アラサーエリちとお姉ちゃん大好き妹亜里沙   作:のののえみ

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高坂穂乃果番外編

 アブラゼミが鳴いている――これまた、関西圏にいた経験も豊富な希ちゃんが東京と大阪では鳴いているセミの種類が違うね、と。

 当時もそこまで頭が良くなくって、幼なじみの海未ちゃんやことりちゃんには随分お世話をかけちゃったけど……アブラゼミとクマゼミの生息圏の違いすらわからなかったから、私の想定以上に二人には苦労をかけたろうし、同じグループのメンバーにも……それは今もかな?

 

 お店番をしながら古い記憶をたどっていると、妹の雪穂に「試作品ができたけどマズそうだから絵里さんに持って行ってあげて」 と、いつから絵里ちゃんはダストボックスみたいな扱いになったのか。

 

 凛ちゃんのとんでもなく不出来な料理でさえ「せっかく作ってもらったんだから」と口に入れる姿は、同じグループのメンバーだけじゃなくて、鹿角理亞ちゃんの作るお菓子もそうだし、中川菜々ちゃんの作る料理もそう、ツバサさん弟さんの料理もまた同じく。

 

 凛ちゃんがあまり美味しくない料理を作るのも「自分の料理だけじゃないんだ」の精神が含まれてるのは知ってる――誰か特定の相手にそう、じゃなくて、誰でもそう、なんだから特別、ふてくされることもないのにな? と思うけど、人間の感情は足し算や引き算みたいに、こうすればこうなるって決まってないから。

 

 が、凛ちゃんの幼なじみの花陽ちゃんが「もっと凛ちゃんをかまってあげてほしい」とばかりに、あまりこっちに来なくなってしまったので、ことりちゃんから「お前はいつからそんなに偉くなった」と説教される前に、なんとしてもこっちに呼び寄せるイベントを起こしたい。

 

「ほら、お姉ちゃんなんだから妹の言うことを聞く!」

「へーい」

 

 東京の真夏の暑さは特別だ――外に出るのも億劫、これはきっと東京砂漠って言葉に由来するんだと思う、歩くだけで、一歩ごとにダメージを受けるダンジョンを進んでるみたいだもん。

 

 それでも虹ヶ咲学園まで試作品のお菓子を伴ってやってくると、普通じゃない疑惑が生じているかのんちゃんとバッタリ出会った。

 

 ――そういえば、結女ではまともに練習ができないんだっけ? 

 

 スクールアイドルにさぞかし恨みを抱えている人達なんだろうなぁ? 

 あいにくと普通科の子に生徒会長を任せたおかげで、いくら妨害しても、守ってくれる権力を持っている生徒がいるってオチがつくけど。

 

 音楽科の生徒に生徒会の活動をさせるくらいなら、そのぶん音楽の道を歩んでもらいたい……やぁ、絵里ちゃんが聞いたら何発殴られることか。

 

「あ、そうだ、以前はことりちゃんがご迷惑をおかけしました」

「い、いえ、ありあも母も、プレゼントを頂いて大変喜んでおりまして……」

 

 さすがはことりちゃん。

 売上に貢献するだけではなくプレゼントまで、その点はきちんと器用に人間関係のコツを掴んでる。

 デザインを勉強したなんたら女学院ってトコは、それなりのお金持ちじゃないといけないって話だしな……ことりちゃんは推薦で行ったけど。

 

 海未ちゃんと「ことりちゃんが悩んでるから何とかしよう」と計画を練ってたら、どこから聞きつけたのか絵里ちゃんがツバサさんと一緒に学院に侵入して直談判するイベントを起こし、創立者だったかスポンサーだったか忘れたけど「才能を飼い殺しつもりか」と襲いかかったらしい。

 

 よっちゃんちゃんのイベントでも武装する相手に巧みに立ち回り「あの時の経験が役に立った」「スクールアイドルとしての嗜み」と、胸を張ったらしいけど、そんな経験をしたことのあるスクールアイドルなんて、全国各地を回れど、絵里ちゃんとツバサさんしかいないハズ。

 

「え? 美味しくなさそうな試作品ですか?」

「そうなの、是非にも絵里ちゃんに食べた感想を言ってもらわないと」

 

