アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里は南ことりからのメッセージにおののく

 戸締まりをしている最中にニコから「なぜ制服を身に着けているのか」と、話題が盛り上がり棚に上げた問いかけをなされ、バカ正直に「かれこれ」と説明をする。

 オチはともかく、三船栞子ちゃんのランジュちゃん化は回避されたので「私の頭痛の種も一つ減ったわ」とニコが笑い、

 

 「希がそんなコスプレしてたわね」とさらに続ける――神社でアルバイトをしていたけれども、いつの間にか離職。

 せっかくの一流企業も「なんとなく」で離職し、絢瀬家に転がり込んだのも記憶にある。

 

 早々に海未に魂胆がバレ、長い間、園田家の下働きとしてコキ使われていたご様子。

 なんやかんや言いながらも、未だに園田家に逗留しているから、かなり居心地は良いのではと思われた。

 

 ニコに言ったら「職業ユーチューバーじゃアパート借りられないでしょ」とマジレスされ「いやまあ、そうなんだけどさ」

 

 世話を焼きたいではあるけれども、希の世話を焼くとなれば「まあそれはともかく絵里(ちゃん)」と誰かしらが用件を持ってくるので。

 それにアイドルの面倒はすでに人材過剰気味、寮生の指導及び食事担当も希には荷が重い。

 

 なにより、ニジガクに必要な人材となれば、私がなんとかせずとも理事長から手を回されるので、そのあたりの話もないとなれば「危機感を持て」と尻をひっぱたきにいかねばならない。

 

「そういえば希は遊びにこないわね」

「スパチャ貰って稼ぐのに忙しいんじゃない?」

 

 以前までは真姫の思いつきで地元を紹介してたけど、ネタがなくなったのか、水着でプラモ作ったり、不特定多数の相手を占ったり、それなりに稼ぎはある模様。

 

 ニコや真姫や海未は番組のゲストとして呼ばれたそうだけど、絢瀬絵里には一向に誘いがかからない、オマエをゲストに呼んでも集客にならねえよってことでしょうか希さん……。

 

 さて、話は変わるけれども、私がこのように罰ゲームで寮の仕事から離れているので、食欲過多な皆様の食事はいかにとお考えの方もいるかも知れない。

 

 ご安心いただきたい、先のイベントで優木せつ菜を呼んだけども、これは侑ちゃんに会わせる目的もありながら、料理を任せた人間が情にほだされて劇物料理人を厨房に入れる可能性を排したまで。

 

 綺羅雪菜氏を入れる可能性は考慮しない、もしも入ろうとしたら理亞ちゃんに「殴ってでも止めろ」と厳命してある。

 なにもせずとも喜び勇んで殴りつける可能性もあるけど、そうなれば寮にいるツバサにマジギレされて喧嘩になる。

 

 喧嘩になれば「助けて絵里ちゃん」とエマちゃんあたりからメッセージをとばされるので、それがないってことは穏やかに過ごしているということだ、まことに僥倖である。

 

「そういえば、今日の食事って誰が作ってるの?」

「A-RISE」

「は?」

 

 ニコがぽかんと口を開き、なぜそうなったのかを問いかける。

 まず、ツバサも「絵里に罰ゲームさせるんだから、自分が代わりになる」との想定があった。

 

 彼女の能力を考えれば、寮生が望む食事を提供することなど容易――なんだけども、雪菜クンに弱いという事情から、彼を厨房に招き入れ、夕食を劇物にしてしまう可能性も。

 

 そこで英玲奈に「妹に手料理作って」とヘルプを出し「まったく仕方のないヤツだな」「これからはもっと頼め」と、仕方のないヤツはどっちなのかわからないけど了承を得。

 その英玲奈があんじゅを「料理修行しろ」と呼びつけ、結果、本日の学生はA-RISEに手料理を振る舞われる。

 

 や、あんじゅは幼いころから綺羅家の使用人としてバリバリに修行していたから、料理や家事なんてお手の物だし、なぜ料理修行をって思ったけど、美味しいものを作るとしたら、お金と時間ををかけてとなる、それでは結婚したときに困る……だとか。

 

 感覚が一般のそれとは異なるようで、今のうちから庶民の感覚に慣れておけ、と英玲奈は言うけれども。

 

