アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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監視委員会って趣味悪いですよね、いったいどこの誰が考えたんでしょう?

「鞠莉、ココはAqoursの底力を見せるべきです」

 

 季節は9月――本日はことりさんの誕生日。

 ながら、本来は自身の重大事が如く「誕生日パーティよぉ!」と意気込む絵里さんが仕事に感ける異常事態。

 

 今まで散々「え? 誕生日が過ぎてた? じゃあ今日にパーティしよう」とか言っていたのに――雑務や仕事が山積みになっているとは言え、そんな中でも暇を見つけては「生誕祭」に意気込む姿は、呆れもするなり、感激も……もちろんするなり。

 

【梨子の企画を済ませて、妹に集中したいんでしょぉ? とにかく、夜までに着けば良いんだから、マリーはマイペェスに行くわよ?】

 

 絵里さんの様子がおかしいのは既に寮で同じ仕事をしている皆様方や、学生からも指摘が散見されました。

 しかし今回の「誕生日イベント完スルー」で、前々から企画してあった「仕事の分担」は実行せねばなるまい。

 

 絵里さんに無理をさせなければ良いのでは? と、ご意見を頂いたけども、困っている人を見れば「困っている人を見て精神が困るのが嫌」とか言って助けに入る。

 部屋でじっとしていろと脅迫しても「でもみんな仕事してるし」で、ちゃっかり仕事を始める。

 

 今回の結女の理事会へのブッコミも、絵里さんを動かさずに調査や準備をするのに骨を折りました。

 梨子には苦労をかけましたが「ピアノに集中できたし」と満足顔。

 Aqoursとしても思わぬ副産物を得られました――荒々しい桜内さんのせいで、作曲担当だったのはアニメオリジナルとの風評もありましたし。

 

「ダイヤ」

「ああ、雪穂……して、ネットの評判通りでした?」

「やぁ、結構ツテも頼ったけど、怨み節を抱えている子はいないね」

 

 Liella!が活動を妨害されはじめ、練習にも一苦労をしているとの話は「おヒナさん」から耳にしていました。

 亜里沙からも「練習場所を確保できない」と言われ「ステージでの活動や練習すらさせて貰えないとは、結女ってのは世紀末なんですか?」と首をひねるほかなく。

 

 ひとまずLiella!には「マリーはドライバーじゃないんだけどぉ?」と、ホテルオハラでのんべんだらりとしていた鞠莉に放課後の送迎を任せ、指導には果南や海未が付きました。

 

 ニジガクでLiella!が練習する姿を観ても絵里さんから「おかしくない?」と言われないのも、私の中で「やはり様子が」と推測するきっかけではあります。

 

「監視委員会なんて趣味の悪い、まるで扱いは犯罪者よ」

「スクールアイドルにここまでやる……ダイヤはもう分かってるんだよね?」

「ひとまず、女子高生にお小遣い渡してホテル行っている理事は国家権力に対応をおまかせしますわ」

 

 女子高生にお小遣いを渡すの時点で「地獄送りな」と言いたいのは山々ですが、黒澤家は笑ゥせぇるすまんではありません――よく勘違いされますけど、私刑は必要なときにしかしません。

 

 金銭的に裕福な人間が叩けば埃が出てくるのはお約束ですが、いずれにせよ後輩に手を出されて、黙ってようって先輩はただの一人もいない。

 

「ふぃ……雪穂、お茶ぁ」

「はいお姉ちゃん」

「……まさか本当に用意されるとは」

 

 ことりさんは「絵里さんから妹へのプレゼント」をさらにブラッシュアップを重ね「絵里専用魅力度300%増しドレス(命名:統堂英玲奈)」へと変貌した。

 いかんせん妹が「自分の心だけにこのデザインを取っておきたい!」とワガママを言ったため、妹のステージ衣装とは採用できなかったので。

 

 ……もちろん各種契約があるから「アイドルがいきなり、この衣装で行きたい」はやはり通用しないけども。

 

