するコトに恐怖を抱いているから、そこに土足に踏み込んでアドバイスをしようなんて、まさにマウント取りに過ぎない。

 

 それにその手のマウント取りならば、こんなアラサーのおばさんではなく、同年代の友達に尽きる――年上の人間がしゃしゃり出て問題が解決したとしても、彼女のためにならない。

 どうせ私は彼女よりも早く死ぬことになる――10も歳が離れていれば自然にそうなる。

 

 ただ、同年代の友達でもアドバイスの加減を間違えれば、果林ちゃんはあからさまにムスッとして、私は怒っていますという態度をとる。

 怒っていますという態度をとるけど、何に対して怒っているから周囲から判断しづらいので、エマちゃんも「何かで怒らせた」 くらいしかわからず、そうなれば何かを言うのはやめよう――って。

 

 おそらく果林ちゃんにとってエマちゃんはAT全振りで攻撃できる相手なんだろうけど、彼女がそんなヤワな相手ではないと私は判断しているし、エマちゃんと交流している大抵の人間は、精神的に強い人間だとわかっている。

 とても優しいがゆえに踏み込まないでいるのを「弱さや甘さ」と判断しているのは、若さなんだろうなって思う。

 

 この度――どうして栞子ちゃんを避けているのかをエマちゃんに追求されて、おかんむりな果林ちゃんを見て、解決は難しそうだなと――そんなことを考えていたら、ついついお説教くさいモノローグをしてしまった。

 

 

「わだすが、こんなにおぼこな女の子だから」

 

 栞子ちゃんが原因を追究するけど――そういう事情で苦手にする女の子は確かにいる――が、どっちかって言うと、あからさまに田舎の女の子なのに、見た目はトップクラスに秀でているから、そのギャップが癇に障るのかも。

 際立って悪意を向けるようならこちらも対応するけど、苦手であるそうではない、なんて、大人数で生活していればごまんとある。

 いちいちしゃしゃり出て、こうしなさいああしなさいとの対応は教師の方々に任せる――こちらを頼ってくるのならば話は別だけど。

 

「そういうところが可愛いのに――絵里ちゃんはどう思う?」

 

 以前までは尊敬の念が多分にあったのに、ツバサちゃん事件以降、ついでなのか私もちゃん付けで呼ばれるようになった。

 なんとなく同年代の友達に対する対応を予感させられるけど、距離を近づけるように言ったのはむしろ私の方だ。

 だから、私の望みを叶えて彼女は積極的に動いているのかもしれない――同年代どころか年下に見られてる気もするけど。

 

「おそらくだけど、栞子ちゃんは彼女にとって強く出られない相手なんでしょうね」

「ええ!? わだすなんて、果林さんからしたら、石ころとお月様くらい差があるとよ!」

 

 強く出られる相手には強いけれど、苦手にする相手には積極的に白旗を立てる習性があるのを知っているのか――や、以前、何食わぬ顔をして補習をサボっているのを、エマちゃんが強制連行して先生の前に連れて行ってたから、苦手にする相手は有機物無機物問わないんだなって。

 

 なお、果林ちゃんが実力行使で逃げ出そうとすれば、控えていた私ががんじがらめにしたので、強制連行される結果は変わらなかったハズ。

 エマちゃんの低音ボイスに果林ちゃんが引きつった笑みを浮かべながら、ヘコヘコと頭を下げる様子を――私以外が見てなかったのはある意味救いだったのかもしれない。

 

 今語ったシチュエーションだって、エマちゃんが果林ちゃんの弱点を流布しようとの意図があれば、私以外の誰かが見ている場所で強制連行だってできたんだ。

 

「強く出られない事情があるんでしょうね」

「……もしかして」

 

 エマちゃんが何事か思い当たったようで、絵里ちゃんと真剣な調子で呼びかける――真剣でもちゃん付けなんだなって、無粋なツッコミをしなかったけど――やっぱりどことなく敬意が損なわれているような……や、距離感が近いのは嬉しいんだけど。

 

「栞子ちゃん、地元の料理って何かあるかな?」

「わだすの地元の料理は都会のファンシーなお姉さん方には通用せんとよ」

 

 通用するかしないかはこちらが判断する――として、彼女に地元の料理の詳細を尋ねたところ――都会のお姉さんどころか、私の知り合いの誰しもに刺さらない可能性すらある。

 Aqoursの花丸ちゃんが古くからあるお寺の娘で、その手は料理に免疫があるかもしれないけど……かなりギリギリ。

 

 が、昆虫食に関してはエマちゃんもそれなりに明るいようで、夕食に出せないかなと――積極的に止めて欲しかったんだけど、ここで私が「では地元の料理で」と進言すれば、今日の夕食のメニューは多くの廃棄が望まれる。

  当然そんなことになれば理事長から「夕食のメニューで苦情がきているんだけど」と般若みたいな顔をしながら私の肩を叩き、管理人は首を挿げ替えられるかもしれない。

 

「さすがに、夕食のメニューとして出せないから――ちょっと考えがあるの」

 

 栞子ちゃんが食べると美味しいと語っている以上、凛の料理や理亞ちゃんのお菓子みたいに、人間が食べると痙攣する料理ではないと信じたい。

 食べる前に恐怖は覚えるかもしれないけど――

 

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