性別不詳の存在を漫画やアニメで見た――なぜ、そんなのに触れたかは、真姫がちょっとした気の迷いからコスプレにハマり、そのままの勢いで声優としてデビューしたので。
最初は慣れない世界ゆえ、仕事がなかったけれど、勉強と努力の末に名前を知られる活躍をした。
年数経過で少々勢いが停止し、先輩の紹介から成人向けゲームに仕事の幅を広げる。
以降どギツい下ネタが出るけれども、私にとっては大切な後輩である。
――や、μ'sのメンバーの中でも大切な後輩(仲間)であるし、彼女を私だけが特別に思っているんじゃないケド。
さて、話が多少ずれてしまった。
アニメに出始めた当初「絵里に出演作を見て欲しい」とお願いされ、暇を持て余してたから軽い調子で「渡された映像ソフト」をいただき、感想を言う時間が持たれた。
彼女が成人向けゲームに仕事の幅を伸ばした今でも、同様に感想を言う時間が設けられているので、妹の目を盗み、こっそりと夜な夜な起き出してはプレイをし、真面目な調子で感想を告げる。
そんなことをしているから、と、穂乃果やことりからは苦笑いされている。
μ'sのメンバーとして活躍するみんなの様子は確認したい。
その作業に時間を取られているから仕事がままならない、と、ツッコまれるけれども、貯金が限られてる以外は交流に妨げがない――みんなの潤滑油として、身を粉にしてこれからも働く所存。
今の話題にあやかり、真姫が性別不詳の「男の娘」の役を演じた――どこからどう見たって女の子だし、中の人も女の子だし、一部分以外は完璧に女の子だ。
そういう人は現実には存在しない――と、思っていた。
けど、妹の恋人が「どこからどう見ても女の子」にしか見えなかった、でも、偶然に違いないと。
なにせ、その存在が巷に溢れていれば、私だって男の娘が創作の産物とはならない――常識外れとネタにされるけど、普段から目にしていれば「男の娘もさして珍しいことはあるまい」と。
「確認するけど、妹の間違いではないのよね?」
「失礼ね」
「亜里沙と同じくらいの美少女なものだから」
「そういうのは早く言いなさい」
妹の恋人も「妹と同じくらいの美少女ではあった」でも、性別は男性――確認をしないと、実は女性でしたとネタバラシをされ驚く事態になりかねない。
私のシスコンとしての風評が広まっているのか、妹と同じくらい可愛いというと、自身を褒められたように――むしろ、自分が褒められるよりも嬉しそうな表情をしながら。
「雪菜――こちらは私の友人の絢瀬絵里、知っていると思うけどμ'sで活躍していた頃が全盛期のヤツよ」
μ'sのメンバーとして活躍していたと、そこで言葉を切って欲しかった――ただ、事実なので、否定的な感情は湧いてくるけど、否定的な言葉までは出てこない。
ツバサに「どっからどう見ても事実でしょ」と言われれば「そうよね」としか言いようがないし。
「よろしくお願いします――姉がわがままを言って申し訳ありません」
「礼儀正しいのね、ツバサも見習ったら?」
「礼節が必要な相手には、敬語の一つや二つくらいは使うわよ?」
もちろん知っている――彼女の風評は、判を押したように優等生とされるし。
今みたく尊厳もへったくれもなく罵倒するのは、距離の近い人間に限られる――や、英玲奈やあんじゅは罵倒されるのを見てないから、馬鹿にしやすいから馬鹿にしているのでは?
