アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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コミックの3巻で鞠莉ちゃんドコ行っちゃったんでしょうかね

 いざバスツアーを始めようとなり、誰が絢瀬絵里の隣になるかを議題として、野良犬のような唸り声を上げて各々がいがみ合う。

 口で鍔迫り合いしてる皆様から一人離れて、自分はまるでヒンシュクを買って蚊帳の外にいるみたいだ――

 

 と、未知の世界への期待みたいな、不安のような想像をしていると、そんなことはまるで関係ないと言わんばかりに、私の知らない秘密を教えるみたいな感じで花丸ちゃんが近くに来て、喧々諤々と言い争う一同に、ギレン・ザビが演説するような態度をしながら「絵里ちゃんの隣はマルに決まったから」と。

 

「……そういうことらしいから」

 

 と、あらゆる反論を胸に秘めつつ、全てを苦笑いでごまかし、ごまかされた面々も「そういうことならば仕方がない」と、霧の中を歩くような釈然としない表情をしつつ、席へと展開していった。

 

 マルちゃんは探偵が犯人を特定する推理を結論づけるみたいな、物理法則を述べるように理路整然と「みんなが納得してくれて嬉しい」と、筋肉が緩むかのような笑みを浮かべる。

 その充足感に満ち足りた表情を見ていると「漁夫の利では?」との言葉が口から出ることはなかった。

 

 

 バスが緩やかに出発して、倦怠に似た感情がみんなに現れた頃、マルちゃんが用件を切り出した。

 深刻な事情を漏らすような調子だったので、私も背筋を伸ばす。

 

「絵里ちゃんはマルが漫画を描いているのは知ってるよね」

 

 その名もマルの4コマ。

 統合先の高校で生徒会役員を務めた(会長はよっちゃん)彼女が、生徒会の広報誌で4コマ漫画を連載し始めた。

 「形式ばった内容にするよりも親しみやすくしたほうがいいと思って」とはルビィちゃんのセリフだ。

 

 言いだしっぺの彼女が筆を取る予定だったのに、あまりの画伯ぶりに「デザインはできるのにどうして」と誰しもが嘆いたそう。

 

 道に捨てられた昆布みたいな人間たちが繰り広げられるシュールな4コマは公開される前に発禁となり、友人のマルが頑張るしか! と決意した。

 

 とりあえず3回は頑張ろう――となって、一度打ち切ったら生徒から「4コマが楽しみだったのに」とのコメントを頂き「希望があるなら再開するしかない」と一生懸命文章を書いていたよっちゃんは邪神みたいな微笑みをしながら言ってのけ、結局彼女が卒業して以降も寄稿されていた。

 

 「この4コマがなくなってしまったら、浦女がこの世界から消え去ってしまうかもしれない」との恐怖感があったらしい――

 

 それでも彼女の中で「これでマルのヨンコマはおしまい」と見切りをつけ、最終回には卒業生を含めて多くの生徒が広報誌を求める事態に。

 

「それは知ってるけど」

 

 もちろん自分の中でも既知のエピソードである。

 穂乃果から何として広報誌を手に入れて欲しいとお願いされた私は、妹と住んでいたアパートからチャリンコ漕いで出発し、警備に当たっていた黒澤家の皆様にあっけなく見つかり「優遇する」のを約束してくれたけど「自分で並ぶので大丈夫」と断った。

 

 が、μ'sのメンバーが一番に駆けつけて広報誌を手に入れようとしたことは、生徒会の発行物にプレミアをつけ、彼らの仕事を増やす結果になったのは反省している。

 

「マルは物書きとして食べていきたかったけど、世間の皆様からは4コマ漫画家として名高いみたいで」

 

 月の光が暗い道を照らすように、くまなく事情を打ち明けてくれる――つまり、生徒会広報誌に寄稿していた4コマはめでたく終了したけれども、4コマ漫画家としての国木田花丸は出版社の皆様が放っておかなかった。

 

 実家暮らしをしているマルちゃんに唐突に出版社の編集を名乗る人が来訪をし「新手の詐欺にしては身なりがちゃんとしてる」と思った彼女が対応し、渡された名刺に書いてあった名前を見てしこたま驚いた。

  誰もが聞いたことがある三大出版社のうちのひとつ――週刊コミック誌の売上も好調なトコの編集さんが、わざわざ訪ねてきてくれたのである。

 

 そのエピソードを聞いた時に親友のルビィちゃんは「エイプリルフールは過ぎたよ」と言い、花陽も「面白い冗談をいうね」と取り合ってもらえず、 編集さんから渡された名刺を見せたら「申し訳ありませんでした」と、私にならったという土下座を二人が披露。

 

 そこから漫画の連載となればかっこいいエピソードだったんだけどと、マルちゃんが感傷に引き込まれるような笑みをたたえ、私もどうしたのと声をかけてしまった。

 

 心が握りつぶされるような苦笑いだったので、ついつい何も考えずに「私にできることがあったら何でもするから」とさらに付け加え。

 

 彼女はその言葉を待っていたと言わんばかりに、花が咲いたような笑みを浮かべて「実はネームが通らなくて」と。

 

「やっぱり有名な出版社さんだから、連載までのハードルも高くて……なかなかこれだってネタが出てこないんだ」

「確かに、スカウティングじゃないけど……声をかけられる人っていうのはいるものだしね」

 

 わざわざ直接やってきて、ぜひ我が社でと声をかけられるケースは珍しいにせよ、ではいきなりあなたの漫画を載せますとは、ならないようだ。

 以前も何かネタになるようなことがあったら、とニジガクに来訪してくれたらしい――忙しいのに世話をかけて申し訳ない。

 

「それでマル、絵里ちゃんをネタにしようと思って!」

「……は?」

 

 様々な考えがついたり消えたりして「彗星かなー?」と、メンタルが参ることもあったようだけど、天啓のように「そうだ、絢瀬絵里をネタにしよう」と起き抜けに思いつく。

 

 しかしながら来訪をする用事もなかったので、許可を取る前にいくつかネタを書いたそう。

 

 彼女の中に「絵里ちゃんなら断わらない」との判断があったようで、既に編集さんにも見せて「これなら行ける」と太鼓判を押してもらったらしい。

 本人の許可が一番大事だと語るのに、本人が断れないように外堀を埋めていくスタイルなのか。

 

「名前だけは変えていただけると」

「心配ないよ、他の方々も登場する予定だから」

「ラブアロー仮面の元になった人に許可はもらわなくてはダメよ」

 

 サヨナラホームランを打たれたピッチャーのようにがっくりと肩を落とし、どうせなら被害者を増やそうとの魂胆もあった。

 マルちゃんがドライブスルーで休憩中に「漫画に出したいんだけど」と許可をもらおうとする傍らで「私は許可したわよ」とつぶやくだけの簡単なお仕事。

 

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