アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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宮下愛さんお誕生日記念

 絢瀬絵里が誕生日イベントとかに執着しているのは皆さんご承知の通りだと思う。

 璃奈ちゃんが私の腰の辺りをぐいぐいと引っ張ってくるので「あらまあ可愛らしい、妹にして差し上げようかしら?」と冗談で言ってみると、その発言を聞いていたダイヤちゃんが「それは私の専売特許ですわ」と苦笑いしながら言ってみせ。

 

 誰彼構わず妹にするという噂話は本当だったのか――と私の心の中を戦々恐々させた。

 いつの日か彼女に「私の妹にならないとあなたを殺して私も死ぬ」と言われてしまうのかもしれない。

 この前ヤクザ映画を観たのも大いに影響しているのかもしれない。 

 

 そんな死ぬほどどうでもいい話で璃奈ちゃんの提案してきたイベントの話をスルーするわけにはいかない。

 

 彼女が言ったたのは「愛さんの誕生日は5月30日」――いまは8月――つまりだいぶ時間が過ぎている。

 彼女と知り合ってから仲良くなるまで――てか、彼女が同好会に籍を置くまでに誕生日は過ぎてしまったんだろう。

 それを偲びなく思ったのか、璃奈ちゃんは「愛さんの誕生日パーティーを企画してほしい」と話を持ってきてくれたのである。

 

 誕生日イベントは大好きだ――サプライズは残念ながらバレがちではあるんだけど、誰かのために気合を入れて喜んでくれるのはとても嬉しく思う。

 ことりには「誰かにご奉仕するのが大好きなんだね」と「メイドとしての資質を褒められた」けど。

 彼女は酒を飲み、足を組んでデザインをしながら「男性にご奉仕が大好きな女の人なんかいないよ」と嘯いているのを聞いたばかりだった。

 

 ことりからしてみれば生活の全てを大体把握している私に、24時間ご奉仕して欲しいに違いない。

 高校時代にメイドとして名声を高めたけれども、彼女の資質はメイドではなく女王様か何かなのかもしれない。

 

 璃奈ちゃんから話を持って来られた私は「宮下愛ちゃんの誕生日イベントの企画」と「主役以外のLINEグループを作る」

 早速準備開始とばかりに「皆様がサプライズプレゼントを用意することを願っております」と煽り文句で文言を閉じる。

 

 隣にいたダイヤちゃんが「なぜ自分に関すること以外は異様に優秀な能力を発揮するのですか」と苦笑いしながら言うけれども「自分のために頑張るより、誰かのために頑張った方がやりやすいでしょう」とこともなげに言ってみる。

 

 「自分が前に進むよりも、誰かの背中の方が押しやすいですからね」と、真面目な顔を作って言い「あなたは背中を押してばかりではありませんか? 押された相手が崖の上にいるかもしれませんけど?」と、忠告するような物言いをする。

 「崖の上にいるんだったらこちらに引き寄せる」と、笑いながら反応をした。

 

 ――後日、海未から「今崖の上にいるんですが絵里に引き寄せてもらいたいんです」 とメッセージが届いて「今は忙しいから帰ってきなさい」と返答したら「唇を尖らせた顔のLINEが届いた」――本当に山の上にいたので、趣味と実益を兼ねての嫌がらせはやめなさいと進言するしかなく。

 

 

 さて、宮下愛ちゃんが誕生日なので、彼女が喜ぶようなプレゼントは何にすればいいか腕を組んで考える。

 彼女が同好会に入ってからしばらく経ったのもあるし、寮の中で「愛ちゃんの誕生日パーティーを開く」と言った際には「絶対に参加するから!」 と語ったアイトモがいっぱいいた。

 知人ならともかく、学生とかぶるプレゼントは社会人として恥ずかしい。

 

 おかげで用意する料理が大変な量になりそうだけれども、理事長が「金ならあるわ」と悪役みたいなセリフを言いながらイベント資金を用意してくれました。

 旦那様に料理は作ったりしないんですか? と言ったら「ママの料理はせつ菜と同じレベルだから」とランジュちゃんに言われ、あまり芳しくないと言われている彼女の評価がみんなから下げられてしまった。

 

 私を恨みがましい目で見ても評価は上がらないので、できればメシマズから卒業していただきたい。

 トレーニングがしたいというのなら責任を持って付き合いますので……。

 

 

 愛ちゃんの姉代わりを務めていらっしゃる美里さんにもご協力をいただき、さらにはことりにも「誕生日にふさわしい着飾る衣装」を提供していただきました。

 

 ちなみに「曜ちゃん」も「千歌ちゃんの提案」で「私が宮下愛ちゃんにふさわしい格好を用意します」と宣言――投票の結果、ことりへの投票が上回り採用された。

 

 ことりからも「努力すれば私の引き立て役くらいにはなる」「少なくとも女装してメイドしているやつよりは才能がある」と、フランスでは戸籍の変更が認められて女性なんだから「女装している」って表現は変なのでは? と首を傾げたけれども。

 

 曜ちゃんを含めて「え?」みたいな顔をしているので「何よ、私の知り合いにまるで女装している人がいるみたいじゃない」――あ、綺羅雪菜クンはカウントしてない。

 とっても可愛らしい女性に出会いまして、と、ここ最近は男性的な仕草を取ることが多くなった――女装している時に出会ったのだから、女装したままの方が良いのでは? と誰しも考えた。

 

 「それではまるでだまし討ちをしているようではありませんか」と苦笑いされながら言われたけど「実は男性だったんです」と告白した方が、その女性にとってダメージが大きいのでは? と聞いていたメンバーは誰しもが考えたけれども――恋は盲目ってことで。

