アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里はカレー大福美味しかったなと言って海未ちゃんにドン引きされる

 誰かさんの魂胆で、妹の働く姿を眺めながら休日をゆっくり楽しむ――そんなイベントは雲散霧消したけど。

 穂むらでもじっとしてはいられなかった――休日なんだからゆっくりしてなよ、穂乃果には呆れたように言われ、なんで家の仕事知ってるんですか、と雪穂ちゃんには不審者を見るような目で言われる。

 コイツ――働くぞ! と、アムロがガンダムを動かしたみたいなセリフを言われ、お客様からも「ちんまい子の代わり」扱いされているけれども。

 

 雪穂ちゃんと同い年の妹を何故か孫扱いしている高坂家のご両親は、私のことを最初は「孫のすねかじり」と思っていたみたいだけど、誠心誠意働いて扱いを覆すのに成功した。

 

 ただ、誠心誠意努力したせいで、穂乃果から「私も教えてもらってないことを何で教えてもらってるの」と、恨みがましい目を向けられたので、機会があれば「しおりこちゃん」にも、献身的に頑張っても報われないのはいくらでもあると教えてあげたい。

 

 ボランティアが趣味なようだけど、身を粉にしてまで励むのは献身ではなく自己犠牲と呼ぶもので、自己犠牲によるものを推奨するわけにはいかないし、ましてや両手をあげて喜ぶわけにもいかない。

 生徒会の仕事にスクールアイドルにボランティアに忙しい――ならばボランティアを止めなさいと、いつか彼女にも言わなければいけない。

 

 両手に仕事を抱えて一生懸命頑張るのはいいけれども、自分のやりたいことまで我慢してもらっては困る。

 そこまで自己犠牲に努めてもらっては、ボランティアをされている方だって「無理しないでね」と忠告するものだし。

 

 や――あの虹ヶ咲学園に通う悪魔みたいな生徒が、他人に配慮して気を遣うなんて行為ができるわけないと思うし、周囲にいる人々も似たような存在だから、ランジュちゃんや理事長の横暴がまかり通るんだろうけれど。

 

 

「なるほど……これがいちご大福をリスペクトしたカレー大福……」

 

 高坂家のお父様が「次の季節に出す新商品」と言って持ってきたのが、スパイシーな香りがする大福――果たして大福を食べる人が、香辛料の香りが漂う大福を食べたいと願うだろうか。

 

 お母様や穂乃果や雪穂ちゃん姉妹が試食を断ったから、私なんぞに持ち込まれたんじゃないかと疑うけど、そうではないらしい。

 味覚がちゃんとしているからと、私の味蕾を買ってくださっているけれども、カレー大福を作る方に「しっかりしている」と言われて、素直に頷いていいものか。

 

 大福を手に取り口に含む、触り心地や、口に入れた時の食感……餅の部分はとても美味しい……そして噛み締めていくとカレーの味が口の中や鼻に抜けて行って……これは行ける。

 大福と言いながらも、あんこが入ってるわけじゃないので、看板に偽りありだけども、お餅とカレーが一緒になった感じ……や、肉まんの中身がカレーになった感じに近いか。

 

 お菓子ではないけれども、和菓子とはとても言えないけれども、こういうものがあれば手にとってくれるお客様もいると思う。

 ……この穂むらに来店されるお客様がカレー大福を見て「美味しそう、是非にも買いたい」と判断してくださるかは未知数だけど、美味だし、小腹が空いた時に口に含むんだったら最適。

 

 穂むらの和菓子にその要素を求めているのかが疑問だけど。

 

「なるほど……」

 

 正直に感想を伝え、お父様は難しい表情をしながら厨房に戻る。そこへすかさず穂乃果がにやってきて「美味しかった?」と尋ねてくるので「味はとても素晴らしい」と言うと、食べさせてと言いながら口を開いた。

 毒味だったのではないかと、疑いが生じるけれども、穂乃果に一口サイズの大福を食べさせ、彼女が咀嚼するのも眺めながら、人にあーんして食べさせるんだったら、カレー味じゃなくて甘いものの方が良かったな――と。

 

「大福要素がゼロだけど、これはこれで悪くないね」

「穂むらのおじさまは、常識の破壊に挑戦する新商品を出そうとするの?」

「よくあるんだよ、私たちはすっかり慣れきっちゃって、感想が面白くないって言うから――若くないね、高校生の頃だったらカレー大福なんて食べたらギャーギャー騒いでたと思うし」

 

 確かに、凛が食べる前は死ぬほど騒いでいるのに、食べた瞬間に「めっちゃうまいニャ」とか言って、花陽が困った表情をする。

 そんな場面が容易に思い浮かび、高校時代に帰りたいとは思わないけど、ゲームかなんかで高校時代のμ'sを眺めたい気分にはなる。

 

「確かに」

 

 穂乃果は 高校時代のμ'sを眺めたいって感想含めて同意してくれた、自分自身がもう一度高校生になるのは勘弁だけど、第三者として泣いたり笑ったりする面々を眺めたい願望はある。

 

 ラブライブに向けて、あんな風に青春を賭けて努力しようとは――さすがにもう一度は勘弁。

 楽しかった思い出ではあるけれども、楽しかろうとも辛いことは確かだったので、辛いことをもう一度やるって言うのはやっぱり辛い。

 

