アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里は矢澤にこの酒に付き合う

 寮の管理人を務めるまでは4月は忙しいと聞いていても「対岸の火事」でしかなかった――私に思わぬ逆襲の一手を食らったニコだったけど、 職員会議だと言われては彼女を解放するしかなかったし、エマちゃんに「新しい子がたくさん入ってくるから歓迎会の準備」と言われてしまえば「全身全霊で歓迎しなければいけないわ」と、真顔を作る。

 

 果林ちゃんにもミアちゃんにもランジュちゃんにも揃って「意外」と言われるのが、絢瀬絵里のイベント好きな性格である。

 何かの記念日はすぐに忘れてしまう私でも、バレンタインであるとか、ホワイトデーであるとか、 卒業式であるとか、退寮式であるとか――その中の一つ入寮式もまた、全身全霊で盛り上げなければいけないと張り切る。

 

 本当は補習地獄を乗り越えた果林ちゃんの進級祝いもしたいではあったけれども、彼女から「新入生を優先させて」と言われてしまえば「かりんちゃん進級おめでとう」と書かれたケーキの出番はなくなる――文字が書いてあるチョコの部分を取り、期待に胸を膨らませる新入生の皆様にケーキを提供した。

 

 文字が書いてあるチョコレートは、エマちゃんに「どうしましょう」と相談したら「後で机の上に乗せておくよ」と言われたので「任せるわ」と告げて、料理作りに励む。

 

 今年の新入生は逸材揃いだ――なんて言ったって理事長が「ラブライブに優勝するための戦力を揃えた」と言ってしまうくらいに。

 ただ、そのための主戦力が揃いも揃ってやる気がないのは、何も私のせいばかりではない。

 

 ランジュちゃんやミアちゃんの補佐をしている栞子ちゃんが「わだすはラブライブ優勝より周りのみんなと楽しくやりたい」と言ったため、ランミアの両者も「栞子の言うとおりにしたい」とし、理事長がいくら絢瀬絵里の胸ぐらを掴んで「コイツをクビにするわよ」と脅迫しても「寮生にリコールされたければどうぞ」と返り討ちにあってしまう。

 

 なお、寮生だけではなく教師の方々にも管理人としての絢瀬絵里の評判がめっぽう良いようで「クビにしたら私のクビが飛ぶわ」と、理事長は思い留まってくれた。

 

 自分で雇った以上は私をクビにするつもりはないようで「冗談だからね?」と、後日懇願するように言われたけれども、私だってわかっている――おそらくわからなかったのは、栞子ちゃんを中心とした3人組。

 

 そんなこんなで――新入生の入学式から二週間も過ぎ「よっちゃんのアイドルデビューは」自分達からも――Aqoursのメンバーからも、頭の片隅から抜け落ち「シングルの予約がたくさんです!!!」と「よっちゃんの喜びの声が届き」「予約を忘れていた」「箱買いしますわ」とのメッセージがアプリに踊った――が、Aqoursのリーダーの「忘れていた」は思わぬ騒動を呼ぶ。

 

 後日彼女が「不適切な発言でした」と謝罪と土下座画像をメッセージアプリに上げて「私も忘れていました」と同調する金髪ポニーテールの土下座画像がアップされたことから、様々なメンバーが「忘れていました」とのメッセージ土下座画像が上がる。

 

 それらを観たよっちゃんが「なんでみんなして忘れてるのよ!」と、半ギレのメッセージを上げたけど、そこですかさずりこっぴーが「あなたが事情を隠していたから」と、待っていましたと言わんばかりに反撃のメッセージ送り――

 

 CDデビューしてめでたいはずの主役が「申し訳ありませんでした、今後は隠し事は致しません」と土下座し、自分たちの中ではこれで手討ちということになっている。

 

 

 さて少し前に「ラブライブを優勝するための戦力を揃えた」と理事長が語ったけれども、その戦力を指導するのが矢澤にこの役回りであり、そのためにわざわざUTXから苦労して引き抜いたのである。

 そして、理事長が鼻高々にして優勝するための戦力と謳った少女たちは、寮生として私が面倒を見る立場だ。

 

 英玲奈の妹の統堂朱音ちゃんの歌唱力は素晴らしく、この歌を最初から最後までステージでちゃんと披露できれば彼女一人で優勝できると、パフォーマンスを見たみんなが判断するほど。

 

 が、彼女の弱点は100メートルを全力疾走すると途中で倒れるという体力のなさ、なにせ準備運動するだけで息が上がってしまうので、そもそもお客様の前でパフォーマンスがなせるのか――

 

 子役としてデビューし、彼女を知る人間からは「この子がスクールアイドルをやったら知名度の差で負ける」と言われ。

 真姫の妹でもある「西園寺雪姫」ちゃん――が、演技や営業には長けている彼女も、アイドルとしてのパフォーマンスは本業ではないようで、歌唱力もダンスも中途半端と言わざるを得ない。

 

 もう一人動画サイトでダンスの天才と言われていた九璃々ちゃん――エマちゃんから「きゅーちゃん」と呼ばれているけれども、読みは「きゅう」ではなく「いちじく」である。

 

 なんでも子どもの頃に見たμ'sの絢瀬絵里っていう人に憧れたらしく、独学で研鑽を重ねた結果、理事長の目にとまり学園に入学したそう。

 

 けども、私の目の前で「絢瀬絵里っていうひとに憧れまして」と言い、寮のみんなが一様に首をかしげ、言われた私も「そうなんだ、絢瀬絵里ってどんな人だか知ってる?」と言うと、ペラペラと流暢に語りあげ、私が思わず「なんでそんなことまで知ってるの?」と言う内容まで把握していた――そして未だに私は「絢瀬絵里」の「同姓同名の別人」扱いを彼女からされている。

 

 そしてそんな三人を統括するのが――綺羅ツバサの弟にして、入学式当日5人の男子生徒から愛の告白をされたと言う、天性の可愛さを持つ綺羅雪菜氏――一つ一つの能力では上に紹介した3名に劣る部分があれど、のびしろの高さと、結局のところあの3人をまとめられるとしたら綺羅雪菜しかいないと、遠い目をした理事長に言われてしまえば――うん。

 

 メンバーの能力の高さは折り紙つきだし、まとまりさえできればラブライブ優勝も夢ではない――が、スクールアイドル部の皆様の知名度は――今のところ、優木せつ菜が入部したスクールアイドル同好会に負けている。

 

 部の指導に取り組んでいるニコが自宅に戻らず寮生に混じって生活しているのは「メンバーが寮生だからね」との理由だけではあるまい――だけども「家に帰りなさい」とかわいそうなことは言えない――彼女の酒に付き合えるのは、今のところ私しかいないし――あまりに不憫で、かわいそうなものだから……。

 

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