アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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いつも思うんですがプロット通りに行きません

 元々μ'sは、穂乃果の廃校を阻止したいとの願望から生まれたグループ。

 言ってしまえば思いつきで結成され、そのままラブライブ優勝まで突き進んだ。

 

 優勝の肩書きがあろうが、当時最強を謳われてたA-RISEを東京予選で破り去ったとか言われようが。

 無謀とも言える選択を突然して、着の身着のままの勢いで寮へ連れられた侑ちゃんに「では諦めましょう」といえるメンバーは誰一人いなかった。

 

 上原歩夢ちゃんに「侑ちゃん」を窘めて欲しいの意図があったことは重々承知する、でなければ寮ではなくその場で「やめたほうが」と進言するに違いない。

 

 はい――歩夢ちゃんからの「転科宣言をした」には驚いたものの、絢瀬絵里としては「頑張れとも諦めなさい」とも言えない。

 どうやらこの場にいたAqoursのメンバーも同様だったみたく、梨子ちゃんがコップに入っていたビールで喉を潤してから「理事長」と言った。

 

 侑ちゃんが音楽科への転身をはかるきっかけになったのが、梨子ちゃんの「侑ちゃんって良い才能を持ってそう」の発言であり、そのイベントには私も真姫も――そして、歩夢ちゃんも参加している。

 

 前々から好きな曲を好きなように弾いていたみたいで、レッスンを受けて以降にも梨子ちゃんに「レッスン」をせがんでいた、彼女が忙しいときには真姫も、音楽科の生徒にもピアノを教えてもらっていた様子。

 

 けどまあ、歩夢ちゃんからすれば――や、何より私たちとしても、ピアノにハマって上達しようと努力したくらいにしか認識しておらず、この場にいるメンバーでは誰一人「音楽科への転身」は予測できなんだ。

 

 そう、この場で真姫が欠席である以上、是か否を音楽を嗜んだ人間として言えるのは桜内梨子ちゃんしかいない。

 

「彼女の才能は普通科にいるにはもったいないです」

 

 だろうな、と思った。Aqoursのメンバーだったころも、それ以降、気まぐれにニジガクの面々に楽曲を提供しても、アイドルになったよっちゃんに曲をプレゼントしても。

 

 彼女の才能はスナックでママをしてるのはもったいないと、周囲から言われていたし「自分のやりたいことは自分で決めさせてよ」と苦笑いしながら反応をしているのを見たことがある。 

 

 万人には不可能なほどの努力をし、極まる才能を誇る彼女が、ちょっとピアノをかじっただけの女の子に「レッスン」なんぞ行うはずもなく、真姫だってその手の教育はしずくちゃん相手にすら躊躇いがある。

 

 熱烈に推しているしずくちゃんや、ステージに立てば超高校級と才能を持て囃されるモモちゃんにさえ「教えて下さい」と言われて「まずは考えを述べて」とワンクッション置く。

 

 梨子ちゃんも音楽科の生徒から「教えて下さい」と頭を下げられても「演奏家としては引退している」とか「教師に申し訳ない」と一度では教えて貰えないくらい。

 

 繰り返しになるけど、突然の転科宣言は梨子ちゃんも……この場に真姫がいれば、彼女も驚いたに違いない。

 

「で、忖度をしろというの?」

「したほうがいいでしょうね」

 

 ケド、桜内梨子ちゃんの発言は先程の侑ちゃんの発言以上に周囲にざわめきをもたらした。

 理事長も「んなわけないでしょう」と言われるのを予測し、半ば冗談で「忖度」と言ったけれども、梨子ちゃんが「学園の利益になる」と続ければ、学園の最高権力者は真面目な顔になる。

 

「なぜ?」

 

 理事長は手に取るものが欲しい、と飲み物を要求されたので、パシリとして名高い絢瀬絵里としては頑張って用意を重ねる。

 ついでなので皆様の分もご用意させて頂く。

 

 渡す時に歩夢ちゃんには「ごめんなさい」と謝罪をしておいた、彼女も「私も……侑ちゃんを信じられていなかったですから」と儚げな笑みを浮かべる。

 

 ケド、そこは信じる信じないのレベルじゃない、いくら信じていたところで「学園の利益になるから編入試験に忖度しろ」を予測できるとは思わない、思えるとしたら才能の有無に気がつき、さらには転科宣言も予測できた人間だけ……まあ、いないわけではなさそうだけど。

 

 

