アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

85 / 125
次回はクゥクゥ誕生日記念・ニコ誕生日記念を書いてからになります

 敵としての認識が深まった結女の偉い方々に、早々顔を突き合わせメンチでも切り合うかと思いきや、学園の理事長に促されて入った部屋の中では恋ちゃんともう一方。

 

「結ヶ丘女子高等学校で理事長を務めております」

 

 真面目そうで背筋もスラっと伸び、できるキャリアウーマンといった風貌ではあれど、かたや隣にいる虹ヶ咲学園の理事長であられるランジュちゃんママも一見するとエリートで有能そうな女性だ。

 

 優秀かつ有能なのは疑いようもなく、様々なツテも頼って学園の知名度の向上に貢献する一方、連れてきたのが私であったり、綺羅ツバサであったりすることから、見境なく有名な人物(絢瀬絵里には疑いの余地がある)を連れてきただけとの評判も聞かれる。

 

 因果応報なのか、人生のツケをまとめて支払っているかは神様に尋ねない限り不明だけど。

 絢瀬絵里を殴りつけに様々な有名人が来訪しているので、少なくとも理事長が連れてきたヤツより、ソッチのほうが有名化に一役買っている。

 

 なお、先に紹介したもう一方は、鹿角理亞と共に「ヤンキー狩り」「小悪党狩り」や運動系部活の実力の底上げをしており、不法なスクールアイドルグッズ販売店一斉摘発にも貢献した。

 鹿角理亞のグッズが店の前面にあったのに、A-RISEのグッズは隅っこにあったのがお気に示さなかったとか。

 

 

 さて、理事長のお話に戻るけれども、やはり一癖も二癖もある理事長ズの中でも指折りの酒の弱さを誇り、オトノキやニジガク――果てには東雲や藤黄やUTXの偉い人とも飲み歩き、いずれも「もう二度とお相手をしたくない」と評判。

 

 音楽学校の流れを汲む音楽科の活動の推進により、Liella!もたいそう肩身の狭い思いをし、普通科の生徒会長である葉月恋ちゃんも気苦労が絶えないとか。

 

 どうやらスクールアイドルは素人の音楽であるらしい――私は否定しないし、アイ活よりも他に一生懸命なものがあるグループだって珍しくない。

 

「へえ、プロを目指してらっしゃる……すごいのねぇ」

 

 ニジガクの理事長は恋ちゃんの話を「近所の子どもの自慢話」を聞くような反応を示し、相手方の理事長は苦笑いしたし、恋ちゃんも表情を歪め、機嫌を害したふうだった。

 

 そりゃ、気苦労を重ねている恋ちゃんの前で「たいしたことねえなあ」と言わんばかりに反応をすれば、どんな聖人君子であろうと助走して殴りかかるだろうし。

 南ことりの前でそんな態度をすれば「爪ミサイル!」って言われつつながらサミング。

 

 恋ちゃんではなく「音楽科」に含むからこそ「へえ」と反応をしている――どこも同じだ。

 エマちゃんや栞子ちゃんが活動を始めたての当初「お遊びの音楽」扱いは音楽科の一部生徒からされていたし、ランジュちゃんはステージで恐怖を覚えるほどだった。

 

 いずれもスクールアイドルたちのパフォーマンスにより黙らせたけれども、Liella!はまだ始まったばかりのグループだし、誰しもはじめたてからプロレベルになれない。

 ニジガクには優木せつ菜がスクールアイドル同好会の結成前から在籍していたし、彼女自身がスクールアイドル界でも指折りの能力の高さを誇っていた。

 

 一方結ヶ丘女子高等学校は前身の高校があるとはいえ、実質創立一年目。普通科の生徒を募集して生徒数がやっと足りている高校が、前々から音楽で著名であったとは言え、スクールアイドルを素人の音楽呼ばわりして見下すなど。

 

「絵里ちゃんならどうする?」

「普通科の生徒で集って退学届を書く」

 

 いわば、音楽学校だけでは存続できないからこそ、普通科の生徒を募集してリスタートしたわけで。

 「こんなトコロにはいられません! 退学してニジガクでスクールアイドルライフデス!」と音楽科に含むところがあったクゥクゥちゃんの反応は極めて正しい。

 

 恋ちゃんが「そんなバカな」と私の発言に対して言ったけども、結女の理事長は「音楽科の生徒だけでは学校の存続は難しい」と言ったので、ポンコツの提案も少しは実用性があった模様。

 

「……さて、理事会の皆様がお待ちのようだし、ムダ話はこの辺りにして行きましょうか」

 

 ニジガクの理事長先生がこの場にて主導しているのは、結女の二人がヘルプとして私達を呼んだからってことでお許し頂きたい。

 

 理事会の皆さまが待っているって場所にも、結女の二人を自分たちが先導する必要はまったくない――むしろズンズンと突き進んでいるものだから、後方の二人が明らかに戸惑っている。

 

 

 

 

 理事会の皆さまが会合されている――ホテルの一室を借り切っての豪奢な話し合い……予算はいかほどで、金額に見合った結果は浮かび上がるのかは、凡骨の絢瀬絵里には想像もできない。