近寄りがたくてクールな雰囲気よりも、笑われているくらいがちょうどいい。
もちろん真面目にするときはするけれど、普段から四角四面に過ごしては息が詰まる。
――ケドも、私の影響を受けてしまったのか、海未が「高校時代とキャラが違うのでは?」と言われるようになってしまったのは……まあ、私が悪いので。
「わがままではないのよ、この人、家から追い出されてしまって、住むところがないと言うから住まわせてあげるの」
「そういうことなのでよろしくお願いします、家事全般は任せて」
「……ますます僕が料理をする機会がなくなってしまいますね」
雪菜クンのセリフにツバサの表情が引きつった――機会がなくなったのは、ツバサが「料理をしないようなシチュエーションを作り上げた」に他ならない。
つまりは「料理をさせてはならない人材であり」「作り上げられたものは、凛や理亞ちゃんのケミカルクッキング」と同レベルの惨物であると。
話題に出したので、鹿角姉妹についても触れとく。
まず、妹とAqoursの三年生組は同学年で、ラブライブ優勝を争った関係でもある――ただ、SaintSnowは予選敗退。
姉妹で出る最後のラブライブ予選ということで、緊張もプレッシャーもあったのか、理亞ちゃんらしからぬミスをしてしまい、予選で敗退した。
姉の聖良ちゃんも「妹をフォローすることができませんでした」と悔やむコメントをしている。
以降は個人でスクールアイドル活動を続け、Aqoursの二年生組、一年生組双方が出場し優勝した折りに、個人ながら準優勝と昨年の借りを返した。
そして、Aqours一年生組がまたしても静岡県代表としてラブライブに出場した翌年、鹿角理亞は誰も寄せ付けないほどの最高のパフォーマンスを発揮し、たった一人でラブライブに優勝する活躍を見せた。
高校時代に頑張りすぎてしまったせいか、以降は燃え尽き症候群に至り、いまもなお、家でのんびりと過ごしている。
たまに顔を見に行っては、料理を振る舞う、聖良ちゃんにもお礼を言われる。
みんながみんなこのままじゃいけないって分かっているけど、人の気持ちの問題は、他人がとやかく言ったところで解決できるわけじゃない。
本人が苦しいと感じているのであれば、周りは苦しくないと追い込むのではなく、痛みや苦しみを共有するだけ。
それに、聖良ちゃんも妹の世話を好きでやっている――仕事にも差し支えがない範囲で、そうそう、恋人ができた話も聞く。
「姉さまが休日におめかしして出かけるのを見てるのが楽しくて」とは理亞ちゃんのセリフだ――彼女自身の料理の腕前がとんでもないので、聖良ちゃんが羽を伸ばしたいタイミングを見計らって、Aqoursのメンバー(主に三年生組)や僭越ながら私も協力をしている。
ルビィちゃんも協力したいと願い出てくれたけど 、今のところは「お世話をしている方の手間が増えてしまうので」ダイヤちゃんが「人の世話をする前に自分のことをできるようになりなさい」と、厳しい口調で言った――良い人を見つけなさいとは言えなかったけれども、姉として妹をたしなめる台詞はきちんと言えた。
「ひとまず今は受験勉強に集中してちょうだい、あなたがきちんと高校に入ってくれないと、お姉さまに殴られてしまうわ」
「はい、合格できるとは思いますが、何が起こるかわからないのでサポートをお願いします」
会話をしていると、とても礼儀正しい女の子だと認識してしまうのが辛い。
挙動も、態度も、あらゆる要素が美少女にしか見えない。
なぜナチュラルにスカート、フリフリの付いたカットソーを身につけているのか、女の子みたいに冬場でも薄着で頑張っているのか。
髪の毛が長いなと思ったけど、こればかりは付け毛であるよう――でも、地毛の部分もサラサラで、ツバサが「母親の血かしらね」と言っているから、彼女自身も羨ましく思うみたい。
明日から積極的に勉強のサポートをすると決めて、本日は交流に努める。
夕食時にツバサが面白がって「背中でも流してもらったら」と言い、冗談だとわかっていたので「たまには年下の男の子に」と反応したら、彼自身が「申し訳ないですけど遠慮します!」と悲鳴のような声を上げる。
「仕方ない、ツバサさんや、私の背中を流してください」
「分かったわ、家にちょうど鬼おろしがあるから、あなたの背中を削ってあげる」
冗談だと思ったけれども、死ぬほど広いバスルームで対面時に「鬼おろし」を持ってきたので「だめよ」と言うしかなかった。
納得してくれなかったので「今度それで美味しい料理を作るから」と重ねて言うと、ツバサは「約束だからね」と――