「彼女のピアノを聞いて……焦燥感にかられないはずがない」

「なるほど……絵里ちゃん、二学期に入ってからの音楽科の生徒の相談回数は?」

「侑ちゃんのピアノを聞いたコトがきっかけと思しき相談が上昇しています」

 

 経緯を端折ってしまったけど、私が音楽科の子から相談を受けた内容は「焦ってしまって」とか「怖い才能を誇る生徒がいて」と「侑ちゃんのピアノを聞いたから」と断定されたわけじゃない。

 

 幼少時から音楽を嗜んだ人間ですら「焦る」「怖い」と悩みを吐露し始めたのが、梨子ちゃんや真姫が侑ちゃんにレッスンを始めた時期と合致する。

 ここまでくれば他のメンバーも「実は相談を」と告白する、ニコや理亞ちゃんに相談を寄せても、ではどう努力をするかしか言えないんだろうに。

 

 やあ、私も「不安なのは行動しないから」的な精神論しか教えてあげられない、あとは「美味しいものでも食べましょう」と料理をしてあげるくらいしか。

 

「ツバサも?」

「さすがに畑違いだけどね……恐ろしい才能を誇った人間を観た時の反応くらいしか言えなかった」

「あなたが恐ろしいと思う才能? 冗談でしょ」

「ちなみに答えは、不安を感じている暇がないほど練習、よ」

 

 方向性が私と一緒で困る――真理かどうかはともかく、不安を感じないほど集中さえすればいい、ボーッと「ああどうしよう~」と言っているよりも「アホみたいにやる」が功を奏することもある。

 

 もちろん、アホみたいにやったあとはガーっと寝る、疲れてそうな生徒には「そこで休みなさい」と指示することもあった。

 

 専門家なら専門家の答えがあろうが、畑違いな人間としては「一生懸命練習して、お腹いっぱい食べて、眠くなったら死ぬほど寝る」で「新しい朝を迎える」が最善としか言いようがない。

 

 ちなみに「仕事をさせ、眠らせず、お腹いっぱいも食べさせないし、娯楽もさせない」で人間は簡単に死ぬ、勘弁願いたい。

 

 

「侑ちゃん」

「はいっ!」

 

 理事長との会話が終わったのか、梨子ちゃんが侑ちゃんのもとに歩み寄り、近くにいた歩夢ちゃんには「ごめんなさい」と頭を下げていた、許せる許せないの話ではなく、さすがに梨子ちゃんに謝罪されると思ってなかったのか「い、いえ」と釈然としない表情を浮かべる……や、戸惑っているのかな?

 

 でも、何を言う言わないの話でもないので、ひとまず梨子ちゃんは歩夢ちゃんの答えを待たずに侑ちゃんに話しかけた。

 

「誰かの心を折るかもって覚悟がある?」

「そのぶん、誰かを救う音楽を作ります」

 

 力強い瞳だった――自分の好きなことをするのは、誰かのガマンでそれが成り立つって知る表情だ。 

 例えば、優勝の椅子に座れるのは一人、もしくは一グループしかない。

 第二回ラブライブ優勝に座ったのがμ'sなら、それ以外のグループは悔しい思いをしたり、涙を流したことになる。

 

 自分たちが幸せな結果を享受したところで、それ以外のみんなもハッピーであるとは限らない――すごいサクセスストーリーだね、と私たちのことを褒めてくれる人もいる……やあ、今となっては手放しで喜べないけど。

 

 けど、梨子ちゃんは「それは間違いだ」と言わんばかりに首を振り。

 

「誰かじゃない、誰しもよ」

「……え?」

「心を折ったそのヒトでさえ、高咲侑に折られたらしょうがないと、心が救われるような音楽を作りなさい、それが才能を持つ人間の使命、努力をしなければならない理由……そうでない人間は堕ちる」

 

 歩夢ちゃんが「ひぇ」って言って、たじろいで一歩後方へと下がるも、侑ちゃんは余裕だと言わんばかりに胸を張る。

 そんじょそこらのホラー映画ではお目にかかれないほどの恐ろしい顔だったけど、近くにいるだけの歩夢ちゃんが泣きそうになってるけども、侑ちゃんは厭わずに一歩踏み出してきた。

 

「私は正直ね、ニジガクのソロ趣向は死ぬほど嫌いなんだけどさ」

 

 「ひえ」的な声を上げる人間が増えた――唐突な「ソロ嫌い」に、虹ヶ咲学園でソロで活動する面々は視線をそらして飲み物を飲む、おかわりを要求された気がしたので注いであげた。

 

