アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里は褒め言葉が回りくどい女の子の頭を撫でる

 自己紹介をすると「え? あのμ'sの?」と言われるパターンが多かった。

 コト、スクールアイドルをやっている女の子がいるシチュエーションにおいてだと、前置きをしなくちゃいけないけど。

 

 かしましい女の子が揃う空間で絢瀬絵里って名乗れば、だいたいがμ'sのって繋がるので、高咲侑ちゃんにも上原歩夢ちゃんにも、同様の感想が見られると思いきや。

 

 いくら罰ゲームでニジガクの制服を羽織っているとは言え、自分の名前と管理人の仕事をしていると説明して「よろしくおねがいします」的なモノで終わってしまうとは思わなんだ。

 私は自己紹介をしてμ'sって続かなかったことに感動すら覚え、久しく体験してないものだから、この子たちとは仲良くなれそうと、親睦を深めるトークをしようと口を開いたら。

 

「なんだニワカですか」

 

 おおっと、早速スクールアイドル部のメンバーが新人にマウントを取ろうとぶっこんできた! と、思って発言の震源を確かめると、ニコが驚いているし、西園寺雪姫ちゃん、統堂朱音ちゃんの双方も驚いているので、本日カナちゃんのスーパーに遊びに行っている綺羅雪菜クンは欠席なので、残るはただ一人。

 

 ダンスしているだけのPVではかなりの高評価を得、類まれな容姿からニジガクの妖精扱いされているけれども、興味があることにしか口を開かない、興味がない人間には歯牙にもかけないという。

 

 ツバサに「こやつ人間か!」と言われ、理亞ちゃんにも「妖精だから人間の法が通用しない」とディスられてしまった、九璃々ちゃん。

 

 踊りでは抜群の才能を誇っていると思っているのか、ツバサや理亞ちゃんと言った面々とダンス勝負を、と、歯牙にもかけられなかった両者が挑戦を申し込んでも「自分と勝負ができるとしたら絢瀬絵里だけです」と言って突っぱね。

 

 じゃあコイツなら良いのか、とツバサに足で指された私の顔を見た璃々ちゃんは「そのヒトは同姓同名の別人です」と見事なオチを付け。

 絢瀬絵里の同姓同名の別人の私は「いつか絢瀬絵里に会えると良いわね」と言いながら、頭をなでてあげることしかできなかった。

 

 なお、身体に触れる行為だけでも、許されるのは雪姫ちゃんと朱音ちゃんと私しかおらず、エマちゃんが近づくと威嚇するため、果林ちゃんもよく璃々ちゃんには威嚇している。

 

「そのヒトはμ'sの絢瀬絵里の同姓同名の赤の他人ですが……」

 

 ニコが顔を背けて吹き出し、両隣にいる彼女と唯一距離が近い友達も顔を俯かせて笑っている。

 もちろんそれは、私のことを同姓同名の他人だっていう勘違いに吹き出しているんだよね? 赤の他人疑惑が生じているわけじゃないよね?

 

「これからスクールアイドルをしようというのなら、絢瀬絵里と名前を聞けば、あの天上天下唯我独尊、神にも等しい絢瀬絵里さんですか、とまずは勘違いしなければいけません」

「私はそのヒトとは同姓同名の赤の他人だけど、この子、興味を持つ人間にしか口を開かないから、悪く思わないで」

 

 そう、ツバサと理亞ちゃんにさえ、強引に迫っていかなければ完スルーの姿勢を取ったチャレンジャーの璃々ちゃんが、わざわざ口を開いて「何事か」との発言をした。

 

 朱音ちゃんと雪姫ちゃんの双方も私にかなり憧憬を抱いているから、璃々ちゃんが先んじて「何だオマエ」みたいな発言をしなければ、二人からも侑ちゃんと歩夢ちゃんの印象は悪かったに違いなく。

 

 璃々ちゃんはトテトテという効果音が似合いそうな歩みでこちらに寄り、頭を撫でろと言わんばかりに体を寄せ、赤の他人だけども、彼女が決して悪い子ではないと知っている私は、璃々ちゃんの希望通り頭を存分になでてあげることにした。

 

「同姓同名の赤の他人かもしれませんが、私の頭を撫でる才能は持ち合わせているようです」

「ちなみにその絢瀬絵里さんって今なにをしていると思う?」

「月収100億ほど稼いで、優雅にバスタイムでしょう」

 

 いったいなにをしたら月収でそれほどまで稼げるのかは、凡人の絢瀬絵里にはわからないけれども。

 璃々ちゃんがバスタイム時の洗髪からドライヤーまでをご所望なので、希望通りやってあげることにしよう。

 

 や、ココに来る前は何から何まで世話焼きのお姉さんに全部やってもらってたそうで、やってもらわないと制服にすら着替えなかった彼女も、それなりに生活力を身に着けてきたから……私としては毎度やりたいけれども、毎度やると「甘やかすな」とめっちゃ怒られるから……。

 

 

 