 穂乃果さんは「絵里ちゃんがこれを上手く着る」シナリオ作成に一役買い、さらにはちゃっかりドレスを身に着けた姿まで眺めてきた――そしてこれからは、時間が取れる限り学園の生徒の生活指導にも顔を出す。

 

 そんなことまでさせるつもりはなかったんですが「穂むらは妹に任せる」って言って「時間はもう作ったから」とか言われたら、学園の理事長も「え、あ、ハイ」と肩書を与えるしか無く。

 

「いかがでした?」

「驚いた、絵里ちゃん痩せたんじゃない?」

「聖良も言ってましたね、妹を任せるつもりで顔を突き合わせたら、明らかにやつれていて、絵里さんは意図を汲んでくださりましたが、と」

 

 見守っていた歩絵夢も「アレ? 話の流れがちょっと強引だぞ?」と気が気ではなかったそうだけど、理亞がうまいこと「絶対に姉さまの理想通り」と気合を入れてくれたので話はまとまった。

 

 絵里さんに事情は伺えませんが「妹の誕生日~」とか言って、近づいた際にうまいこと誘導しましょう……できるほど元気になって頂ければいいんですけど。

 

「や、でも、理亞ちゃん危機感なかったよね?」

「聖良が岐阜に戻ったことにすれば否応なしに、と思ったんですが……あ、絵里さんの姿を観てもダメでした?」

「女子力のなさには危機感を覚えてたけど」

 

 手で顔を抑える――そして会話が聞こえていたのか、聖良も頭を抱えている。

 絵里さんに激昂されて殴られる覚悟まで背負い「妹にはちょっと甘えたところがあるから、もっと背筋を伸ばしてもらう」イベントを実行。

 

 穂乃果さんから「ツバサさんの力を借りれば、絵里ちゃんは意図を叶えてくれるよ」と言われ、聖良は言葉通りに実行――ツバサさんをダシにしてまで「叶えたい願い」と認識した絵里さんは、本当にちゃんと怒ってくれた――セリフが演技めいていたのはこの際気にしませんが。

 

 いえ、絵里さんが本当に怒っていたら理亞が前に立とうが「どけ」って言って聖良を殴る。

 

「理亞ちゃんの中で大切な人を失うって恐怖感がないんだろうなあ」

「やめてください縁起でもない」

「や、だって、絵里ちゃんが倒れたりなんだりって、みんな想定してないでしょ」

 

 雪穂も視線をそらしたし、学園で就職コンサルタントの補助をやるために東京に来てた千歌も、黒澤家御用達のホテルの一室に到着したばかりなのに目をそらした。

 

 「女将はぁ!?」と黒澤ダイヤ口調を忘れて驚きましたが「女将なんて私らしくないしやめた」と言われたら「え、あ、はい……」というしか無く、理事長も「元スクールアイドルの就職斡旋所じゃないんだけど……」と嘆くしか無かった。

 

 なお、μ's、Aqours双方のリーダーはあくまで担当者の補助がメイン――学生から評判がいいのは、奮起を促すってことで……ええ、あの、わたくしも善処しますんで……。

 

「ひとまず、絵里さんに理事長と一緒に最後のひと押しをしてもらい、我々は不在中に彼女が抱えていた業務の引き継ぎをする」

「やあ、絵里ちゃんが休む間に引き継げるかなあ」

「……ツバサさんが料理を作って準備をし、酒さえ飲ませれば時間を稼げるはずですから」

 

 それでもなお、千歌や穂乃果さん――鞠莉や果南たちがこっそり寮に忍び込み「もう学園で働くのが決まったから~」反発させないイベントが成功するか。

 

「マルちゃんも、締切さえ無ければ来てくれたのに」

「締め切り破らなきゃいけないような大事起こさないでね! ってフラグ立ててたけど」

「ま、絵里さんはわたくしが思うに殺しても死なない方です――せつ菜さんの差し入れだって食べるんですから」

 