「ゲームとかそういうのって、子どもがやるものだと思ってたけど、大人が懐かしんでやるって言うのもあるものかもね」

 

 ゲームや漫画に対して「子ども向けでしょう?」と、クールに返答していた西木野真姫が、今や大人しかプレイしちゃいけないゲームの声優として活躍している。

 私たちが高校を卒業してしばらく、真姫はスクールアイドルとして頑張りつつ、受験勉強の準備を始めていた。

 「気分転換になると思って」と、りんぱなの両者が当時流行していた「きらら系アニメ」の原作とBDを貸し。

 彼女も「二人がせっかく気を使ってくれたのだから」と、三話まではみようと決意。

 

 そして――気がついたら全話眺めていた――不眠不休で。

 

 翌日に化粧でうまくごまかしてはいるけれども、普段授業中に船を漕ぐ態度なんか取らない真姫の様子に花陽が気が付いて「勉強の途中にアニメを見てくれたの?」と声をかけ、眠くて正常な判断ができなかった真姫は素直に「全話観た」といらない告白をし、やっぱり眠くて正常な判断ができなかったのか「同じようなものがあれば貸して欲しい」とお願いした。

 

 花陽も「つい嬉しくなっちゃって」と、この時点で真姫の様子がおかしいと勘付き、アニメはそこそこにしたほうがいいよと、窘めていたら、医学部受験のためにオトノキで努力をする西木野真姫がその後も見られたんだろうけれども。

 

 彼女はアイドルのDVDを語る時みたいな勢いで「これとこれとこれとこれとこれがオススメだよ」と、凛も引く勢いで普及し、真姫もひとつくらい毛色が合わなくてと断ればよかったのに、正直に全部眺め、結果的にドハマりした。

 

 春先に医学部に向けて頑張ろうと思っていた女の子は、夏にはコミケに花陽とニコを伴って参戦。

 そこでみたコスプレイヤーさんに感動し「どうやったらあれと同じことができるの?」と尋ね、ニコは「やると思ってなかった」と後年語るけど。

 ご丁寧に「ああすればいい、こうすればいい」とアドバイスを送る。

 

 ここで、お金にものを言わせて市販品を購入していれば、必要以上にハマることがなかったんじゃないか、と語るのは南ことり。

 

 そう、彼女もいらないことを言ってしまった――服飾に対して話題が盛り上がるかな、との考えもあったのか真姫に「衣装は手作りにしたほうが愛着がわくよ」とアドバイスを送り、彼女もμ'sの時代には手作りの衣装を羽織っていたし、手伝いもしていたから「確かに、自分で作った方が愛着が湧くはず」と考えてしまった。

 

 そして、一流の才覚があったことりと同様に真姫が縫製ができるわけがないんだけど、そんな彼女を不憫に思い手伝ってしまった人がいた――真姫の歳の近い使用人にして、西木野パパンの全国各地にいる子どもの一人、さらには西園寺雪姫ちゃんの姉であることも判明した――。

 

 和木さんこと、西木野和姫ちゃんである。

 

 西木野パパンの敷いたレールから脱線しようとしている妹を、どうするべきかと考えていた彼女も、勉強よりも、今やっているスクールアイドルよりも、一生懸命コスプレ衣装を作る姿に感動し、うっかり手伝ってしまったというのだ。

 

 一人でやっていれば「諦めて市販品を」となったところも、家事の才能があった和姫ちゃんの手ほどきと、真姫の懸命な努力の結果、コスプレイベント初参戦にして抜群の評価を得てしまった。

 

「売り子さんとして、カレー大福は勧められないな」

 

 新商品としてアピールするには、やはり高評価が得られるイメージが必要だ――カレー大福とか言って宣伝を始めたら、トチ狂ったのか? と判断されてしかるべきだし、穂むらは昔からある和菓子屋だから、今までにないものを提供するにしても、度が過ぎているものでは困る。

 

 私も「美味しかったのは確かだけど」と言いつつも穂乃果に同意し、 店頭に並ぶ商品を眺めて「あそこにカレー大福が入るのは無理でしょうね」と首を振りながら言う。

 

 そこにお客様が入ってきたので、穂乃果は仕事に戻り、私はその姿を眺めながらまったりとお茶を飲む――いい身分じゃないかと、海未が眺めれば言われるかもしれないけど。

 これは穂乃果に「黙ってお茶を飲んで座ってて」と言われたから――これもまた仕事なんだ。

 

 姉妹が手が離せないみたいだったので、私が接客をしてたら「これとこれがおすすめです、こういうものが好きそうですから」と初対面のお客様に言ってのけ「初対面なのに私の味覚を把握してるの?」と気持ち悪がられたエピソードがあるから。

 絵里ちゃんが接客するとお客さんが減るから黙って座ってて、と言われてしまえば、居候である私も肩身の狭さを感じつつ黙って座っていることしかできない。

 

 や、ことりや凛に頼まれてやっていたマッサージも、姉妹やご両親にやってのけるけれども、それは仕事ではなくボランティアなので。

 

 さらにお客様がやってきた――お茶をしばいている私と目が合ったので、ついつい、自分もいらっしゃいませと言ってしまったけど……よく考えたらいらっしゃいませっていうことはなかったと思う。

 

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