アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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そして絢瀬絵里はド処女とニジガクのみなさまに知られることになる

 ツバサの部屋にあった私の荷物が、気がつけばすべて管理人室と書かれた部屋の中に鎮座していた。

 ニコニコと微笑みながら肩を叩く理事長に、逆らう気持ちも、反論の言葉も消え去る――雪菜クンの成績がよほど酷いものでない限り口添えをしてくれるからと、ツバサの抵抗もできなくさせる、ハラショー。

 

 持ち込まれた私物はとにかく、絢瀬絵里なんぞに失礼のないようにと設備は設えて頂いたため「コレなら牢獄に入れてもらったほうが良かった」と。

 知人のみなさまには就職が決まった折、理事長には逆らうなとのメッセージ、ふたつが届けられたと思う。

 

 いきなりだね、と反応や「メイドとしての仕事は?」と、凛やことりにされたのと他に、真姫から「その学園には自分の妹が行く」と。

 名字が違う、自分とは母親が違う、姉や妹が全国各地に混在すると聞きたくない情報まで付与されたけれども「姉は妹の数だけ強くなれる」「真姫は私の妹みたいなものだから、妹さんの世話は任せて」と送っておいた。

 

 「えらく嫌われてるようだから」と真姫の介入を示さない旨が送られたけれども「姉と妹は仲良くせねばならない」と、返答になってないメッセージを送った時、ドアが叩かれた。

 

「生徒会長を務めております、中川菜々と申します」

 

 理事長かなって思ったけど、ドアを叩く音が違ったので別人と安心し、よそ行きの声と愛想の良さを意識しつつ、にこやかに微笑んでみせた。

 が、その微笑みが石化しなかったと願いたい、なにせ目の前にいる彼女は「ツバサの弟さんが女装した姿に似ている」双子かと勘違いするほどクリソツ、もしかして綺羅家当主も、西木野総合病院の院長と同様の下半身のだらしなさを誇っているのか。

 

「絢瀬絵里と申します、このたび、理事長の気まぐれで寮の管理人みたいなものをつとめることになりました」

 

 料理人との話から責任のある役職へジャンプアップ、アゴで使える人間は中途半端な役職を与えておけ、ツバサ様のアドバイスに理事長納得――お給料には色を付けておくから、ニッコリ微笑まれた時。

 

 梨子ちゃんの両手をパーにして示す姿を思い出し、同じ姿を取ってみたら「オーケー」と言われた、何がオーケーなのかは分からないけど、ツバサは引き攣った表情で「チャレンジブルね、絵里」と。

 

「管理人みたいなものですか?」

「ええ、基本的には厨房に立っているので」

「料理をされるんですか?」

「プロには劣り、アマには勝つ中途半端さで」

 

 気まぐれで取ってよかった調理師免許。

 

 菜々ちゃんから寮生の数、および食欲旺盛さを教えられ「確かに高校時代の自分はよく食べていた」と思い出し、厨房に入ってから食材のチェックをし、なぜか積極的に手伝おうとする生徒会長さんを、ここは学生が入って良い領分じゃないと撤退させる。

 

 廃棄されたであろう食材を手に取り「自分の実力を」と言われたので、そんなものを使っては食中毒事件しか起こせないと彼女の能力ともども察し、寮生の規律を保つようにお願いしたので角は立たないはず。

 

 宗教の関係で食べてはいけないモノがあるので、やっぱりチキンよね、と一人合点――ただ、寮の冷蔵庫には豚も牛も入っていたので、そこまで神経質になることもなかった。

 

 男子学生も在籍しているので、いざとなれば彼らに食べて頂こうと思いつつ、凛や真姫から文句言われない程度の料理を作り上げた。

 完成された代物を学生にも手伝ってもらい配膳し、自己紹介を一緒にこなし――なお、生徒会長さんは夕食前に帰宅した模様、今度差し入れを持っていこう。

 

 

 学生の食べる姿を眺めながら、苦手なもの、好きなもの、食べるスピード、栄養バランス等々、頼まれたわけでもないのに記憶。

 学生時代の食事は精神に大いに影響する――と、思う、美味しいもんを食べていればいいや感も、これまた。

 

 その中で、二人組――私なんぞのサインを貰って喜んでいた(家宝にはしないで欲しい)エマ・ヴェルデちゃんと、スラリと背が高く、モデルさんみたいな立ち居振る舞い、髪になぜか芋けんぴがくっついている女の子。

 

 近頃の若者のファッションセンスは分からないけれども、少なくとも、髪に芋けんぴを付けるのはトレンドではあるまい――

 

 両者に共通するのはあまり食が進んでいないご様子。

 

 ごちゃごちゃとうるさいと言われようとも、今はとりあえず介入しておきたい「うぜえんだよババア」と言われたら部屋でこっそり泣く。

 

「口に合わなかった? 努力するから好みを」

「いいえ!? 緊張してしまって!?」

 

 ――エマちゃんはオカズとご飯をかきこみつつ、元気さをアピール、なんでも憧れのμ'sのメンバーの前での食事にバイオリズムが崩された模様。

 いい子過ぎる、絢瀬絵里よりアリンコのほうが人権ありそうだよね、って扱い受けてたような気もするから尚更。

 

 となりにいる朝香果林ちゃんはなんとなく――ほんとうになんとなくだけど、敵意が混じっているような? 髪に芋けんぴがついているから、そんな気がするってだけだけど。

 

「すみません、栄養バランスに気を使っていて」

「ありがとう教えてくれて、気をつけるわ」

「……生徒のひとりひとりに気を使うんですか?」

「食べたいもの、食べたくないモノ、教えてくれたら嬉しいわ――他のみんなも、教えてくれたら聞ける範囲で叶えてあげる」

 

 

 キャパを超えてリクエストをしないで欲しい――食事に関するリクエストを聞いているさなか「恋人がいるんですか?」と、アラサー処女の脇腹にクリティカルヒットする質問をされ、思わずたじろぎ、エマちゃんが「こんなにきれいなスクールアイドルさんなんだから、いっぱいいるよ!」と、天然発言でさらなる追撃を受ける。

 

 格好良くお姉さんキャラを保ちたかったのに、今回の夕食イベントで寮生のみなさまから「絵里ちゃん」って呼ばれるようになってしまい。

 

 絵里ちゃんお風呂入ろう! と、みなさまに誘われ、裸の付き合いまでこなすことになった――一部には感づかれなかったけども、ド処女は知られることになり、μ'sのメンバーもそうなんですか? と質問された際には「ご想像におまかせするわ」と遠い目をしながら言っておいた。

 

 

 絵里ちゃんが遠い目をしながら言うってことは処女は絵里ちゃんオンリー派と、μ'sのメンバーは揃って処女である派に分かれて論争が起こり、学業に差し支えが出るから早く寝なさいって、懇願するしかなかった。

 

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