果林ちゃんと私とのパフォーマンス勝負については、回避不可能だった。
その経緯について語っていく、元になったデコのセンターを恨まないで頂きたい。
察しが悪い私にすべての責任がある、どうか恨んで。
学生たちの協力もあり「ウヤムヤにすることができた」と喜んでいた私。
うぬぼれてたのがいけなかったのか「いつになったら勝負をするのかしら」とツバサがやっかみをかけてきた。
寮生たちが語ってくれた通りに「何かにつけて勝負事を避けていたのは」確か。
でも、彼女も「勝負なんて口からでまかせ」は理解しているハズ。
いつになったらの声色に自身がなかったし。
ただ、肘鉄と言葉で「いつになったらやるの?」と表面上は問いかけてくるんだから「早く勝負しろ」と……何か気に入らないことがある模様。
「果林ちゃん一人と勝負してもしょうがないからなぁ」
でも、真面目にパフォーマンス勝負する気はないのでごまかす方面に舵を切る。
高校時代ならばいざ知らず、スクールアイドルになりたての果林ちゃんと勝負をすれば勝つ自信もある。
勝てる相手と勝負したくないと露骨に嫌そうな顔をすれば、彼女も「それはそうよね」と引いてくれるとふみ、上記の発言。
けど、想定は見事に外れ「だったらあなたと対等になるように準備をする」なんて。
その準備が何かはわからなかったので、彼女が裏でコソコソ動いている間、私は「A・ZU・NA」結成に奔走することになる。
侑ちゃんに頼まれたからって訳じゃないけど、歩夢ちゃんが困った表情をするのが見るに堪えなかったから、しずくちゃんが真姫を自宅に呼びつけようとするイベントにしゃしゃり出た。
歩夢ちゃんが心配でついてきてくれた侑ちゃんが「ピアノなんて弾いたことないですよ!?」と、梨子ちゃんにちょっかいをかけられたイベントは後々語ることにする。
※
「一人じゃ勝負したくないって言ったから、二人にユニットを組んでもらった」
渡辺曜ちゃんに衣装を作らせ、楽曲も自身のツテで用意した――音楽科では「たぐいまれな天才」「やる気にムラがなければ天才」との評判が聞かれていたミアちゃんの尻をひっぱたいて作曲させた。
なお、歌詞は担い手がいなかったので自らで書き上げた。
海未がやってくれると思い声をかけたら「ご自身でどうぞ」と素気なく言われて途方に暮れたそう。
普段なら応じる彼女も経緯を把握してたのか「絵里を困らせて」の側面があった様子。
「ボクの作った曲を歌いきる実力は身につけてもらったよ、トレーニングメニューは全部ランジュが考えてくれたけど」
「人には適材適所って言葉があるから、無問題ラ」
無問題ラは出会った当初こそ使ってたけど、ステージでのパフォーマンス以降「キャラにそぐわないから」ですっかり封印。
学内でポロッと出た言葉が、ファンから「その口癖かわいい」と言われ「ファンが喜ぶなら」と普段からも使用することに。
「ステージで全力を出すしかないか」
ここまで準備をされてしまえば「お腹が痛いんで無理です」「アラサーにはきついので無理です」との言い訳が通用しない、ひとまずに勝負に応じるフリ。
ケド、全力を尽くすつもりはない。
ユニット結成したて、スクールアイドルになりたての両者に声援で負けるほど、トレーニングをサボってないしね。
彼女たちは衣装を身につけているのに自分はと言ってのければ「そうよね、アラサーに制服を身につけられないもの」と嫌味のひとつを言われて、ステージは延期になるはず。
それくらい何とかしろと無茶ぶりをされる可能性があるけど「そんな勝負で勝ったところで」とか「そこまで準備をしたのなら、相手にも全力を尽くせるようにしなくてはだめ」 なんて、口からでまかせのひとつやふたつ吐く自信はある。
「残念なことに衣装が」
「それなら私が全身全霊で用意しておいたよ? 私の衣装を着てステージでみっともない姿を見せたら……首の骨を折るから」
今までどこで息を潜めていたのか、ことりが私に身につけさせるための衣装を手に持ち背後に迫る。
にっこりと笑っているのに背筋が凍るようなオーラを発している有名なデザイナーさんに苦笑いで応じるしかない。
同好会の衣装提供を約束させられていることりじゃなく、曜ちゃんが二人の衣装を用意したって時点で「ことりが手を離せる状況じゃなかった」と推測すれば良かった。
自分に逃げ道が無いのなら、覚悟を決めて立ち向かっていくしかなかったし。
「……お膳立てされたら全力を尽くすしかないか、あなたの仕事に恥じないステージを見せてみせる」
「スクールアイドルを始めたての子に負けても恥知らずなのに、できたてほやほやのユニットに負けたら、とりあえず首の骨を折るから」
「首の骨を折られないように頑張る」