 

 ただ、寮では男性として過ごすことが多くなったのに、踏ん切りがつかないせいなのか、彼女と出会う時には女装していく――嫌なことから逃げるとロクなことがないわよ、と姉に指摘されているけど……。

 

 ちなみに女装をしていない姿は女子に大人気で「カワイイ」「あっちのほうが良い」「おもちゃにしたい」と評判である――姉に一人残らず殴り倒されないか心配だ。

 

 一つだけ気になるのは、その女の子の写真を眺めたニコが「可愛らしい子ね」とコメントしたっきり、それ以上話題にしようとしないので「UTXだから、知っている生徒なんだろう」と私は推測している。

 きっと、雪菜クンの前では猫をかぶっているのだ――そう考えると、彼への評価はとても良い方向に向かっていると言える。

 

「さすがに弟の彼女ぐらいで怒らないわよ、妹に彼氏を紹介されたあなたが怒っていないんだから」

 

 と、ツバサにはトラウマを刺激されつつ、自分はノータッチを貫くと宣言してくれた。

 あんじゅも英玲奈も「ブラコンのツバサがそんなことを言うとは、明日は大嵐になるに違いない」と失礼な事を言ったけれど。

 天気予報では晴れだったのに、突然の低気圧の襲来で大雨が降った。

 

 窓の外を眺めながら「やっぱり怒った方が良かったんじゃないですか?」と理亞ちゃんに心配げに言われ。

 「怒った方が私らしいっていうのは複雑な気分ね」とツバサは首を振りながら言っていた。

 

 

 さて愛ちゃんの話に戻る――誕生日パーティーはもちろん彼女の知らないところで完璧に準備。

 友人が多いから誰かがしくじるんじゃないかと思っていたけど、パーティーの当日までに彼女に情報が漏れることはなかった。

 

 会場に連れ出してきたのは璃奈ちゃんとミアちゃんだ――連れ出すメンバーに選ばれたミアちゃんは「え? ボクなの?」と驚きを隠せない様子で、それでもちゃんとおめかしして璃奈ちゃんと一緒に迎えに行ってくれた。

 

 DiverDIVAとしてユニットを組んでいる果林ちゃんは「サプライズが隠しきれそうにもないから無理」と断っていた。

 読者モデルとしては似つかわしくないちょび髭をつけながらクラッカーを鳴らす準備をしている彼女を眺める限り、迎えに行って歩いている最中に「誕生日おめでとう」くらいは言ってしまいそうだ。

 

 ちなみに本日は宮下愛ちゃんの誕生日ではなく、誕生日パーティーが開けなかったから今やってしまおうって話だ――果林ちゃん以外は理解してくれていると願いたい。

 

 スペシャルゲストとして美里さんにも同席していただいている。

 体調の関係上大きく盛り上がることはできないけど、喜ぶ”妹”の姿を眺めたいとのこと。

 

 近くには真姫や、未だに教育実習に取り組む様子がない教育実習生がいるけど……あの教育実習生はテレポートができるので、美里さんが体調を崩されても病院にすっ飛んでいけるから。

 

 ……ただ、基本的に素直な二人組が「愛さんの新しいステージ衣装」と嘘をついて「パーティードレス」を彼女に着せられるかと心配になる。

 「ステージ衣装といえば身に着けるはず」とミアちゃんは自信満々に言ったけれども、根拠が「スクールアイドルだから、素敵な衣装を見せられれば誰でも身に着けたくなる」と――もしかして自分もことりの衣装が着てみたいっていう自己申告ですか?

 

 ちなみに会場は学園でステージとしても活用されている体育館――アイトモや参加したい人間があまりにも多かったため、部活で練習する皆様には大変申し訳ないんだけれども貸切にさせて頂いた。

 

 ――「愛ちゃんのためならオーケー」と様々な部活の部長から言われて、ランジュちゃんや栞子ちゃんは流石に驚きを隠せなかったけど。

 や、断りづらい雰囲気にするために二人が交渉に向かったのに「愛ちゃんのイベントなら」で、何も問題が起こらなかったのはすごい。

 

 二人にはちゃんと「練習場所は他に用意してあります」って言わせるつもりだったのに、言う前から「愛ちゃんならオーケー」なんだから、彼女の存在は別格と言っていい。

 

 そして会場に現れた愛ちゃんを「クラッカー音」「手拍子」「歓声」で迎える。彼女は最初何が起こったのか分からなかったけど「誕生日おめでとう」って声でイベント好きな私を思い出したらしい。

 

 彼女は感極まったように俯いて「もう誕生日は何ヶ月も前に過ぎてるんだけどな」とつぶやく口の動きが見えた。

 

 それでも顔を上げた愛ちゃんは、全員とハイタッチしようとテンションを上げ。

 手を上げてを待っている面々の中に美里さんがいることを確認ししこたま驚いた。

 

 それまではギャグをマシンガンのように言っていたのに、彼女の前に来た瞬間感極まったように表情が歪み、手で顔を覆って泣き出してしまった。

 愛ちゃんの頭を撫でながら、優しげな言葉を囁きかけるのを見て、彼女と同じように感極まるメンバーが多数。

 

 かくいう私も「愛ちゃんにはぜひステージの上に!」と無茶振りをされる彼女を助けられなかった。

 いつもだったら助けられていたのかと、突っ込まれたら首をひねるしかないけど、彼女の嬉しさが込められたステージを眺めて、感極まっている美里さんを眺めて、涙腺が崩壊し翌日は目薬が手放せなかった。

 

 

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