 が、しばし歓談に浸っていた面々も「そろそろ結女の理事会に殴り込みをかけた頃か」と時計を見ながら判断。

 姉の調子の悪さは亜里沙も把握していましたから、こうして「大丈夫会」みたいなのを開いていますけど。

 

 大丈夫会なんてものを開いている時点で異常だと、わたくしたちは愚かにも気がついていなかったんです。

 ――亜里沙の不安にかこつけて、自分自身が大丈夫だって思い込みたかっただけなんです。

 

「あ……お姉ちゃんがっ!?」

「とっ」

 

 さすがは聖良、亜里沙が落としたコップも中身をこぼさずにキャッチ。

 異常に気がついた彼女の、コップを落とした音が広がったとなれば、自分が冷静でいられた自信がない。

 

 雪穂には荷が重いですが、亜里沙の怯えを少なくさせるのは彼女に任せましょう。

 

「結ヶ丘女子高等学校の理事会……緊急搬送される病院……移動時間……会合に真姫さんを呼んでおくべきでしたね」

 

 先ほどまで不安を携えながらも、空元気を踏まえつつ会合していた我々の一部――穂乃果さんは既に一室から飛び出し、駅前に向かったんでしょう。

 そこからの移動手段はタクシーになるか、電車移動になるか、ひとまず駅に向かっておけば、慌てて飛び出した面々が集結し、誰かしらが担ぎ込まれた病院、及び移動手段を思いつく。

 

「タクシー……いますか?」

「ええ」

 

 どこに潜んでいたのか、それとも最初からこの展開を読んでいたか。

 人間離れした能力を持つ神様とやらは……や、それをタクシーと呼ぶのは人間の身勝手さってことで許していただきたく。

 

「亜里沙を任せました」

「任された、姉はまだ病院ついてないけど」

「潜んでおきなさい、神だったらそれくらいやって?」

「神を馬鹿にすると天罰が下るわよ?」

「これが天罰です」

 

 面白い回答だったか神は「まいどあり~」と言いながら、亜里沙を抱えてどこかへと飛び立つ。

 残された雪穂と私は、水分を口に含んで心を多少落ち着けた後。

 

「どこまで情報を流す?」

「学生は控えてください、ニジガクの理事長も娘に「絵里ちゃんが倒れた、病院に向かっている」くらいしか告げてないようです」

「了解」

 

 これで、虹ヶ咲学園の学生や結ヶ丘女子高等学校のみんな、そして東雲や藤黄学園やUTXやオトノキの学生に情報が漏れようものなら「おヒナさん」に恨まれてしまう。

 

「さすがは真姫さん病室まで特定して……ん?」

「どうしたの?」

「いや、絵里さんがどこに担ぎ込まれても良いよう、タクシー及び移動手段が確保できる駅前に、てっきり”みんな”が向かったかと思ったんですが」

 

 チラリと聖良に視線を向けます――彼女はそれだけで「鹿角理亞が思いのほか冷静ではないと判断」したらしい。

 隣にいる歩絵夢に頭を下げ「このシスコン」と言われるけども「褒め言葉です」とメッチャ格好いい表情で言う――シスコンが褒め言葉になるのはシスコンだけですよ聖良。

 

「あ、ダイヤ、ニジガクのみんなへの説明なら私が行くよ」

「雪穂はさほど顔出しはしていないでしょう? それに」

 

 ――言葉を出そうかどうしようか迷いましたが。

 

「みんなが言うことを聞く、穂乃果さんの言葉はあなたに届きます――なにかあれば拡散してください」

「……歩絵夢も手伝ってくれる?」

「恋人にフラれんぼの寂しさ紛らわすためにやってあげる」

「どうぞ、よしなに」

 

 絵里さんに大事があって穂乃果さんが冷静さを保てるかは未知数ですが、そのときはどのみち、私だって冷静じゃありません――頼みますよ雪穂。

 

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