アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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南ことりは人の誕生日に倒れるんじゃないと泣きながら言う

 前々から労働時間の超過などによる疲弊、趣味や娯楽の有無で精神的にいかようになるか。

 少し前までニートだった分際で著名な専門家のように一家言申し上げてきたけど、その実、自らが今までに積み上げてきたものを頭の外へとほっぽりだしていた様子。

 

 つまり年齢――私は30に片足を突っ込んでいる状態。

 成人したての見境なく頑張れる状態ではなくて、友人関係が充実しておろうが、周囲の助けになるからって頑張れる理由が無限にあるとか、気持ちではいくらでも前に進めそうであっても、身体がいかんせんついて行かない。

 

 おばあさまの発言を思い出す。

 

「年寄りには年寄りのペースがある、エリチカから見れば遅いかもしれないけど、勘弁してちょうだいね」

 

 当時の私はまだ高校一年生で「努力できればなんでもできよう」くらいの認識だったから(廃校問題でスレたケド)「歳を重ねるとはいかんとすることか」は結局、今の今まで気が付かなかった。

 

 もちろん、年齢を重ねても努力をすれば現状維持はできようが、70才現役バリバリのトップアスリートがいたらサイボーグ化を疑ったほうがいい――もちろん、年齢を増しても活躍できる媒体であるなら別。

 

「……ハァ、限界突破するポテンシャルでもあれば、能力値も上がるでしょうに」

 

 当たるかどうかも分からない上に、引き当てる確率も低い、そんな最高レアの絢瀬絵里なんぞを数枚も引き当てねばならない――何という苦行か。

 

 能力値云々はともかくとして、何ヶ月か前まで使われていたキャラが新しいキャラに取って代わられるの、諸行無常の響きありとか言って哀れんで頂きたい。

 

 や、私なんぞキャクター商売やソシャゲ化して稼げるのか、って言われたら、抱合せにμ'sとかA-RISEとか付けとかないと。

 

「ことり」

「ごたいそうな独り言どうもありがとう」

 

 病室で大横綱みたいな威圧感を放ち、迸るオーラはまるで範馬勇次郎、心なしか外見までもがバーサーカーに見える――さすがに病室に石膏像を破壊するときに使うハンマーまでは持ち込めなかった様子だけど。

 

 

 ストレス解消のために机やら何やらをハンマーで破壊できるってアトラクションがあるそうだから、絢瀬絵里の体調の回復を見計らってソコにぶち込まれる可能性は十二分にある。

 

 破壊してもさほど問題のない物品ならばともかく、さすがの私もハンマーでぶん殴られれば肉体の損壊は確実である――ノーダメージとなれば、近親に仮面ライダー1号2号がいるのは確実で、世界の平和を守るためにゲルショッカーと戦わねばなるまい。

 

「絵里ちゃん、今日が何月何日なのか分かる?」

 

 別段そこに興味を持ってみたわけじゃないし、ことりには着衣の乱れがあって(やらしい意味ではなく)血相を変えて着の身着のままで飛び出してきたのが分かる。

 

 でも表情は「私は世界で一番のデザイナーだからなぁ」みたいに、自信満々で――なおかつ澄ましている。昨今ライバルキャラだって、ここまでツンとお高く留まっていてはヘイト管理に難しい部分がある。

 

 ただ、日付の感覚がないとバカ正直に告白すれば、この自信満々で矢でも鉄砲でもって態度が風船を針で割るみたいに崩れ、私に抱きついて泣き出してもらっても困る。

 

 ……や、既に目に見える位置にカレンダーはないし、私が既に日付の感覚が喪失しているであろうとの推測を持っているであろうし、故に「何月何日」を尋ねたのであれば、鬼が獲物を見つけたみたいな笑い声をしながらほほえみ、絢瀬絵里を星にしてくれるであろうに。

 

 星になっても良いかな、と、頭の隅に思い浮かぶほど、精神的にも肉体的にも疲弊している――普段なら気に止めないイザコザであろうとも、積極果敢に気にする自信がある。何たる迷惑者か、そんなやつは星になったほうが良かろう。

