なぜメシマズ属性は改まらないのか。
それ一定の答えを見つけた栞子ちゃん。
彼女は一度目を閉じ。
何かを決意し告白するかのように口を開いた。
「実はカリンくんが、朝香果林ちゃんだって知ってたとよ」
夏場の蝉は相変わらず騒がしい。
なにせ子孫を残すために全力を尽くしている。
人間のように「相手を選んでるだけであって、選ばれないわけじゃない」とことりみたいに嘯くこともない。
そんな蝉たちがミンミンと騒ぐ中。
モモちゃんの飲んでいた麦茶の氷が軽い音を立て。
私もどう反応していいものか戸惑った。
そうであろうとは、察しをつけていたし。
ごまかし方が無理やり過ぎた――果林ちゃんくらいしか信じてなかったと思う。
正直で素直な性格の両者は、何かしらの理由をつけて互いを幼なじみと認めてなかった。
どうしてかの推論は「認めるのが恥ずかしい事情があった」
で、寮のみんなに結論づけられていた。
恥ずかしいの部分までは追求せず――そこはプライバシーを尊重して。
栞子ちゃんが自らの瞳を潤ませ、真剣に眺めてくるので。
黙り込んでしまったと気付いた私は、咳払いを一つして彼女の告白に応えるよう。
「なぜだか教えてもらってもいいかしら?」
たまたまタイミング悪く、帰省が延期になったコペ子ちゃんも登場。
飲み干された麦茶のおかわりを注ぎつつ、居合わせたコッペパン同好会の会長にも飲み物を渡す。
夏休みの自由課題として身長57メートルのビッグかすみんを作ると同好会は言っているけど。
報告を受けた理事長は頭を抱えながら「なんであなたの知り合いは問題ばかりを引き起こすのよ」と。
問題の原因が私自身にあるかのように訴える。
ラブライブ優勝のために、性格はアレだけど才能がある生徒を全国各地から集めたからでしょう。
なんてマジレスをして「テメエクビ」と言われるのを、咳払いを一つして回避した。
あの時の経験が役に立った――ありがとう理事長。
「昔、カリンくんはとってもワイルドで、川の上を歩きながら魚を捕る姿はとってもかっこよかった……」
川の上を歩いた? とモモちゃんは首をかしげ、近くにいたコペ子ちゃんに「川の上で歩けるのかな?」と尋ね、彼女は顎の辺りに指を這わす。
しばし考える仕草を取り、ひとしきり唸ったあと「かすみんならともかく、人間に川の上を歩くのは不可能だと思います」
それだとかすみちゃんが人間ではないみたいだ――と失言をせずにすんだ、彼女の中ではかすみちゃんは人知を超えた何者かであるそう。
しかし栞子ちゃんの表情には見覚えがある。
海未が「婚約届を書いてきました」と変なことを言うので「いつのまにお付き合いしていた人が?」と首をかしげたら。
名前のところに「園田絵里」と謎の人物が書かれており「ドヤ顔」をしていた彼女が、幼なじみから「記憶にいいサプリ」との白い粉を渡されていた。
高値で取引されるようなものではないと祈りたい。
少々話がずれてしまったけど。
あの時の海未の表情とよく似ている――つまりは、そういうことなのかもしれない。
ちなみに果林ちゃんが幼い頃のエピソードをひた隠しにするのは、黒歴史扱いだからで。
人には、消し去りたい過去なんていくらでもあるものね! 黒歴史だらけの生徒会長としては頷くしかない。
「恥ずかしながら、女の子が初恋なんてとても言えなくって」
「……興味本位で話題を深めるけど、どうして告白したくなったの?」
モモちゃんが「話題の深度を増すとは……」と、洞窟内でコウモリを見たように慄き。
コペ子ちゃんも「……」と興味深い話を聞いたと言わんばかりに耳をダンボにしている。
「女の子が女の子に恋をすることは珍しいことじゃないっス」
「それはもちろん当然!」
対話に第三者が割り込んできたので、モモちゃんがコペ子ちゃんの口を両手で抑え「ごゆっくりと続けて、どうぞ」と。
彼女のかすみちゃんに対する気持ちが、恋心に治まっているかは、 発言を聞いた皆様が判断すればよろしいので。
栞子ちゃんが「……」いかにも何か言いたげな表情を浮かべているので、視線だけで「続けて」と促した。