「なんでだか分かる?」

「……」

 

 侑ちゃんは一度深呼吸をし、上を見、下を見、隣の歩夢ちゃんに視線を寄せ、それぞれ固まっているニジガクの面々にも気を配り。

 

「泣く回数が増えるから」

「アハっ!」

 

 ヤバい、完全にキマってる――勘違いするほど、笑った梨子ちゃんの表情も声も怪しかった、でも、理由は侑ちゃんの答えに満足をしたからじゃない、周囲の面々の反応を眺めての笑いだ。

 

 そろそろ「パフォーマンスをして合格不合格を決められる」のにも慣れが出てきた、さらにユニットの結成により「ステージに立つ回数」も増えた、璃奈ちゃんに至ってはユニットでしかステージに立ってない。

 

 だから「まあ、次があるし」の考えが出てくる頃合いだとは思った、そして――

 

「みんなも悔しさを忘れたでしょう? いんや、忘れたのは……そうじゃないか」

 

 そのことを教える時期ではないかな、とはニコともツバサとも話し合っていた――梨子ちゃんには汚れ役を任せてしまった。

 

 「ついでだから」と笑ってくれたけど、後日に虹ヶ咲学園名義で御礼の品を送った「やあ、これダイヤちゃんのじゃん」と文句を言ったりなんだり、当人の中で満足が行ったかどうかはわからない――このあとのみんなの反応を含めて。

 

「あなたたち、ステージに立てなかった時に悲しむのが自分だけだって勘違いしているでしょう」

 

 そこで驚いた表情をしないでほしかったなあ、と。

 

 ――なお、梨子ちゃんの発言で驚かなかったのは、この場にいたエマちゃん、後日に事情を聞いた彼方ちゃん、さすがにこの二人は大人びたところがある。

 

 梨子ちゃんの発言を聞き「そうだ」とエマちゃんが頷いたので「ファンの子にステージに立ってないのかと尋ねられたこと無いの?」と追撃をくらわずに済んだ。

 

 そう、私もそうだし、ニコも慣れている「推しがステージに立ってないことのファンのお問い合わせ」

 

 コレさえ知っていれば「ソロで落ちてもユニットで」なんて口が裂けても言えない。

 

 でも、さすがは侑ちゃん、梨子ちゃんの話題逸らしにも、理事長に「編入試験を受けさせてください」と直談判で対応。

 そのしたたかさには私たちも「あのメンタルなら転科しても行けるわ……」と称賛するしかなかった。

 

 

 だって、唐突に転科するって言われた歩夢ちゃんの手前、彼女の思いを汲めば「もう何日か考えて」と結論付けさせるしかなく。

 才能を認め、背中を押してしまった我々も「唐突のソロ嫌い」で「あ、やべえ転科する流れだ」と気がつき、なんとかして「今日のところは遅いので」にしようとしたけど……結果は直談判と。

 

 理事長も「もっとよく考えて」と言ったけど「今ココで試験を行って頂いても」と力強く押し、さらには「自由な校風の尊重」と言いつつ「受け入れていただくまで動きません」と座り込む。

 

 そして侑ちゃんは編入試験の権利を得、満場一致で合格を果たす――そろそろ「ルビィの誕生日会を」と言っていたダイヤちゃんにいい報告ができた

 うん、ダイヤちゃんに「梨子ちゃんの誕生日会は?」と問いかけてしまったので「ファンのことを考えろ」と宣言した梨子ちゃんに「ダイヤちゃんからの一品」が「虹ヶ咲学園名義」で届けられたんだけど、

 

 私もね、ことりからね「ねえ、絵里ちゃん、私のお誕生日会はぁ?」と言われるまで記憶から抜け落ちてたからおあいこ。

 

 侑ちゃんの編入試験の準備や音楽科の生徒の相談を受け持ち、同好会や部のフォローをしている間に過ぎてしまって。

 

 ことりの誕生日の翌日、何食わぬ顔で彼女が現れたときも「ごめんなさい、日付の感覚がよくわからなくて」と忙しさにかまけておざなりな反応をしてしまった。

 

 満足いただけたかどうかはわからないけど、ことり、梨子ちゃん、ルビィちゃんには虹ヶ咲学園名義で色々贈られた――やあ、さすがのダイヤちゃんも「梨子ちゃんの誕生日を完スルー」して妹の誕生日会を盛大に行うのはね……でも、誕生日会はしめやかに執り行われましたって言わなくてもいいから、それ、お葬式にも使われる表現だからね?

 

 

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