「ああ、あんじゅさんは、ほら、専業主婦の感覚がわからないから」

 

 旦那さんと生活するまで、料理と言われれば自分が望まれてやるモノで、仕事代わりでもあったそう。

 使用人なんて立場で長年過ごし、トップアイドル化している状況でも、ツバサの世話を焼いていたから、相手を喜ばせるために全力を尽くすのが染み付いている。

 

 が、子どもを育て、長年生活を送るためには、いつ何時も全身全霊で尽くしたら保たないそうで、料理もそれなりに済ませる技術を身に着けさせたいんだと。

 

 つまりは寄り添って生活するためには妥協をするんだな、と、妹も彼のためにそれなりに妥協をしているのでしょう、彼もまた然り。

 そして、そういうことを許せる相手だからこそ、婚約って選択をしたのだな、なんて。

 

 ニコも長年、弟さんや妹さんの世話を焼いていたから、それなりで妥協をしないと苦しい部分があると分かっているのだ。

 

「私もそれなりを身に着けないといけないかしら」

「絵里は器用じゃないから無理」

 

 不器用極まりないから、いつ何時も全身全霊で取り組みなさいと、年上のお姉さんみたいにニコから言われ、希から同じセリフを言われれば多少反発する気持ちもあれど、ニコからそうなさいと言われれば「そうしてもいいかな」って感じになる、人生経験の差ゆえなんだろうか。

 

 

 そして寮では、みんなが楽しそうに食事をしており、提供されているものに劇物は含まれていなかった。

 英玲奈が熱心に朱音ちゃんに「これは私が作った」とか言っているけれども「普段のほうが美味しい」と素っ気なく言われている――や、照れ隠しだから、私を睨みつけられても困るからね?

 

 あんじゅにも「や、こんなにたくさんの子の食事を作ったのはさすがにはじめて」と言われ、いい経験になったみたい。

 「これと同じ量の食事を長い間に作るんだって思ったら、そりゃ、仕事みたいに全身全霊とか、身体が保たないわ」と苦笑いをしながら言われてしまった。

 

 私みたいにフリーで、全力を尽くせる立場ならそうせよ、だけど。彼女はこれから子どもを、とか、生活を、で「料理はそれなり」にしなければいけないかもしれない。

 

 「それなりに済ませるのも技術なのね」と私が反応したら「そうみたい、私も全身全霊で何事にも取り組むのが尊いと思ってたわ、ツバサの影響かもね」と、じぃーっとこちらを眺められながら言われ、まるで私がツバサに全身全霊で取り組めさせてるみたいじゃない? そんな影響力無いですからね?

 

 

 悪鬼羅刹をその身に宿したことりから、有無も言わさずに殴りつけられるのを予測してたけど「ごめんね、忙しいから絵里ちゃんを半殺しにしている暇がなくて」と、謝罪するべきはそっちじゃない、と手で顔を覆いたくなるメッセージが届いてた。

 

 「絵里ちゃんを殴りつけるんだ」って嬉々としていたとエマちゃんは語ってくれ、さすがにことりはおっかなかったのか、彼女も「暴力は良くない」とも言えず。

 

 でも、部活から戻ってきた寮生が「え、今日の夕食は絵里ちゃんじゃないの?」と、怨嗟の声が上がったのを聞き、ことりが「今日は帰る」って言って足早に退散したらしい。

 

 ニコも「絵里ちゃんじゃない」でブーイングが上がったそう、すぐさま料理の腕で静かにさせたけども「罪作りな料理人ですこと」とヒジで脇腹を突つくニコに言われ、ツバサも「料理人としての才能があるわね」とスネを蹴り飛ばしながら言った。

 

 褒めてくれるのならば、もっとちゃんと褒めて欲しい、ふざけるな半殺しにするぞと言わんばかりの威力で蹴り飛ばすのはやめて欲しい。

 

 しばらくして、学生から「絵里ちゃんお風呂一緒に入ろう!」と誘われ、やれやれしょうがないわねと応じたら、ぽつりとあんじゅが「ことりさんが見てなくてよかったわね」と。

 

 どういうことか分からなかったので、発信源を眺めたら「また今度ね」と言われたので、今度を待ち望みたいと思う。

 

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