 さて、璃々ちゃんのおかげで「口を開けばわかりやすい毒舌」を披露する朱音ちゃんも「遠回しにめっちゃ酷いことを言う」雪姫ちゃんも、侑ちゃんや歩夢ちゃんにはかなり下手に出ていた。

 

 トリミングされている犬みたいになってる璃々ちゃんは、むふーと気持ちよさそうに鼻息を吐き、いい仕事をしたと言わんばかりに目を閉じ、撫でられるがままになっているけれども。

 

 最初はなんで私が彼女を褒めているのか分からなかったニコも、優しい態度でスクールアイドルについて説明している部の二人を見て「二人の評価を上げるためにワザと犠牲になった」コトに気が付き「こりゃ、雪菜クンにはできない所業だわ」と首を振っていた。

 

 実力ではセンターになるにふさわしい才能を持った彼も、他のメンバーから信頼されるまでには至らない。

 3人が3人それぞれに扱いが難しい部分があるから、仕方がないとはいえ、いつまでも璃々ちゃんと威嚇しあっていてはしょうがない。

 

 口からポロッととんでもない毒舌を出すことがある朱音ちゃんが、クラスメートと仲がいいとの情報を聞いた英玲奈も「誰かと無難に交流できるようになるなど高校卒業を待つかと思ったが」と、溺愛しているとはいえ、性格に難ありを把握しているので、驚きを隠せない様子だった。

 

 真姫も「自分と似てプライドが高くって」と雪姫ちゃんの性格に難ありの部分を自覚していたので、クラスメートと仲良く過ごしていると聞いて「姉の私に気を使わなくたっていいのよ」と言ったくらいで。

 

 や、真姫がプライド高いかっていうと首を傾げるけど、ともかく、姉二人は妹になにかあったらすぐさま飛んでくるつもりはあったよう。

 

 ケド、両者がなにか失言しようとすれば、璃々ちゃんがそれ以上のトンデモ発言で場を乱すので、結果的に彼女たちは守られているし、守られていることに気がつけば3人のユニットとしては完璧になる。

 

 そこでの雪菜クンの立ち回りについてはニコに任せるつもり、いまのところ想定すら無意味だとは思うけど。

 

 

 

 ドアが開かれ顔を出したのは「優木せつ菜」そのヒトだった、中川菜々としてではなく、放課後スクールアイドルの格好で、バッチリメイクも完了している。

 それを見た侑ちゃんは、目を輝かせ「せつ菜ちゃんだー!」と叫んで突進、幼なじみの歩夢ちゃんが止めるスキすらなかった。

 

 が、勢いよく向かっていったものの、せつ菜ちゃんに難なく受け止められ「今結構勢いよく突進したよな?」とはニコも私も感じ、受け止めた側のせつ菜ちゃんも「アレ? 勢いよく突進されなかった?」とばかりに首をひねっている。

 

「はじめまして! 高咲侑です!」

「え、ええ、存じています。私、全生徒の名前を覚えていますから」

 

 ケド、好感度たっぷりに突進され、それが思いの外に勢いがなかったことに驚いたのか、ついうっかり「中川菜々としての設定」を口にしてしまう。

 それでも、侑ちゃんと歩夢ちゃんのなかには「生徒一人ひとりの名前を覚えているなんてせつ菜ちゃんすごい!」が先んじたので、正体が露見することはなかった。

 

 そしてそこから、侑ちゃんのマシンガントークがせつ菜ちゃんを直撃し、部活動終了の時間までそれがなされたため、結局の所、二人がスクールアイドル同好会に入りたいのか、部に入りたいのか、そもそもスクールアイドルをやりたいのか、等の疑念は払拭されず。

 

 それでも、歩夢ちゃんはスクールアイドル部の面々とトレーニングをし、楽しいと笑顔を浮かべていたのでヨシとしよう。

 ひたむきさに心惹かれたのか、璃々ちゃんも「ここはこうです」とアドバイスをする姿が見られた。

 雪姫ちゃんと朱音ちゃんの双方も「アドバイスするのをはじめて見た」って言ってた。

 

 や、そんなことないんだよ? 歩夢ちゃんに向けて「すごくわかりやすい言葉でアドバイス」したからそう見えるだけで、普段も「悪口にしか聞こえない罵詈雑言を伴った言葉」でアドバイスはしているから。

 

 ツバサに「今の歌の部分の日本語が下手くそですね、猿からクラスチェンジしたばっかりなんですか?」と言って周囲の度肝を抜いたけれども、猿からクラスチェンジの部分のイントネーションが、その言葉とは違ったので「ん?」と私も首を傾げたし、ツバサも「ん?」と反応をし、彼女が口の中でモゴモゴと何事か繰り返したのち。

 

 「うるさい、黙ってみてろ」といい、もう一度、先と同じように歌とダンスを披露。

 アドバイスが的確だったからか、罵詈雑言をかっ飛ばされたことにいらだちを覚えたのか、ツバサの指導の時間は打ち切りになったけれども。

 

 後日彼女は苦笑いをしながら「わかりやすく言って欲しい」と言い、私に璃々ちゃんへのお礼を頼んだ、近づいたら威嚇されるからね……。

 

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