 

 懐にいくらお金があるのかは分からないけど、そこらへんにある全国チェーンのハンバーガーショップで話し合ったほうが、お金もかからないし、ソッチのほうが良いなって思った。

 

「この手の歓迎されない視線、絵里ちゃんは経験ある?」

「Aqoursに襲いかかったテロリストを縛り上げてから、仲良く密談してた首謀者がいる料亭に乱入したときに」

 

 腹に一物を抱えている面々と仲良く酒を酌み交わすなんてのは、私は理解できないし、したくもないけども――

 

 武装した集団をツバサと一緒に返り討ちにし、国家権力の皆様に後はよろしくの一言で任せたあと(その後も事情すら聞かれなかった)二人してチャリで料亭に向かう。

 

 壁がとても高かったもんだから、勢いよく加速して飛び越え、乱痴気騒ぎをしている場所に飛び込み、ひとり残らず有無も言わさずに殴りつけてから縛り上げた。

 

 さすがに料亭の設備を破壊して、会場をめちゃくちゃにしたせいか、数時間おまわりさんに事情は聞かれたものの「相手が武装していたんで仕方なく」「アンパンマンの飛ばされた方の顔の行方って気になりません?」でやり過ごした――もう一方のツバサさんは「弁護士が来るまで話したくない」で済ませたらしい、同じことがあればそうするつもり。

 

「理事長、事情を説明して頂きたい」

 

 やな声だなって思った――物事がうまく行かなかった時に生じる声って、男女問わずに不愉快だ。

 いい大人が悪辣な感情を丸出しにして、でも口調は理知的を演じて。

 説明を求めるも何も、シチュエーションは見たままだ、私とニジガクの理事長が会合に乱入して仁王立ちをしている――

 

「理事会の会合で出された結論に、虹ヶ咲学園の理事長が是非に申し上げたいことがあると……」

「他校の事情にまで介入してくるのは感心しませんな」

「とある高校の芸能科の少女にお小遣いを渡している理事の方は、探られると痛い事情があるようですね」

 

 ジャブもいいとこだった――私もニジガクに連れてこられたとき、痛くもない腹を探られる経験をした。

 誰かしら知ってるだろうくらいの知識だったので、理事長から「ごめんなさい」と言われても「自分の知識なんてお金にもならない」と、絢瀬絵里なんぞのことを調べるために費やした時間と予算が心配になった。

 

 奥方がいる男性が女性をお金を出して買うのも十二分にスキャンダラスな出来事ではあれど、高校の理事が女子高生を買ってる時点で国家権力のお世話にならないといけない。

 

「スクールアイドルが結ヶ丘女子高等学校にとってよろしくない、そのように結論付けられたそうですが、どのような経緯が興味がありまして」

 

 スキャンダルは片っ端から頭に入れておいたけども、最初の一撃がよほど痛かったらしく「デマカセだ! 何を言っている!」と、この場で権力がありそうな理事が喚いた以外は騒ぎにすらならなかった。

 

「結ヶ丘女子高等学校が音楽に力を入れていることはご承知のとおりかと思いますが」

「あらごめんなさい、まったく知らなかったわ――」

 

 そうだったの? と白々しくすっとぼける理事長にポンコツも「調査不足でした」と応じる――もちろんここで「調査不足」を攻撃してくれれば「他県の高校から取り計らうよう言われてますよね」と続ける。

 

「廃校になった事情は生徒数の不足だったのは存じていますが」

「由緒正しい高校への進学がなんだったかなぁ……ある高校の生徒数の増加で無くなっちゃってネェ」

 

 恋ちゃんはあからさまに驚いている――さすがに彼女にばかりは明かせる事情じゃなかったので。

 UTXへの進学者数が増大したことにより、オトノキが廃校の危機に瀕したように、オトノキへの希望が増えれば――まあ、直接的に関係があるかは不明。

 

 学区外への進学が珍しくないとは言え、オトノキへの希望が増えたから前身の高校が閉校したとあれば、UTXはもっと多くの高校を廃校に追い込んでいと思うし。

 

 

 

「なるほど……ウチの高校がラブライブで三連覇できたのも、結女の前身に通うはずだった生徒が入ったおかげですね」

「そうそう、ラブライブ……なんかチャラチャラとした生徒が歌って踊るイベントだろう?」

「音楽科に通うよりも魅力的だったそうですよ?」

 

 逆恨みは結構だけども、既に「なぜ音ノ木坂を選んだのか」はウチの卒業生に尋ねてある。

 なにせこちらには「アイドル研究部」元部長の高坂雪穂さんだっているしね。

 申し訳なかったけど頼らせてもらった(理事長が)――ポンコツ生徒会長が偉そうにしているけれども、事情を詳らかにするのを含めて全面協力をしていただいている(頑張ったのは理事長)

 

「スクールアイドルが流行したことにより、オトノキは存続し、別の高校は廃校になる、極めて残念なことです――あ、ピアニストの志筑さんはご存知ですか?」

「教え子だが」

「彼女が今、一番共演したいピアニストは桜内梨子さん――元スクールアイドルです」

 