 かのんちゃんは練習目的だけど、私は絵里ちゃんに美味しくなさそうなものを食べさせるのが主目的だ、美味しければ喜んでくれるだろうし、美味しくなくても「もらったから」で喜んでくれる。 

 

「そういえばこの前、昆虫を食べてるのを見ました」

「はは……アレ……ことりちゃんがハマってたなぁ……」

 

 もんじゃの時もそうだったけど、前振りなんじゃないかって思うくらいの拒否反応を見せて、挙句の果てにドハマりする。

 あんまりにも美味しそうに食べるもんだから、真姫ちゃんと海未ちゃんが「猛禽類だから」「鳥類だから仕方がありませんね」と、ネタにして、後日痛そうな報復を受けていた。

 

 このまま絵里ちゃんの話に進むのかなって思ってたら、かのんちゃんはえらく真剣な表情をして。

 

「どうして、μ'sは穂乃果さんがリーダーなんですか?」

 

 Liella!のリーダーは実質かのんちゃんだけど、当人曰く「消去法で仕方なく」「普通の私には荷が重いんですよ」とやたら普通を強調しているけど、そのうち普通じゃないところが分かるはず、秘密が漏れるまでは見守るつもり。

 

「なんかそういうの、昔もあった気がするな」

「聞かれたくない内容でした?」

「ううん、同じスクールアイドルなら喜んで」

 

 自分の所属していたグループの名前ですら「わかんない~」「知らない~」とか言われたら「消去法で選ばれたんです~」と、愛想笑いをして受け流すけど。

 ここまで親しく交流してきた相手に「聞かれたくないなぁ~」と受け流せるほど、身勝手な人間じゃないつもり。

 

「μ'sのリーダーもやったし、生徒会長もやったけど……特に何をしたってわけでもないんだけどな」

「え?」

 

 絵里ちゃんは私を持ち上げてくれるけど、世間一般で騒がれるほど高坂穂乃果ってのは、何をしたわけじゃない。μ'sとしての功績が自分にあると思い上がるほど、わがままでもないし――絵里ちゃんは「あなたの功績よ」と持ち上げてくれるし、海未ちゃんも「あなたの力です」と言ってくれるけれども。

 

 あ、ことりちゃんは「私の衣装が一番影響が大きいかな~」と言うし、ニコちゃんも「部長としてのニコの資質が~」と続いてもくれる。

 希ちゃんは「スピリチュアルパワー」って言って絵里ちゃんに張り倒されてた。

 

 ――ふざけるな、の意味合いらしい。

 

 そこら辺の考えが読めないのは真姫ちゃんで、絵里ちゃんの前では「穂乃果が」と持ち上げてくれるけど、いない場所では「私の作曲スキルのおかげよ」と発言が変わる――場当たり的に対応が変わる花陽ちゃんや凛ちゃんの二人とは違って、あえて考えを読まれないようにしてる……んだけど、自分の頭では「考えを読まれないようにする」必要性がわからない。

 

「でもね、何もしなかったわけじゃない」

「……」

「くじけそうになっても、失敗しちゃっても、間違ってしまっても、やり遂げたよ最後まで、もしも私に……リーダーの資質があるって言うなら、そういう力なんじゃないかな?」

 

 「何もしなかったわけじゃない……」「最後までやり遂げる力……」と、かのんちゃんは難しい表情をして悩んじゃったので「ほら、練習に行かないと!」と背中を押した。

 

 慌てて駆け出す、かのんちゃんの背中を見送りながら。

 

「さすがはμ'sのリーダーね」

「うわぁ!? びっくりした!? どこにいたんですかツバサさん!?」

「天井に張り付いてた」

 

 忍者か。

 

「かのんさんは危なっかしい」

 

 天井に張り付くスクールアイドルほど危なくはないはずだけど、野暮なので口には出さない。

 

「Liella!はラブライブで勝てないでしょうね」

「……あえ?」

 

 意味深な独り言を残して、A-RISEのリーダーは「まずそうなものを食べさせるんだったら、私の許可がいるわね」と、絵里ちゃんの所有権を主張し、喧嘩したくないので私は「じゃあ許可をお願いします」と頭を下げた。

 

 許可はくれたけど、発言の真意までは聞けなかった――

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