 

「ごめんなさいね、ちょっと日付の感覚がないものだから」

 

 レモンを口に含まされたのち、強制的に飲み込まされた――みたいな、苦しく、嫌気やえづき、嘔吐をこらえるような表情を見るのがしのびない。

 

 それでも前を睨みつけるようにしながら――普段だったら「俺の後ろに立つんじゃない」くらいは言えそうな力強さなのに、通常時から「全部演技なんだよ?」って言われたら信じちゃいそうな弱々しさ。

 

「そ……そう、そんなアホな絵里ちゃんに教えてあげる、今日は9月12日なんだ……あ、9月13になったかな?」

 

 ――「貴様の命日だよ!」と胸ぐらをつかまれ、口の中にボルガノンでも撃たれたほうがいいと思った。流石に間近まで迫れば命中率が一桁になることも珍しくない魔導書であろうとも当てられよう。

 

 ドアンザクの射撃みたいに絢瀬絵里を活用していただきたいほどショックだけども、目の前にいることりも声が震えているので、私の記憶から完全に抜け落ちていたのが、身体に重しを乗っけたようにしたのか。

 

「……ねぇ、絵里ちゃん……私の誕生日会……わぁ……?」

 

 すっぽかしたのは紛れもない事実である。

 

 以前までの「いつの間にか過ぎていた」ではなく、ことりは直接来訪し、顔を突き合わせ、言葉によるやり取りも行ったにもかかわらず、まるっきり眼中の外へと追いやり、メンバーではない子を助けんがために意気揚々飛び出し――挙句の果てに頑張り過ぎで倒れる。

 

 ことりとしても、絢瀬絵里が頑張っちゃったがために一概に責めることができないであろうし、倒れるほどに努力した理由が理由なので、さらに責め立てられない。

 

「ごめんなさい、日付の感覚がなかったもので」

「……今度盛大なのやってくれなきゃ許さないからね」

「ええ」

 

 消灯時間を過ぎているため、一般的な病院であれば看護師さんが飛び込む事態だけども、そこらへんは真姫がうまいことやってくれたに違いない。

 

 「亜里沙ちゃんがよかった?」とことりから上目遣いに尋ねられ「亜里沙が行くべきとの意見もあった」と読んだ私は「状況が知りたい、ことりのほうがいい」とあえて妹を切った――英玲奈に聞かれればただでは済むまい。

 

「ニジガクのみんなは寝てるはず、病院には来てない」

 

 学園の理事長も西木野総合病院の権力が及ぶ場所で待ち構えようとしたものの「ババアは帰れ」の盛大な歓迎により、娘のもとへと帰った模様。

 寮の学生も最高権力者が「寝ないと退学するぞ」と締め上げれば、よほどのアホでもない限り寝ているはず。

 

 絢瀬絵里よりもアホでないにせよ、寮生たちがアホばかりでは管理人として慟哭せずにはいられない。

 

「待っていた子も和姫ちゃんに邪魔だから帰れって言われて、ただ、絵里ちゃんに近況報告が必要だろうと」

「助かる」

「逃走したら永眠させろって言われてるけど」

「それは助からない」

 

 ことりのほうがいいのは紛れもない事実だけど、亜里沙が感極まるあまりに姉を心配させれば、上手いことやって病室から抜け出す可能性は十二分にある――気合が入るあまりに倒れた手前、残念ながら「そんなことはない」と主張しても「寝言は寝てから言え」と反論されて終わる。

 

 英玲奈にバレれば「シスコンの恥」と言われて成敗されよう、病室から抜け出すのを構えている可能性もある。

 

「質問は?」

「どれくらいで退院できそう?」

「そうね、和姫ちゃんの見立てだと全治一年」

「あの子は医者の娘だけど医者じゃないから」

 

 ――なにはともかく、高額医療費制度の適応の申請やらなんやらを自身でやるので、月が変わる前までには退院したい。

 

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