 卒業生を含めて廃校になったことには悲しみはあれど、スクールアイドルに悪意を持つ人間はただの一人もいなかった(調査不足の可能性アリ)

 そもそも生徒の中に「オトノキに生徒が取られ」とか「スクールアイドルが流行って」の理由付けで前身の高校が廃校になったと知っているのは、偉い人たちだけ。

 

 いわば、廃校になった理由付けをスクールアイドルに求めている上に、結ヶ丘女子高等学校に誕生した部活動を逆恨みを転嫁させて潰そうとしている。

 

 子どものワガママをオトナの事情だからね、の一言で許せるほど人生経験豊富ではないし、そのワガママを許すのがオトナになるってことなら、私は一生オトナになれずとも構わない。

 

「結ヶ丘女子高等学校で音楽は誇り高く、重要なものだそうですね」

「だからこそ、レベルの高いモノだけを残そうというのだ」

「本当に高いレベルを誇る存在は、低レベルのものを気にも留めない」

 

 常々疑問ではあるんだけども、音楽科のみでの存続が難しく普通科で生徒を募ってまで学校をスタートさせたと言うに、前々からある音楽科の流れを汲むからで偉そうにされる謂れはない。

 選民思想は御大層で結構だけども、自分たちは選ばれた存在で一部の生徒が横暴に振る舞うならば、待っているのは前身と同じ未来でしかない。

 

 穂乃果たち二年生が私達の卒業後にスクールアイドル活動を練習止まりにしていたのも、三年生組に気を使ったからではなく(それもあろうけど)オトノキで自身らが特別な存在になるのが嫌だったから。

 

 Aqoursのアニメには含むところがあるけども、何も残さなかったとの表現は正解だ、立つ鳥跡を濁さず、今が最高と歌った私達が残すものなんて思い出くらいしかない。

 

「そして、レベルが高すぎるものは理解をされない」

「ちょっと有名になったくらいのスクールアイドル風情に何が分かる」

「ご存じないようなのでお教えしますが、ピカソの絵画が理事長のへそくりくらいの金額をするのは……ピカソがこの値段にしてくれって言ったからだと思うんですか?」

 

 距離を詰める――理事長なら「へそくり」って言われてツッコミの一言でも入れてくれるかと思いきや「行け」と背中を押した。

 

「答えろ――」

「……」

「作り手、売り手、顧客――芸術の価値を決めるのは客か売り手、自分で決めるのはよほどの例外……誇り高いのは結構だけど、みっともないくらい高い誇りのせいで生徒が近寄らなかったのを逆恨みされても困る」

 

 そして今も同じことを繰り返そうとしている――未来のないオトナが、後進に道を譲るべきオトナたちが。

 まだ巣立とうともしていないヒナを理由をつけて叩き潰そうとしている――こんなのを許しちゃいけない。

 

「あなた達が一番に考えるべきは、保身でも学校の名誉でもなく、通う学生たちの未来でしょうが!! つまんないプライドで自由を奪う教育者がどこにいる……ッ!」

 

 ――と、もっと多くの言葉を言いたかったし、必要であれば殴りつけようかと思ったけれども、積み重ねてきた疲労ゆえか、怒りのあまりに我を忘れた顛末なのか。

 気分が悪くなる。

 膝をついてから荒い呼吸を整えようとする――すっ飛んできたニジガクの理事長や結女の理事長に、色々と尋ねられるけど応じる余裕がない。

 

 でも――音だけは妙にクリアだ。

 自らの呼吸音とか、心臓の音、目の前の景色は薄闇がかかったようにも見えるのに。

 

「結ヶ丘女子高等学校普通科一年生――葉月恋です。僭越ながら、なり手のなかった生徒会長を務めています」

 

「私たち普通科の生徒は今まで肩身の狭い生活を送っていました――仕方がないと、音楽科は優秀な生徒が揃っているから……忙しさ故に普通科の私が会長職を務めているのは……お笑い草かもしれません」

 

「ひとつも仕方がなくなど無かった! 同じ学校に通う生徒なのにどちらが一方が特別で! どちらが一方が劣っている! そんな価値観を学校から押し付けられているとさえ思っていた……恥ずかしい限りです」

 

「学校が生徒の自由を奪うのなら、もう、この場所に用はありません。自分たちはその選択ができるのを忘れていました、横暴に許される理由などありはしないんです」

 

「だがキミの母は」

 

「母は母で私は私です!!! 私の意思は私だけのものです!! 勝手に決めつけないでください!! ですが……自分たちの自由にさせよ、ではまかり通らないのは存じています」

 

 そろそろ理事長の手の感触が感じられなくなってきたし、薄闇どころではなく暗闇が間近に迫っている。

 不思議と恐怖を感じないのは、背中をさすってくれている手が祖母を思い出すからなんだろうか。

 

「Liella!は数々のスクールアイドルに勝利し、ラブライブで優勝しましょう――必ずや実行します、期限は私が卒業するまでで構いませんよね?」

 

 次に目を覚ますときにはどうか病院かどこかであってほしい――病室のベッドの上ならば血の気の多い連中も殴るのを憚ってくれるはず。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。